場所:石畳の通り。行きかう人々。並ぶお洒落な店。覗くカップルや親子連れ。どっかのカフェテラス。お茶する魔王。    道行く人々がジロジロ眺めていくが、一名を除いて全員がスルーしてはしゃいでいる。 「はーい、1番『魔術師』ルシャナーナ、歌いまーす!」「♪LA〜LA〜LA〜、ゴッデス〜」 「カーン♪ 信仰心がこもってまセ〜ン、鐘一ツ。ッつーか、歌うの『下』の方かヨ。そんな訳で17番『星』のヴァニティスタでござ〜イ」 「え、ええと……それより仮にも魔王が聖歌を歌うって、その……あの、あ、こんにちは、14番『節制』のコウこと、鋳掛屋 渡です」 「面白みが皆無だぞ『節制』……まあ良い、ご苦労、前座ども。俺様が真打の15番『悪魔』アドルファスだ」 「ええと。僕ら、誰に向かって自己紹介してるんでしょう? と言うか、何でこの面子で集まってるんでしょうか?」 「気にしちゃ負けよ、イカケヤ」「おそらく、台詞で誰がどれか判別しやすいからであろうな」 「そ、そうなんですか?」 「だから気にするな、『節制』。ハゲるぞ」 「ハゲてませんよ!」 「……それよりサ、ここどこヨ? さっきから俺らメッチャ目立ってるんですケド?」 「ううう、白い目とひそひそ声とケータイカメラのフラッシュが突き刺さる……」 「良いじゃん良いじゃん、ハイチーズ〜。あ、化粧のノリは」「悪くないであーるかな。気合い入れてマスカラ塗って来るべきだったである」 「どこって、青山通りのカフェテラスだが?」 「どこだヨ!?」 「気に入らんか? じゃあパリのモンマルトル通りのカフェ、枯葉舞い散る秋の午後3時で。  ふっ、ウェイター、スコーンの追加を頼む」 「って言うか、RPGの世界観盛大に無視してますね。いえ、僕が言えた義理でも無いんですけど」 「まあ今回は」「楽屋ネタみたいなものであるからな」 「作中のしがらみは一切無視だ。例えるなら、ここは東国最強と聖女でも恋人のように仲睦まじく午後のお茶を楽しめる空間」 「で、銀髪の女が刃物持って乱入してくると♪」「『貴方を殺してその女も殺す!』という感じであるか?」 「嫌ですよ、そんなある意味本編よりドロドロした修羅場」 「ギャヒャヒャ、まあまあ。そんでヨ、俺ら結局何すりゃ良いのヨ?」 「ん〜多分、魔同盟の連中について適当にダベれば良いと思うぞ」 「適当に、ですか?」 「要するに妄想の」「垂れ流しであるな」 「でも僕、他の人達の事あんまり知りませんけど」 「お前サンは聞き役と質問役やってくれりゃ良いって事なんジャネーの、つまりヨ」 「はあ」 「それでは、いってみるとしようか」 ■RPG駄文■ 〜魔同盟・ア・ラ・カルト〜 1.大アルカナ8番『力』クレメンスについて 「初っ端からコイツかヨ」 「う〜ん、彼奴はな〜」 「ヤバいよね〜」「怖い、とも言うであるな」 「確かにあの人積極的って言うか、で、でも別に四六時中付きまとって来る訳でもないですし。何がヤバいんですか?」 「まあナァ、確かに奴ぁ戦闘力は皆無だし、領土も権力も無えし、配下もいねエ。あるのは不老不死の身体だケ。  そういうパラメータで見りゃア、そこらの一般人と何一つ変わんねえヨ」 「なら、どうしてなんです?」 「クレメンスが何を司ってるって言うと『力』」「である……即ち、意志、精神力であーるな」 「正にその具現。彼奴の精神は決して折れず、砕けず、磨り減らない。その意志性は彼女の肉をして不滅と為す程に」 「例を挙げようかネ。サーガとかだと、不死性持った悪役なんざ、拷問ターイムの良い鴨ダ」 「……実際、彼奴もそういう羽目に陥った事が何度かある。攻性面では本当に無力だからな。  