『外道のために鐘はなる』 「マジっすか!おkwwwキタコレwwwwwwwww」 「…そなたの力に期待しておるぞ。」 「バッチリっスよ!経験値山ほど頂いて報酬までもらえるならイクしか!」 下品な笑い声を残しながら3人は城を後にする。 「…本当にあのような者たちに任せてよろしいのですか?」 「もはやあのような下郎に頼らねばならない状況と言うことなのだ…。判ってくれ」 王は苦虫を噛み潰したような表情で答えた。 「あー…こんな田舎までわざわざ来たんだ。がっつりストレス解消しなきゃなw」 「サテ、クエストの最初は村人からってか!? おぅ、オッサン!ここらにガキんちょモンスターはいなかったか?」 勇者一行は近くに居た村人の胸倉を掴んで問いただす。村人は勇者を睨みつけて「そんなものは知らん」と答える。 「あ、そ。じゃあオッサンには用無し。いねぇなら炙り出すだけだゼ。おい、聖騎士!」 「おkwwwwwwwwwコイツだなwwwwwwwwwwwwww」 聖騎士は腰に下げたマジックアイテム『道具袋』に手を突っ込んで探る。 目的の物を見つけたのかゆっくり袋から手を出す。手には鎖、そして道具袋から一人の少女が…いや、回復アイテムが引きずり出された。 「『我が風 遠き風 広く遠く彼方まで 汝の声 届ける者也』 準備できたゼ。」 大魔道士が念話の魔法を展開する。勇者はニヤニヤ笑いながら大声を張り上げた。 「うは…おk!ももっち!!とっとと出てきやがれ! こっちにゃお前のお友達が一人居るぜ!? 来なかったらどうなるか判ってんだろうなぁ!」 手に手に武器を持ち村人が輪を作る。殺気立つ村人達の中心に居るのは勇者一行。しかし彼らの顔には余裕の笑みさえ浮かんでいた。 「おいおい、俺達はももっちに用があるんだぜ?オッサンオバハンはすっこんでなよ!」 「貴様らのような勇者どもにももっちを渡すものか!!」「「おうっ!」」 「…あ、そ。 魔法ヨロシク。」 「おk。『我が風 穏やかなる風 安らぎのままに 穏やかな眠り もたらす者也』」 勇者達の周囲に眠りの魔法が展開する。高レベル大魔道士の魔法に村人が抗えるはずもなかった。 「ももっちが居るって自白してくれたし… 後は虱潰しに探すだけかwwwww」 「やっぱ基本は村長の家じゃね!?」 「おk!まずはそっからだナ!!」 勇者達が村長の家に到着するとほぼ同時に村長の家から二人の人影が表へと飛び出した。 ももっちと新人勇者である。 「!?しまった…もうここまで! 早く逃げるんだももっち!ここは俺が食い止める!!」 「あ…うん。お兄ちゃん…死なないで…。」 ももっちは新人勇者を一瞥すると村はずれの森へ向かって駆け出した。 「うはwwwwww勇者が魔物庇ってどうすんだよwwwwwwwwwwwww」 「しかもこっちPT組んでんだぜ!?wwwwwwwwwwwwwっうぇwwww」 「ウルサイっ!俺は何があってもももっちを守るって決めたんだよ!!」 新人勇者の一撃が聖騎士を襲う。しかし聖騎士は巧みに盾で攻撃を弾いていた。 「弱っ!!こいつ弱っ!! うざいからとっとと始末してくれよwwwww」 「はいはいワロスワロス」 小馬鹿にした表情で聖騎士は大魔道士に話しかける。その隙を見逃さなかった。 「はぁっ!!」 渾身の一撃を聖騎士に向けて振りぬく! しかし聖騎士の反応は素早く、身体をひねって直撃を避ける。ダメージは与えたが致命傷には至らなかった。 「テメェ!痛てぇじゃねぇかよ!!」 新人勇者を盾で殴りつける。新人勇者は勢い良く吹き飛ばされた。 「『我が凍気 留まる凍気 全ての物に 完全なる停止を 強いる者也』」 「なっ!?」 吹き飛ばされた新人勇者の身体が見る間に凍り付いてゆく。高レベル凍結魔法だ。 「チクショウ…殺してぇ…」 「wwwwwwwwうぇwwwwww まぁ人間相手はヤバイからな。この鬱憤はももっちにぶつけようぜ。」 「ったく…森まで追いかけないといけねぇんじゃねぇの!?」 だるそうに勇者達は森へ駆けてゆく。 「あー…痛てぇ。ゆかっち、回復。」 森に到着し辺りを捜索する勇者一行。聖騎士は道具袋から回復アイテムを取り出した。 鎖につながれた少女は泣きながら縮こまっているだけだ。 「何だコイツ…さっさと聖騎士回復しろよ、この役立たずが!」 勇者はゆかっちを蹴り飛ばす。声も無く地面に叩きつけられるゆかっち。 「まぁまぁwwwそう言うなよ。俺はゆかっちのこと だぁい好き だからなwwwww」 聖騎士はゆかっちに近づき髪を掴んで持ち上げる。 