「本当に……、疲れた……」  そう言って赤い長髪の男はベッドに倒れこんだ。  みしり――と音がして、かけたままのサングラスのフレームが曲がった。  しかし男はそんなこと気にはしなかった。  とりあえず今は何も考えず、死んだように眠りたかったのだ。        ――世界が消えずにすんだのだから。                 『炎は揺らぐ』  始まりは些細な一言だった。  いや、どんなことも些細な事から始まるのだ。そう考えるとこれも当然といえば当然だ ったのかもしれない。  ハーフエルフの青年――といっても見た目はまだまだ子どもである――お肉料理研究家 のハロウド=ガスト=グドバイがぼそっと呟いたのだ。 「事象龍食ってみてぇな」  と。  その発言を聞いたガストの友人である俺、王立魔法研究所所長のガレット=フラシュル はいつもの奇行がまた始まったと思った。  大概俺がそれを馬鹿にすると泣いて部屋を飛び出して翌日にはケロッとした顔で帰って くる。だから俺はいつもの通り馬鹿にしてやった。 「そんなガキみたいな阿呆な事言ってるからいつまで経ってもおちんちんに毛が生えない んだよ」 「毛のことは言うな毛のことは! ……う、うわあぁぁぁん!」  と、ここまではいつもの通りのやり取りだった。それで、扉から勢いよく駆け出してい くガスト――のはずが。 「うぶっ!」  何かに当たってそのままこけた。  その何かって言うのは―― 「いったぁー……、おいちびっ子いつまでも人の上に乗っかってるんじゃないわよ」  ワインレッドの髪の毛をツインテールにし、さそりの尻尾が尻から生えている罷璃= ニードレスベンチだった。  よくよく見ると後ろには魔物生態学者のビギナーニ=ベンリとそれに雇われた冒険者の ティナ=グリーグスもいた。 「んだよ、罷璃か。ティナちゃんだったら良かったのによー。てめぇの乳なんざ興味ねー ぜ。しっし」  そそくさと罷璃から退いて悪態をつく。結構ひどい扱いだとか思いながらもきっと俺も やるだろうからからしょうがないとも思う。つまり罷璃はそんな位置づけの奴なのだ。 「んで、どうしたんだよ。ビギィに罷璃はともかくティナちゃんまでこんなとこに来るな んて」  こんなとこに入り浸ってるガキはどこのどいつだ。  そんなことを考えながら三人に目を移す。スライムを頭に乗せたおかっぱ頭の眼鏡娘の ビギィ。ビキニアーマーで、でっかい大剣を背負ったティナ。それから罷璃。こいつらは 街で見かけたら目立つんだろうな。見てみたい気もするが、ビギィ以外はなんの仮装と間 違えられる気がしないでもない。と、そんなことはどうでもいいのだ。こいつらは一体何 をしにここに来たんだろうか。その用件を聞いてみるが、えへへと苦笑しかしない。 「何があったのか言わないとここにあるマライムが罷璃を襲うぞ」  などと脅してみても、二人は別に罷璃だから別にいいという顔をするし罷璃は罷璃で顔 を真っ青にするだけだしどうにも埒が明かない。すったもんだで三十分の押し問答の末、 ようやくビギィは口を開いた。 「ごめん、鉄火教団とトラブった。匿って。てへ☆」  ふざけんなよ。              そして小さな歯車は動き始める 「全くどうなってるんですかね。私の鉄火刀が目当てって訳でもなさそうですが」  愛用の鉄火刀アン・ボニーとメアリ・リードを振り回しながら魔族の少女、マキア=ナ クティスは傍らにいる女性に話しかける。 「そうですね。でも、私が野外調査に出ていることは彼らしか知り得ないわけですから私 が目当てということも無いでしょう?」  女性の右手から氷柱が現れ、目の前にいる男たちの足、腕、肩と急所をはずして突き刺 さっていく。マスクの下では苦悶の表情を浮かべていることだろう。 