人生には選択をしなければならない時がある。 ほんの数十秒でとんでもない威力の魔術が炸裂して、俺とか他の兵士たちを巻き込んでここら辺一帯 は焦土とかす。別に避けようと思えば幾らでも避けられるんだが、俺の後ろには敵味方あわせて 千人以上の奴らがいる。逃げようと思えば幾らでも逃げられる、なんせ俺は魔王だからだ。 俺は    恋人に裏切られ    家族に裏切られ    親友に裏切られ    国家に裏切られ    国王に裏切られ    国民に裏切られ    信念に裏切られ    世界に裏切られ 全てに裏切られ、魔王となった。 俺が、いつも口上している事は捨てられない信念の残りカスだ。 だからこいつら全部見捨てればいい。 それできっと俺は魔王になれるだろう。 考えに反して体は逃げようとしていなかった。 燻っているのだ、俺自身の人間としての心が、この身は既に魔となっていようと足掻きつづける 人間がいる、人の身でありながら最高位の魔である魔王がいる。 なら、する事は一つだ。 人としては正解だったのか?多分間違いだ。 魔としては不正解だったか?多分大正解だ。 真っ直ぐに迫る極大の閃光を俺は受け止める。 みんな驚愕し呆けていた。 連合の奴らは、自分たちが味方に討たれる事なんて考えてなかったろう。 味方の奴らは、俺が守ってくれる事を信じていたのだろう。 「事象展開!」 受け止めた両手と魔術の間に巨大な時計を模した魔方陣が展開される。 事象制御、目標・巨大攻撃魔術 時間軸を設定・時間経過、目標の無効化時間計測・約30000秒 「世 界 完 成 ! (コンプリートスクウェア)」 魔方陣に描かれた秒針・分針・時針が高速で回転 事象選択 「再生」「停止」「終了」 「終了」を選択 「生(とき)よ――――――終われ!」 閃光が色を失いガラスのように粉々に砕けた。 体から力が失われていき落下していく。全魔力をかけた事象展開攻撃、24時の魔法使い10人がかりに よる最高位禁止攻撃魔法を相殺させたのだ。相手の全力を自分の全力で打ち消した。はなっから生 きようとは思っていなかった。死んでも構わない。 空から落ちる俺を誰かが受け止めた。 「大丈夫か?」 おいおい、傭兵隊長で大ボスのお前が助けるなんて無しじゃないか? ちくしょう、先代よあんたが言った事が今になって理解できたよ。 「貴方なら世界を変えられると私は思います。絶望しようとも前に進む覚悟を決めた、だから貴方 に「世界」の称号を与えるのです。ジェイド=T・I・S・A=ルーベル」 俺は魔王。人と魔の狭間で足掻きつづける矛盾する世界そのもの。 生き汚く、理屈屋で皮肉好きでどうしようもなく諦めを知らない馬鹿者だ。 魔王様の華麗なる御仕事(後編) ■ 「スネーク!どうしたスネーク!」 通信機に叫ぶ宿屋の親父アルカンプ、返事は返ってこない。 「まったく俺は知らんぞ。注意はしたからな」 喫茶店のマスター・シーゲルは呆れる。 トゥルーシィ=アキコを心配して、ジェイドの監視役として出した冒険者たちが暴走し、ジェイドに 挑んだのだ。 「しまったな」 「なんだ、やっと自分の間違いに気づいたのか?」 「全殺しじゃなくて、半殺しにしとけって言えば良かったな」 「そっちかよ!」 つっこむシーゲル。 カランカランとドアベルが鳴る。 「シーゲルのおじちゃーん、コーヒーの粉ください」 「いんぺ、きちんと品名を言わぬか、モカを100グラムだ」 喫茶店に入ってきたのは、アキコの同居人・暁のとらんぎらーるに蒼のいんぺらんさ。 アキコのお手伝いで買い物に行ってたのだ。 「おお、いんぺちゃんにとらぎちゃん聞いてくれ!」 「どうしたのおいちゃん?」 「どうした、アルカンプ?」 アルカンプが二人にジェイドの事を話そうとした時だった。 「うぎゃあああああー」 「ひぎゃあああああー」 「ぐぎゃあああああー」 通信機から響く、絶叫と悲鳴。 「なんだ?」 