RPGSS ジーザスの冒険『踊る洞窟迷宮!』 「ここ、足場が悪いので気をつけてください」 我らが冒険者パーティ、ジーザス・ツヴァルトとトトは只今 依頼でこの暗い洞窟の中を潜入している。まさにいつもの行き当たりばったりな仕事だ 「よっと。あのさ、ジーザス」 「ん?」 依頼の詳細は深夜ごろにここの奥深くから呻く謎の声の正体を探ること 村の人々の話により推測すると最近になって巣食ったような魔物の類かと思われるが 私達は未だその声を聞いていないので、それがどんなものなのか詳しくはよく分からない 「結局、昨日の黒いももっち…どうなったんだろうね」 黒いももっち。先日、森の中で出会ったももっちと呼ばれる少女型の魔物 それの亜種とも思われるものでこの間、私達はある事件の容疑者として捕まえようとした… 「さあ…でも、手荒な真似をしてしまいましたからね…もう一度会ったら謝っておきましょう…って」 ガタン! 突如床に穴が開いた。しまった、トラップか! 「うそっ!」 「ああああぁぁぁぁぁぁ…」 私達は暗き闇より深く、深淵の谷底へと落とされてしまった ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「…うぅ…ん……」 僕は…いや、俺?は…えーっと、そうだ。ぼくの名前はトトだ。 さっきの落とし穴で気を失っていたようだ。僕は体を起こしてあたりを見回す 「暗い…松明は…」 荷物袋から松明を取り出した。そして火をつけることにした 「えいっ」 ぼくの指から放たれた小さな炎は油の塗られた先端に燃え広がり、あたりを照らす 大広間のような球体の空洞、徐に天井を見る。ぼくはあんなところから落ちたのか… よく無事でいられたものだ、とのんきに思って顔を正面に下げたとき 「っ!!」 見ればぼくの周りに人骨が山になって折り重なっていた。遭難者の死体だろうか? 「ジーザス!ジーザス!!」 とっさにジーザスの名を呼んだ。だが姿も見えず、返事も返ってこなかった 「くそっ!」 こんなところで死んでたまるか!ぼくは立ち上がって出口がないか辺りを必死に見回した 頭が混乱している、落ち着け、落ち着くんだよトト!今こそ冷静にならないと… と、ふと人骨の山に折り重なる黒い何かを見つけた。恐る恐る近づいてみると…人がいた しかもサイドに二人。 「えーっと、えーっと…」 どっちにしようか迷ってるところじゃない!とりあえずどっちか助けるんだ! 「大丈夫か!」 目の下に線が入るような険しい顔をして必死に人骨をのけた ぼくはまず右にいる人から助けることにした 「う…」 見ればそれは女の子だった、ぼくは力いっぱいその子を抱き起こす 「しっかりしろ!」 「イタタ!!痛いわね!!」 「あ…ご、ごめん…」 思ったより元気そうだ…僕はすぐさま左に倒れている人を助けようとした 「大丈夫か!」 いい動きでこれまた人骨をのける。この子もまた、女の子だった 「………」 「しっかり!」 だが、人間にしては少々違和感を感じた。よく見ると、頭に角が生えていた。それも二本の 「こいつは…」 「…………」 彼女はむくりと起き上がり、眉間に皺を寄せながら僕を見据える ももっち。しかも黒い…先日僕らと会った黒いももっちだった。どうやら僕を警戒しているみたいだ 「な、なんだよ…」 「………」 睨み合う二人、そのまま静寂が辺りを包んだ。 「「……………」」 「はーいそこまでー!!」 静寂を破るかのように突然割って入った人物はさっき助けた女の子だ 僕らを見回しながら、喧嘩の仲裁に入っていた。 ぼくはもちろん、黒いももっちもきょとんとした顔をしている 「ふぅ。私はクーリ・チロリア。あんたは?」 「…トト」 「トト、ね。よろしく」 「う、うん…」 クーリはニコリと微笑んだ。屈託のない笑顔、思わず目を伏せてしまう 「それで、あんたはどこのどなた様?」 「………」 今度は黒いももっちのほうへと向いたようだ、質問を投げかけるが、返答は来ない 「あら、あなた確か…きゃっ」 何か言おうとした瞬間だった、突然黒いももっちはクーリを突っぱねてどこかに走って行ってしまった 「あ、コラ!