争いは加速する。止めようもなく。楔の外れた歯車は、どこまでも加速し続ける。            ――カイルのディシプリン――   ジュバ=リマインダス ――――                 ―――― 魔剣ビスティ  ファーライト北部へと逃げ延びたカイルの元を訪れるロリペドとジュバ。  ジュバ=リマインダスはカイルに言う。  お前の首を差し出して、平和を得ると。  そのことにカイルが答えを出そうとした瞬間、不意の闖入者が現れる。  闖入者は、人ではなかった。  魔同盟が剣の女王、ビスティは――『西国一』は代の変わりに、その手をジュバへt差し出した。 「笑えない冗談だな。俺は魔同盟に入ればいいのか? それとも――お前の国につけばいいのか?」 「貴方は断ることはできない。貴方の大切な彼女は、こちらの手の中にあるのだから。  だから私の手を取りなさい、ジュバ=リマインダス。そうすれば、貴方は、東国どころか――  ――人類最強になれる」  西国最強と同じように、東国最強を得ようとする聖女。  ジュバの答えは――ただ一つだ。  彼は、捉えられた副団長、クレセント=ララバイへと告げる。 「ララバイ――東国騎士団とは何だ?」      † 「主人に見捨てられた気分はどう?」  縛られ、武器を奪われ、身動きのとれないララバイを見下ろしてビスティは言う。  けれど、ララバイはひるまない。  それどころか。 「一つだけ教えてやろう、魔人」  どこか不適な笑みを浮かべて――答えた。 「東国騎士団を、舐めるな」   クレセント=ララバイ ――――                 ―――― 銀陽の魔刃 「キキカカカキア! コノ女! コノ女コソが!  闘ウニフサワシイ敵ヲ見ツケタゾ!」 「お前は――」 「サァ武器ヲトレ女! 否――クレセント=ララバイ!」      †  事態は加速していく。  当事者たちの思惑を置いて、どこまでも、どこまでも。  止まり方を、忘れたかのように。  そして―― 「くそッ!」  斬れた扉を蹴り飛ばして、ジュバ=リマインダスは毒づいた。蹴られた扉が一撃で砕け散る。  それでも、ジュバの表情から苛立ちは消えない。 「あの糞女、俺のモノに手ェ出しやがって――!」 「落ち着いてくださいジュバさん、それよりララバイさんは、」 「いや、あいつは問題ない。それよりも問題は――」  ジュバ=リマインダスは、より深く顔をしかめて。 「どうしてそんなことをするか、だ」   天城狗頭丸  ――――             ―――― ユリア=ストロングウィル 「大変です団長!」  通信布がつながると同時に、見覚えのある顔が絶叫をあげていた。  南国で戦った、ユリア=ストロングウィルだと、すぐには気付かなかった。  あせりのあまりに、形相が変わっていたからだ。  あの命をかけた南国での戦いでさえ――そんな表情は、見せていなかった。 「落ち着けユリア! 状況を説明しろ!」 「だから、大変なんです団長、ですから、今――」  ユリアは、落ち着くことなく、危機を告げた。  ――そして。 「ファーライトが、皇国に攻め落とされました」             ――戦争が、はじまる。          ■ KYLE'S DISPLIN SIDE3[Providence] ■ 「脆い! 脆すぎるぞ! 俺を止めたきゃ――聖騎士くらいはつれてこい!」   クラウド=ヘイズ ――――               ―――― エレム=P=エルンドラード 「これも天啓です。抵抗しなければ殺しはしません」  越えられないはずの山をこえ、攻められないはずの国を攻める皇国軍団長。  少数精鋭による奇襲により、ファーライト西首都は一晩で占領される。  あまりにも良すぎる手際。  ありえないはずの道。  その、全ては。 「全て――あんたの計画通りに事態は進んでるぞ」   クライブ=ハーシェッド ――――                  ――――長腕のディーン 「感慨も沸かないな。これはまだ、途中にしか過ぎない」  ファーライトすら、踏み台にしか過ぎず。  英雄を目指す男は、情報を武器に戦い続ける。  後ろを見ることなく。  過去を見ることなく。  前へ、前へと。 「カイルウウウウウウ! お前が、お前がァァァ――!」   ダリス=グラディウス ――――                 ―――― レイエルン=アテル 「悪いけど金貰ってるんでね。あんたはここで、足止めさせてもらうよ」  過去にとらわれ、暴走するものと。  生きるために、闘うものと。  意志をはらんで、戦闘は加速し続ける。  戦闘は、戦争へと、移り変わる。 「先輩として……お前に、異形の戦い方を教えてやるよ」   ソィル=L=ジェノバ ――――                 ―――― ユメ=U=ユメ 「答えはイエスです、ミスターヘイズ。貴方の旅は、ここで終わります」  騎士は戦う。  己が国のために。 「ファーライトの姫君、そのお命頂戴する!」   龍将軍ナチ ――――            ―――― ユルゲル=ジェイダイト 「不愉快だ。私の知らないところで話をすすめるな」  戦士は戦う。  己が意志によって。  そして。  そして――  ――戦火の中。  黒い旋風は、黄金の騎士と剣を交えることになる。 「『剣は己の 信念の元に』」  カイルのディシプリン 第三巻 三月中旬公開予定     COMMING SOON!