俺様が生まれる前だが、何百年か近く拷問を食らい続けていた事もあるらしい」 「世間にはさー、信仰だか信念だかで、拷問や調教を耐え抜いてみせるなんて意気込む奴がいるけどぉ」「どれだけアホかは貴公にも分かるであるな?」 「ややこしい条件を取っ払って、攻める側とそれを受ける側の時間無制限根比べと考えれば、分かりやすかろう。  受けるストレスに、もの凄まじいハンディキャップがある。受ける側がどれだけ気高く剛健だろうと関係無い。  心が壊れ得るものである限り、最初から攻め側の勝ちが約束されている。……本来ならな」 「……それを覆すのがクレメンスさんだと?」 「そういうコト。攻める側が音を上げるまで、一方的な責め苦のゲームを平気な顔で耐え抜いてみセル。それが『力』、クレメンスだヨ」 「いや、耐えるっつうのは適当じゃないわにゃー」「どんな状況でもあやつの心にはヒビ一つ入らぬのである」 「不変なのだな。壊れぬ、揺らがぬ、永遠不滅の精神性。それが彼奴だ。  例え自分以外誰一人いない常闇の世界に放り出されようとも、彼奴は鼻歌交じりで永遠を生きるだろうさ」 「さっきの数百年拷問の話だけどヨ、見かねた当時の『正義』が救出した際、あいつ顔色一つ変えずに微笑んで挨拶したってヨ。いつも通りに」 「絶対に壊れない心はもう心じゃないよにゃー、いやマジで」「そんな心の持ち主を化物と言わずして何と呼ぶである?」 「まあ、それぐらいの奴だったら、どっかにいそうな気もするレベルかネエ。んじゃ、もう一つ、もっと観念的なお話。あいつの愛は冷めない」 「?」 「どんだけフられても諦めないってのは普通の人間でも結構あるっしょ?」「手に入らぬものへの執着、欲望は凄まじい燃え上がりを見せるである」 「押すなと言われるボタンは押したくなる。食えないと分かれば、飯はより美味そうに見えてくる。だが、手に入れたものに対しては、人はいずれ慣れ、飽きるものだ」 「どんなものだっていつかは飽きるもんサ。夢中で遊んだ玩具は大人になるにつれ見向きもしなくなり、大好物も食いすぎれば見るのも嫌になるダロ?」 「でもクレメンスは冷めないのよん。飽きないし」「諦めない。いつもいついつまでも愛で続けて愛し続けるのが、あの女である」 「永遠に生き続ける中で無限に増え続ける愛のどれ一つとして、情熱を絶やさない。彼奴の真価は手に入れるまでの執着ではない、手に入れてからの粘着だ。  まあ要するにだ、『節制』。貴様は永遠の愛を手に入れたという訳だ。一方通行のだが」 「クスックスックス、ご愁傷様と」「言うべきであろうかなー?」 「イヤイヤ、ここは「末永くお幸せに」だろうヨ、常考」 「……なんか背筋寒くなってきました。つ、次行きましょう、次!」 2.小アルカナ『剣の王』シュナイデンについて 「二人目にして、いきなり小アルカナかヨ」 「でも、シュナイデンさんはもう魔王って言うレベルですよね。力も強いし、文字通り魔剣達の王だし。  実際、何で大アルカナじゃないんですか? 当人が望んでないから?」 「別に望んでないと言うなら、『力』や『隠者』や『審判』もだがな。ついでに奴等には領も権勢も無ければ、配下も無い。『力』と『隠者』は戦闘力も皆無だ。  そういうもので話をするなら、こやつらもとっくに堕とされてなければならんな」 「そう言えば、そうですね」 「そもそも、大アルカナにそんな思い入れある奴なんていないしねー」「貴公とてそうであろう、異邦神?」 「ええと、ま、まあ」 「なりたいと思ったからなれるもんじゃネエ。逆に、なりたくないからって拒否れるモンでもない、ってナア」 「巷で言うところの『魔王』と、そう呼ぶに値する者は、小アルカナに少なくとも4人いる」 「つうか、まあ実際にそう」「呼ばれておるな」 「『魔剣の王』シュナイデン、『聖杯の王』ブルア・ギル・グル・ガッハ、『金貨の6』ルカ・アテラ、『杖の9』アニエッタ、だナ。  