「でも所長、彼らしか――」  しかし、マキアがその先を口にすることは無かった。その女性が――王立魔法研究所所 長、リカナディア=アーキィがその口に人差し指をあて、さえぎったからだ。 「彼らは私の友達、そして仲間。そんなことを言っちゃダメよ」 「――ッ。御意」  そう言ってマキアは口を開くのをやめた。  私はこの方に仕えている。この方が信じることは私も信じよう。たとえあのガキどもが 何をしようと、この方が信じるのならそれは私も信じるに値するのだから。 「マキア。来たよ!」  二人の頭上を影が通り過ぎる。それは旋回して二人の下に急降下してきた。雲掻き―― クラウドシェイカー。マキアとリカナディアは小さな翼を一打ちして常人には不可能なほ ど高く飛び上がり、クラウドシェイカーに飛び乗った。 「よし、大成功」  そんなリカナディアの呟きを聞きつつ、下を確認すると何人かの男がこちらに銃を向け ていたが届いていなかった。マキアは小声でバーカと呟きクラウドシェイカーにここから 遠く離れるようにお願いした。 「鉄火教団ですか。厄介なのに目をつけられましたね」  リカナディアに呟くが彼女は全く恐れてもいない無邪気な顔で 「なんで?」  そう返した。その目には何も映っていない。真紅の瞳の中に漆黒の闇が浮かんでいるだ けだった。  あぁ、やはり魔族の頂点に君臨するのはこの方だけだ。  マキアはそう思った。  罷璃、ガスト組は先行して王立魔法研究所を抜け出していた。先祖の失敗を教訓として 重装備をしていない罷璃はそれなりの素早さを持っていたし、ガストは元々この件とは関 係ないためこの二人が研究所から抜け出すのは容易だった。 「しっかし、何で俺とお前なんだよ。同じニードレスベンチでも大違いだぜ」 「うっさいわね、いつも更葉更葉って。私はニードレスベンチだけどご先祖様とは違うの よ。ニードレスベンチってだけで一緒のくくりにしないでよ。鬱陶しい」  しかし、この二人は壊滅的に仲が悪かった。 「ブス」「チビ」「ペタ」「ガキ」  口を開けばお互いをけなす言葉が延々と吐き出される。  皇都から少し離れた街でティナとビギィと合流しガレットの手引きでほとぼりが冷める まで待つ手はずだった。ガストは一応罷璃の護衛という役目だったのだが、三日目の朝、 いつものようにお互いを貶しながら朝食を食べていたとき―― 「うるさいのよちび。黙って食べてればいいのに」 「――はぁ」  いつものように罵倒が帰ってくるのかと思いきや、溜息が還ってきて罷りは少々面食ら ってしまった。 「な、なによ」 「もうやってらんないね。いくらガレットの頼みでもこいつの子守なんてやってられるか よ。大体俺無関係なんだし。おい、相棒。こんな奴うっちゃってもいいよな」  ガストが誰かにそう話しかけると懐からダマスカスの晶妖精、ロアージュが出てくる。 「まぁ、相棒がそう思うんならいいんじゃないか。ガレットだって分かってくれるだろう さ。それに『我銀月の――』」 「だあぁぁぁぁ! その先を言うんじゃねー!」  ロアージュと同じように――と言っては語弊がある。正しくは悶えながら――泥の晶妖 精、ダートが罷璃の懐から現れた。 「晶妖精ランクトリプルエスのダート様ならてっぽー集めが趣味の鉄火教団なんかに負け やしないだろ」  にししと悪戯っ子のようにダートに笑いかける。ダート自身まんざらでもないらしく、 頬を赤らめながら「そ、そんなこと言うなよ」とか言っている。 「んじゃ、そういう事だ」 「ちょ、ちょっと……」  ガストは罷璃に背を向けて左手をひらひらと振った。罷璃は頬を膨らませ少し涙目にな っているがガストの小さな背中をただ見ているだけだった。そして、最後まで何も言わな いままガストが宿の外に出て行くのを見送った。 