待ちなさい!」 クーリも彼女の後を追う。骨山を器用に登り、どっかへ行ってしまった 「ちょ、待ってよ!ってうわ!」 僕も慌ててクーリを追っかけるが、足場が悪くすっ転んでしまった…格好悪い 「いててて…」 「で、こうして?今に至るって訳かい?」 「ヒヒヒヒ……ウケル………ウケル……ウケ……ウケッ……」 …私はジーザス・ツヴァルト。まったく、散々な目にあった 突然の大規模な落とし穴。逃れる死角もなく、ただ私は穴から落ちるという運命に身を任せる以外 術はなく、まさに計算外だった。そして何よりの誤算は、お陰で私とトトははぐれてしまった事だ 私は深く後悔している 「あン?そう落ち込みなさんなって。うまく言えねぇが、たかが洞窟だしよ。その内会えるんじゃねぇか?」 「そうそう…皆は死ぬんだ………暗いよぉ……ケッケッケッ………」 「コカ、お前は少し黙っとけや」 私に情けをかける全体的に容姿が赤い男の名は炎城焔と言い 先ほどから半狂乱の鎧の戦士の名はコカ・コォラァ 二人の話によると、どうやらこの洞窟は沢山の穴に繋がっているらしく 彼らは私達とは別の入り口から入ったと言う。 そして彼らもまた、私と同じ境遇の男達で、穴に落ち、ここについたそうだ 「俺も仲間が待ってるからな。絶対に会わないといけねぇんだ。 同じ背負うもん持ってる同士助けあわねぇとな!相棒よぉ!」 「ええ…そうですね…」 「クヒッ…クヒッ…俺は仲間はずれですかい…そうですかい…」 そんな他愛のあったりなかったりな会話をしているうちにふと、二手に分かれる道が現れた 「左だ」「右ィ………」 二人は同時に言った。基本的に本能で動く二人の意見は、奇しくもすれ違っていた それがまさに仇となった 「俺がこっちって言ったらこっちだ。言い訳は聞かせねぇぜ」 「コッチがいいよ…コッチがヒヒヒヒヒヒイヒヒ……………」 「何笑ってやがる…俺は絶対ぇに引かねぇからな」 「まぁまぁ、喧嘩はいけませんよ。落ち着いて、落ち着い…うおっ」 ガキンという音と共に大きな風圧。私は仰け反るようにしてそれを避けた コカは肉厚の大きな剣撃を私に放ったのだ 「あなた…」 「アレレレレ…………?オカアアッシイイイイイイイなーー……????」 「チッ…おい、ジーザス。こいつはもう駄目だ!止めるぞ!」 城焔がそう言うと剣を構えた。私も頷き、剣を抜く 「こんな時に…コカさん!何故ですか!」 「アアア……ショッショッショイヤアアアアアアアァァァァーーーーーーーーー!!!!!!!」 「諦めろ。こいつは聞く耳持たねぇよ。いくぜ!!」 「はぁ…はぁ…もう駄目…疲れちゃった…」 ぼくはやっとクーリに追いついた。彼女は走り疲れて壁に寄りかかっていた 「あら…トトじゃない…」 「クーリ…あのももっちは…?」 「あっちよ、あそこで立ち止まってる。私達を待ってるみたい。」 クーリが指差す方向に黒いももっちは立っていた 凛とした表情で私達を見据える、まるでぼくたちが来るのを待ち望んでいるかのように 「ほら、そんな事よりさ、手貸してよ」 「あ、うん」 「………」 彼女の腕を引っ張り起こしてやる。すると、ももっちはまた洞窟の奥へと進んでいってしまった クーリも黙って後を追う。待っていると分かっているので今度は歩きながら行くことにした しばらく進んでいくと、ある場所にてももっちは突然止まった 「…ここは」 またもや大きな空洞の中。しかし、先ほどとは違うどこか神秘的な様子を感じていた この感じは何だろう?ぼくが思っているとクーリは声を上げる 「トト、見て!」 ぼくの見る先には大きな石版があった。びっしりと書かれた見慣れない文字の数々 そしてその真ん中には、大きな龍の姿が彫られていた 「龍ね…」 「そいつは事象龍、謎のナントカーだ」 「謎のナントカーって何だよ!って、あんた誰!」 思わず突っ込んでしまった。先客が居たようだ。石版の横の壁に寄りかかって座っている 「ヒュゥ、ナーイスツッコミだねぇ。」 