実際さあ、戦闘力、血筋、権勢、そういうもんで言うんなら、こいつらが現大アルカナの何柱か押し退けてその席に就いていてもおかしくねえんだヨ。  って言うか、そうあるべきなんだヨナア」 「言われてみれば、そうですよね。……じゃあ、何でなってないんしょうか? 何でしたら譲りますよ、僕。  まあ、4人ともそういうのに興味無さそうですけど」 「それは事実だみょー。魔剣王は『剣』の自分を望んでるしー」「肉塊は享楽に耽溺し、古血は誇りを己と血に見出し、魔弾は破滅の愉悦にしか興味が無いである」 「確かに、それは事実だ。が、もし仮に奴等が大アルカナになろうとしても、だ。奴等の意志と力だけでは、それは叶わぬ」 「強さじゃナイ、能力じゃナイ、血筋じゃナイ、権力じゃナイ、地位でもナイ。ま、そういうもんヨ、大アルカナってサ」 「んー、よく分かりません」 「そっちの方が良いと思うにゃー。そんじゃ」「次にいってみるとしようか」 3.小アルカナ『聖杯のA』魔人ブルズアイについて 「来たよ、魔同盟きっての」「お笑い担当」 「どんだけシリアスやってても、こいつ一人がいるだけでお笑い空間だもんナア」 「言葉も無い。設定的にはシリアスも色々あるのだがな」 「ふーん、アレのお笑いぶりは普段見てれば」「嫌と言うほど理解できるからな、今回はそのシリアスとやらを聞くとしようか」 「あ、僕も少し気になります」 「んーまあ、例えばあいつの『本当の名前』とか?」 「『本当の名前』ですか?」 「ああ、『魔人ブルズアイ』というのはブルズアイに寄生されて生き延びた突然変異種の総称だ。分類名であって、個人の名ではない。  奴の場合は、ももっちが寄生されたから『ももっちブルズアイ』という訳だ」 「フーン。デ?」 「あ、そっかー。素体のももっちには」「当然の如く名があったはずだな」 「正解。だが、ウチでは誰一人としてその名は呼んどらん」 「何故ですか?」 「イジメかヨ?」 「違う。それが本当に奴の名かどうか、奴自身が答えを出していないからだ」 「えーと? だって名前は名前でしょう? そのももっちの……」 「『誰だか分からない』って事だよん、イカケヤ」「今の自分が『誰』なのか、あの魔人自身にも分からんのだろうな」 「またしても正解だ。今日は冴えとるな、ルシャナーナ」 「あたしも少々分からんでもないからねー。「あたし」と」「「我」と。我等は同一の人格であるが、果たしてそれが真なのか。我等にも本当には分からぬ」 「そうか。  ま、そういう事だからな、記憶にある以前の名は名乗れん。が、かと言って新しい名を名乗るには捨て去りきれん持ち物が多過ぎる」 「ダカラ、あだ名って訳カ」 「うむ。人に歴史あり、という奴だな」 「……事情は分かりましたけど、それで『ももブル』とか『珍獣』とかって酷くありません?」 「ん? 似合っとらんか?」 「いえこの上なく似合ってますけど」 「それが全てだ。なんのかんのシリアスぶったところで、所詮アレはももブルなのだから」 「うわ、台無しだみゃー」「しかし、それぐらいが丁度良いのだろうな」 「ンジャま、次いってみようかネ」 4.大アルカナ18番『月』エルミューダについて 「あの人……人? なんであんな姿になってるんでしょうか?」 「何を呑気な事言っとるんだ、貴様は」 「他人事じゃねえのヨン。俺やアドルファスやお前さんだって、いつあんな風になるか分かんねえんだもんヨォ」 「え? え? えええっ!? な、なんで!?」 「何でと言われても」 「ナア」 「え、でも、ほんと、なんで!? ルシャナーナさんは!?」 「あたしは関係無いもーん」「1番・『魔術師』だからな」 「い、意味が分かんないんですが!?」 