居心地が悪い・・・ウェンディの存在が、胸を苦しくしてムズムズとしたもどかしさを運ぶ 考えないようにしても、浮かんできて・・・明日の夜前には暗黒帝国へ到着する その時、きっと僕からヤツは消えるはずだ、きっとそうだ・・・きっと・・・ ヴェータがバツが悪そうに寝てた、カーテンがあれば良いが、ベッドにカーテンがないのだ それがイヤでしょうがないらしい、適当に本棚にあった本を読んでみたが 女性のグラビア、小説、漫画とヴェータの興味のあるものがないのだ、本棚に全部返して 今度は窓の外を見るが、あたり一面真っ暗、星明りと月明かりで海面が照らされるが それもあまりヴェータには興味がない、今のヴェータは胸のうちの思いを消したくてしょうがないのだ もう風呂に入って、パジャマに着替えたヴェータはもう寝ようと、何度か試すもなかなか眠れないのだった 余話 暗黒皇子の恋煩い? シャワーを浴びて数分、ボディソープもつけないで私はただ、流れ出るお湯を体に受けてた ヒースにフラれたけど、ヴェータに慰められて吹っ切れたつもりだったんだけどなぁ 「はぁ・・・」 けどまだドキドキが治らない、ヴェータが慰めてくれた時凄いドキドキしてた きっと嬉しくて、それでいて・・・それでいて、凄く暖かくて優しくて・・・ 「・・・バカッ」 それがイヤだった、まるでそれじゃあフラれて、ヴェータでいいやって・・・ そんな感じに考えてるんじゃないかって、確かにあの時は暖かかった、優しかった・・・ けど、けどそれで好きになったなんて、不純すぎるそれにヴェータはお姉さんのレヴィアさんが好きで 私なんて眼中にないもん、もしも私が薄情でヴェータに好きって言っても、結果が見えてる 「はぁ・・・私バカだわ、本当バカだ・・・」 深く考えれば考えるほど、結局最後には何考えてるんだろうって、結論に到達する 当たり前か、私はヴェータの事好きじゃないもん・・・優しくされて、嬉しかっただけなんだ ボディソープを手にとって、タオルにつけて体を洗い始める、改めて自分の指の飾り気のなさを見た マニキュアとかそんなのもしないし、アリシアがもったいないって言ってたなぁ・・・ 「・・・私ぐらいの歳って、おしゃれの一つぐらいするよね・・・」 なんとなく悲しくなってきた、復讐に一生懸命になってて忘れてた事が多くて それがアリシアたちと会って思い出して・・・苦しいや・・・ 「・・・なんで泣いてるんだろう私。」 シャワーを止めて、やっと気がついた、私泣いてる・・・きっと きっと悲しいんだろうなぁ、ヴェータに不純な気持ち持ってるのも復讐の事もヒースにフラれたのも全部が・・・ 「・・・泣いてられないや、シャキッとしろ私。」 体を泡でこすり、シャワーで洗い流し終えると、シャンプーで塗れた髪を洗い始める 涙は零れたままだけど、そのうち止む・・・慣れてるもん、別に気にしないで・・・ 「・・・お前には笑顔のほうがずっと似合ってる・・・」 そういえばヴェータ、私の事褒めてくれたんだよね・・・泣くのはやめよう 泣いてもどうにかなるわけじゃないもん、シャワーで髪を洗い流して、私はバスタオルに身を包んだ 「くそっ寝れない・・・」 ウェンディのシャワーの音がかれこれ30分、シャワーから水が流れる音をBGMに僕は ベッドの上でグッタリとなった、別にウェンディの裸を想像したりそんな訳じゃない それでムラムラしてるなら、最低だがまだマシだった・・・やっぱりウェンディが気になる 「・・・・」 この気持ちに正直になって、ウェンディにバカ正直に好きだと言いたくなる そうすれば楽になるだろうが、それは僕のプライドが許さない、気の迷いで 本当に好きな姉さまを裏切るなんて、そんなの絶対イヤだ。 