前回のあらすじ 海を渡る最中、ロブス団と戦ったヒース達、アリシア・メディナ・ヤカリ・ペルソルナは見事撃退 だがヒースは負けかけて、緊急プログラムのロスト・エンスピートでキャプテンのロブ=モブを撃退した 「んーっ久々の陸地だね!」 「・・・」 「ヒースさん?到着しましたよ?」 「えっ・・・あぁ」 前回の戦いの後、メディナにこっぴどく叱られてしまった、今度から約束で水中戦では アリシアかメディナに水中用に適したモード、またはユニットをつける事を約束した その後は皆疲れて、今日までゆっくりとしていて、アリシアがはしたないと恥ずかしがってた 旅なんてこんなものだと、ヤカリが肩を叩いて少し元気になってるが、流石お姫様か 「水中用ユニットなんて、そう簡単に見つかるか?」 「探せば案外あるはずさ」 ヤカリの案内でこの水路と遺跡の町、シュコトーを歩いている、コレット・ファヴァを思い出すが 水路以外の道もあり、なぜか一部の水路に船が無いのが最大の近いなんだろうな 「ヒース資金は?結構かかるぜ?」 「闇黒硬貨と紙幣なら、今までこれでやってこれたんだが・・・」 暗黒連合は今では影響力があるし、これでやり取りできた、ヤカリに次元層を覗かせたら こんなに大金もって、旅してるのはヒースぐらいだと殴られた、何だか理不尽だ。 「これれならNIの最高級品、買ってもお釣来るね・・・ヒース金どれぐらい使った?」 「ん?そうだな、一人旅の時は殆ど使わなかった、盗賊に襲われたりして、いつか必要になると思ってたらこうなった。」 盗賊から少し貰ったり、盗賊を役所に引っ立てたがそのうち、いつの間にかこうなっていた 下手な金持ちより金があると言われたが、実感がわかない・・・周りが凄い金持ちしかいなかったからか? まぁ税金やらを納めてない分、俺は金が溜まりやすいんだろう、放浪の身で金持ちなんて変な話だが 「金は天下の回りもの、使うときが来たね」 「ヤカリーあったよ、ほらここ」 SDロボ専門の修理工場か、かなり大きい駐機場には奇怪なロボが大量に並んでる、ボートのような機体が多く 少し疑問に感じた、この町は水路が多いがボートを使えばいい、ロボでは面倒ではないだろうか? それと船を停める場所が多く、なんと言うかロボ専用の水路のようにも思える、ロボで水の上を移動するのか? 「いらっしゃいませ〜」 「お姉さん、水中用ユニットある?地上用のにつけれるやつ」 ヤカリが交渉している間、アリシアは店の中を見ている、こんな所に来るのは初めてだろうし新鮮な気持ちなんだろう メディナは何度かこういう所に来た事があるのか、あまり興味が無さそうに座って、休憩所のテレビをニュースに変えてた 「店長〜ハイドロユニットですってー」 「おーほいほい、機体を駐機場にだしてまっちょれー」 ヤカリが外で待っててと言い、それに従い外に出る事にした、外に出ると作業着にゴーグルと言う 如何にもな老人が出てきて、機体を出すように言うと、俺は次元層から禁忌を呼び出した それとほぼ同時だったか?老人が、歓喜の声を上げて俺の肩をつかんで揺らしてきた 「うっほょしょーい!!お主ヒースじゃな!!ヒースなんじゃな!!こりゃ運が良い!写メ取らせて写メ!」 「ちょっちょっと待て!なんだいきなり!!」 「わしゃクゥルセルヴェにダチがいての!と言うより科学者としてお主に会いたくない奴はおらん!」 俺が首を頷いてると、ケータイで写真を撮って、凄い速度でメールを送信している 「NIと言い科学者がこんなのが多いな・・・」 「むー?NIと一緒にせんでけろ、奴らは相手の気持ちを完全に無視する悪い科学者じゃ!」 怒ってる老人に謝罪すると、老人がならばよし、と腕を組んで笑っている 「のーそれで何の用なんじゃ?」 「いや、水中で行動できるパーツを・・・」 老人の口が大きく開いて、しばらくそのまま唖然としてたが、今度はどこからか花火が打ちあがった 変なポーズで飛び上がると、また俺の肩を大きくブルンブルンと揺らしてきた 「マジか!マジなんじゃな!オーパーツが弄れるんじゃな!」 「落ち着いてくれおじいさん!」 おじいさんを何とか落ち着かせて、ほっと一安心してると、おじいさんが店の奥から店員を何人も呼んでくる これからオーダーメイドで、ハイドロユニットを作ってやると言って、禁忌の写真を撮り始めた 何だか不安になりつつ、俺のマジックアイテムの手紙の番号を教えて、店の中へといったん戻った。 