魔道商人記 7話目 〜二対の矢〜  魔道商人ブレイブはリバランスの王から魔剣奪取の命を受け、リバランス王女の エール=バゥ=リバランスと、侍女のファン=ベル=メルと合流した。 その後、魔剣はポーニャンド領の魔族要塞『二つの塔』にあると推測し、彼らは 獣人の国ポーニャンドへと向かった。 ポーニャンドの国境付近は、荒れ果てていた。彼らの訪れたブイマ村も例外では なかった。それはこの国の、何度と無く崩壊し、それでもなお建国されるという 稀有な歴史のせいでもある。 (ブレイブの知る限り、この国は3度滅びていて、今は4次王朝である) その地の四方八方を強国、大国、魔境に囲まれていては、まともな国家を維持す るのは難しい。現在もポーニャンド周辺では、いくつかの小競り合いがある。 諸国でも「今のポーニャンドは何時まで持つのか」などという噂話が絶えない。 それは現在のポーニャンド国主の政治手腕などとは関係なしに、である。 ポーニャンドの最大の特徴である『獣人による国家』という点が、偏見に拍車を かけているのかもしれない。 「とりあえず今夜は、このブイマ村で休養してだ。  明日は『二つの塔』を攻略してだ。  そして、魔剣アウラムと国王の冠を奪取する。以上」 ブレイブはどことなく疲れた声で宣言した。 無茶苦茶なスケジュールではあったが、誰も異論を唱えなかった。なぜなら女性 達は、今夜の宿の部屋割についての議論に熱中していたからである。ブレイブは 彼女達の熱気についていけなくなったのだ。 商人見習いのハンナ、通称『殴り姫』武闘家マオ、魔法使いの卵ローラローラ、 そしてリバランスのエールとファン。 偶然なのか必然なのか、女性ばかりが5人も集まってしまったのだ。普通の感覚 ならばハーレム状態でウハウハなのだろうが、一癖二癖ある彼女らである。 ブレイブはここ数日、まったく心が休まるヒマが無かった。 「ていうか、いくら村やからって、宿が1軒しかないっちゅーんはどうなん。  しかも部屋は2人部屋が3室しか無いなんてもう!  あ、ウチは別にそのな、あのな、えぇと、ブレイブと一緒でもええんやけど」 「どでもいいよ」 「…誰かがブレイブさんと同じ部屋に泊まる事になるんですね…  …できれば私は女性と一緒の方が…」 「うん。この部屋数はちょっと深刻ですわね。  あ!私、ブレイブさんに色々とお話をお聞きしたいのです。  同じ部屋でもかまわないですよっ」 「姫。仮にもブレイブ殿は男性です。  何か間違いがあっては、国王に会わせる顔が御座いません。  ここはご自重くださいませ」 「あー、いや、もうオレは馬小屋でもいいからさ、早く休もうぜ。頼むから」 女性達の話について行く気の失せたブレイブは、完全に投げ遣りな態度になって いる。しかし、女性達はそんな彼に気づいてはいない。あげくには、宿屋の前の 通りで大道芸を始めた旅の者に気を取られる始末である。 最初に話題にあげたのは、ローラローラであった。 「…あ…猫さんの大道芸」 「あ、ホンマや」 「すごい!マネできるかな」 「ファン、あの黒猫さんのやってる芸は何っ?」 「あれは『鳴らず者』と呼ばれる者ですね。  ああやって鈴を垂らした糸の上を歩いても、物音一つ立てずにいられるのです。  ここまでの技量を持つ者を、私は見たことがありませんでしたが」 黒猫の獣人が、鈴を大量にぶら下げたロープの上を、音を鳴らさずに何度も往復 していた。しかもそこからの着地点は、なんと鋭利な刃物の上であったが、怪我 一つなくピタリと降り立った。その瞬間いつの間にか周りに出来ていた人だかり から、拍手の嵐が巻き起こった。 「ニャニャニャ!どーもありがとうにゃ  出来れば皆様、このニャハトの芸に拍手の他にもう一息頂ければ幸いですにゃ  おやおや、ここになぜか大きな帽子がございますにゃ。  ほれほれどうぞチリンと音を」 そのおどけた雰囲気は笑いを誘い、人々はコインを帽子に放り入れていく。 