「アーアーアーあのネ、コウさんヨォ。14番から20番までの7柱は、それ以前の連中とはちぃっとばかり異質なのヨ」 「0番『愚者』と21番『世界』はそれより更に異端ではあるのだが、これはこの際置いておく。  ともあれ、1番から13番までの連中と、14番から20番までの連中では司るものが若干異なるのだ」 「あたしらが、現世、物質界の知恵や力や情や生死を司るのに対してー」「貴公らが司るのはより高次なる霊の道行き、形而上でのエネルギーの運行だ」 「はい?」 「『死神』による物質としての死と再生から始まって、『節制』では調和の取れたエネルギーの形が出来上がる。「調和」即ち今の世界の形、そのバランスだな」 「次が『悪魔』、このダンナの領域だねェ。無作為の志向性は渦を巻いて、悪意や欲望、原初の強烈な感情の混沌となるってワケ」 「そんでー、そんなもんどうにもならないからー破綻して崩壊する訳ー、災厄迷惑この上なーしー」「後、それらは然るべき昇華を始める。それが『塔』である」 「次が俺様『星』の番、未来と希望に溢れる律された瞬きの輝きなのさぁネェ、ゲラゲラゲラゲラ!」 「ちなみに『太陽』は全ての新たかつ偉大な息吹の集合、『審判』はそれが真なる完成の段階へ至る門であり祝福だ。  で、問題の『月』だが、これは停滞や負の感情、陰陽合一の陰、まあそういうものをイメージしといてくれれば良い」 「あ、言っとくケド、高次とか形而上とか言ったらなんか高級そうだけどヨ。実際はそう良いモンでもねえカラ。  所詮俺らは肉ある生き物だからヨォ。あ、『肉』ってのは肉体とか霊体がどうとかってよりか、もちっと概念的な表現なんだケド」 「力のベクトルが酷く偏ってるって言うかー、単純な強さや汎用性じゃあ」「我ら物質界の13柱の方が上だな。即物的で、故に効果的な力である」 「で、エルミューダの話に戻る訳だ。  ヴァニティスタの言うとおり、肉ある魔王が高次の霊を表すのには根本的な無理がある。事象存在が事象龍に及ばぬと言われるのはそれが理由の一つでもあるな。  14〜20番の魔王は頻繁に代替わりをする事でその破綻を防いできた。例えば、俺様たち『悪魔』はそれを「血」で継承してきた訳だ」 「「もう無理ィ!」ってなる前に次の奴にお役目を渡す訳だわねー」「それでも徐々に齟齬が生じてきて異界の人や神を次代として招聘したりもしてる訳であるがな」 「そんな中でエルミューダの『前世』ってのは、例外的に古株ちゃんだった訳ヨ。  「不安」と「曖昧」とを象徴する奴は、自身がその具現たる心の化けモンたる事でそれを可能にしてたのサ」 「それが崩れ始めたのは、最初はヴァニティスタからだな。未来を挟んで心を映し合う、自分と合わせ鏡の魔王。  こいつのちょっかいによって、それまでそれだけで完結していた虚ろは、自分と関係する『同類』の存在を知った」 「次がラ・サルザだにゅー。彼女という『母』を得て、あのコは『家族』を知ったのさ」「自らにかしづいた彼女に、如何な心境で『母』を命じたかは分からぬがな」 「で、このダンナという『友』で決定的になったのサ。心というものを己が存在そのもので嘲笑う虚ろの怪物が、只の心持つナマモノに成り果てちまったんだからネェ」 「……それで、ああなったっていうんですか? それは、なんて言うか、あんまりなんじゃないでしょうか?」 「しょーがないじゃん、それがシステムなんだもんよー」「破綻を繕う為に、全てを呑み込み取り込む、システムのより純化した意志無き体現として改めて現出させた」 「限界を越えると取り合えずどうなるかが分かった、という意味では貴重な例なのだろうな。