ぱちぱちと拍手をしながらぼくたちのほうへ歩み寄る 「俺の名前はキョウ。そっちのお嬢ちゃんはキョウちゃん、こっちのガキはキョウ様って呼んでよ。」 「な、なんだと!」 「あんた、何様のつもりなの?それでここはどこなの?答えなさいよ!」 「いっぺんに質問投げかけられても困るんだよ、お嬢ちゃん。えーっと」 キョウと名乗った調子のいい男はおもむろに石版の上にある台座に乗っかる 「俺はただの流浪の冒険者…んで、残念だが…俺も詳しくは知らねぇんだぁ。まぁでも ここは既に学者達に調べられちまった場所だから。そんなこと知っても金は入らねぇぜ?」 冒険者。自分も冒険者だと言いそうになったが、また何かからかわれそうなので思いとどまった 「しっかし、女子供でこんな所来るか普通?まぁ、ここは比較的魔物は少ない上に弱いからなぁ」 「あんたこそなんなのよ!何様のつもり!」 どうやらクーリの鶏冠にきたようだ。 こんな時にジーザスがいてくれれば、宥めてくれてたんだろうな ぼくもこういう時いつもそうだから気持ちは分からないでもない。うん。 「まーそんな怒るなってお嬢さん?んでさ、あんたら…あのも…あれれ?」 キョウの指差す先には何もいなかった。 「ももっちが…。クーリ、行くよ!」 「え?あ、うん。」 ぼくがクーリの手を引っ張っていく その時、彼女から何か変な視線を感じたが、気に止めるような余裕はなかった 「何なに?あんたらあのももっち追っかけてるわけ?ねーねー待ってよー。ねー」 ついてくるキョウを無視ながらもぼくらはももっちを追っかけた この洞窟では風など無縁だろういうのに、陣を巻きつつそれが吹き荒ぶ 私はとっさに身の危険を感じていた 「…ジーザス。下がってろ」 城焔もその気に気づいたらしい。だが私とは違い どこかこの気を知っているかのような、そんな面持ちをしていた 私は剣に手を掛けつつ、松明を前面に照らして目を凝らして見てみた。すると 「…トト?」 猫耳のフード。まさに見覚えのある容姿だった。私は思わず言葉を漏らしてしまった 「ジーザス!」 そしてあちらも自分達に気づいたらしく、私の名前を呼んで手を振っている 「トト!やっぱりトトだったのか!」 仲間の再会に私は気が緩んだ。だが、城焔は警戒する姿勢を崩さなかった。 それに対峙して、トトの隣の男もそうだった。しかし、その男は少々考えるようなそぶりを見せると トトの首に手を回し、持っていた剣で刃を突きたてた。 「トト!」 「が…うぅ…」 「おぉっとぉ、そこの男。近づいたらこのガキの命がなくなるぞぉ。お前は黙ってな」 「くっ…」 「何の真似だ。欲しいのは俺の首なんだろう。キョウよ!」 私の動きはトトの命と引き換えに封じられた。城焔は剣の鞘を握りキョウと言う男ににじり寄る。 「ああそうだ。だが隣の男が邪魔でねぇ、お前が雇ったって可能性もある」 「馬鹿が。俺は『四城』の城焔だ。組員以外の人間と誰が組むか」 「いーや、そいつが新しい『四城』のメンバーって可能性もあるぜぇ?」 「そうか…じゃあっ!」 剣を抜き、咄嗟にぐるりと体を翻した城焔は、私の側頭部目掛けて剣で突き刺そうとした 私は思わず体を反転させる。勢い良く放たれた剣は力余って壁に刺さる 「フン、避けたな。上出来だ、お前は行け」 城焔が顎を使って私を促す。私はトトの事を言おうとしたが、先にキョウは言った 「交渉成立ってとこだね。じゃ、こっちも…ほらよっ。ガキ、そこのフィアンセも連れてな。」 そう言うとトトが放たれる、そしてすかさずクーリがトトの手をとり私の元へ向かった 「また会おうぜ!色男!!」 私たちが見えなくなると、二人は向き合った 「『四城』の炎城焔、ここに死すってかねぇ〜?全く絵になるオハナシだぜぇ」 「『荒ぶる風』キョウ、か。おめぇは何故俺を付け狙う?」 「教えてあげよう、ズバリ金だ。金以外俺が動くものはないからねぇ」 「ふん、上等じゃねぇか。それだったら逆にお前に掛かっている首の金を狩らせてもらおうか」 「そうか。まぁいいさ…来なよ。