「上がったよヴェータって、ヴェータはもうお風呂入ったんだね」 ウェンディがシャワールームから出てくる、いつの間にドライヤーを使ったんだ? 髪は乾いてて、サラサラと髪が流れるようだ 「あっあぁ・・・寝るか?」 「うん、そうする」 ウェンディが部屋の電灯を消すと、部屋は真っ暗と言うわけではないが、外の光を受けて ほんのりと明るく、何故かこの暗さが安心できた 「・・・」 沈黙の中、ウェンディに聞こえないか不安なくらい心臓がドクドクしてた、姉さまと一緒に寝た時だって こんなに心臓がドキドキしなかった、なんでこんな興奮してるんだ? いや、興奮なんてしてないさ・・・否定しないと、そうじゃないと流されてしまいそうだ・・・ 「・・・はぁ・・・」 びっくりした、ため息の音か・・・くそっ無心になれ、気にするな・・・ 気にするな・・・・と思ったが、気になって声をかけてしまう 「どうかしたか?」 「え?んーん・・・なんでもないよ・・・」 ・・・この声の質に聞き覚えがある、それはすぐに思い出せたウェンディがパーティの夜 泣いてる時のあの時の声だ、寂しそうで少し苦しそうなそんな声 「・・・あの時の事を思い出したのか?」 「えっ違うの・・・なんでもない」 あの時と同じだ、考えるより先に動いてウェンディのベッドの横に座ってた 「嘘をつくな、泣きそうだぞ?」 「ヴェ、ヴェータ・・・」 焦るウェンディを撫でてやると、恥ずかしそうにウェンディがタオルケットで口元を隠す かわいらしい動作に、思わず顔が赤くなってくる 「やっぱり思い出してるんじゃないか」 「違うの、思い出してるんじゃなくて・・・なんていえばいいかわかんない、けど寂しいのよ・・・」 しゅんっとウェンディが目を伏せる、どうせ思い出して寂しいんだろうな 撫でてると、安心したように嬉しそうにして・・・ウェンディは撫でられるのが好きなんだろう 「案外子供っぽいんだな。」 「何よ・・・お父さんが死んでこういうの、あんまりなかったからしょうがないじゃない・・・」 「あっ・・・スマンいやな事を思い出させたな・・・」 「ううん、気にしないで」 よかった、落ち込んでない・・・ウェンディを撫でるのをやめると ウェンディが名残惜しそうな声を上げた、まだ撫でてほしいのか? 「まってヴェータ・・・前みたいに寝るまで撫でて・・・」 僕のパジャマの袖を掴んで、うっとりするぐらい可愛い・・・けど寂しそうな声で ウェンディは僕を見つめる、目が少し潤んでいる・・・ 「・・・やっぱり寂しいんじゃないのか?ヒースにフラれて」 「わかんない・・・わかんないよそんなの・・・」 涙をためた瞳が、閉じると少しだけ涙が零れた気がする、ドキリと胸の奥で心臓が音を立て始める 寂しげなウェンディが見たくない、これでいいかわからない・・・けど 「ヴェータ?」 「・・・昔、寝れない時に姉さまがこうしてくれた、泣きたいなら見えないようにしてくれ。」 ウェンディのベッドの中に入って、あの時のようにウェンディを胸に抱いてた、こんな事をしていいのか けどこれでウェンディが僕を嫌えば気が楽になるだろう、ウェンディは気が動転してたが 「・・・ありがとう、あったかいよヴェータの胸の中・・・」 少し胸に涙がついて、熱かったが次第に冷たくなっていく・・・暗黒帝国までもう少しだ この思いも姉さまに会えば消えてなくなる、昔の体験として残しておこう そう・・・この思いも、過去の気の迷いとして消え去るさ・・・ 本編に続く