「多分、監視してた奴らがやられたんじゃないか?」 「なんで交渉人が、アキコちゃんが危ない!」 「そりゃ早合点しすぎだろ!」 勘違いしすぎなアルカンプ、そしてそれ以上に勘違いしてるのが二人いた。正確に言えば二匹。 「あれ、とらぎちゃんにいんぺちゃんは?」 ふたりはどこにもいない。 「やばいな、あの交渉人・・・・死んだかも」 迫ってくる強大な魔力を感じ身構える。 ヴァラーハとエンリルを置いてきたのはマズったかなあ、あいつらの事だから呼べば来るだろうけど あんまり争い事はしたくない。話し合いで済ませたい。 「インペランサドリルアターック!」 大きな声と一緒に高速回転する青い何かが飛んできた。 話し合いは無理か、突っ込んできた青い何かを横に避ける。 ズガっと地面に突き刺さった。 なんだこれ?青い大きな角が付いた兜を被った幼女が地面につき刺さっている。 「うーん、抜けない―」 うんしょうんしょと一生懸命どうにかしようとするが深く突き刺さった角は抜けない。 「ええと、つかぬ事を聞くがお嬢ちゃん、お名前は?」 「いんぺらんさだよ」 インペランサか、女の子につける名前じゃないよな。あれ、どっかで聞いたことないかなこの名前。 「シャイニングドラゴンキーック!」 なんかすげえ必殺技言って幼児が突っ込んでくるよ、足にオーラなんか纏って! 危ねええ!紙一重でよける。 ズガガガガガと地面を抉って停止。 「貴様か!アキコの敵は!」 なんかこの幼児も勘違いしてないか? 「俺は敵じゃなくて、交渉をしにだな」 「とらぎちゃーん、冒険者の人たちボコボコにされてるよう」 「なにい、貴様!アキコにも毒牙を向ける気か!」 「もう既に終わらせたから」 「なんだとー!」 なんか怒ってますよこの幼児。やばくね俺? しかしこの魔力の波長は暁のトランギラールの物。なんでこんな幼児が? まさか、この幼児がトランギラール? 「なあ、チビッ子。お前の名前は?」 「暁のとらんぎらーるだ!」 トランギラール?この幼児がトランギラール。 こんな幼児が、正義猪馬鹿のロイランスと同じ存在・・・・・・イイ、スゴクイイ! 「とらんぎらーるぅううううう、お兄ちゃんとアルティメッ○ダイボウ○ンで遊ばないかー!」 とらんぎらーるをがっしりとハグする。 やべえ、かわいすぎるよトランギラール。 「は、離せ変態!」 「私、知ってるよう。小さな男の子が好きな人の事をショタコンて言うんだよ、アイナちゃんが 教えてくれたー」 「失敬な!幼女よ良く聞け!俺はショタコンではないしロリコンでもない!ただ小さな幼児が好き なだけだ」 ちなみに巨乳で褐色エロスなお姉さんが大好きです!色白で胸が小さい事に悩む美女なんて 大好物だ!お姉さん系万歳! 「すげええ、とらぎちゃん真性のペド野郎だよ!」 「変態め離せええ!息が荒い!ハァハァするな!助けてアキコー!うええええええん」 なんか泣き始めましたよ。 やばいな、はたから見れば幼児泣かしてる変態じゃん俺。 「安心しろ幼児、俺は変な事しないから」 「ほう?で、なんでうちの子泣かしてるのかしらねえ?」 後ろから凄い殺気を感じる、やべえ振り向けない。アキコさん寝たんじゃないんですか? 「いや、子供好きなんですよ俺」 「子供好きが子供泣かしてるんじゃねぇえええええ!」 「うぎゃあああー」 アキコさんの飛び蹴りが顔面にクリーンヒットし吹っ飛ぶ俺。 アキコさんは、寝るために着替えたのかTシャツに短パン姿だ。 やばいです、萌えます。 お姉さん・・・・・万歳! ああ、お空が青いなあ・・・・・・。 「「「「本当にスイマセンでした!」」」」 土下座して謝る、宿屋の店主と俺がボコボコにした冒険者一同。 なんつうか自分が頭下げるのは良いんだけど、他人に頭下げられるのは苦手なんだよな。 アキコさんに気絶させられた後、とらんぎらーるといんぺらんさが俺にちょっかいを 出した事が分かったらしく。