RPG SS 神々の黄泉 第七話「帝国の内情」 「ん? 来たかリシェル殿」 「リシェルさん、こんにちわ」 私が部屋に入るなり二人の人物に声を掛けられた。 一人目はギルディアス・グラーネ――重装甲騎士団団長の男性であり信頼におけると言う意味でもっと頼りがいのある男だ。 二人目はリーサ・ヴァレンタイン――魔道射撃部隊副隊長、にして独立部隊「メイド銃戦士部隊」の隊長をしている女性(厳密には違うが)。 ……隊長の代理で来たんだろうな……まあ隊長のあの男がここに来るより遙かにマシである。 しかし、隊長があの性格だ……絶対苦労しているだろう、現に机の上をよく見てみたら胃腸薬が置いてあるし。 「会議の議題は? ……まあどうせ分かっているけど」 私は机の上に置いてある資料に目を通していった。 ……ごめん正直難しい事が多くて私には分からなかった。 「オペレーション・ラグナロク……の事ですね?」 オペレーション・ラグナロク――私達の国、ヴァルデギア帝国を命運をかけた一大プロジェクト 知っての通り、ヴァルデギア帝国の周りは険しい山々で囲まれている。 だから、異様なまでに守備が堅いんだけど……逆に相手国に攻め入る事が難しい状態になっているのが現状だ。 「ええ……正直、この作戦にはあまり乗り気になれないわ」 「……俺もそう思うぞ、リシェル」 まあ気持ちはわかるわ……何たってこの作戦の立案者は―― 「惨い言い方ですね? 私の作戦は完璧でしょ?」 この男、オーベル・アルフレッドだからだ 「ええ、私達が介入できる隙間が無いくらい、完璧な」 「介入はさせたでしょう? 主にポーニャンド王国との交渉で」 ……あれはほとんどあんた達がやってもんだろ! 「ともかく、計画の第一段階はすませたわ……ところでアレ、もう完成してるんでしょうね?」 今度は私がオーベルに質問を投げかけてやった。 アレが完成してない事にはこの計画は只の絵に描いた餅状態である。 そうなれば魔道兵士団の奴らの信頼も総崩れである。 「できてますよ、アレ……魔力装甲列車『ニーズヘッジホッグ』」 苦もなく答えるな! 私はあんたの泣き顔が見たかったのに…… 魔力装甲列車『ニーズヘッジホッグ』、その名の通り全身を『ミョルニル』で固めヴァルデギア帝国が誇る数々の兵器で身を固めた理論上最強の列車…… だがもちろん普通に使用してはすぐにばれるて破壊されてしまう危険性がある、と言うか間違いなく破壊される。 そこでこんどポーニャンド王国との平和条約の証に両国を繋ぐトンネルを開通させる。 トンネル自体は大戦前にもう掘られている、だが不可侵条約のためうかつに使用できず、しかも監視の目がきついといった状態である。 そこで今回の平和条約で規制を緩ませ監視の目を減らす事で、安全に外に『ニーズヘッジホッグ』外に持ち出しそれで他の国々を……後は言わなくても分かるだろう 「主砲の弾丸に使う……えっと……」 「火竜石です」 「そう! それよ! たしか足りないって聞いたけど」 「大丈夫ですよ? 昨日大量に入荷するのに成功しましたから」 ……くそ! このままじゃあこいつの独壇場じゃない……なんとかしないと 「……なんで火竜石なのよ……他のでも良いでしょ!? 全くそんなの使用するから計画が遅れたのよ!」 「そうは言ってもね……これはどうしても必要なのです、今回の目玉である『生きた弾丸』を使うためにはね」 『生きた弾丸』、それはヤツの説明によると火竜石にあらかじめ低級の精霊を憑依させ発射、そののちあらかじめ決められた標的に向かい一直線に向い、 触れた瞬間火竜石の魔力を暴走させ大爆発を起こす……という弾丸である。 ヤツ曰く「ヴァルデギア帝国の技術力でしかできない」とのこと。 確かに「ヴァルデギア帝国の技術力は世界一ィィィィィ!」を素で言えるからな。 「フフフフ……まあ後は私に任せてください……ヴァルデギア帝国に栄光をもたらしてあげるから」 ……胡散臭いあんたが活躍せんでもいい! おかげで私の率いる戦乙女隊とグラーレ率いる重装甲騎士団は最近では風当たりが強い。 特に私の率いる戦乙女隊なんか今現在団員のほとんどが魔道兵士団と魔道射撃部隊に吸収されてると言った状況になっている。 つまりは私の首も危ういという事 「……まあ大船に乗ったつもりで……」 ウォン! ウォン! ウォン! 突然、激しい警報音が鳴った。 「どうやらネズミが二匹、研究室に侵入したみたいですな」 「……ッ!? それはまずいわ……万一私達のしてる行動がばれたらまずいわよ!?」 私は椅子を素早く立ち、迎撃をするためにヤツの研究室に向かって走り出した 後にはオーベルただ一人 「研究室に潜入したネズミは『二匹』ですが……」 ――まだ『ネズミ』はいるようでですね……