大きな帽子であったが、たちまちにコインで満杯となった。 「うにゃ〜感謝感激ですにゃ〜  それでは皆様、夜半は最寄の酒場でお会いしましょうにゃ」 気がつけば夕暮れ。太陽が辺りを赤く染めていた。 「あー、オレはもう寝るからな。  部屋は適当に決めといてくれ。んじゃ」 女性達からの抗議の声が聞こえたが、ブレイブは意に介さずに適当に1室を選び ベッドに倒れこんだ。体力は問題ない。疲弊しているのは魔力と精神力だ。 間もなくブレイブはグッスリと深い眠りについた。 いつの間にか目を覚ましていた。時間を確かめる。 部屋のドアを開ける音がして、なにやら荷物を大量にゴトゴトと置く音が部屋に 響く。その音でブレイブは完全に目を覚ました。 疲れが抜けきっていないためか、妙に不快な気分だ。 「ガタガタうるさいぞデッチ!  明日は早いんだから、さっさと寝ろよ。  あんまり騒ぐンなら犯すぞバカ!」 そういえば夕食を食い損なったな、ブレイブははっきりしない頭でそう思った。 「デッチとはハンナ様の事でしょうか。  申し訳ありませんが、あなたと同室になったのは私です」 あまりに意外な返答に、ブレイブの思考は混乱した。 その声が侍女のファンのものであると気づくまでに、やや時間を要した。 「あ…?ああ、侍女さんかよ。  いや、アンタは姫さんと同じ部屋の方がいいンじゃねぇのか。  つーか、デッチはどうしたんだ?」 「私があなたと同じ部屋に居る事が、姫への害悪を排除するのに  最良の手段だと判断した上でのことです」 先ほどまでとはまったく違う、冷酷さを込めた声であった。 「あー、信用されてねぇンだな」 「当然です。国王陛下があなたを登用なさったのは、陛下の愛ゆえの事。  姫もまた、万人を愛する心の持ち主ゆえにあなたを信用なさっているだけ。  それは、わたしがあなたを完全に信用するに足る要素では御座いません」 「それで、いつでも寝首をかけるように同じ部屋ってワケか」 「察しは良いようですね」 「こういう事にはな。ほかはサッパリだ。  特にマオは何を考えてンのか、今でも全然わかんねェ  デッチも付き合いはそれなりに長いけど、良くわかんねェな」 「あの方はまた特別なのでしょう。不思議な星の下に生まれたご様子です。  あなただってそれに気づいているから傍に置いているのでしょう?」 「何の話だよそりゃ。デッチだろ?」 「…まあいいでしょう。  そもそもあなたは、何故リバランス王国に来たのです。  そして、何ゆえに『二つの塔』を即座に推測したのですか。  返答次第では、ここで斬ります」 冗談ではなかった。 ファンは2本のショートソードをブレイブの喉元に突きつけていた。 「あー、いや、元々『二つの塔』には用事があったンでね」 「随分と底の浅い嘘をおっしゃる。  一介の商人ごときが、魔州アトエカ=ブイマに一体何用でしょうか」 その答えは、ブレイブを驚かせた。 城の侍女が魔州アトエカ=ブイマの存在を知っているとは思わなかったからだ。 「アトエカ=ブイマを知ってンのか。思った以上に博学だな。  とりあえず、あんたが何を警戒してンのか理解できた。  オレが魔族と手を結んで、リバランスに手を出そうとしてるって読みだな。  まったくのハズレだが、確かに警戒すべき要素ではある。  でも、さすがに読み違いだ。オレはそこまでバカじゃねェよ。  さて、商人は信用が第一だからな。こっちの情報は全部出すぜ。  これを見てくれ」 ブレイブは枕元に置いた袋の中から、2本の矢を出した。 1本はいかにも安物といった風であったが、もう1本は違っていた。 素人目にもわかるほどの魔力を溢れさせていた。 「これは?」 ファンはいぶかしげに2本の矢を凝視していた。 ブレイブは自慢げにそれらの解説を始めた。 「流れの品なンだが、ちょっと面白い事になってる。  コイツは『皆殺しの矢』と呼ばれている古代の武器だ。  今じゃただの骨董品でしか無いけどな。  こっちが本物の『皆殺しの矢』だが、レプリカの矢とは模様が違うだろ?  