「だからお前は大事に使ってやってるんだよwwwwwww」 厭らしい笑みを浮かべ、ゆかっちの頬に舌を這わせる。ゆかっちは観念したように詠唱を始めた。 「『わがひかり やさしきひかり あいするものの』…ひっ…えぐっ……『いのちを みたすものなり』」 穏やかな光に包まれ、聖騎士の怪我が治ってゆく。 「やればできるじゃねぇかwwwww愛してるぜぇ!?じゃあな!!」 聖騎士はゆかっちに口付けすると、ゆかっちの頭を『道具袋』に捻じ込んだ。 傷を癒し、準備万端整った勇者達は森の中を歩き回りももっちを探す。 「ガキの足じゃあそんなに遠くには行ってないはず…」 「wwwwwwwおkwww任せろ。『我が風 遠き風 広く遠く彼方より 言葉届ける者也』」 大魔道士の耳にさまざまな音が飛び込んでくる。木々のざわめき、風の音、鳥の声…遠ざかる小さな沢山の足音! 「見つけた、こっちだ!しかも群れかもしれないゼ!?」 「うはwおkwももっちの群れwwwみwなwぎwっwてwきwたwwwwww」 「一匹お持ち帰りさせてくれよwwwコレクションに加えなきゃな!!」 勇者一行は喜び勇んで追いかける。森の中とはいえ子供の足。勇者達はすぐに追いついた。 「1…2…3………たくさん!!wwwwよし、狩るぜwwwwww」 一番足の遅いももっちを聖騎士が捕まえる。そのまま軽々と胸元に抱き寄せた。 「ももっちゲットだぜーっ!!wwwなんつってなwwwwwwwwwwww」 「あっさり全滅はつまんねーから魔法使わねぇぞー」 勇者と大魔道士は武器を振りかざしももっち達を追い回す。聖騎士は一匹捕まえたももっちの全身を撫で回してご満悦だ。 「うはwwwwwwwwwwたまんねwwwそろそろひん剥くカァっ!?」 そしてももっちの服に手をかけた瞬間! ズギャギャギャギャギャビチャビチャグチャグリュゥ 不愉快な金属音と湿った音が響き渡る。聖騎士は初めて見る不気味な剣に貫かれていた。 「あwwwwwwwれwwwwwwwwwwww!?」 いくつもの刃が剣の周囲を旋回し聖騎士の肉を削ぎ落とす。それは異世界で『チェインソー』と呼ばれるものだった。 「何だ!?この変な音www」 ガオンッ! 何かが弾けるような音と共に勇者の頭部が兜ごと割れ爆ぜる。大魔道士は思わず杖を構えて振り向いた。 そこには不気味な剣を聖騎士に突き刺し、長い筒を勇者に向けたももっちが立っているだけだ。 「クッ『我が雷 鋭き雷 猛き雄叫びをあげ 敵を貫く者也』!!」 大魔道士最大級の攻撃魔法をももっちを中心に展開した!しかし… 冷たい鏡のような目でももっちはその場に立っている。 「う…うわぁぁぁぁぁぁ!!」 大魔道士は一目散に逃げ出した。 「!!ぁぁぁぁぁぁわう…う」 どれくらい走っただろう。しかし大魔道士の前にはももっちが冷たい微笑みを浮かべて立っている。 「どうかしたの?お兄ちゃん。」 辺りの木陰からこそこそとももっち達が顔を覗かせる。 大魔道士は焦っていた。 (冷静に!冷静に!!おk!焦ったら凹られるだけだ!!きちんとアイテム選択をミスらずに!!) 『道具袋』からおもむろに呪符を取り出して天に掲げる。これで拠点としている街まで帰ることが出来る!…はずだった。 「枯葉なんて持ってどうしたの?お兄ちゃん。」 大魔道士の手にはただの枯葉…そんな馬鹿なッ!?『道具袋』に再度手を入れ呪符を引き抜く。しかし… またしても枯葉…。 「お兄ちゃんが探してるのは…コレ かしら?」 いつの間にかももっちの手に呪符の束が握られている。 「どう?もう十分絶望した?」 大魔道士は力なく座り込む。目はもはや虚空を見上げるだけだ。 「『わがやみ くらきやみ おんさのちからもて こころをくらく おおうものなり』」 大魔道士の心は呪いの闇に葬られた。 「…コレは酷い…」 聖騎士の惨殺死体を前にリッター・ゾーリンゲンは呟いた。 「ももっちの群れか。確かにこっちに居たんだな?そこの新米勇者。」 ゴキリと関節を鳴らしながらフォーゲルは問う。 「はい…この勇者達がももっちを追って森に入っていったんです。」 凍結魔法から助け出された新人勇者は経緯を説明する。この人たちならばさっきの外道勇者を何とかしてくれる。そう思って話したのだ。 「しかしぃ…その勇者達がこの様子では… ねぇ?」 リュートをポロンと鳴らしてハイロゥ・アクトラブは眉をひそめる。 「も…ももっちより…怖いの…居るの……?」 レムレス・ナイトウォールがきょろきょろと辺りを見回す。 「ももっち以外の何かが居たことは確かでしょう。みなさん気を抜かないように進みましょう。」 新たな勇者達は更に森の奥を目指していった。