幕間 Interphase 「そういえば、カイル君のことで思い出したんだけれどね」  王宮の中央、姫が住む尖塔の最上階で、二人が話している。 「あの黄金鎧は、よもや貴女のところ出身ではないかね? 正直なところ人間関係は専門外 だからよく知らないのだが、ファーライトは騎士の国だろう?」 「いいえ、、ハロウド先生」少女は笑い、「外法の騎士が多い国、と揶揄されていますわ」 「ふむ。外法か。確かにカイル君などその果てなのだろうがね……そういう意味ではあの聖 騎士はもっとも正当だと言えるね」 「どの聖騎士でしょう?」 「失礼――この国は聖騎士をもっとも多く抱える国でしたね。黄金鎧の聖騎士、ロリ=ペド ですよ」 「まあ」ぽん、と相槌をうち、「先生のお話に出た、あの子が戦った相手ですね?」 「そうだね。戦ったり邪魔されたり邪魔されたり邪魔されたり邪魔されたり戦ったりした相 手のうちの一人だよ。最終的には勝てたがね」 「……いずれ折檻しなければなりませんね」 「折檻か。しかし私の知る限り、折檻ごときで彼が変わるとはどうしても思えないのだけれ どね。不運や蘇りなど彼の一部分にしか過ぎず、彼そのものは生まれたその瞬間から変わら ずあれだと思うよ。そうそうこの前の話なのだけれどもね、私と二人で旅をしていた時の話 しなのだが、彼村人に見事に騙されて無一文で宿を蹴り出されて。いやはやあれは愉快だっ た。是非ともお見せしたかったね」 「お話がずれていますわ」 「ああいつものことだね。――ともかく、彼は変わらないだろうし、変わらないからこそ試 練に巻き込まれるだろう。それで、私は答えを尋ねていいのかね?」 「答え、とは?」 「黄金鎧」 「それは、うちの子ではありませんわ」 「ほう?」 「暁のトランギドールは流儀が違いますもの。頭の固い古い人は嫌いですわ」 「面白いたとえだね。頭の固い古い人、か――正義一辺倒という意味では確かにそうだ。貴 女たちは、正義を手段と捉えているのだろう?」 「あるいは」少女は微笑み、「正義とは、目的の隠語でしょうね」 「成る程。これ以上なくはっきりとした単語でありながらも、どうしようもないほどに曖昧 な言葉、正義か。黄金鎧の聖騎士は大変だろうね、それが揺らいでしまったら」  ハロウドの言葉に、少女は首を傾げる。  それ以上説明しようとはせずに、ハロウドは好き勝手に話し続ける。 「絶対的な価値観が揺らぐのは、世界が壊れるのと等しい。あの少女もまた、厳しい試練の 中に身を躍らせることになるのだろうね――」 ■ 第二話 Black Gale AND The longarm ■  こうは考えられないかね? 我々は皆魔物なのだと。あの懐かしき大戦で、エルダーデー モン種族を滅ぼした魔物こそが、人類の祖であるのだと。ふむ、つまるところ、誰も彼もが もとは一緒なのだよ。所詮は細胞生物だ。大して違いがあるものかね。                            ――とある魔物生態学者の言葉         1 「……あれ、誰だ?」 「さぁ、俺が知るかよ」 「鎧着てるってこたぁ騎士崩れか。姫さんにでも手ぇ出したのかな」 「駄目騎士じゃないですかそれ」 「駄目でなきゃ、将来が安泰された騎士が傭兵なんざになるかよ」 「元・貴族か? どうせ没落だろうけどよ」 「騎士同士の戦いなんざ滅多に見れるもんじゃなかんべな」  ……勝手なこと言われてるなあ、とカイルは思う。  だが、そのことを言うわけにはいかない。半分ほどは正解に近いし、こういう噂話を否定 しまわるのは、それだけでデメリットがあるのだ。黙して喋らず。あるいは軽く山のように 喋る。そのどちらかが、最善の手だ。  それもまた、後での話だ。今はそんなことを考えている余裕はない。周りを取り囲むギャ ラリー――賢龍団の傭兵たちは騒ぎ続ける。この、愉快な見世物を目にして。  そう、見世物だ。  これが見世物であることを、カイルは自覚していた。これから仲間になる相手を見定める、 重要な見世物。入団試験というよりは、お披露目に近い。  生死をともにする相手の力量を見てみたいというのは当然のことだ。そして、それ以上に ――団長自らが連れてきた奇妙な傭兵に、皆興味があったのだ。  見世物。  だからといって、手を抜けるはずがない。  目の前に立つ相手は、本気で――殺すつもりで剣を抜いているのだから。  カイルもまた剣を抜く。黒いオリハルコン製のイグニファイではない。遥かな昔、聖騎士 であった時代に使っていた、古い白のロングソードだ。  右手で強く握り、左手を添える。  一本を剣を正面に構え、剣の先を相手に向ける。  ――どうして。  剣を向かい合わせながら、カイルは思う。  ――どうして、僕はこんなことをしているんだろう?  その疑問に対する答えを、カイルは厭というほどに知っている。  剣と、相手ごしに、黄金色の少女が見える。黄金色の髪と、買ってあげた服を大切に着た 少女が。黄金の大剣を背負ったロリ=ペドが。  相手はなかなか掛かってこない。カイルは待ち、待ちながら回想する。  ここに来ることになった原因を。         2  その男は、宣言していた通り、三日目の朝日とともにやってきた。 「久しぶりだ。急に訪ねてすまないな」  言いながら、男は笑う。カイルは「はあ」と答えて、頬を掻いた。  朝早くの宿屋はすいている。夜通しで酒屋で騒いでいた者たちが、この時間には寝ている からだ。騎士としての生活が未だに根付いているカイルは、いつものように早起きし、いつ ものようにトレーニングをしていた。といっても、鎧を脱いでの体操だが。  短い間なら鎧を脱げる。その短い間での柔軟は、戦う上では大切なものだった。特に、カ イルのような速度で戦う騎士にとって、間接の硬さは致命的だ。ちなみに前日、ロリ=ペド が百八十度開脚をなんなくやるのを見てショックを受けているので、いつもよりも念入りに 柔軟をやっていた。  ――あれだけ体が曲がるなら、あんなこともできるよな。  手足で剣を操り、くるくる回るように戦っていたロリ=ペドの姿を思い出す。今にして思 えば、あれはとんでもない芸当だった。  勝った実感なんて、少しも残っていない。ともすれば、夢のようにすら思えた。  夢ならもっと良かったのに。そう思い、カイルはため息をつき、ちょうどその瞬間に男は やってきたのだった。 「元気だったか――とは聞く必要がなさそうだな」  そう言って、男はほがらかに笑った。  朝の食堂には、人が少ない。  だからこそ余計に、二人は目立っていた。流麗なデザインの漆黒鎧に身を包むカイルと、 それとは対照的に、ツギハギだらけで雑然とした鎧を身に纏った男――長い腕のディーン (ディーン・ザ・ロングアーム)が向かい合っているところは。  食堂のおばちゃんの視線を感じながら、 「あ、はあ……どうも。お久しぶりです」  笑ってカイルはいう。若干ひきつった笑いだったが、それをディーンは敏感に察し、 「どうしたか? 迷惑だったかな。一応そのために手紙も出しておいたが」 「いや、そういうわけじゃないんですけど……」  気遣うようなディーンの言葉に、カイルはどにも戸惑ってしまう。  ごく親しい相手から言われたら、笑い飛ばしただろう。  嫌いな相手から言われたら、睨み返しただろう。  が、目の前に座る傭兵は、仲がよくも悪くも無いのだ。そして、愉快でも不愉快でもない。 性格面で印象のない、当たり障りの無い相手だ、という印象が強かった。  基本的には、いい人なのだ。  傭兵団の団長としても、戦士としても優秀で、最近は生存率の高さで有名な賢龍団をひき いている。傭兵を必要とする組織からは信用され、信頼されているはずだ。  とはいえ、数回しかあったことのない相手に対して、どういう態度をとればいいのかカイ ルにはわからない。 「迷惑じゃないです、別に。一応、僕も暇な傭兵ですし」 「また嘯くなよ、噂だけど、活躍ぶりは聞いてるぞ。南で色々やったみたいじゃないか」  ディーンは爽やかに笑う。その笑顔には、一傭兵団の長としての余裕がにじみでていた。  そんな相手が、自分に何の用があるのか、まったくわからない。  深い付き合いがあったわけではない。まだ聖騎士だったころ、当時彼の上司だった『あの 男』が率いる巨大傭兵団の一部を指揮したというだけだ。当時中隊長だったディーンはカイ ルの補佐官で、的確に指示を手伝ってくれたのを覚えている。  もっとも実戦にあたることはなかった。戦は政治的決着を向かえ、まともに出撃すること はまったくなかったからだ。  だからこそ、余計に何の用かわからない。昔話を膨らませるほどに、共通の思い出がない。  そして、それ以前の問題として―― 「いえ、その……よく分かりましたね。僕の居場所が」  カイルの言うとおり、定住地をもたない冒険者の居場所を見つけるのは果てしなく難しい。  特に――すでに殉職した聖騎士である人間を見つけることなど、並大抵のことではなかっ たはずだ。  が、それを些事だとでも言いたげに、、 「そりゃ伊達に『長い腕』の二つ名は貰ってないさ。お前が生きてるって聞いたときには驚 いたが――この時勢、誤報や謀殺はよくあることだからな」  そう言って、釈然としないカイルの前で、ディーンは笑った。  