「――良かったのかよ相棒」 「あぁ、これが一番いいだろ――っと」  宿から出たガストは朝食時にくすねたナイフを茂みに向かって投げつける。それと同時 に返ってきた。――鉛の玉が。  それはガストの鼻先を掠め、その先にある民家の屋根を壊した。 「へへっ、飛び道具相手たぁ燃えるじゃねぇか。行くぜ相棒」 「おうよ、相棒」  お互い声を掛け合って茂みに向かって二人は飛び込んだ。  王立魔法研究所地下二十階――。  そこには人魔大戦以前から一つの魔法陣が隠されていた。 「んーと、五番のがこうで、八番があぁで……ってダメだぁー」  その魔法陣の周りをガレットが忙しなく動いていた。  あーでもこーでもないとぶつぶつ呟きながら三日が経った。本来ならもうとっくにガス トと罷璃に合流している頃である。それなのに、未だにガレットが皇都から出る式が完成 していないのだった。 「ガレットー。もういいよー。私らだけで大丈夫だってば」  半分飽き飽きした顔でビギィが言うがここまで来たらただの意地である。 「馬鹿野郎、未だに研究所の周りに教団員がうろうろしてんだぞ。アホ面下げて出てった らすぐ蜂の巣だぞ」  などとガレットは気の利いたことを言っているがそれは表面上で、本当はなんとしても 今やっている式を完成させなければ気がすまなかったのだ。 「暇ですねぇ」 「ホントホント、こんな埃臭いところで」 「すみませんねぇ。所長は頑固なもんで」 「ですよね。ガレットてばいつも頑固で――って誰!?」  いつの間にか、ティナとビギィの隣に誰か知らない白衣の男性が座って、一緒にお茶を 飲んでいたのだ。 「おや、申し訳ありません。ワタクシ、王立魔法研究所の副所長です。以後お見知りおき を」  白衣の男は頭を深々と下げた。にやにやとした笑いが印象的だったが、何故かビギィも ティナもその男に一種得体の知れない恐怖を感じた。  ――この男は普通じゃない。と。  それに長い間研究所に入り浸っているが、こんな男ビギィは見たことが無かった。 「驚かせてしまいましたか。そんな怖いものを見る目で見ないで下さいよ」  男はそう言ってよよよとポーズをとっておどけて見せたがビギィから恐怖心は消えない。 「ま、いいでしょう。ところで、そろそろ出発したいと思いませんか?」  唐突に話を変えられ少し混乱したが、ビギィはこくりと頷く。 「所長は頑固者ですからね。さて、じゃあ準備をしておいて下さい。三十分後にはもう出 られますから」  そう言って男は丁寧にやんわりと、しかしある種の拒絶を持って二人を地下から追い出 した。  扉の奥で何が行われるのかわからない。  でも、ビギィもティナも、ガレットには悪いと思いながらもそそくさとそこから離れた。 「ここは――」  男は目を覚ました。  まず最初に目に入ったのは試験管を大きくしたようなもの。  それが所狭しと沢山並んでいる。  そのどれもの中に腕や、足、胴体など。いわゆる人のパーツがぷかぷかと浮かんでいた。  次に真っ赤なマスクをかぶり、灰色のローブと赤色の袈裟を纏った沢山の人間が自分を じっと見つめていた。  男が「ここはどこだ」と言葉を発するとその奇怪な人間たちは湧き上がった。  それぞれが「やった」だの「成功だ」だの声を上げる。  男は事情が飲みこめず目をぱちぱちと瞬いた。  それを見て、そのうちの一人が男に駆け寄り。 「君は生き返ったのだよ。記憶はあるかい?」 「ん、ん――」  頭を抱えるが何も思い出せない。  自分が誰なのか、生き返ったといわれたが何故自分が死んだのか。  全てが分からない。 「記憶障害か。まぁいい。君の名前はね、――と言うんだよ」 「え?」 「――だ。いいかい、君はこの時代にまた生きることが出来るんだよ。好きなことをして いいんだ。我々はそのための支援は惜しまない」  だから男は決めた。  まずは自分の記憶を取り戻そうと。  