◆登場人物◆ コンスタンタン・デュシェーヌ【監督】 九絵蓮根(ここのえ はすね)【5番ピッチャー】 滝田孫六(たきた まごろく)【4番キャッチャー】 海月メロス(うみつき めろす)【6番ファースト】 霧々麻衣(きりきり まい)【3番セカンド】 一本槍魁子(いっぽんやり かいこ)【2番サード】 時櫛桂(ときぐし かつら)【8番ショート】 潮風たなご(しおかぜ たなご)【9番レフト】 茶倉緑(ちゃくら みどり)【7番センター】 九逆六(くさか りく)【1番ライト】 水砦蓮乃丞(みずとりで はすのじょう)【補欠】 忍術学園の皆さん【対戦相手】 「食らえ!魔球牛殺し!!」  ドカッ  滅茶苦茶なフォームで投げられた球はバッターの頭部に命中しバッターの意識を刈り取った。  兵衛守墓雨流初心者とはいえ蓮根の馬鹿力で投げられた球は速さと重さを兼ね備えていたがコントロールが最悪のクソボールだった。  脳震盪と診断されたバッターは担架で運ばれ一塁には代走が置かれた。 「クソ、手が滑ったわ、今度こそ!オリャア!」  蓮根渾身の2球目はまっすぐなストレートだった。 「フッ、所詮は素人、打ち頃の球でゴザルな!」  しかし球は意思を持っているかの如く不自然な変化をしてバットを避けるとバッターの脇腹を深く抉った。 「ぐおぉぉぉ!ばっ馬鹿な、変化球だと・・・!?」 「へっ、ざまあみやがれ。その様子じゃアバラにヒビくれぇ入ってるな」  馬鹿にした口調の孫六の声はうずくまるバッターには届いていないだろう。アバラにヒビが入ればまともに動けなくなりいちいち周囲の様子に反応する余裕がなくなるからだ。  先ほどと同じく再び担架が登場し、塁にはさらに代走が置かれる。  これでノーアウト一二塁、地味にピンチな状況だがそんな事では蓮根は挫けない。 「ノーアウト一二塁・・・この状況はまさしく逆境!うおぉぉぉ燃えるわ!!」  逆境に燃えた結果この回言霊学園は10点の失点を許し忍術学園は5人の選手が担架で運ばれた。  2回表、再び言霊学園の攻撃、バッターは蓮根。 「ピッチングでのミスはバッティングで取り返すまで!バッチコーイ!」  蓮根は何故かノーヘルで裸足だったがルール上問題はないので試合は普通に進められる。 「おのれハチマキ女め・・・仲間の仇を取らせてもらうでゴザル!喰らえ!忍術学園奥義斗流練威怒(トルネード)!!」  斗流練威怒は独特の握りで投げる事により竜巻の様な回転が加えられ、その驚異的な回転力によりバットで捕らえてもバットを砕き強引にストライクを取ってしまう恐るべき魔球である。  だがピッチャーは最初からストライクなど取るつもりはなかった。狙いは蓮根の顔面だ。 「うおぉぉぉぉぉぉぉチェストォ!!!」  バキッ  何かが折れる音と共に球は空高くに舞い上がる。  ピッチャーの殺気を感じ取った蓮根が咄嗟の大根切りで上から思い切り球を叩きそのままワンバウンドして空高くに舞い上がったのだ。 「ばっ馬鹿な!?拙者の斗流練威怒をよりにもよって素人が打つなどそんな事はっ!」 「でかしたレンコン!走れ走れ!」 「押忍!うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」  驚愕するピッチャー、沸くベンチ、走る蓮根。  グシャ 「チェストォー!」  ザザァー 「見たかー!これが九絵蓮根のヒットよ!!」  遅れてやっと打球が地面に落ちる。滞空時間はゆうに5秒を超えていた。  だが蓮根の猛攻はそれだけではなかった。 「乱丸!しっかりするでゴザルよ!」 「くっ・・・なんのこれしき」  斗流練威怒によって折れた蓮根のバットがピッチャーに当たっていたのだ。これぞ正しく因果応報。  忍術学園はピッチャーを変更しないでそのまま続投するようだが脂汗がうっすらと滲んだ顔を見る限りダメージはあまり浅くないようだ。 「じゃ、行ってくるわね」  続いてメロスが打席に立つ。  女とはいえ180cmのメロスがバットを持つ姿は異様な威圧感がある。 「大女め・・・喰らえ!」  投球はまたしても顔面を狙ったビーンボールだったがバットが当たったダメージの為明らかに球威が落ちていた。 「ふぅ、私もなめられたものね。そぉれっ!」  メロスのバットはビーンボールを捕らえ二三塁間を抜くヒットを放つ。  