長い腕、の意味を考える暇もなく、 「いきなり本題で悪いんだが――カイル=F=セイラム。うちの傭兵団に来ないか?」  外で鳥が鳴いた。ひょっとするとそれは鳥ではなく、鳥形の魔物だったのかもしれない。  空に城壁はないのだから。  本当に唐突な、いきなりの本題にカイルは思わず、 「――はい?」  と問い返してしまう。ディーンは構わず、 「俺が率いている傭兵団があるんだけどな、」 「知ってます。賢龍団ですよね」 「知ってるのか?」  ディーンの驚いたような顔。カイルは「ええ」と頷き、 「僕も傭兵ですし、噂くらいは。……最近傭兵っぽいことあんまりしてませんけど」 「そうだな――なら話は早い。その賢龍団に来てほしい」 「……僕はただの傭兵ですよ?」 「だから、傭兵として、だ。人手不足でな、実力があるやつが欲しいんだ」  困ったようにディーンは言う。  その言葉について、カイルは心の中でこっそりと考える。  ――傭兵団に来て欲しい。  その言葉は、さして不自然のないことだ。傭兵は死亡と逃走の割合が高い。常に人員を求 めているのは当然のことだ。  それでも、腑に落ちないことがいくつかった。  一つ。自分が元聖騎士であること。それがある種の手札になることをカイルは自覚してい る。たとえ公的に死んでいたとしても――その影響力は、少なからずある。  そして、もう一つ。 「……人手不足なんですか?」 「ああ、そうだ」  ディーンは頷く。  疑惑が強まり、カイルは問う。 「賢龍団は死亡者の少ない傭兵団だと聞いていますが」  ぴくり、と。  眉がわずかに動いたのを、カイルは見逃さなかった。  ディーンは「そうだ」と頷き、カイルは言葉を続ける。 「欠員補充ではありえない――あったとしても、そういう傭兵団には、入団希望者が少なか らずいるはずです。なのに、貴方はわざわざ僕を探して、しかも直接会いにまできた。―― 人手が足りなくて、実力者が必要だって言いましたよね」  ディーンは無言で頷く。  カイルは、確信をもって、核心をつく言葉を吐く。 「傭兵団を強化して――何をするつもりですか?」  その言葉に、ディーンは。  にやり、と軽い笑みを浮かべた。  予想外の反応にカイルは肩透かしを食らう。親しみやすい笑みを浮かべてディーンは言う、 「九割正解だ、カイル=F=セイラム。相変わらず頭は腐ってはいないみたいだな」 「……九割?」 「そう。お前の言っていることは正しい。俺は賢龍団を今、少しばかり強化している。…… ただ、それは何かをするためではない。何かが起こりそうだから、対策を練っているだけだ」 「何が起こりそうなんですか?」  その言葉に、ディーンの笑みが消える。  机の上で手を組み、顎を乗せ、あくまでも真顔でディーンは言った。 「賢龍団は今、ウォンペリエにいる」  今度は、カイルの眉が動いた。  その仕草を見て、ディーンは満足げに頷き、 「お前の知っている通り、あの学術都市は、王国連盟に保護された不干渉都市だ。東国も― ―そして、お前のよく知るあの国も、手出しはできない」  カイルは答えない。  お前のよく知る国。その言葉が、カイルの頭の中でぐるぐると回る。トゥーリューズから 東。学術都市ウォンペリエ。さらに東に行けば東国がある。  そして西、トゥーリューズと東国に挟まれるようにして。  あの国が存在する。 「そこできな臭い噂を聞いた――東国と皇国が、秘密裏に南で諍いを起こしたって話だ」  反応を待つかのように、ディーンは言葉を切る。  もちろん、カイルは知っていた。知っているもなにも、その諍いに、カイルは自ら首を突 っ込んだのだから。そして、今ごろ上の宿で寝ている相手は、そこで戦った相手なのだから。  わずかな間ディーンは待ち、カイルが何も喋らないと見ると、続きを話し出した。 「王国連盟はパニックだ。連盟規約があるから、東国を守らないといけない――とはいえ、 相手はあの皇国だ。連盟の中でも意見が分かれてる。開戦派、保守派、同盟派、交渉派、妥 協派、撲滅派。酷いのになると東国を生贄に、ということだ」  カイルは答えない。  ディーンも待たない。 「あの国もそうだ。貴族と騎士と姫が三権分立やってるあの奇妙な国は、内部で大激論が起 こってる。どのみち皇国がトゥーリューズ越えを強行すれば――そうとまではいかなくても、 南を大きく迂回しない限り、厭でもあの国が戦場になるからな」  カイルは、答えない。  ディーンもまた、答えを待たない。 「したがってあの辺りを活動地域にする俺たちは、今、危ないところにいるわけだ。