そう考えながらマスクの男たちが次々と持ってくる防具を着込む。 「これが――貴方の武器です。真滅の赤」  そして最後に二人がかりで運んでこられた大剣を手にする。しっくり来る。  ぎゅっと握り締めると炎を纏った。 「では、お送りいたします」  そう言われ、男は沢山のマスクの人間に見送られながらどことも知らぬ街に出た。           やがて小さな歯車は大きな歯車を巻き込む 「バーカバーカ」 「なによこのガチンチョ!」  お互いをののしりあいながら走る罷璃とガスト。  その前方に鉄火教団員が待ち受けて――、 「ここから先は通さないぞ」 「「うるっさい!」」  ガストの神殺と罷璃のオールブレードが動いた瞬間、その教団員は地面に倒れていた。  そして、その勢いよく扉を開けると大理石で出来た原初の朱を拝んでいた狂信者たちが、 勢いよくドアを開けた罷璃とガストを睨んだ。 「……おい罷璃、一時休戦しないか」 「……そうね」  そうお互いに確認しあった数秒後一斉に襲い掛かってきた。 「おい、てめぇアーキィはどうした!」 「所長は――リカナディア=アーキィは攫われたと言ったのです」  憮然とした態度でマキアはそう返す。 「俺はお前が嫌いだけど信じてたんだよ! アーキィをしっかり守るってな。何だこのざ まは!」  ガレットはマキアの胸倉を掴みそう怒鳴るが、依然としてマキアは動じない。 「だからなんだというのですか。私は、まだあきらめていなません。奴らの目的が原初の 朱の顕現だとするのならば、所長はそれに必要な魔力を持つ生贄として捕らえられたに決 まっています。だから私はそこを狙う。来るんでしょう? 一緒に動きましょう」 「――当たり前だ」  悪態をつきながら、ガレットは鉄火教団本部の扉を開けた。 「撃墜ー。ティナちゃん、これで星いくつ?」 「千飛んで二十三ですね。しかしよくもまぁこれだけわさわさと出てきますね。やっぱり 裏口とか作った方がいいんじゃないでしょうか」 「だよねだよねー、迎撃にはいいけど出入りに不自由だもんね。ん、また撃墜ー」 「千飛んで二十四ー」  そんな、のほほんと魔導通信で会話を交わしながらビギィは数キロ離れた丘から狩人の 右で本部に入ろうとする教団員を片っ端から射り、ティナは入り口でばっさばっさとなぎ 倒していた。  中にいるガレット、マキア、ガスト、罷璃が苦労しないのも増援を防いでいるこの二人 の活躍に寄るところが大きい。 「私たちってほんと貧乏くじですよね」 「んー、いいのいいの。いつもいじってる分たまにはガレットに美味しいとこあげないと ね。っと、ティナちゃーん。ちょっと厄介な増援が来たよ。ハイオークだ。人間だけじゃ なくって魔物まで躾けてるとはここの神様はよっぽど求心力があるんだね。私も宗旨替え しようかな」 「ビギィさんたら信じちゃいないくせに。さて、ハイオークですか。少しぐらい本気、出 しちゃいましょうか」  そう言うとティナの頭からめりめりと音を立てて角が生える。ベルガ族の血統である ティナはこれで自らにブーストをかける。本来ならこれにフレアを使うのだが、今はガレ ットに貸していていない。それでも、ハイオーク相手であればこれで十分だ。 「楽しまセロ――」              そして世界は反転する 「俺の名前は。俺の名前は――真滅の華。事象の騎士」  ゆらりと眼帯の男は炎を纏った大剣を構えた。  マキアの手の中にいるリカナディアは未だに目を覚まさない。遅かったのか――。 「まだよ、事象の騎士はその意思を代行している証として鎧を纏う。でもあれはまだ普通 の恰好のままよ」  剣で身体を支えながら罷璃がそう言う。 「クヒヒヒヒ、その通り。しかしな、わが手にあるそこの悪魔の魔力を封じ込めた宝珠と、 この男さえいれば全てが終わる。