通常であれば二塁打くらいの当たりだったがさすがに忍術学園の守備は硬く一塁進むだけに終わった。  ノーアウト一二塁、次なるバッター緑はビーンボールを圧倒的機動力で避けまくりフォアボールで出塁を果たす。  これでノーアウト満塁になったが追い詰められているのは言霊学園の方だった。  今の所は問題なく進んでいるが女子が圧倒的に多い言霊学園チームはビーンボールを避けられそうにない者だっているのだ。  例えば次のバッターの桂とか。 「よし、あたしも頑張ってヒットを打つわよー!」 「いや、てゆーか桂大丈夫なの?緑はヒョイヒョイ避けてたけどあんたにそんな器用な真似できそうに思えないんだけど」 「あはは、ねぇ麻衣」 「何?」 「だいじょうブイ!」 「だ、駄目っぽい!?」  などと阿呆なやりとりをしていたら審判に注意されてしまった。  お気楽に振舞っていた桂だが実はベンチ裏でこっそりと神頼みをしていたりする。ちなみに頼んだ神はサミー・ソーサである。当然ソーサは生きているが桂にとってその辺は関係ない事だった。 「さぁ、どこからでもかかってきなさい!」  桂は勇ましくバットを構えるがその姿はやはりどこか頼りない。 「ク・・・ククク、これはこれは絵に描いたような的でゴザルな。悪いが今までの分の怒りを文字通りぶつけさせてもらうでゴザルよ」  眼鏡のピッチャーは下卑た笑みを浮かべると再び斗流練威怒の投球フォームに入った。 「輝け拙者の魂!!忍術学園奥義斗流練威怒!!」  唸りを上げながら竜巻を纏った剛速球が桂目掛けて飛んでいく。 「う、うわぁぁぁぁ!!」  桂は恐怖に負けて咄嗟にしゃがみこむ事で直撃を回避したがわずかにヘルメットをかすったらしく頭から煙が出ていた。 「次は当てる・・・でゴザル」 「あわわわわ・・・ど、どうしよう〜」 「桂ー!死ぬ気で避けろ!打とうと思うな!」  ベンチから声が飛ぶがピッチャーはすでに投球フォームに入っている。 「もう・・・遅いでゴザル!!」  桂も再び避けようとするが足が竦んで動くことが出来ない。 「あわわ・・・め、芽衣助けてーーーーー!!!」  万事休したかと思われたその時 「桂を泣かせるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」   カキィィィィィン!!  颯爽と現れた影が竜巻を場外まで打ち飛ばす。文句なしのホームランだ。 「め、芽衣ぃ!!」 「呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃーん、おら、助けに来てやったぜ」 「あーん怖かったよ〜」 「ほらほら泣くんじゃねぇよみっともねぇぞ。ほら、涙拭けって、チーンしろチーン」 「き、貴様何者でゴザル!?いきなりやって来て試合を邪魔するとはこの無礼者が!」 「何者かだって?アタイは言霊学園チームの助っ人だよ、文句あっか」 「助っ人だと・・・試合中の乱入はルール違反のはず、山田先生!審判を下してください!」  山田と呼ばれた主審はマスクを外すとゆっくりと口を開いた。 「ホームランでゴザル」 「そんな!登録選手以外が試合に出場した場合問答無用で失格のはず!?どうしてでゴザル!」 「それは」 「それはさっき私が選手の追加登録をしたからです」  今まで姿が見えなかったデュシェーヌがいつの間にか戻ってきて山田の言葉を横から奪った。 「つ、追加登録だと!いつの間にそんな事を・・・」 「ゴチャゴチャ煩ぇな。審判がそう言ってんだから素直に従えよ眼鏡野郎」 「くっ、覚えていろ・・・でゴザル」  芽衣の扱いは桂と交代という事になり代わりに桂がベンチに入る。  芽衣がホームランを打った事で言霊学園チームに4点が追加されランナーないなくなったが未だノーアウト。  そしてついに打順はたなごへと回ってきた。 「不味いな・・・たなごがあのピッチャーの球を避けられるとは思えない。先生、他に誰か代打で出せる奴いないんですか!?」 「残念ながら追加選手は天姫くんだけです。だけど心配いりませんよ一本槍くん、潮風くんには秘策があります」 「秘策?」  デュシェーヌの言うたなごの秘策とは何なのか?  たなごは無事に生きて帰ってくる事ができるのか?  キャラの書き分けが出来てないけどそこの所どうするのか? 次回に続く