あの国 の内乱どころか、連盟の政争の道具になる可能性もあるからな。  自分のために死ぬのはいい。――偉い奴のために殺されるのは、俺はごめんだ」  そう言って、ディーンは言葉を結んだ。  それ以上は何も言わず、真顔で、カイルを見つめる。  カイルは――震える唇で。  それでもどうにか、その国の名を、呟いた。 「――ファーライト王国――」  自らが所属していた国の名前を、カイルは呟く。  ディーンは頷き、 「その通りだ。カイル=ファーライト=セイラム」  その言葉に、カイルの頭がぐらりと揺れる。  ――捨てたつもりは、一切なかった。  たとえ地位を剥奪され、殺されたことになっても、自分の剣を捧げる相手をカイルは忘れ てはいなかった。あの国での生活を覚えていた。仲間の聖騎士たちを覚えていた。  そこが、今、戦争の危機にある。あるいは――戦争よりも、さらに酷い事態がある。  戦争、内乱。  人が、死ぬ。  そして――最悪の場合――故国の姫君が、死ぬ可能性すら、あるのだ  座ったままよろめき、頭を支えるカイルに、ディーンは畳み掛けるように言う。 「下手をすれば……ん、そうだな。ファーライト王家を含む五つの領主勢力の乱戦か。戦争 というよりは政争のおもむきだが、ああしかし、その後には皇国との戦争が、」  さらりと言うディーンの言葉を、カイルは、手で制した。  ぐらりと視界は揺れたままで、吐き気がした。  大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。  厭な気分は残っていたもの――それで大分、落ち着いた。 「下手をしたら、の話だ。そうならないように動いている奴もいる」  そうディーンは続けたが、カイルはもはや聞いてはいなかった。  大国は、内乱に弱い。  皇国最大の敵が皇国自身であるように――ファーライトもまた、内乱が起きれば壮絶に荒 れるだろう。ただでさえ、トゥーリューズが近いこともあり、魔物とのやりとりがあるのだ から。 「俺たち賢龍団が留まっているのもそのせいだし、お前を傭兵団に誘おうと決めたのも、そ ういう理由があるからだ。……ま、事情を知っている奴はまだ殆どいないだろうがな。  だが、いずれ知れ渡る。そうなれば――荒れるぞ」  言っている内容と言っている現状が矛盾している。なぜ貴方はそれを知っているのか。そ う突っ込む気力さえない。  天井を仰いで、おかれたまま一口も飲んでいなかった蜜酒を呷る。口からは、情けないう めき声が漏れていた気がする。  ――嗚呼、味がしない。 「さて、どうする?」  ディーンの声。  カイルは蜜酒を机に置き、ディーンを真正面から見据える。  どうするも、こうするも。  答えは一つしかなかった。  ――いつものように、厄介ごとの中へと飛び込んでいく。 「決まっているじゃないですか」  言いながら、カイルは立ち上がる。  その一瞬。  ほんの一瞬だけ、とある壮年の男性の顔が浮かんだ。厄介ごとの大半をともにした、魔物 生態学者の顔。  すぐに消す。これは彼には関係のないことだ。  自分のための戦いなのだから。 「戻りますよ。ファーライト王都へ」  その言葉に答えるように、とん、とん、と。  二階から足音が降りてきた。  あ――とカイルは心の中でため息をつく。この子のことを忘れていた。そして、来るなと 厳命しておくべきだった。聞くかどうかはともかくとして。  恐らくは、カイルが動き出した気配を感じて降りて来たのだろう。  きちんと着替えたロリ=ペドが、食堂へと降りてきた。  そして、丁寧に両手を前にそろえ、深々と頭を下げ、 「おはようございます、カイル様」 「……おはよう」  ものすごく厭そうなカイルの声。  返事が帰ってくるのを待ってロリ=ペドは顔をあげ、 「こちらの方は……?」 「あー……えっと、」  なんていおうかカイルが悩んだ瞬間、ディーンは自然な動作で立ち上がり、ロリ=ペドに 手を突き出して、 「初めましてお嬢さん。傭兵団長を務める、長腕のディーンです。ディーンとおよびくださ い」  ロリ=ペドは、不思議そうな顔をして突き出された手を見て、それからカイルを見て、首 をかしげた。  握手しないのを知るやいなやディーンは手をひき、ロリ=ペドと同じようにカイルを見て、 「妻か?」  なんて、とんでもないことをさらりと口走った。 「違いますよ!?」  慌てて弁解するカイルを見てディーンは笑い、 「なんだ、丁稚か。そっちの気があるのかと思ってたら――おまえもノーマルだったんだな」 「そっちの気って……人を何だと思ってたんですか!?」 「いや何、騎士に多いと聞いたからな。