PGSS Cold&Flame 「……凍華!」 それは一瞬の出来事だった 「……綾子!」 凍華は綾子の言葉を聞いて、脇にあった細い路地に逃げ込む 「な!」 傍にいた緋野の手を掴んで ほぼ同じタイミングで綾子も脇にある細い路地に逃げ込む 「え……?」 傍にいた氷室の手を掴んで ガガガガガッ! 逃げ込んだと同時に魔女部隊の銃が激しい銃声をならした 「チッ……」 仕留め損なった……! 「まあいい、私は凍華を相手にするわ」 明菜は後ろにいる魔女部隊の隊員に話しかける 「あんたは綾子の相手をしておいて」 ぶっきらぼうに綾子は隊員に言い放った。 ■分断〜信念を持ちし悪と悲しき過去にとらわれた少女〜■ 「……大丈夫か?」 そう綾子は氷室に言った 敵であるはずの氷室に 「大丈夫よ……」 氷室はむっすりとした表情で答える 「おいおい、そんな顔しないでよ」 「別にあんたに助けてもらわなくたって良いわよ……」 ――どうして助けたのよ 「あの時はああしなければ助からなかったわよ?」 「……」 ――私は死にたかった 「それとも死にたかったの?」 「……」 ――こんな力かなんか必要なかった、こんな力を持つ自分なんて 「いずれにしても命は粗末にしないでね? 特にここから先は」 ボッ 綾子の手に炎が宿る 「そう言った感情が邪魔となるわよ?」 「……!?」 周りには重装備をした魔女狩り部隊の大群 「燃え上がれ」 クィ とたんにその場が炎に包まれる――例えるなら業火 皮肉にもその業火に焼かれているのは魔女ではなくそれを狩るはずの部隊 「ともかくこの路地を抜けるまでは……って!?」 「今度は何よ……! って何あれ!?」 燃えさかる業火の中から一人の人間が現れる いや、それは人と呼ぶにはあまりにもかけ離れすぎてた それを表現するなら正に巨大な装甲の固まり ガシャン、ガシャン 黒色を基調としたそのデザインに右手にある自動小銃がある種の畏怖を感じさせてくれる。 ガシャン、ガシャン その黒い物体は二人に向かったゆっくりと距離を縮める。 カチャリ 銃口が二人に合わせられる ガガガガガガッ! 「……ッ!?」 とっさに二人は銃から放たれる弾丸を回避する 「ふん……たいそうな物を用意してくれるじゃないの?」 ボッ 再び綾子の手に再び炎が宿る 「燃え上がれ! ……っあれ?」 ……しかし炎はそれを焼くことが出来なかった いな、火すらつかなかった (ちぃ、まさか……) ガシ! それの手が綾子の首を掴む 「まさか……完成してるとはね……く……!」 ギリッ、ギリッ 徐々に首を絞める (情報通りだと……少しまずいわね) 「……魔女狩り部隊も……大層な玩具を……持ち出したじゃないの?」 だが彼女はそんな状態でもあくまで余裕そうに見せた 「O・W・P・A・E……超能力者専用の最終兵器……」 『そこまでにしてもらおうか?』 それは無機質な機械音声で彼女に言い張った。 『貴様はこれ以上喋ることはない……』 カチャリ 自動小銃の黒く冷たい銃口が彼女の腹に突きつけられる 『貴様はここで死ぬからだ!』 「へぇ〜、案外……安く見られたモノね?」 それでも彼女は余裕の笑みを崩さない 『何だと?』 「こういう意味よ!」 ボッ 炎がついた O・W・P・A・Eが持っていた自動小銃に 『……!?』 それは動揺し、一瞬彼女を絞めていた手が緩む 『この女……!』 すぐさまO・W・P・A・Eは腰にあるナイフを取り出し、彼女に斬りかかろうとする 『おとなしく……あん?』 ピキィ しかしその足は……動かなかった 『なんだと!? どういう事だ……!』 ピキィ、ピキィ 見るとO・W・P・A・Eの足を浸食するように氷が徐々に駆け上って行った 「……悪いけど、そこまでね」 氷室は冷静に言い放った ――これで良いのよね 『このクソ女ァァァァァァ!』 徐々に氷によって動きが制限されるが……それを意に介せずO・W・P・A・Eは傍にあった鉄パイプを氷室に向けて投げた。 その軌道は一直線に氷室の元に向かう 氷室はそれを ――やっとこれで弟や両親の元にいける 避けようとしなかった ――怖さは無いわ 「危ない!」 鉄パイプは氷室の目前まで迫っていた ――私は存在しちゃいけない人間だから…… 「……ッ!」 覚悟をして氷室は目を瞑った ボッ しかしパイプは綾子の炎により霧散してしまう 「大丈夫か……?」 「……!? また……なんで……!」 氷室は怒りにも、驚愕にもとれる感情を彼女に向けて放った 「放っておけないの、特にあんたみたいな死にたがりやをね」 「でも、あなたはNEXTよ……! それがどして……」 「私には信念があるの、そしてそれがあるから……」 ――私は『悪』で居られるの 「あんたは生きなさい、誇り高くね、誇り高く生きてれば『正義』だろうが『悪』だろうが美しい物よ……最も」 そう言って彼女は向き直った 当面の『敵』であるO・W・P・A・Eに 「こんな『外道』はにはならないでね?」 『貴様ァァァァァァ! 殺してやる!』 「まあ雑魚はほえるだけほえなさい……ただの遠吠えだから」 ブン 彼女はそう言ってO・W・P・A・Eに何かを投げた 『……!?』 それは魔女狩り部隊の哀れな焼死体 「燃えよ」 ボッ それは綺麗な炎をあげた 『そんな攻撃……!?』 パキン 何かが割れる音が聞こえる 「知ってる? 金属は急激な温度変化が起きると」 パキン よく見ればO・W・P・A・Eの分厚い装甲にヒビが走る 「ぶっ壊れるのよ?」 彼女は躊躇した様子も見せず、そのヒビに 『ま、待て……』 魔女狩り部隊の所持していた銃のカートリッジを差し込み 『そんな事をしたら……死……』 ボッ 発火 バン! 弾は装甲内で跳弾を起こし、そして バキン! 装甲を貫通する 『い、いでぇぇぇぇぇ!!』 「あら、痛かった? それじゃあ直ぐに楽にしてあげるわ」 そう言っておもむろに更に惨いモノとなったヒビの中に手を突っ込みそして 「灰は残さないから」 ボッ!!! ……装甲内部で直接燃やした 悲鳴は無かった なぜなら それをあげる前にそれは 文字通り蒸発したのだから