切り刻んでやンよ」 そう言うと、双方は腰に下げた剣をほぼ同時に抜いた 「『イフリート』…根源より出でし太古の炎よ!我が刃となりこの者を討て!!」 城焔の剣に炎が纏う。更には体より炎が移り、火達磨となった 「キキハハハ!そんな形だけの代物じゃ俺は倒せないよ!!」 キョウは自由かつ変則的なステップを踏みつつ、一本の剣を片腕で風のように高速で廻す 『ッシェアアアァァァ―――――!!!』 怒声とガキーンという金属音が鳴り響く。戦いの火蓋がおろされた 「ジーザス!」 「わかってます!ですが今はここを進む意外どうする事もできません」 「でも…」 「これは二人の問題です。私達が首を突っ込んだ所で何の意味も成しませんよ」 「わかったよ…」 トトは複雑な顔をしながら私の言葉に応えてくれた。 一先ずは胸を撫で下ろすと、見知らぬ女の子が隣にいるのに気づいた 「…トト。この人は?」 「クーリ、この人はジーザス・ツヴァルト。俺の恩人であり師匠、でいいかな?」 「フフ、構いませんよ。よろしくお願いしますね、クーリさん」 私は微笑むと、クーリは思わず顔を伏せてしまう。トトは、それを見たのか 「ま、まぁ、魔法ではぼくが先輩なんだけどね。」 「ははは…」 「…ねぇ、戦い。終わったみたいだよ」 「聞いてないのかよ…」 トトが思わずずっこける。確かに、もう剣の音は聞こえない。 どうやら早期に決着がついたようだ。だが 「なんだろう…胸騒ぎがする」 「トト、どういうことですか?」 「わからない…でも、このままじゃ終わらないような…」 すると、突然地響きが起こった。 「地震!?いや、違う…何かが近づいてくる!!」 ゴゴゴゴ…ボロボロボロッ! 私達の進む通路の壁から出てきたのは、肉厚の人影だった 「ヒェッ…ヒェッヒェッ…ヒュッ……イキテ……カエスカ………ヒェッ」 「あなたは…コカ!」 夥しいまでの鮮血を浴びている。彼は別に傷を負ったわけでもなさそうだ ひょっとして、誰かを殺したのだろうか。 「ヒトリニガシタ…ヘッヘッヘッヘッヘ…」 「ジーザス。誰なのこの人…頭がおかしいわ…」 「ちょっと色々とありまして…まずいですね、うまく巻いたと思ったのですが」 私は狭い通路を利用してトトとクーリの盾となり、戦闘に身構えた 「ねぇ、もしかしてこの人…」 「どうしたんですか?トト。」 「依頼の…村長さんの言ってた不気味な声の主なんじゃないかなって。」 確かに、人か魔物か分からないような奇声を発するこの不気味な声 私達は聞いたことがないのですが、条件に当てはまる節はあります… 「…なるほど」 「ナンノオオオ!!!ハナシーーーー!!!殺させロロオオオォォォェェェェェ!!!!!!!」 「戦う前にあなたにひとつ聞きたいことが…」 「アアアアアア!?!?!?」 「私達が穴に落ちた時、あの骸骨の山はあなたが築いたのですか」 私が質問を投げかけると。コカは兜の中でも分かるような恍惚な眼光で私達を見てきた 「ソオォ…ダヨォォォ…オレハ…コンナニヒトヲ…いっぱい殺しましターーー!!ましターー!!!!!」 「そうですか…ならば罪人は…" 滅 し て "差し上げましょう!」 私は剣を抜く。しかし、その瞬間コカは一瞬にして私の間に入り、剣を振り下ろしていた (早い!) 間一髪で受け止めた私の剣は、コカから抜かれた青く輝く銀色の剣に押されつつあった 後ろに戻って剣の力を解放したいところだが、何分通路が狭いため 後退したとしてもクーリやトトに被害が及んでしまう可能性があるからだ。 「ぐぅっ…」 すさまじい力でギリギリと私との間合いを詰めていくコカ。 トトも何か呪文を練っているようだが、如何せん準備が遅いようだ。 「このままではいけませんね…」 そう諦め掛けたその時、クーリが私に向かって叫んだ 「構わないで後ろに下がって!」と 私は何かあると思い、その言葉に従う。すぐさま地面を蹴り、後ろジャンプで後退する コカは続けざまに私に二撃を振り下ろそうとする。すかさず身構えたが、今度は勝手が違った 私とコカの間にクーリが割って入ってきたのだ。