いやしかし、可愛い子じゃないか。幸せものだな」 「……多分、想像しているのとは全然違うと思いますよ、ええ」  ディーンは眉根を寄せ、 「女中……って感じでもないな。それともまさか、新しい姫さまか?」 「――まさか」  全霊をもって、カイルは否定した。  そして、話はこれで終わりだとばかりに踵を返し、 「どこへ行くつもりだ?」  その背中に、ディーンの声がかかる。  カイルは脚を止め、振り帰らずに、 「だから、ファーライトへ王宮へ?」 「――どうやって?」  その言葉に。  カイルは、くるりと振り向いた。ディーンはいつの間にか座っていて、真顔でカイルを見 ている。  カイルは思い出す。ファーライト王宮が、どんなところかを。  否――ファーライト王国が、どんなところかを。 「厳重な警備と、強力な騎士団と、聖騎士に守られた王宮に――死んだはずの聖騎士が、ど うやっていくつもりだ?」 「それは――」  昔なじみなんだから、そういおうとした。  それを知っていたかのように、ディーンは先回りしていう。 「反騎士派の貴族が多いことはお前も知っているだろう。真正面から行っても、偽者だと言 われて首を撥ねられるぞ。聖騎士の「騙り」は死罪だからな」 「…………」  何も言えないカイルに対し、ディーンはため息とともに、 「慌てるな。考えはある――とりあえず座れ」  その言葉に、カイルは悩んで。  悩んだ末に、自分ひとりではどうしようもないことに気づき、少しでも可能性はあるなら と思って、席についた。  ディーンは満足げに頷き、 「だからこそ、俺はお前を誘いにきたんだ」 「……どういうことです?」 「賢龍団は魔物退治やらもしてるからな、国に覚えがいい。ある程度活躍すれば、王家へと お目通しすら可能になる。ファーライトに雇われれば、間接的に手助けができるし――会う 機会も増える」 「だから――僕を誘いに?」 「勿論、俺としての思惑もあるがな」  カイルの隣にロリ=ペドが立つ。隣に控えるかのように立ったまま、座ろうとしない。  まるで子犬に寄り添われているような気分になり、「……座っていいよ?」とカイルは言 う。  言葉に答えて、ロリ=ペドが、カイルのすぐ隣にちょこんと座った。背が小さいせいで、 脚が床まで届いていない。  行儀よく座るロリ=ペドをちらりと見て、ディーンは続ける。 「ファーライト王宮は魔の領域だからな。下手に踏み込むよりはそっちの方がいい」 「……魔?」 「そうだ。実際そこにいたお前は分かりづらいだろうが、あの王国は他と決定的に違うこと がある」 「違いですか? 僕はそう感じませんでしたけど、何が……?」 「聖騎士さ」  そう言って、ディーンは指差した。  カイル=F=セイラムという聖騎士を。 「聖騎士が多い。そして――さらに、破門になる騎士が多い。カイル、ダリス。ソィルなん てやつもいたな。ジャガ=W=ダガは皇国お抱えになった。……他にもまだいるかもしれな い。ひょっとすると、俺の知らないだけで、多くの騎士たちが破門になっているのかもしれ ない」  ディーンの言った名前と同時に、その顔をカイルは思い出す。  ダリス。ソィル。ジャガ。誰もが、あのファーラントでともに過ごし――今では、国を追 い出された騎士たちだ。  懐かしい、と思う反面、少しだけ怖くなった。  長腕のディーンの、情報能力に。  追い出された騎士は、基本的に、抹消される。人の口に門は立てられないとはいえ、調べ にくいはずなのだ。それを、行き先まで調べるのは、並大抵のことではない。  彼の腕がどこまで『長い』のか、少しだけ気になった。  ディーンはあくまでも真顔で、カイルを見つめたまま、 「ファーライトは騎士の入れ替えが激しすぎる……普通、騎士っていうものは、後生大事に 抱えておくものだ。それが無理なら、他の手にわたすくらいなら無辜の罪で斬首――っての も珍しくない」 「…………」 「俺はこうも考えてるんだ……あの姫様は、自分の駒を世界中に散らばらせてるんじゃない かと。U3なんざ、両手両足を義肢にしてまで、あの姫君に仕えてる。誰もが、あの姫に心 を捧げている。……有事の際には、集まりかねないほどに」  そこまで言って。  話は終わりだ、とばかりにディーンは立ち上がった。 「というわけで、色々起こりそうだから――まあ、頑張れ。今日の夜には出発するぞ」  それだけ言って、ディーンは宿屋の外へと出た。返事を聞こうともしない。  返事を聞くまでも無く、分かっていたのだろう。  カイルが何を選ぶのかということを。  カイルは何も言わず、その後ろ姿が扉の向こうに消えても、ずっと扉を見ていた。  