この模様自体は、おそらく暗号化された世界地図なんだが、意図的にどこかを  隠してるかのような差異がある。  その差異が魔州アトエカ=ブイマにそびえる『二つの塔』だってことだ。  二対の矢は、ここに何かがあって、隠したい者が居た事を教えてくれている」 「理屈はわかりますが、疑問も残ります。  私が読んだ本の記述が確かなら、『皆殺しの矢』は骨董品ではありません。  それはれっきとした超古代の破壊兵器であるはずなのです。  一体あなたはそのようなものを手に入れ、何をするおつもりなのです」 「本だッて!リバランス王宮図書館の本か!?  ぃよっしゃ!リバランスに本がある!これで全部集められるかもしれねぇ!  本のタイトルは?『箱舟の櫂』か?『事象の残滓』か?」 「ええ、まさしくそれらですが…  そんな事も知らずに『矢』を追い求めておいでなのですか。  まさか本当に骨董品として売りに出すつもりだったんでしょうか」 「もちろんだ。オレの職業は商人だからな。  高値で売れる骨董品が大量にあったらスゲェ!って事だ。  買ってくれそうな知り合いは、リバランス王くらいしかいねェけどな」 「ふぅ…やれやれ。私が警戒しすぎだったようです。  あなたのようなマヌケな商人が、魔族と手を組めるとも思えません。  王や姫の眼力は実に正確だという事なのでしょうか」 「マヌケは余計だよ。魔族なんぞと手を組む方が余程マヌケだ。  とりあえずその剣を引っ込めてくンねぇかな」 その一言で、2人の緊張がほぐれた。 ブレイブはニヤリと笑い、ファンも苦笑しつつショートソードを収める。 「それはそれとして、私の寝込みを襲おうとしても無駄ですよ。  ましてや姫の部屋に行こうとするのは言語道断です。  あなたの愚息があなたと離れ離れになるのは悲しいでしょう?」 「襲わねぇよ。ンなワケねぇだろうが。  ッたく、やっぱり信用されてねぇンじゃねぇか」 「…そうですか」 何故か少しだけ寂しそうに言うファン。 「あ、いやその、あんたに色気が無いとか、そういう意味じゃねぇからな。  どっちかってーと、ヤリたい部類だ」 「それじゃあ、女性を口説く事にはなりませんよ。  あなたはもう少し女性の気持ちを知る必要がありそうですね。  それでよく商人などという職に就く気になったものです」 「元々は魔法使いだったンだよ…  商人になったのは偶然だったンだ。あれはいつ頃だったかなぁ」 その頃、ハンナ、エール、マオ、ローラローラの4人は、ハンナとエールの部屋 に集まっていた。先ほどからずっと、ハンナの昔話が続いている。 ハンナはトレードマークのターバンは解いて、茶色がかった赤い髪を露出させて いる。ピョコンと飛び出た三角耳が可愛らしい。 「で、ウチがピンチになったところをブレイブの魔法が炸裂してやね。  鎧の化けモンは、あっちゅー間に黒こげになってしもうたんよ」 「それでっ?それでっ?」 「ほう」 「…どんな魔法だったんですか」 「魔法の事はわからんわ。カンニンな。  まあ何やね。ブレイブは魔法は凄いけど、商売はサッパリやね。  ウチがいなかったら今頃、破産しとるに違いないわ」 青銀の眼鏡をグリグリといじりながら、ハンナは好き勝手に話している。 「ところでっ!ハンナはブレイブさんのどこが気に入って付き合いだしたの?」 唐突にエールが跳ね起きて質問した。 王女とは言え年頃の女の子。今はまだ彼女には特定の好きな男性がいるわけでは ないが、色恋ざたに興味が無いワケがないのである。 「む?」 「…えと…お付き合いしているんですか?」 マオとローラローラが怪訝な表情をした。 エールよりもやや長く一緒に旅をしてきた彼女らには、ブレイブとハンナが付き 合っているようには見えなかったからである。 「付き合ってるっちゅーかね。なんやろね。いつも一緒やしね。  居てくれへんかったら困るゆーか、えと、なんや照れるわぁ  ほら、命の恩人やし、意外とあれで優しいんよ。  