何とかして俺を介抱しようと喫茶店に駆け込んだら、宿屋 の親父の悪事がバレて、俺は無罪放免。親父たちはアキコさんにこっぴどく叱られた ようだ。 神様、みんなの為に頑張る魔王は見捨てないんですね。 「アキコ騙されるな!そいつは魔王だぞ!」 「そうだよアキコちゃん!真性の糞野郎でペド野郎なんだから!」 なんか騒いでるよ幼児ドラゴンズ。やべえ、かわいい。 「なに言ってるの!交渉人のくせに騙され易そうで「○垂る○墓」見て泣いちゃいそ うな人が魔王なはずないでしょう!きちんと謝りなさい!」 アキコさんそれかなり当たってますよ・・・・すげえ悲しいぐらいに。 「ふっふっふっふっ、アキコちゃん魔同盟の「世界」の名前って知ってる?」 「知らないけどそれがどうしたの?」 マズイな俺が魔王だってばれたら、仕事が出来なくなる。家賃の支払いどうしよう。 「「世界」の名前はねえ―――」 やばい! 「――――ジェット=D・I・J・E=ルーベンスって言うんだよ!地味で目立た ない奴だから知らなくても当然だよね」 なんですその強そうなMSで目の前で少年と犬が天使に連れてかれそうな名前は? つうか地味で悪かったな! 「なに言ってんのいんぺ、この人はジェイド=T・I・S・A=ルーベルよ。こんな地味な人が 魔王なはずないじゃない」 アキコさんフォローになってねぇ! 「まあ、そういう事で俺は魔王じゃないんだ。さっきはごめんね」 「ふん!」 「ケッ、ヘタレ!」 なんかすごく辛辣ですよチビッ子事象龍。 「こら、幾ら事実でも二人とも酷いわよ」 アキコさん、もしかしてまだ怒ってます? 「あはははは・・・・・アキコさん食事は今度あらためてということで、事務所に戻って書類まとめますね アルカンプさん、宿屋の代金は置いてきますんでキャンセルしといてもらえますか」 「いや、タダでいい。あんたには悪い事しちまったからな」 「そうですか、ありがとうございます。それでは皆さん、さようなら」 介抱されていた喫茶店から出ると外は星空で綺麗だ。 ■ 「しかし、鉄砲玉みたいな奴だな」 ジェイドの出て行った、ドアを見てアルカンプが言う。 「なんだか何かに急かされてるような気がしたな」 「そうかな、あの人はなんかちょっと普通とは違う雰囲気がする。なんだか解らないけどね。観察 の鬼・ハロウド=グドバイが居たら彼をなんて評するのかしら?」 「真性ペド野郎!」 「変態ロリコン野郎!」 「あんた達、母さんの前でそれはやめてね・・・・・」 同居人二人の言葉を聞き、これからの旅行の事を考えてアキコは少し頭が痛くなった。 村から少し歩くと開けた広場のような場所がある。すこし俺は上を向いた。 「いい夜だ、死ぬには良い時だと思わないか?」 俺の言葉を合図に四方八方から黒い剣のようなものが飛んでくる。 「やっぱりね、狙いは俺か!」 飛来する剣を避け飛び上がる。それを見計らったように地面から20以上の黒剣が襲い掛かる。 剣の腹を蹴飛ばし、器用に左右に避け着地。 「さて、そろそろ姿を表したらどうだ?俺が察するにシャドウマスターだろ?」 10m離れた地面の闇から出てきたのは、白い仮面を付けた黒装束の男。 (東方暗殺公司かよ・・・・まずったな) 「東方暗殺公司」 東方を中心に暗躍する一流の暗殺結社、厳しいまでの階梯制度を施き、 仮面によってランク分けされる。 俺の目の前にいる白仮面は最高位の第一階梯、一騎当千クラスだ。 「我が術を見破るとはたいした者だ」 「いやいや、あんたも冒険者3人の気配に自分の気配重ねて消すなんて中々出来ないって、 あの3人組が暴走してくれなきゃ気がつけなかったよ。で、誰が依頼したのかな?」 「くくく、面白い奴だ。依頼人を言うわけがなかろう、暗殺者の名折れよ」 「まあ、そうだよな」 嘆息する俺に白仮面は飛び掛かり両手に握った白刃を煌かせ左右に切りつける。 刃を左腕の篭手で受け流し前蹴りを放った。 「貴様が足技を得意にしてる事はあの3人との戦いから知っている!」 (なんか知らんがヤバイ!) そう感じ、後方に跳躍。 だが、それが不味かった。 背後の木の影から黒い刃が散弾のように飛んでくる。 (しまった相手はシャドウマスターだったんだ) シャドウマスター、通称影使い。実体の無い影を物質化して操るだけでなく影という空間に身を 潜める事を得意とする、暗殺者の到達階級の一つだ。 何とか身を捩って避けるが散弾の一つが左腿に串刺さった。 「くっ・・・・あんたみたいなのよこすなんて、あんたの依頼人に俺は相当嫌われてるんだな」 「中々面白かったぞ交渉人」 小太刀を構える白仮面、とどめをさそうと一足飛びに近づくが、何かに押し返されるように吹き 飛んだ。 「馬鹿な・・・足は封じたはず」 「踏み込む事ぐらいは出来るだろ?残念、両手両足ふさいどくんだったな」 拳を突き出し腰溜めに構える。東方大陸に伝わる武術の技の一つ「崩拳」だ。 「手技が7足技が3、だからと言って足技が弱いとは限らない」 そう言うが早いか傷ついた左足で跳躍し、右の回し蹴り続けて左足で顎を蹴り上げる。 「敗因その1・一度で相手の力量を測った」 数瞬の間浮かんだ白仮面の背中に左拳を叩き込む。 「ガハッ」 背中に打撃を喰らい搾り出すように肺から空気を出す。 「敗因その2・自分の技がどんな物か相手に知られてしまった」 ジェイドに殴られ2〜3mほど飛ばされ受身を取る。 「貴様ー!」 周囲360度を影の刃が取り囲む。 「クハハハハ、終わりだ!終わりだ!交渉人!」 「はあ・・・・これだからこの大陸の暗殺者は東方大陸の人間に笑われるんだ。表面上の力しか見て ないなんて情けないぞ」 「死ねえええ!」 俺の言葉に激興した白仮面は刃を放った、360度全方位から襲い掛かる無数の刃。 「やれやれだ」 左腕の白銀の篭手が輝き取り囲んでいた刃が消滅した。 「馬鹿な・・・・」 「敗因その3・切り札は最後に取っておく」 シュリンと刃鳴りさせ腰に挿した2本の剣を抜く。 「もう解ってるだろ?お前じゃ俺には勝てない。そしてお前はここで死ぬ、武の心を知る者ならば 相手に全力を出してもらえない事がどれだけ恥辱か解るよな。だから抜いたんだ誇りを抱いて死ぬ といい」 「くあああああああ!」 絶叫に近い叫びを上げて一直線に突っ込んでくる。 刹那の交差。 キィイイイイインと澄んだ金属音がした。 仮面の暗殺者の小太刀が真っ二つに折れる。 「敗因その4・俺を敵に回した事だ」 両手の剣を腰に収めた瞬間、暗殺者の体がバラバラに崩れた。 バラバラになった死体の頭を掴み持ち上げる。 「事象展開」 事象選択 「停止」 「時よ―――止まれ」 「お目覚めかな暗殺者?」 「馬鹿な・・・・私は何故生きている・・・」 「生首っていうのは胴体から切り離されても十数秒は意識があるんだ。つまり生きている。 死に向かう時間を止めたんだ」 仮面の下の顔は驚愕しているのだろう、目の動きだけで分かる。 「お前は一体何者なんだ!」 「ただの子供好きの交渉人さ。さて、これがなんだか分かるかな?」 スーツの内ポケットから取り出したケースの中には大小様々な釘が入っている。 「・・・・・・」 「みなまで言わなくても分かってくれるか。夜は長いし死ねないんだ。はやく依頼人の事を 放した方が良いと思うよ。ピンボールの台みたいになる前にね。そしたら楽に死なせてやる」 優しく俺は微笑んだ。 それから数週間後・・・・・ 「ふああああああ、今日は良い天気だしみんな仕事はやめにして映画でも見に行かない?」 ここはLuckyAndSmileCompanyのオフィス、宿屋「睡蓮亭」の3階にある。 「書類仕事を全部俺ら任せにして自分はサボってる奴の言う事か?」 助手にして交渉人のレオス=イルファウトが怒る。 「レオス、言っても無駄です。こいつは昔から糞野郎です。本当に男って最低」 冷たく言い放つこれまた助手兼交渉人のクールビューティなお姉さまだがももっちのアルミラ。 