その横顔を見上げて、ロリ=ペドが言う。 「朝ごはん、食べますか?」         3  魔物たちの聖域トゥーリューズ。そこから東へ進み、ファーラントを横切り、さらに東へ と行けばウォンペリエという都市がある。  この都市には大きな大学があり、その校舎は大聖堂よりは市庁舎よりも大きい。その大学 と、大学院を目指して学者の卵が集まり、また学者崩れや研究者が資料を求めて都市に住む。  その都市のはずれ、すこし山に近い見通しのいい盆地に、龍の旗がたっている。青味がか かった緑を下地にし、銀色で飾り取られた旗。とある賢龍を模った旗がたつのは、傭兵団の 野営地だ。  賢龍団が、そこにいる。  人数は百人前後。中規模の傭兵団としてはちょうど良いくらいだ。これ以上増えれば中規 模連隊になるし、少なければ手が足りなくなる。十人一組のグループを作らせ、各隊に隊長 をおくことで賢龍団は動いている。  つまり、責任者兼、実力者が十名。十名は野営の火をたき、その野営の本部テント脇、仮 説させた作戦本部に集まっている。他の九十名近くは、夕暮れも近い今の時間は自由に過ご している。酒を呑み、生を高らかにうたっている。  その十名だけが違う。簡素な造りの木椅子に座り、真剣極まりない顔をしている。  十名の実力者による、張り詰めた空気の輪。その中には、レイエルン=アテルや、マルタ =ロルカ、クライブ=ハーシェッドの姿もあった。  それに加えて、今は、団長であるディーンと、その団長自らが連れてきたカイルがその輪 に加わっていた。  唯一の顔見知りであるクライブは、今はカイルのことを知らないふりをしている。  なぜならば―― 「団長。この男が、あんたのいう死人かい?」  険しい声でレイエルンが言う。その瞳は、しっかりとカイルを睨んでいた。他の面子も、 同じようにカイルを睨んだり、疑いの目つきで見ている。  針のむしろに耐えられず、カイルの頬を汗がつたった。目線が厳しすぎて、汗を拭うこと すらできない。  ――なぜならば、今、この場で槍弾にあげられているのは、そのカイルなのだから。 「そうだ」  ディーンは頷く。  レイエルンは厭そうな顔をして、 「で、いきなり一隊を任せるのかい?」 「そうだ。カイルには、遊撃隊長をやってもらうことになる」  自信満々に吐かれたディーンの言葉を聞いて、レイエルンは頭を抱え、全員の思いを代弁 するかのように言った。 「どこのどいつとも知れない、新入りのそいつが、いきなり、隊長?」  ディーンはもはや答えない。もう俺は答えたぞ、と無言で表現する。  いきなり、 「正気かい旦那!?」  どん、とレイエルンが盾で机を叩いた。頑丈なはずの机がぐらりと揺れる。  ディーンは眉一つ動かさない。レイエルンは怒ったまま、 「たしかに傭兵団は実力順さ――それでも決まりってもんがあるだろう! いきなりきたこ いつに、命預ける奴がどこにいる!」  そうだそうだ、と言いたげに他の面子も頷き、口々に言う。カイルは机の中心を見つめた まま何も言わず、ディーンもまた、腕を組んだまま何も言わない。  幹部たちがひとしきり言い終わるのを聞いてから、ゆっくりと、ディーンは言った。 「つまり、俺の決定が気に食わないわけだ」  低く、力ある言葉。  その声にうっ、と数名がひく。それでも退かなかったレイエルンが、 「そうさ。正直気に食わない。旦那の紹介じゃなかったら、殴り飛ばしてるところさ」  ちらり、とカイルを見てそう言った。  正直な言葉に、ディーンは頷き、 「もちろん――」ここで言葉を切り、全員の顔を見回して、「俺は俺で考えがあって、カイ ルを連れてきた。それを気に食わないというのは君たちの自由だ」 「どうするんですか」  ぽつりと、吐き出すようにマルタが呟く。まったくやる気のない短い疑問。無口な彼女が 喋ったことにクライブは驚く。早く終わらせたい――マルタはそんな顔つきだった。 「貴族は家柄で決める。騎士は名誉で決める。王は血筋で決める。だが、傭兵にそんなもの は関係ない。必要はものはひとつだ、そうだろう?」  分かりやすいディーンの言葉に、レイエルンが嬉しそうに笑った。  獲物を狩る獣の笑みを浮かべ、腕についた中型の盾をカイルへと向け、 「単純な話さ――強さがすべて。そういうことだろ旦那」  ディーンは無言で頷く。レイエルンは唇を舌で舐め、ゆっくりと立ち上がる。  が、その動きを、 「いや、レイエルン・アテル。やるのは君ではない」 「あ? 旦那、そいつはどういうことさ。まさか旦那本人がやるんじゃないだろうね」 「まさか。