勇者の討伐も、そもそもそんな事は起きてないのかもしれん」 「でも、……そんなのって」 「まあ、落ち込む事ぁねえヨ、異邦神」 「え?」 「『母』も『友』も……色々諦めてないのは結構いるんだゼェ」 「『同類』も、だな」 「忘れちゃいけないにゃー」「全くであるな」 「ウルせえヨ」 5.デュラハンメイド長さんについて 「とうとう魔同盟でも無くなっちまったヨ」 「いや、別に良いんじゃねーかしらん? だってあのコ」「小アルカナ候補に何度か挙がった娘であるぞ。辞退を繰り返しているそうだが」 「そうなんですか?」 「『皇帝』のとこの、ほら、なんつったっけか、とにかくあそこの将軍の様にな、「自分が仕えるのは我が主のみ! 有象無象と一緒くたにされたくはない!」的な」 「要は『節制』の魔王、つまりコウちゃん一筋っつー訳ヨ」 「ヒューヒュー! 熱いねー羨ましいねー」「伽ぐらいは済ませたのではあるまいか?」 「? とぎって何ですか?」 「……ダメだコリャ」 「その手の話は期待するだけ無駄、と」 「なーんだ。つまらんちーん」「もう少し甲斐性を持つである小僧」 「ま、基本的には優秀な娘だ。結構ヌケてる部分もあるが、それも「お好きな人には堪らない」らしい。意味は分からんが。  ちなみにデュラハンだけあって、騎士としての修練も積んでいるからな。あれで結構戦闘力も高いぞ」 「護衛も兼ねてるんだよナ。そういう意味でもアルフリードよりもあいつの方がふさわしかったんだけどナ、アン時もヨォ」 「『人間』と『魔物』だからみゃー」「『人間』を付けると言い出した貴公にも呆れたもんだがな。『世界』の助手も大概だったが、アレは一応心的にはこちら側だった」 「『開通者』は色んな意味で例外だからナ」 「あのぉ……僕も一応人間なんですが……」 「にょほほほほほほ、何を仰る宇佐美さん」「元の世界ではいざ知らず、こちら側では貴公は歴とした『魔王』、魔物の王であるぞ」 「うううぅ……」 「しかし、あの時は参った。  「人間などを小アルカナにつけるとは何事ですか!」とつっ掛かられ、「ならば対立候補の貴様が就けば良いだろう」と言ったら「冗談ではありません!」だからなあ」 「な、なんかごめんなさい……」 「うむ、苦しゅうない。気にするな」 「ありがとうございます。ところで、よく分かんないことがあるんですけれど」 「何ヨ?」 「彼女、こっそりネコに餌あげて懐かせたりしてるんですけど、そのネコに『コシュタ・バウアー』って名前付けてるんです。  コシュタってデュラハンの愛馬のことですよね? 新しいペットにつけるには、なんか妙だなって思って」 「……あー」 「それは……ナァ」 「え〜っとね〜」「触れてやるなである」 「……?」 「みんな、長いこと生きてたらさぁ〜」「色々あるものなのだよ」 「ソウソウ、愛馬に蹴りと三行半突きつけられて逃げられちゃったりとかネー」 「……聞かなきゃ良かったです」 ――― 「……ふぃー。ま、今回はこんなとこかネ。あんま喋りすぎても何だしヨォ」 「色々あるんですね。知らなかったなあ」 「まあ、あまり面白い話題でもないからな」 「ん〜、さってと。これから」「どうするか? カラオケでも行くか? ディスコというのも面白そうだが」 「そうですね……ところで、此処の支払いってどうするんですか? 僕、此処のお金持ってませんけど」 「ん?」 「どうッテ」 「そりゃあねえ」「決まっているである」 「み、皆さん? なんでクラウチングスタートの体勢に? あ、ウェイターさんが……」 「3」 「2」 「「1」」 「「「「GO!」」」」 「う、うそー!?」 「食い逃げだぁぁぁぁ!!!」 「え、あ、その、す、すみませんんんんん!!」 ―全力疾走する魔王4人、追う店員たち。どこからかサイレンの音が木霊して…………   終幕