RPG SS 神々の黄泉 第五話「猫娘に休みはない」 チュン、チュン うららかな陽光の中私、戦乙女部隊隊長リシェル・メルカーラは朝を満喫していた。 「……」 目が痛くなるような大量の書類と共に。 ……言っておくがこの量は私がためておいた物じゃない。 むしろ私は宿題やら書類の整理とかは早めにやる方だ。 「……ああ、もう! なんで他の部隊の書類を私がやらなきゃならないのよ!」 ……キレてもしょうがない、コレは運命なんだと私は自分に言い聞かせた。 でもね……それでもね ナンパするためだけに仕事すっぽかす野郎の後始末をなぜしなきゃならないのよ! クソ……今日に限って重装甲騎士団は国王の身辺警護回ってるし、魔道兵士団は『実験』するので忙しいときた。 唯一暇な私におはちが回って来る羽目になった。 ……というか魔道兵士団方は只の嫌がらせだろう、隊長の性格からして 「……せっかくの休暇だったのに……」 ……私だって人間だ、大仕事をした後は休みたい。 「クソ……大体この前の仕事だって私でなくても良いだろう……全く……」 この前の仕事、それはポーニャンド王国の親善大使を務める事である。 とは言っても私は存在するだけで後の事は魔道兵士団奴らや王がほぼ全てやってると言った状況だ。 では、なぜ私か? ……私は帽子の中にあるネコ耳をかきつつ呆れた表情をする。 ぶっちゃけ私が忌み嫌っているキャットハーフの血……すなわち猫人のハーフの血に白羽の矢が立ったと言うわけだ。 「……あいつらちゃんと見つけてたのかな?」 私だって只こうやってデスクワークをしてるわけではない、ちゃんとヤツを捜す努力をしている。 「隊長〜!」 と、私が仕事に再会した瞬間誰かの声が聞こえる。 ……多分あの声はキューミリ=パラヴェラムね。 「隊長、見つけましたッス!」 「ホント!?」 私は猫が嬉しがるように机から飛び上がった。 「ホントッス、今ジャニス先輩が見張っているから逃げる事は不可能だと思いまッス!」 あいつが見張っているなら逃げる事は不可能ね、いろんな意味で。 「すぐに向かうよ、キューミリ」 「は〜い、あ……ッス」 急にキューミリは何かを思い出したように足を止めるた。 「ヤツを捜していたらこんな物を見つけたッス」 そう彼女は懐から一冊の本を取り出す 「『週刊冒険者』? それが何が関係あるのよ?」 ちなみに週刊冒険者ってのは各国の有名人や最近流行の出来事を特集する冒険者御用達の雑誌の事である。 「特集のところッス、ほらそこそこッス」 私はページをめくり、特集のところまで行き当たる。 「……」 「隊長が載ってるんでッスよ? これで隊長も有名人の仲間入りッス!」 いや、まあ載ってるのは載ってるんだけど……その特集がね モフリたい人物特集 「……キューミリ」 「はい?ッス」 ボカァ! 私は無言で裏拳をかました。 「……!?」 「こんな事してないでさっさっと行くわよ!」 ……ホントいうと微妙に二位なのが悔しいのは秘密だぞ 「ジャニス? ちゃんと見張っていた」 私達はヤツを監禁している部屋まで来た。 ちなみに私の後ろにいるキューミリのヤツはまだ殴られた顔が痛むのか顔をさすっていた。 「あら? 心配しないで、この通りちゃんと見張っているわ」 ……うん、大丈夫なようだ 「……リーンフォンス、とっとと仕事を片づけろ」 「……」 「答えないのか?」 「……」 「おい、無視か?」 「……」 「おい!」 ガチャン! 私はもう我慢できなくなってドアを勢いよく開いた。 部屋には……だれもいなかった。 窓にはシーツを切って結び下まで垂らした後が残っていた。 「……く……! とっとと窓の下を探すぞ!」 私はすぐさま部屋を出て窓の下を捜査するよう部下たちに命令した。 ……私のスピードから逃げられるとは思わないでね! 「……」 リシェルが部屋から出た後一人の男がクローゼットから顔を出した。 「うまくいったな」 男は笑っていた。 いくらリシェルでも男が町に出るまでにここに戻ってくることは不可能に近い。 「ま、せいぜいあさっての方向を調べるがいいさ、僕はその間女の子ゲットだぜ」 男はルンルンスキップで部屋を後にした。 ――数時間後騙されたことに気づくリシェルなのであった。