ジーザスの冒険『誰も知らない空白の時間』              ―――― 遺された"機械"の剣 ――――― 古の時代。世界の文明が機械が主で成り立っていた時代 魔法はおろか剣すらも実用されず、彼らにとって何も無かった時代、彼の剣は存在していた。 いつの間にやらそこに君臨したそれは、当時の卓越した文明でもその存在を理解することはできず ただただ、時が経つばかりだった やがて時代は移り変わり、かつての機械の活気は衰え繁栄は露と消えた 時に葬り去られる存在となったその剣は、今もどこかで存在し、持ち主を待っているのだろう ゴトンゴトン… 馬車の音が響く、冒険者達を乗せて 「しかし、本当にすごいですね。馬車の中に酒場とは…」 「だろう?俺のアイデアの引き出しは底が知れないからな」 私、ジーザス=ツヴァルトと話す男。移動酒場を経営している"噺屋のボガード"… 私達一行が北西へと向かい旅しているところを彼が声を掛け その後、成り行きで馬車に乗させてもらったのだ 「マスター。これが、お勧めの『象徴龍の髭』?」 「ああ、いいネーミングだろ?そこらの店で出てるエールとは訳が違うぜ」 「いただきまー(ゴトッ)んぶっ!」 「ははは、揺れが激しいから気をつけて飲めよ!あと、ちなみにアルコール度数99.9%だ」 「ほ、殆どアルコールじゃん!苦しっ!げほっがはっ!」 咽て今にも苦しそうにしているトトの背中を、私ともう一人の女性が撫でてやる 「酒は人を狂わす魔物…母国の言葉よ。子供に無理は禁物だぞマスター」 「悪い悪い。変わりにそいつはタダでいいよ」 「タダとか無理とかそういう問題じゃな…げほげほっ!」 彼女はささら・C・ルクランチ。なんでも大富豪の家柄で、その裕福さ故に危機感を覚え 家を出て冒険者になり、修行の毎日を送っているそうだ 「それはそうとオヤジさん、これをどうぞ。何か手伝えることあったら当ギルドをご贔屓に」 別の私のパーティの一人が『ガンダーラ』と書かれた名刺をマスターに差し出した 彼は鯱矛(シャチホコ)。ギルドの組合に所属している人物、彼もまた僕らと動向している 温厚で正義感の強い人物、彼のような人が遠い東の国を良くしてくれるのではないでしょうか…あれ? 「ああ、世話にならさせてもらうよ。仮は作らせてなんぼだからな、ははは!」 「その物言いは、返さない気満々ですね…」 「「「ははははは…」」」 談笑に浸り、大分賑やかになってきた馬車内。 と、ボガードが私の方を見、一瞬悩ましげな表情を浮かべる 「…ふむ。」 「どうしました?」 「あんた、変わった剣持ってるじゃないか」 「ああ、これですか。これに興味をお持ちで?」 「ちょっと、見せてくれないか?なぁに、見るだけさ」 私は承諾し剣をボガードに手渡しする。彼は鞘から剣を抜くと、その刀身を見るなりふんふんと頷いた 「ジーザスさん、あんたこれをどこで手に入れたんだい?」 「記憶に無いんです。気づいたら、手元にあったという感じで…」 「へぇ」 私の返答を聞くと、彼は舌をなめずる様に剣と私を見続けた 「どうしました?」 「俺は酒場を経営している身だが、こう各地を点々としているとね、情報がどんどん入ってくるんだよ」 「…どういうことでしょう?」 「俺はこの剣の事について知っている。情報、買うかい?」 私は少し衝撃が走った。確かに形状も仕組みもよく分からない剣だ、だがそうというだけで 普段はあまり気には留めなかった。そう大げさに言われると私も興味を持たざるを得なくなったのだ 私は承諾をすると、ボガードは意気様様に得意げに話してきた 「後払い。いや、ツケで結構。俺はあんたが気に入ったからな」 「ふぅん。それで、マスターは何を知ってるの?」 「おう、それはだな…」 ガタガタンッ!! 「何事だ!」 「馬車が止まったようですね。マスター、やはり舵は取っておかないといけませんよ」 「いや…そんなはずは。ちょっと見てくる、待っててくれ」 ボガードが馬車へ様子を見に行った数秒。突如男の絹を裂くような悲鳴が聞こえた 「今の…」 私達が顔を見合わせていると、ボガードが馬車の中に戻ってきて 「おい、あんたたち!ちょっと来てくれ!大変なんだ!!」 彼の顔色は真っ青だった。ただ事ではないと把握した私達は すぐさま彼の呼ばれるままについて行く。馬車を降りると。私達は戦慄を見た 「な…」 馬車から出た瞬間に立ち込める異臭。その主、肌色を曝け出す蠢く大きな肉塊が 馬車の馬をがつがつと貪っていた。 「臭っ!何の臭いだよこれは!」 「馬が!…俺の馬が!」 「ぬぅ…魔族の類か。」 「待ってください、魔力反応はこれを魔物と認識していないようです…これは、人のようです」 「なんですって…!」 肉塊はこちらに気にも留めず、わき目も降らずに肉にしゃぶりついている 「どうであれ人のものを奪うような化け物は許せません、悪は討たねば!成仏なさい!セヤーッ!!」 鯱矛が先手をうって出る、三又の矛を振り翳し、肉塊に向かって大きく飛ぶと その落下を利用して肉塊に槍を突き刺そうとする 「むっ…おおっ!」 しかし、肉の壁の柔らかさ故か槍先は通らず、逆に押し出されてしまった 肉塊は気づいたのか、私達のほうを見やる 「ンン゙?ナニヨ゙?ショクジノ゙ジャマシナイデ。