……誰よりも戦いたがってるがいるだけさ」  その言葉に答えるように。  ゆらり――と。  まるで陽炎のように、一人の傭兵がテントの影から姿を現す。  元聖騎士の、現傭兵が。実力はあるものの、性格の問題から隊長になれない男が。最近、 カイルと同じようにディーンが連れてきた男が。  ディーンは横に座るカイルを見て、 「――ダリス=グラディウス。この男と、君は戦ってもらう」  ダリスが、姿を現した。  身体を各部を覆う銀の鎧に紋様。その下にゆったりとしたローブを着ている。  手にもつのは、その名の通りの武器――両刃の長剣、グラディウスだ。  その剣を杖のようにもち、カイルの傍に立つ。  カイルは彼を見つめる。彼の顔を、そして鎧を。  見覚えのある姿を。 「今からでも大丈夫か?」  ディーンの言葉に、カイルは「はい」と答え、  立ち上がった。  手を剣に添える。いつでもやれるように。  ――そうしなければこの傭兵団に入ることはできないことを、カイルはあらかじめディー ンから聞いていた。  だから、戦うことに躊躇はなかった。  ただ――相手が、この男だとは聞かされていなかった。  その動揺を押し殺して、カイルは立つ。揶揄するように、レイエルンが口笛を吹いた。  合図もなく、二人は歩く。野営地の中心、開けたところへと。机を離れる瞬間、クライブ がカイルだけ聞こえる声で「頑張れよ」と言った。  その言葉に、カイルは笑い、 「――久しぶりです、先輩」  同じくらいの小声で、隣を歩くダリスが言った。 「……まさか、君がいるとは思わなかった」  ダリスにだけ聞こえる声で、歩きながらカイルが答える。 「俺のこと、覚えていてくれたんですか」 「僕は、あの頃のことを何も忘れていないよ」 「それでも嬉しいです――俺、ただの王宮剣士で。聖騎士の先輩に覚えてただけで」 「僕はもう、聖騎士でも先輩でもないけどね」 「それでも、俺にとっては、カイル先輩は先輩です。  それに――俺も、今では王宮剣士じゃないですから」  言って。  隣を歩いていた二人が、離れた。  距離を取って向かい合う。 『見物』の雰囲気を感じ取って、傭兵団がたちまち集まる。手に酒ビンを持ったまま、楽し そうに笑いながら輪を作る。輪の外には、隊長格たちが、そろって二人を見ている。  そして、その後ろ。  テントの中で寝ていたはずのロリ=ペドが、クライブの隣に立つのを、カイルははっきり と見た。  輪は、戦場だった。  その中で、カイルは、ダリスと向かい合う。  二人が持つのは、真剣だ。訓練用の木刀ではない。  剣を抜き、戦う以上は――命をかける必要がある。たとえ模擬試合だとしても。  古くから使っている、名もないロングソードを抜いて、カイルは構えた。 「手加減はしないでくださいね。俺も本気でいきます」  カイルは、答える代わりに、唱えた。  いつものように。  戦いを前に、剣を構えて、はっきりと言う。 「我が名はカイル=F=セイラム。『心は故国の姫の元に。剣は己の信念の元に』」  その言葉を聞いて。  ダリスは嬉しそうに笑い、同じように剣を構えて、 「我が名はダリス=グラディウス。『心は故国の姫の下に。剣は己の信念の元に』」   そして、二人は。  完全に声を揃えて叫び―― 「「――仕る!」」  ――同時に、駆けた。  グラディウスとロングソードが衝突し、その瞬間に歓声が弾ける。輪を作る傭兵たちが叫 びながら二人を罵倒し、応援し、裏では掛け金が手渡され、地面にオッズが書かれる。  その様を、長腕のディーンは、満足げに見ている。  その様を、ロリ=ペドは、不思議そうに見ている。 「単剣――飛矢ッ!」  右半身を前に、身体を傾けてカイルが飛び込む。矢のように突き出されたそれを、ダリス は剣の腹で受け流そうとし、 「――甘い!」  勢いを殺さず、剣と剣が触れ合ったところを支点にしてカイルの手首が回転し、柄先をダ リスの喉元に叩き込む。ダリスはそれを避けず、喉当てで受け止めて、衝撃を殺しきれずに 後ろに下がり、カイルの左手が剣に添えられ、跳ね上がるようにロングソードが伸び、 「ダリス流『巻風』!」  ダリスが半身を振り回しながら、肩からカイルに飛び込む。肩当が鎧にぶつかり、 「単剣――巻風!」  触れた瞬間、カイルの身体もまた回転した。ダリスの勢いを受け流し、くるりと一回転す る。無防備な背中めがけてカイルの剣が迫り、 「――逆風の太刀!」  倒れこみながら、ダリスが回転した。  下から切り上げるダリスの剣と。  上から切り下ろすカイルの剣と。  二つの剣がぶつかりあい、鈍い音をたて、反発して弾かれた。  