PGSS Cold&Flame ■氷と炎:NEXTの場合■ 町の賑やかな喧噪の中、二人の女性が車内に居た 「……」 一人は黒い長髪に、氷のように冷ややかな赤い目で周りをキョロキョロと観察しつつ時間を潰していた。 「……」 もう一人は炎のような赤い短髪をしており、その黒い瞳は暇そうに青い空を見つめていた。 黒髪の女性の名は氷花 凍華、NEXT幹部で主に暗殺や組織の裏切り者の制裁など……主に汚れ役の担当している。 対する赤い短髪の女性の名は焔火 綾子、こちらもNEXT幹部ながら凍華とは違い表で活動するいわば晴れ役。 「……なあ、その煙草すって……」 「駄目に決まっているだろう、車内で煙草なんて吸ったら煙がこもるだろうし、それに私は」 「ああ、炎は駄目なんでしょ? そのくらい分かっているわよ」 「分かってるならしない!」 凍華は綾子に怒鳴りつける 「わりぃわりぃ、すまねえな」 対する綾子はわざとらしく笑ってその場の空気を変えようとする。 ……だが車内に漂う空気はそんな事で変わるような物でもなく、再び二人の間に微妙な空気が漂う。 「……大体、この仕事は私だけで十分なはずだ、なのにどうしてあんたなんかと」 「仕方ないだろ、今回はPGが相手なんだ万全を尽くすべきだろ?」 「そんなこと分かっている、だが相性という物だがな……」 その時、焔火が急に外の様子を確認する 「ん? お、PG奴らが接触してるぜ」 「え、ホント?」 すぐさま凍華も窓の外を見る。 外では学生と思わしき二人の人物が一人の女性とが何か会話をしている光景が目に映っる。 「仕事よ、綾子……ってもう外に出ている」 どうやら相棒(一応)である女性はもうすでに外に出たようだ やれやれとした表情で凍華は綾子の後に続くように車の外に出た。 ■氷と炎:PGの場合■ NEXTの二人が車から出る少し前。 二人の学生がその姿とは似つかわしくない暗い路地裏で誰かを待っているのかの用に立っていた。 「なあ、そろそろ良いだろ」 一人は緋野 洸輝、サイオニクスガーデン高等部1年のやんちゃボーイである 「……」 もう一人は氷室 愛、同じくサイオニクスガーデン高等部1年ではあるが彼とは違いどこかくらい、冷たい印象を持っていた。 「いい加減口を聞いても良いだろ?」 「……任務以外では口を聞かないで」 任務 彼らが通うサイオニクスガーデンは超能力者の保護を目的とした政府公認の組織である。 主な仕事は超能力者が起こす事件の解決、および保護である。 「……分かっている、でもこうもターゲットが来ないのはおかしいと思うぜ?」 今回の任務は後者の超能力者の保護である。 具体的にはPGとは対になる組織、NEXTからの脱走者の保護――皆沢 明菜――である。 PGとしてはこの任務は絶対に成功させて起きたかった。 超能力者の保護と言う目的もあるが何よりもNEXTの情報が聞ける可能性があるのは大きかった。 故に接触役の二名の他に裏路地傍には一般市民に変装した学生達が取り囲んでいた。 「もしかして偽情報だったのかな……? ん?」 緋野があまりにも暇になり持ち場を離れようとした瞬間、一人の女性が路地裏に入っていくのが見えた。 「あんたが皆沢 明菜か?」 疑り深そうに緋野が質問を投げかける。 「ええそうよ、それが何か?」 それを明菜と呼ばれた女性は軽々しい態度で答える。 「……なら良いんだ」 その態度に少々疑惑を持ちつつ、それでも緋野は納得をした。 「どうする? どこへ逃げるか?」 「逃げなくても良いわよ?」 「あん……あんたは脱走者だろ? それが何で……」 緋野の言葉が途中でとぎれる。 「まったく、そんなことを信じてたの? あなた達バカね」 明菜の後ろには二人の女性――凍華と綾子がそこに居た。 「こんな美味しい話し罠に決まってるでしょ?」 明菜は呆れたように二人に言い放った。 ■裏切り■ 「……ッチ」 「……」 当たり前の話である、NEXTは裏切り者に対しては相当厳しい。 それこそ死よりも辛い目にあわせる程。 「さ〜て、お二人ともどっちが私の相手になる? 私はどっちでも良いわよ?」 「綾子、あまり遊びすぎるな……これは仕事なんだ」 故に罠の可能性を考えておくべきであった。 いや、接触役が二人なのはそれを考えての配慮であろう。 ともかく二人は罠にはまった。 「ところで凍華先輩」 「なんだ明菜? お前はもう帰って良いぞ」 ――いやこの場合、罠にかかったのは、二人では無く 「ねえもし、私が裏切った場合……」 ――四人であった。 「明菜……?」 凍華は不思議そうに明菜に聞いてみた その瞬間 ガシャン、ガシャン 五人を取り囲むように至る所から、重装備をした男達が現れる 「あなたはどうしますか?」 明菜は特に驚く様子もなく言い放った。 「明菜、てめぇ!」 その態度に綾子は怒りを露わにして明菜に怒鳴った。 「だってNEXTにいてもその内死んじゃうし、PGだと能力制限受けるし」 「……」 「私が羽ばたくためににはここであなた達に死んでもらわなきゃいけないの」 「……だから売ったのかよ、魔女狩り部隊に!」 魔女狩り部隊 超能力犯罪を極秘裏に処理するために組織された非超能力者の部隊 NEXTにとって敵であり、PGも時としては敵になりうる危険な部隊である。 「ええ、魔女狩り部隊としてはなんとしても私みたいな人が欲しいでしょ? NEXTの情報とか知っている私みたいな女」 「そして利害一致か」 「うん、だから皆さん」 ――ここで死んでください その言葉を皮切りに冷たい殺意のこもった銃口が四人に向けられた。 <<続く>>