◆登場人物紹介◆ ロジャー兼政(ろじゃーかねまさ)【教師(狂師)】 コンスタンタン・デュシェーヌ【老紳士】 白皮マイケル(しらかわまいける)【謎の人】   夏休みが終わりセミの声がアブラゼミからヒグラシに変わると言霊学園には生徒達の姿が戻っていた。  長期休暇中も生徒は学園に残る事ができるのだが極一部を除いて大半の生徒は帰省していたので夏休みの間学園内は恐ろ しいまでに静まり返っていたのだが今の状況を見るととてもそうとは思えなかった。 「オラァ貴様ら静かにしねぇかぁ!いつまでも夏休み気分でいる奴ぁハムにして喰っちまうぞコラァ!!」  言霊学園教師ロジャー兼政は日本刀を振りかざし生徒に向かって声を張り上げていた。  夏休み明けの始業式が行われている言霊学園雷鳴館(体育館)は1000人の生徒が巻き起こす喧騒でそりゃえらい事に なっていた。 「クソガキども手前等がいつまでも喋ってっといつまでたっても始業式が始められねぇんだよぉ!!」 「ほらほらロジャー先生そんなに熱くならないで。かえって生徒を刺激してしまいますよ」  目を真っ赤に血走らせ今にも生徒に斬りかかりそうなロジャーをなだめるのは同じく教師のコンスタンタン・デュシェー ヌ(フランス人)。 「しかしですねぇっ!?このクソガキどもはこうでもしねぇと静かにならねぇんですよデュシェーヌ先生!そうだ!誰か1 人見せしめにしてやりゃあ静かになるでしょう!」 「物騒な事を仰らないで下さいよ。こちらが誠意を持って接すれば生徒達だってちゃんと静かにしてくれますよ、ほっほっ ほ」 「・・・分かりました、デュシェーヌ先生がそう仰るなら俺、いや私も角を引っ込めましょう」  ロジャーは老教師になだめられあっさり大人しくなった。  言霊学園は基本的に縦社会なので年上の言う事には従わなければならないのだ、逆らったら給料10%カットの刑が待っ ている。  結局生徒は音楽教師のマイケルが甲高い叫び声1つで黙らせようやく始業式が開式された。              開式の言葉 「一同起立っっ!!」  甲高い声に従い生徒達は起立する。 「礼っっ!!」  甲高い声に(以下略 「構えぃっ!!」  甲高い(以下略 「直れっっ!!」  甲高(以下略 「着席ぃ!!」  甲(以下略 「これより始業式を開始します。」  黒く日焼けしたスキンヘッドの教頭(恋人募集中)が丁寧な口調で挨拶を述べた。              校歌斉唱  マイケル先生のオンステージになるので省略。              学園長の言葉  いつも通り黒い三角頭巾で顔を隠した学園長はゆっくりと壇上へ上がっていく。  学園長の準備が整ったタイミングを見計らいマイケル先生が叫ぶ。 「一同起立っっ!!」  甲高い声に従い生徒達は起立する。 「気をつけぇいっ!!」  甲高い声に(以下略  生徒達がビシッっと気をつけしたところで頭巾の奥からくぐもった声が聞こえた。  その声は高性能マイクを持ってしても何を言っているのか分からなかったが教師達は緊張した顔で聞いていた、生徒達は なんのこっちゃという風だったが。  何を言ってるのか分からないまま学園長は壇上から降りて式を最後まで見届けることなく何処かへと行ってしまった。  もちろん誰もそれを咎められない。              閉式の言葉  開式の言葉とほぼ同じなので省略。  始業式が終わると生徒達はゾロゾロと自分達の教室へと帰っていった。  この後夏休みの課題提出がある為か足取りの重い生徒も見かけられる。  生徒の嘆き苦しむ顔が大好きな教師にとって課題提出の瞬間は至福の時だろう。  ちなみに今年の課題はオリジナルホールドの開発とその効果についてのレポートで、文系の生徒にとってはかなりの難題 だった。 「さて、それでは我々も戻るとしましょうか。デュシェーヌ先生、起きて下さい」  ロジャーは隣に座るデュシェーヌを夢の世界から呼び戻した。 「ん・・・あぁよく寝た。おや、もう終わったんですか、ほっほっほ」  信じられない事にこのじいさん始業式の間ずっと寝ていたのだ、とんでもない教師もいたもんである。 「私ももう歳ですね。近頃やたら眠くて仕方ありません、ほっほっほ」 「ご冗談を。デュシェーヌ先生ほどの方なら100歳になっても現役でやれますよ」  光の反射で眼鏡の奥は窺えないが何やら含みのある言い方だ。 「はて?何の事ですかな?ほっほっほ」  そんなロジャーの言葉をサラリとすっ呆けるのは年の功か、はたまた別の物か。  この老教師が凄腕の元傭兵だったというのは学園では誰も知らないはずだが幾人かの教師は薄々何かに気づいている様で ある。  もっとも何を言われた所で証拠も何もない以上憶測でしかなく、それを無理矢理暴こうとする者は居たとしてもKMRの 猫神狐狗狸くらいだろう。 (そういえば今日はまだ猫神くんの顔を見ていませんね。まぁ明日からまた嫌と言うほど見る事になるんでしょうけどね。 ほっほっほ) 「――ん生、聞いていますか?」 「え?あぁはいはい、もちろん聞いていますよ、ほっほっほ」 「そうですか、それでは引き受けて頂けるという事でよろしいですね」 「ええ勿論です。え?何をですか?」 「やっぱり聞いてなかったんですか。兵衛守墓雨流(ベースボール)の監督の事ですよ。私がやる予定だったんですが急な 仕事が入ってしまって代わりをお願いできないか頼んでるんです」 「監督ですか・・・ふむ、面白そうですね、いいですよ、引き受けましょう」 「そうですか、それは助かります。メンバーは適当に決めてもらって構いませんが野球部とソフト部の生徒は外してくださ い、怪我をされると困りますから」 「ほっほっほ、分かりました。まぁアミダくじで適当に決めさせてもらいますよ」  冗談っぽく言っているがデュシェーヌは本当にアミダくじでメンバーを決めるつもりだった。  選ばれる生徒は堪ったもんじゃないがこの学園ではよくある事なので今更誰も動じないだろう。 「ありがとうございます。それでは私はこれから面倒な仕事が入ってるんで失礼します」 「はい、ご苦労様です・・・さて」  ロジャーが去ってデュシェーヌは急に考え込む様な顔をした。 「兵衛守墓雨流ってどんな競技なんでしょうかね?」 『兵衛守墓雨流』編に続く(予定) (ベースボール)