「ジェイド様、サボるのは構いませんがこの使途不明金・13000は何ですか?」 経理担当の豚みたいな顔だが意外と真面目なアロージオはやや怒っている。 「心の癒しのための支出金かな?」 「またおもちゃ買ったんですか!私たちの苦労も考えてください!」 絶叫に近い声を上げる事務担当のファル=エウリュディカ。 ここにいる4人は魔王に次ぐ実力者である小アルカナのメンバーだ。 バーズワースの戦争後、実務能力の高いこの4人を俺の傘下に取り込んだ、だってこいつら仕事 できまくるんだもん。 「ジェイド様TV消してください、うるさくてしょうがないですよ。東国の伯爵の死亡なんて関係 ないじゃないですか。まさか・・・・・そんなことはないですよね!」 顔面蒼白になるファラ。 「心臓麻痺だぜ死因」 「王族の心臓麻痺などあてになりません!」 勘がいいな。 東国の伯爵を殺したのは俺だ、アーメイダス鉱山の利権問題に対してこの伯爵はタカ派でしかも 軍需産業と組んでいた。そこに俺が交渉で丸く治めてしまったので利権に固執していた伯爵は逆上し、 俺に刺客を送り込んできたのだ。 まあ、もっとも頭中から釘をはやした暗殺者と同じように発狂死するまで屋敷中の剣で体中を ピーンボールの台のようにして無残に殺した。 タカ派の伯爵が死んだ事により東国のアーメイダス問題は収拾するだろう。 まあ、タカ派も伯爵のように死にたくはないだろう。 「ようし、決めた君たち4人には明日から3日間の休暇を与えよう」 「「「「はい?」」」」 おもわずハモる4人。 「レオス、お前のママ・ユリエータが久々に鍛えてくれるってさ、行ってこい。空気読めない 冒険者の女の子の尻なんか追っ駆けてないでな」 「追っ駆けてねえよ!つうか、手加減してくれねえかなユリエータさん・・・・」 すげえ嫌そう、ザマーミロ。 「ファラ、たまには娘さんや嫁さんと会ってこいよ。レストラン予約しといたからな」 「・・・・・・いつの間にそんな事を?」 驚愕するファラ、うーんいいことすると最高だな。 「アロージオ、たまには金のこと考えずに暇しなよ」 「ふう、もう少し節約する事をお奨めしますよ」 嘆息するアロージオ、すいません明日はS○C響○さんの再販なんで散財しますゴメンナサイ。 「アルミラは・・・・・もう有給取ってるのね。投擲士の子と旅行?」 「いえ、彼女とは別れました。今、お付き合いしてるのは破壊師の方です」 微笑むアルミラ、アルダマスよ天然品はもの凄く恐ろしいぞ。 「ジェイド、あんたはどうするんだ休暇?」 「気の向くまま風邪の吹くままさ。じゃ、後はよろしく」 オフィスの外に出て、廊下の窓から差し込む光が眩しい。 「ジェイドさん、どこかいかれるんですか?」 声をかけてきたのは、睡蓮亭のオーナーで大家のアトワイトさんだ。 やや青みがかった黒髪と整った顔が今日も美しいサキュバスで美人の部類だよな。 「ちょっと映画にでも行こうかなと」 「そうですか。そうだ、これジェイドさん宛てに来たお手紙、絵葉書みたいですね」 「へえ、誰からだろ?」 絵葉書を見ると、麦藁帽子を被った男の子と女の子が波打ち際で遊び、それを見てワンピースの 少女と眼帯の女性が微笑んでいる。その後ろでは、初老の男性が苦笑し、初老の女性が笑っている。 「うまくいったんだな・・・・・」 「あ、ジェイドさん。すごく優しそうな顔になってる」 「そ、そうですかまいったなあ・・・・。そうだ、アトワイトさん暇ですか?」 「暇ですけど」 「一緒に映画行きませんか?」 「はい、喜んで」 美人は笑顔が一番だ。 俺は、ジェイド=T・I・S・A=ルーベル。 笑顔と世界平和の為に戦う、かなり変な魔王だ。 魔王様の華麗なるお仕事 Complete NEXT 魔王様と生意気な「始まり」のお子様 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 祝!SS初完結!