大丈夫だろうか・・・・ 「あはは、災難だったねヒース」 「私が行ったらセクハラ物だったね。よかった整備、受けなくて」 「そうかもしれないな、ほらヤカリとメディナの荷物だ」 ここはシュコトーの宿、今回は部屋を2人づつで分けることになった、サイコロの結果 アリシアと俺、ヤカリとペルソルナとメディナになって、荷物を出すとそれぞれの部屋に移動 日当たりも風通しも普通、だが窓から水路が見え、風が入ると涼しい 「水路の水が綺麗ですね、ディオールだとあまり見かけないです」 「そうなのか?」 荷物を整理していると、アリシアがディオールじゃ環境汚染で、一部の地域の水が濁ってると教えてくれた 魔法と科学が融合しても良い事だけじゃない、科学をむやみに使うと自然が削れてしまうと言う事か 魔法も同じで、自然に頼っていつまでも人間が自分の力で発展できない、なんか難しいな。 「・・・むっ」 外を見てると、水路の下に穴が開いている、アリシアに聞いてみるとどうやら このシュコトーは水没した遺跡の上にあるらしい、なるほどだからこんなに水路があるのか 船で水先案内・・・?さっきの場所は殆ど無かったのに、ここに来たら一気に多くなったな 「なぁアリシア、ここってロボットと船で専用の道があるのか?」 「あら?ヒースさんは知らなかったんですか?シュコトーには、ロボットを使った水上競技があるんです。」 「水上競技?」 シュコトーではどうやら、ウォーターフォーミュラーと言う、ロボットで。水上を駆け抜ける 「闘艇」と言うスポーツが流行ってるらしい、なるほど船を置く場所が多いのは その時に邪魔にならない為か、船型の機体が多いのも納得できるな。 「テレビでしか見た事がないですが中々、激しいスポーツで水飛沫が凄いんです」 「どんなの何だ?話からするとレースか?」 俺の考えが的中、どうやら水上を走り抜けるレースらしい。コレット・ファヴァの水路はロボット1機ぐらいだが シュコトーは水没した遺跡の上なせいか、結構な大きさだ。これならロボット数機が走り抜けてもぶつからない これは完全に余談だが。コレット・ファヴァに対してこっちの船は、機械化が進んでいるが それはどうやら、この広い水路を渡るとなると、人力では手間がかかるのが原因だそうだ。 「そういえば近々、闘艇が開催されるようですし・・・見ていきます?」 「ふむ・・・アリシアは見たいのか?あっちの二人が良いなら俺は構わん」 ちょっと恥ずかしそうだが、アリシアが首を小さく縦に振ってる。それじゃあ二人に聞いてみよう 部屋を出て、ノックをすると返事がすぐに帰ってくる。部屋に入ると二人はのんびりしていて 闘艇の事も二つ返事でOKだった、もう1日滞在になるがいいか、そう思ってまた窓の外を見ると 「・・・何かいるか?」 「へ?何かって何さ?」 窓をあけて見ると、壁に張り付いて下へと逃げてる男がいる、怪しいと言うよりアイツだ 禁忌で捕まえて部屋に放り込むと、首からカメラを下げている、見覚えが・・・あっ! 「ディファクターか!!」 「あの時の覗き魔!?なんでここにいるのよ!!」 前に現れた、隠し撮りの集団ディファクター・・・関節技で、なんでここにいるかを問い詰めると 案外あっさり答えてくれた、どうやら闘艇の選手の隠し撮りを取る最中、俺達を見つけてついでにと 撮ろうとしたらしい・・・運が悪すぎやしないか、自分の運の無さに頭がクラクラしてくる。 「場所は?」 「ひ、東口から少しした場所に、ちょっと大きな家がある!青い屋根でロボットのガレージがある!」 それだけ聞くと、そのディファクターの男を禁忌で投げ飛ばして、きらーんっと星にした 名前はステア・ベルナートか・・・急ごう、奴らの計画を黙って見過ごすのは何かイラつく 「ったく・・・ヒース、ちゃちゃっと終わらせなさいよ?」 「ねぇヤカリ、私も隠し撮りされたかな?」 「そりゃ・・・まぁされたんじゃないか?何でも隠し撮りするみたいだし」 皆に待ってるように言うと、水路脇の通路をぶつからないように走り、俺は言われた場所を目指した 途中で水路に落ちそうになったり、慣れない道を走っていくと・・・ 「ここか!」 