ハァ゙ー」 口と思しき裂け目から臭い息を吐き出してくる、私達に振り掛かるそれは この世のものとも思えないもので、酷い悪臭ばかりか目に染み、開けているのがやっとの程だった 「ぐぅっ…!これは…!」 「も、もうだめ…」 「トト!」 私は倒れそうなトトを抱き上げる…酷い熱だ。あの臭い息は毒性を持つのか 「ジーザス殿!危ない!」 私が背後を振り返ると、そこには巨大な黒い影があった。私を今にも潰さんとしている 肉の姿があった。 「ワダジ、ブス山 ブス子。コンゴトモヨロシク…」 ブス子はそう言うと巨体を私目掛けて押しつぶしてきた。 私はとっさにトトを抱えながらジャンプし、間一髪のところで攻撃を避けた。 ドスンという音と共に砂煙が巻き起こる 「はぁぁ!」 ささらは薙刀でブス子を切りつける。だがやはり歯が立たなく、その弾力性のある肉に跳ね返される 「やはり効かぬのか…!」 「肉弾戦では倒せそうにありませんね…ならば魔法を、どちらか魔法は使えませんか?」 「ささらさんは見ての通り戦士です…私は僧侶なので、使ったとしてもアンデットにしか効きません…」 「そうですか、では鯱矛さんはトトの治療をお願いします!ささらさん、私のサポートを頼みました!」 「了解しました」 「うむ、任せろ!」 「ヂョッドオオオオ!!!!!ムシシナイデヨ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!」 トト達を盾にする形で陣形を組むささらと私。咆哮を上げたブス子が私達の前に 体を引きずりながら押し寄せてくる 「ささらさん、奴の動きを封じてください!」 「御意!」 ささらがすばやくブス子の後ろに回ると、そのままジャンプし背に乗っかった 「首が見えないが『キャメルクランチ』ッッッ!!!!」 「ギャブッッ!」 「ナイスです!ボガードさん!剣を私に渡してください!!」 「お、俺?あ、ああ。ほらよ!」 ポーンと放物線を描くように投げ渡された剣『ゼクス』 ナイスキャッチと言わんばかりに掲げた手に丁度収まった 『剣よ、ゼクスよ』 私は深く念じると、剣はまるで生きているかのように唸り、大きな轟音を見せつけた 青白い雷は私の体中を駆け巡り、検身は赤みを帯びる 「ヌ゙!」 「はあああああああああああああああ!!!!!!!」 私は剣を振り、地面に叩き付けた。叩き付けたそこから大きく雷が放出され それはブス子の肉体を覆った。 「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!!」 ブス子は真っ黒焦げになり、その場に倒れた 冒険者達は勝利した 「トトはもう大丈夫です。顔色もだいぶ良くなりました」 「それは良かった。一時はどうなるかと思ったが、無事で何よりだ」 「全くです。これにて一件落着…という訳にもいかないようですが」 「参ったなぁ。これじゃ商売上がったりだよ」 「心中お察しします…ですが、あれは一体なんだったんでしょうか」 「「「それは私達がお答えしましょう」」」 私達が声のするほう…空を見ると、魔術師風の服装をした三人の男女が 空よりゆっくりと降りてきた。 「なんだ?お前達は」 「私達は『ヘブンズ三兄妹』。全ての生きとし生けるものに代わり予言をするもの」 「お前達は私達の作り出した恐ろしき化身を相手とするただの実験体」 「単刀直入に言いましょう。あなたたちを利用させていただきました」 「…!」 「な…なんですって…?」 「しかし予想外でした。あなた達が彼の最強の戦士『ブサ山ブス子』を倒してしまう とは夢にも思っていませんでしたから。」 「ですがあれはただのクローン、本物はもっと強いです。十分に勝機はあったのでは」 「確かに、しかしあれは私達が作り出した産物。並の力ではあの鉄壁の防御は破れないのでは…」 「じょ、状況がよく分からん!そちらで話していないでこちらにも分かりやすく話してくれ!」 ささらはそう言うと、ヘブンズ三兄妹と名乗る三人組は顔を見合わせ。その後彼女に言い放った 「その必要はありません。」 「なに…!?」 「あなた方は本来見てはいけないものを見てしまいました。よって今見なかったことにしなければならない」 「有無は言わせません。互いにこの事を覚えていぬよう、もう二度と会わぬようにするのです。」 どういうことだ!と言おうとした矢先、無理に押し進めるかのように私の言葉を構い無く遮った 「では、さようなら。時間よ、戻れ」 「俺はこの剣の事について知っている。情報、買うかい?」 私は少し衝撃が走った。確かに形状も仕組みもよく分からない剣だ、だがそうというだけで 普段はあまり気には留めなかった。そう大げさに言われると私も興味を持たざるを得なくなったのだ 私は承諾をすると、ボガードは意気様様に得意げに話してきた 「後払い。いや、ツケで結構。俺はあんたが気に入ったからな」 「ふぅん。それで、マスターは何を知ってるの?」 「おう、それはだな…」 私達は一瞬違和感を覚えたが、それ以上は気にはならなかった 私はその情報を教えてもらい、それを知る縁の地へと馬車を走らせて貰うこととなった ジーザスの冒険『誰も知らない空白の時間』 END? ジーザス トト ささら・C(キャラメ)・ルクランチ 鯱矛 ブサ山=ブス子 噺屋のボガード