RPG SS 神々の黄泉 第三話「海賊VS海賊(前)」 「海が綺麗ね……ビギィ……」 私はキラキラした笑顔でビギィに尋ねる。 「……」 対するビギィは顔面蒼白で、黙っていた。 「ほらあそこ、カモメが飛んでるわ」 私は必死になって話題を続けようとする そんな私にビギィは 「…………」 だまって俯いたままだった。 ……もう出航してからかれこれ数時間こんな調子である。 「……無理しなくて良いのよ?」 なんと言うか……こう、いたたまれない気持ちになって私はビギィに声を掛ける。 「無理……してない……ッ!」 突然、ビギィは口を押さえる。 ……この仕草はまさか!? 「……ちょ!? 頼むからここではかないで!」 私はビギィの爆弾投下にあたふたする。 「だ、大丈夫、セーフ、セーフ」 と親指を立てて、私に安心感を与えようとする。 ……顔面はまだ蒼白だけど 「はぁ……ともかく港に着くまで下で寝てなさい」 「そうニャ、海上の事は僕に任せるニャ」 と傍にいたこの船の船長、ソテー・グリルが答える 「……あんたが言っても説得力が無いけどね」 ボソっと、ソテーに聞こえないように突っ込んでやった 「うん、そうして……キャア!」 突然、爆音共に船体が大きく揺れる その揺れにビギィはバランスを崩して、思いっきりずっこける。 「な、なに!?」 私達はすぐさま爆音のした方向を見る。 ……そこには沢山の船があった。 西国製、東国製、さらにはロンドニア製と思われる戦艦が。 まるで戦艦のデーパートと言わんばかりの様相である。 そしてそれらの戦艦の旗には……もれなく全て鮫のような形の旗が掲げられていた。 「……しっかり掴まるニャ」 と、ソテーが言った瞬間、船の速度があがり始める。 ドーン! ドーン! 船が速度を上げてる間にも容赦なく砲弾が私達に襲いかかる。 だがそれを見事な舵裁きでソテーは避ける。 「ヒィ! あ、あう〜」 右へ左へ、船は大きく揺れ動き、そのたびに私達に大きな加重が襲いかかる。 そうこうこうしている間、グングンと船の群れを引き離していく。 「逃げられたかしら……?」 私は思わず前方を見る。 「……そう言うわけでも無いニャ」 そには島があった。 「……はめられたって訳ね」 その島は山のように高く、そして何者にも壊されそうにもないくらい分厚い壁がそびえ立っていた。 所々に砲台が付けられたその姿は要塞と言っても過言ではない。 当然、その島の頂上には……鮫の旗が掲げられていた。 「どうやら、アレが本隊らいしいニャ」 そしてその島から就航している船の数は先ほど私達を狙った船の数より三倍近く差があった。 特に一番先頭には禍々しいくらい黒く、私達の乗っている船より遙かに巨大で、主砲なんて直撃したらよくて大破、 悪ければ海の藻屑になりかねないくらいでかい砲台。 まさしくその船は全てにおいて私達に威圧感と絶望感を与えていた。 ……あんなの勝てません、いやマジで 「どうするのよ!? 後ろももう迫って来てるし……」 後ろの船もだんだんと私達の距離を縮めてきている。 まさに追いつめられたネズミとはこのこと……正しくは猫か 「……ビギィ、って言ったかニャ? お願いがあるニャ」 ソテーは何かを決意したような顔でビギィに言った。 「……?」 「……船の中で待機して欲しいニャ」 「……分かりました」 と、そう言いビギィは船の中に入っていった。 ビギィにも分かったのだろう、これから起こる戦いの激しさが 「行くニャ! 窮鼠猫を噛むと言う事を教えてやるニャ!」 (……いや猫なんですけど) ―― 「……うまくいったな」 男は自分の成功にほくそ笑っていた。 「そうですねアニキ!」 男の周りにいた者達が答える。 船長室でワインを飲み、男は勝利を確信していた。 男の名はイルカ 自称最強の海賊、海賊団『鮫』の団長である。 「ま、『豪雷』の初陣に使うのは少々小さすぎたか?」 イルカが乗っている船『豪雷』は昨日できあがったばっかりの新造艦である。 と言っても所々に使われている技術はロンドニアの軍艦の技術を元に、各国の戦艦の良いとこ取りをした、まさしく 最強もしくは究極の戦艦……それが『豪雷』 「様子の方は……ん?」 イルカは下の様子を見たとき違和感に襲われる。 なんと獲物である船――『豪雷』より遙かに小さいその船は彼らの船に突撃をしてきたのである。 「ッチ!」 思わずイルカは舌打ちをする。 小さい者が巨大な者に勝つ唯一の方法、それは接近戦、それも密着状態になるくらい近づいた。 「……おい」 「アニキ?」 「『海斬刀』の用意……良いか?」 しかしイルカとて海賊団の団長、その程度の事は想定内の事である。 「ア、アニキ!?」 すなわち白兵戦が来る事ぐらいは予測済みである。 「ククク……面白れえじゃないか、久々の白兵戦だ……準備怠るんじゃねえぞ?」 そう、イルカは部下達に言い甲板に降りていった。 ――これから始まる戦いに胸を躍らせながら