カイルの身体はもう一回転し、ダリスは地面すれすれを統べるようにして距離を取った。 輪のぎりぎり端で二人は止まる。 「やっぱり、強いです」  ダリスは笑い、 「――君こそ、だよ」  カイルも、笑った。  二人が笑った瞬間、歓声が爆発した。目を奪われるような一瞬の攻防。下手をすれば死ぬ というのに、二人は笑っている。そのあり方に傭兵たちが騒ぐ。  騒いでいないのは、輪から外れた隊長たちだけだ。 「……どうおもう、あれ?」  レイエルンが、隣に立つマルタに話しかける。マルタは顔もあげず、答えることもしない。 肩をすくめ、レイエルンはディーンへと向き直り、 「確かに強いけどさ。わざわざ旦那が行くほどじゃ、」 「いや」ディーンが遮る。その顔は、確かに笑っている。「もうそろそろだ」  ――何が?  そう、レイエルンが問おうとした瞬間、再び、歓声の爆発が起こった。  レイエルンは視線を二人へと戻し、  ――そこに、異様なものを見た。  カイル=F=セイラムは、油断などまったくしていなかった。  向き合ったダリスが笑い、再び駆け出そうとして、その瞬間に声を聞いたのだ。  ダリスでも自分のものでもない、他の誰かの声を。  低く笑うその声は、人のものとは思えない声色で、こう言ったのだ。 『無様だな――オレにやらせろよ』  その声が聞こえた瞬間。  ――ダリスの姿が消えた。 「――! た、」  技を出そうとしていた右手が止まる。右手はすでに動きつつある。今更止めることはでき ない。  だから、左手を動かした。  未だ抜いていないイグニファイを掴み、引き抜き。 「ギィァァァァアッ!」  引き抜いたそこに、雄叫びとともに衝撃がきた。  そう――まさしく、雄叫びだった。獣があげるそれを、はっきりとカイルは聞いた。  衝撃によろけながらカイルは振り向く。  そこたっているのは、ダリス=グラディウスだ。  ――股をくぐられたのだとは分かっていた。  ただ、それ以上のことが分からなかった。   なぜ、さっきまでとまったく太刀筋が違うのか。  そして――  なぜ、彼の左顔面に、緑色の痣が浮かび上がっているのか。  なぜ、彼の左眼が、魔物のように赤く光っているのか。  唐突な変化にカイルは迷わない。迷えば、死ぬ。それだけははっきりしていた。  合図の言葉はなかった。獣のような形相で、涎をたらしながらダリスが跳びかかってくる。 落ちた涎が地面に辿り着くよりも早くダリスの剣が迫る。  グラディウスが、すぐ目前にあった。  その速さは、先ほどまでの比ではない。  一線を潜り抜けた達人、ではない。  一線の上で行き続ける修羅のような速度。 「双剣――交差ッ!」  気づけば。  何の手加減もなく、全力で、殺す気でカイルは切りかかっていた。ロングソードでグラデ ィウスを払い、交差するようにイグニファイを振う。  ――殺した。  そう思った。  そう思った瞬間に――ダリスが消えた。  獣にしか見えなかった。切りかかったその動きを無理矢理放棄して、しゃがんだのだ。先 と同じように股をくぐり、今度は脚に切りかかろうとしている。  思考よりも早く、身体が動いた。 「う――おおおお!」  雄叫びとともに、カイルは右足を前へと蹴り出す。緑色のアザ、そこを目掛けて靴の裏で 蹴りを入れる。  ダリスの身体が後ろにかしぎ、  ――ダリスとはまったく無関係だと主張するかのように、剣だけが跳ね上がった。  呼び動作のない一撃。剣で受けるには遅すぎる――そう思った瞬間、 「無剣――」  技名は、出てこなかった。  それもそうだ。その攻撃をした瞬間、カイルの頭にあったのはロリ=ペドがやっていた百 八十度開脚の姿だったのだから。  蹴った足をそのまま上段へと跳ね上げ、剣を握る拳を打つ。  強制的に手が開き、グラディウスが手から離れ、  ――観客へと飛んでいく。  しまった、と思うときにはもう何もできなかった。  回転することなく、剣先を向けたまま剣は跳び、 「……勝ったのですか」  一歩、前に進んで。  平然と、その柄を、空中でロリ=ペドが握り締めた。 「カイル様は、負けないのでしょうか」  まるでその言葉がきっかけだったかのように、輪に一瞬の沈黙が満ちる。  そして――一瞬後には。  ――勝負の決着に、全員が歓声をあげた。         4  その日、賢龍団に、新たな隊が作られた。  隊の名は、第十一分隊――特殊遊撃部隊、カイル隊。  隊長一名。  カイル=F=セイラム。  隊員二名。  ダリス=グラディウス。  ロリ=ペド。 ■ 第二話 Black Gale AND The longarm.....END ■