それにほら、結構可愛い顔してへん?」 「どうみても凶悪なツラだが」 「…優しいことは…優しいですよね」 「くぅ〜っ!いいなっいいなっ!  私もステキな恋をしてみてーっ!  決めたっ!私、アウラム奪還したら、恋を探す旅に出るっ  それでハンナさんみたいな運命的な出会いをするのっ」 「いいかもね」 「…ステキな恋かぁ…」 「エールならきっと見つけられるわ。  でも、今は『お目付け役』がウルサそうやね。  ブレイブ大丈夫やろか」 「そうなのよね。ファンはちょっと気にしすぎなのよねっ」 「ちょと腹減った」 「…お夜食でも作りますか?  日中に珍しい香辛料を見つけたので、試してみたかったんです…  …マタタビって書いてあるんですけど…どんな味がするんでしょうね」 「太ってまうなぁ。まあええわ。ローラちゃんよろしゅうな」 その夜、ローラローラの料理の評判が少しだけ落ちた。 マタタビの味は凶悪すぎたのである。所詮は、ネコ獣人用の香辛料であった。 次の日の朝、スッキリした顔をしていたのはファンだけであった。 何だかんだで緊張して熟睡できなかったブレイブをはじめとして、夜のマタタビ 料理で心を痛めた4人娘は、やや気迫に欠ける様子である。 「いくぞー」 その掛け声にこたえられる娘はいない。 何だかどうにも陰気なノリで、ブレイブ達は魔州アトエカ=ブイマの中枢である 『二つの塔』に向け、出発した。途中、魔物の襲撃は一度とて無かった。 ブレイブは嫌な予感を隠せなかった。 仮にも魔州とまで呼ばれた魔族の一大拠点である。 今でも目をこらせば瘴気を放つ毒の沼が散在しているような酷い土地柄で、魔物 がいないわけがない。つまり、このあたりの魔物は、片っ端から『二つの塔』に 集結しているという事になる。 「(…戦力、もう少し必要だったかもしんねェなぁ」)」 塔や迷宮といった狭い場所では、彼の得意魔法である雷属性魔法『轟雷』は危険 すぎて使用できない。ましてや『時業雷(ジゴワット)』など論外である。 よって、魔法の制約がつくのなら白兵戦が主となる。 前衛をマオ、エール、ファンにまかせて、後衛でブレイブとローラローラが支援 するという形となる。ここでも問題がある。彼の冒険団には致命的欠陥がある。 回復役がほとんど居ないという点である。 ありったけの回復薬をハンナに持たせたが、それを使い切ったらアウトである。 可能ならば、前衛の戦士をあと3人ほど連れてきたかったというのが本音だ。 「(…だからってガチムチ団に来られても困るんだけどな)」 地図とブイマ村の人の話が正しければ、あと少しで『二つの塔』に到着する。 それくらいの距離にまで差し掛かった時である。 「あれ見てっ!誰かが魔物に襲われてるっ!」 最初にそれを発見したのはエールだった。 塔の入り口付近、旅人らしき軽装をした人物が、大量の空を飛ぶ魔物に襲われて いた。巨大なカラスのような魔物である。群れで旅人を小突きまわしていた。 散々いたぶったあとで喰らうつもりなのだろう。 「ヤバいな。ありゃ『夜多烏(ヤタガラス)』の群れだ。  あんな風に大騒ぎしてちゃ、むしろ逆効果だぜ」 「何でやの?」 「悲鳴をあげたりすると、本能でそれを弱者とみなして攻撃してくるンだ」 「52匹」 「…多い…まるで空が覆われているみたいです…どうしましょう」 「助けるさ。もし失敗したら、白兵戦で救出に行く。マオ、頼む。  あとナキムシ。こないだと一緒だ。『大火球』の詠唱準備しとけよ」 そう言うとブレイブは、右腕の竜鱗の篭手に魔力を集中させはじめた。 「起動!雷精霊召喚」 篭手の鱗の隙間から、青白い竜のような光がバチバチと音を立ててあふれ出す。 「次!魔法陣展開!雷魔法上位公式の二!」 青白い竜はその声に呼応し、空中に複雑な文様を描き出す。 「最後!上位魔法発動!翼持つものを捕らえ掠めよ!縛雷網〈ウェボルト〉!」 ブレイブがそう唱えると同時に、地上から巨大な稲妻が上空に昇っていった。 