さぁ、始まるぞ。この世は終焉を迎え新たなる世界を生 み出すのだ!」  汚く笑い、鉄火教団の最高神官はリカナディアの魔力が詰まった宝珠を天高く掲げ、 「めうるふたぁぐ・まうるぐへぇる・いあ・もぉるて――」  詠唱を始めた。  どの魔法系統にも属さない独特な詠唱、呪縛をかけられた俺とマキア。それに瀕死の罷 璃で何が出来るだろうか。何も出来はしない。  詠唱が進むにつれて光を増していく宝珠。  そして――俺は諦めた。 「なんて顔してんだよ馬鹿野郎」  聞き覚えのある声が、俺の横を通り過ぎていった。  俺が喧嘩で負けた時いつもかけてくれた言葉。 「俺がぶっ飛ばしてやるからな、待ってろ」  前を向いたままそれを言ってくれるハーフエルフのちびっ子。  ハロウド=ガスト=グドバイ――俺の大親友だ。 「俺のダチと姉貴とえーと他はいいや――に何しやがる、何度死んでも詫び切れねぇぞ!!」  罷璃が不満そうな顔をしているがお構いなしに至高と究極を腰元から抜。、二つのチェ ーンソーはぐんぐんと回転速度を増していき、ちりちりと大気を切り裂き始めた。 「まずは姉貴の魔力――返してもらうぞ」 「ふぉるぐてぇん・ごぉるふはぁん……――ッ!?」  空間歪曲による縮地法、神官がそして傍らにいた男が反応する間もなくガストは宝珠を 切り裂いた。  キィン――と宝珠の欠片が床に落ちる乾いた音がした後で部屋を膨大な量の魔力が包み 込み、リカナディアに戻っていくのを感じた。 「次はてめぇ――ん?」  斬りつける直前、ガストは神官の異変に気が付いた。ガタガタと震えていた。 「詠唱が――終わってしまった。途中で――終わってしまった。どうしてくれる」  震えたままガストの胸倉を掴み怒声を浴びせる。 「お前のせいで途中で終わってしまった! どうする! 世界が、世界がひっくり返る― ―ぞ?」  それは起こり始めてしまった。神官の身体がぐにゃりと変わり人の形をした魔物、いや それ以前の何か別の生物に成り果てた。  高い耳鳴りのような音がして――そこは見たことも無い場所に変わってしまったのだ。              そして事態は終結へと向かう 「残量いくつなのよ!」 「もうありません。ま、二刀使いとしても貴女に負ける気はありませんから大丈夫です」  メアリ・リードとアン・ボニーを振るいながら自信満々にマキアはそう言う。 「きーっ! あんた生きて戻れたら絶対に泣かす!」 「ふふ、楽しみにしてます。――と、そのためにはまず地上に出なければいけませんね」  二人は教団員の成れの果てを見ながら頷きあった。 「おい、リコは助けに行かなくていいのかよ」 「大丈夫だろう、アーキィは多分俺らの中で一番強いんだから」  ガレットはサングラスを懐から出して、中指でブリッジを押し上げる。 「それよりもまず俺らのことだ。共闘なんざいつぶりだ」 「さぁねぇ。ま、身体が覚えてらーな。行くかダチ公」 「おうよ、食いしん坊」  ガストの口が歪み、ガレットの白衣がはためいた。ここに学院時代の悪夢が再現される。  リカナディアは"人であったもの"の死体の中で眼帯の剣士と相対していた。  彼は小さな声で呟き続けている。俺は真滅の華だ――と。  リカナディアは小さく首を振る。貴方は真滅の華ではない――と。  小さな瓦礫が崩れた。  それを契機として二人は刃を交える。  男は真滅の赤と呼ばれた大剣を、女は覇王の剣と呼ばれた魔族の剣を。  魔族により鍛え上げられた本物の魔剣、そしてそれとの打ち合いに耐えうるそれは事象 の剣と同格であると言ってもいい。 「俺は――真滅の華だ!」 「違う、貴方は――貴方はッ!」          俺キャラスレRPG世界観人魔大戦後SS『炎は揺らぐ』――ComingSoon この世界何度滅びかければ気が済むんだろうなぁ