次の瞬間コカが剣を振り下ろし クーリを頭部から下部に掛けてばっさりと斬った 「死ネエエエエエエエエエエエエェェェ!!!!!!!!」 ズバァッ! 「クーリイイィィィィ!!」 ほとばしるクーリの鮮血。びちゃびちゃと音を立てながらコカに降り注ぐ この瞬間、コカがその血により少々怯んだようだ 私は大声を発しながらコカに飛び掛った 「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 ゼクスはコカの被っていた兜を真っ二つにした。 「ギャアアアァァッ!!!」 しかし頭部には間一髪当たらず、少量の血が出るのみだった コカは不気味なうめき声を上げて、再度私に襲い掛かってきた その時だった ≪殺して!わたしを殺して!≫ どこからか声が聞こえた。幻聴だろうか ≪わたしは魔剣ヴェルセリオ。どうかあなたの手でわたしの心を砕いて!≫ 一瞬の事だと思っていたが、はっきりと、そして一字一字偽りなくはっきりと聞こえていた 「ヒャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 ズバッ ビシャッ! 三撃を降ろす前に私はコカの腹を×字に斬り裂いた。烙印「ゼクス」の文字通りに 「ガアアァァ…ッッ!!ガハァッ!」 コカは血反吐を吐きながら断末魔を上げると、その場に力なくゆっくりと倒れた 「今のは…?」 私もまた、膝を突いてその場に倒れた。間もなく、意識を失った… ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 私を呼ぶ声が聞こえる。体を起こそうとしたが思ったより重く、動かない。 「ジーザス!起きてよ!」 僅かに目を開ける。トトと、それにクーリがそこにいた。 私はどうやら死んでしまったようだ…さようなら人生、さようならRPG世界観 もう会うこともないでしょう。せめて魔王は倒しておきたかった。 「先生!ジーザス息しなくなったよ!」 「こりゃいかん!心臓マッサージじゃ!!ハッ!!」 ドウゥゥッ! 「おぶぅっ!」 目覚めの一発は医者による心臓マッサージに見せかけた 全身麻酔の電撃魔法だった(皇国厚生省承認) 私を呼ぶ声がまた聞こえる…テイク2ですか… 「ジーザス!起きてよ!」 私は普通に起きる。トトはもちろんだが、そこにクーリもいた 「あなた…」 「ふふ、安心してよね。あたしは不死身の体を持ってるんだから」 そう、彼女クーリ・チロリアは恐ろしいまでの再生力を持った特殊な人間だったのだ その謎を解明するために自らが冒険者になったという… 「でもすっごい痛かったな。さすがに気絶しちゃったよー…あれ? じゃああそこで意識あったまま残ったのトトだけなんだ」 「うん。それでとりあえず助けを呼びにいったんだけど、あの場所、村にかなり近くてさー 村の人たちと一緒に運んだんだよ。」 「ふんふん」 「でさ、クーリって"重いよね"」 「ふんふん。…!!ぶぶぶ、ぶっころしてやるぅぅーー!!」 はぁ、平和がやっぱり一番ですねフフフ 「帰ろ…あるべき形に…」 少女の魔物は、黒き森の茂みに蒼銀に光る剣を置いた    〜♪        〜♪ 剣は回り続ける自身の運命に嘆いていた 本来使われるべき存在と見做されないことを 我が名は『魔剣』 されど真の名は『聖剣』と 今こそ 道に置かれた剣は人へ人へと隔てて渡り やがて相応しき運命の使い手の元に渡るのであろう… 鳴り響く優しい歌声、旅する勇士達の為に謡う歌 知ってか知らずか、魔族の見送り手"くろっち"は 再び深い森の中へと姿を消した ジーザス・ツヴァルト トト くろっち クーリ・チロリア 07/01/14(日)10:05:03 「荒ぶる風」キョウ 07/01/13(土)08:17:26 炎城焔(えんじょう ほむら) 07/01/12(金)20:19:28 コカ=コォラァ 06/12/24(日)23:53:43 ヴェルセリオ 07/01/13(土)01:36:41 RPGSS ジーザスの冒険『踊る洞窟迷宮!』終