そこから幾条もの電撃の帯が、まるで蜘蛛の巣のように張り巡らされていく。 その蜘蛛の巣は、またたく間に『二つの塔』の入り口付近を覆いつくし、 多数の夜多烏が網の目に捉えられる。そこに流れる電流は粘着性を持ち、 夜多烏はたちまち絡まりながら感電死していく。 「あー、5匹残った。あとは頼んだ。…ちょっと大魔法すぎた」 グラリと体制を崩すブレイブ。一度に魔力を使いすぎたのだ。 「…『大火球』!」 間髪を入れず、ローラローラが火球の魔法を魔物に放つ。 距離は遠かったが、火球は2匹の魔物を巻き込んだ。 それに乗じて、マオ、エール、ファンの3人が魔物目掛けて走っていった。 「死ぬね」 マオは一瞬で夜多烏を撲殺した。 「姫様。対空の型を」 「わかってるよっ」 エールとファンは両手に剣を持ち、天にかざして敵に切りつけた。 夜多烏も最後のちからを振り絞って、その鋭いクチバシと爪で攻撃してくる。 が、二人の剣技によって攻撃はいなされ、少しづつ剣で切り刻まれていく。 「とどめっ!」 エールの5撃目が夜多烏の頭部に直撃し、それによって絶命する。 ほぼ同時に、ファンが残り1匹の首を跳ね飛ばした。 「ふわぁ、みんな強いわぁ  ブレイブ、こんなトコでへばってる場合やないで。  そのうち出番が無くなるんとちゃうの?」 「勝てばいいンだよ、勝てば。  つーか、本来は戦う必要すらねェんだ。  金が儲かれば、それで十分なんだからな」 「はいはい。それじゃ、みんなのところに行くで。  荷物くらいは持ったるわ」 旅人は酷く傷ついていたが、ハンナの持っていた傷薬で治療できそうだった。 その薬を塗るときに一同は、ほんの少しだけ驚いた。 旅人はポーニャンド人、つまり獣人だったからである。 「うう…申し訳にゃい…  私はニャルグランド=ニャンスというものです。  訳あってこの塔に乗り込もうとしたのですが、  あまりの大量の魔物に動転してしまい、このザマですにゃ」 「命が助かったからOKとしましょう。  ところで、アンタはこの塔の事を少しは知っているのか?」 「え、ええ。かつて調査に来たこともあります。  まさか、あなた達もこの塔に?  危険ですよ。今はこの塔には魔族が居座っているのですにゃ  大魔王シスという、そりゃ恐ろしいヤツが」 「ああ、知ってるよ。  つーか、調査に来てんなら話は早い。助けた恩を返して欲しいんだ。  塔の中の道案内してくんねぇかな?  オレら、その大魔王シスに用事があんだよ」 旅人はしばし唖然とした顔をしていたが、やがて表情を変えた。 「わかりましたにゃ。お任せ下さい。  必ずやアナタ達を大魔王シスのところまで案内いたしますにゃ」 8話目に続く <登場人物>     魔道商人ブレイブ 〜本名は不明。男性。年齢は20代半ばくらい。かつては悪夢の雷嵐公とも呼ばれた程の               魔道高位者だが、職業は商人。モチリップ市の町外れで嫌々ながら中古品販売をしている。   ハンナ・ドッチモーデ 〜田舎から丁稚奉公に出たはいいが、あまりの商才の無さに放逐されてしまい、               冒険の旅にでたら魔道商人に拾われた19歳の女性。多分ブレイブが好き。     マオ・ルーホァン 〜武闘家。通称『殴り姫』酷く口下手で、話したり考えたりするより、殴る事を最優先する女の子。         ナキムシ 〜本名ローラローラ。14歳の泣き虫魔女。 地味目のローブに押し込まれたオッパイは一級品。               火属性と水属性の魔法がそれなりに使えるので、炊事当番が多い。 エール=バゥ=リバランス 〜リバランス王女。10人中10人が讃える美貌と並大抵の剣士に劣らぬ剣技を持ち、大胆不適な人柄    ファン=ベル=メル 〜リバランス王家に使える侍女。文武両道才色兼備と侍女にしておくには勿体ない人物 ニャルグランド=ニャンス 〜猫人の冒険者、というのは仮の姿でポーニャンド王国重装猫騎士団の元・団長