確かにあった、塀にもベルナート家と書いてあるし間違いない、インターホンを押すと家のドアが開いて 中から出てきたのは、酒瓶を片手に持ってだらしなく服を着崩した、中年の男性だった 「誰だ?見慣れない顔だが・・・闘艇のコーチならお断りしてるぞ?」 「ステア・ベルナートか?事情はいろいろあって長いが、貴方は狙われてるんだ!」 「娘が狙われてるだと!?おいどういう事だ!」 彼はステア・ベルナートの父親らしい、目を見開いて慌てながら事情の説明を仰いだ ディファクターの事を、悪質な変態パパラッチと納得して、顔が青ざめていった 「娘は風呂だ、待っててくれ」 「風呂!?最悪だあいつ等、娘さんの裸を隠し撮りする気だ!」 家に上がらせてもらうと、風呂場へと父親が出るように言うと、しばらくして何故かヘルメットを被った女性が出てきた まぁいい、これで探せる・・・風呂場を見回すと、さっきと同じ気配を感じて、適当に掴んで引っ張ると 「いたか!」 「くそっ!4号がやられたか!!」 驚いたな、ステルスマントで姿を隠しているなんて、ステルスマントを破り捨てて とっとと外に連れ出すと、4号(らしい)と同じく禁忌で投げ飛ばした、これで事件は解決した・・・ すがすがしい気分でいると、後ろから声を掛けられた、隠し撮りされてた闘艇の選手と、その親だ 「いや、娘が隠し撮りされる前に何とかなったよ、ありがとよ」 「気にしないでくれ、俺はやりたいようにやったんだ」 皆を待たせるのもなんだし、帰ろうとしたがゆっくりして行けと、手を引っ張られ家に引きずり込まれた しょうがなくなり、リビングまで連れてこられると、こんな真昼間から酒を出されてちょっと焦った 「お父さん!まったく人を無理やり連れ込んで、挙句に酒を飲ませるなんて!」 「ハハハ酒はいいぞー」 飲んだ暮れと言う奴なんだろうか?ちょっと引いてるとステアが 父親から酒瓶を取り上げて、耳を引っ張っている、娘の方が強いようだな 「ありがとうね、あぁいうパパラッチは困るわ〜」 「役立てて何よりだ、すまないが待ち人がいてな、帰らせてもらうよ」 話が通じる相手で、事情を話すとすぐ納得して返してくれた、帰り際に見送ってもらう時に 彼女が闘艇の選手なのは知っていたが、今度のレースに出る事を教えてもらった 「丁度、見に行く予定だし応援させてもらうよ、頑張ってくれベルナートさん」 「ステアでいいよ、ありがとう、私も頑張るよ!」 手を振って見送ってくれるステアに、こっちも手を振って分かれると、俺は宿に・・・あっ そういえば何でヘルメットをずっと被ってるか、最後まで聞かなかったな・・・まぁいいか 「ただいま、何かあったか?」 「いえ、特に無いですしメディナちゃん達も、あれから結界魔法で侵入者対策はばっちりです」 どうやら異常はないらしい、帰ってきて何だか疲れた俺は、ちょっと横になる事にしていた 「闘艇の選手って誰だったんです?」 「ステア・ベルナートって名前の女の子だったよ」 何気なく言ったのだが、アリシアがビックリして俺に詰め寄ってくる、ベッドで寝ていた俺は ベッドに押し倒されたような形になった、アリシアがこんなにビックリするなんて珍しい 「きゃっ私ったらはしたない・・・あ、あの本当ですか?」 「あぁ、だがどうしたんだ?」 本当に珍しい、アリシアに事情を聞いてみると。ちょっと赤くなりながらアリシアが分けを話してくれた。 彼女のファンだそうだ、アリシアが闘艇が好きなのが予想外だったが、それなら納得がいく 「あまり激しいスポーツは苦手で・・・憧れがあるんです・・・」 「意外だな、てっきり苦手なだけかと思ってた」 「波を切って駆ける姿に憧れがあるんです、妹みたいに私も運動神経が高かったらなぁ・・・」 妹の方が運動神経がいいのか、確かにアリシアはどっちかと言うと、インドア派で読書とかのが似合う 時計を見ると、もうすぐお昼になるし食べ終わる頃には、パーツも完成してるだろう・・・ よし、せっかく来たんだし、水上バイクでも借りて。アリシアに水の上を走らせてみるか 「そろそろご飯だし、行くか?」 「あっもうこんな時間、メディナちゃん達も呼んできますね」 俺は席を先にとっておこう、海も近いし海産物を使った料理が多いと思う、皆食べるとしたら何を食べる そんな事を思いつつ、食堂の方へと歩いていくと、席が意外と空いていて場所取りも楽チンだった 少しすると、4人ともやってきたし、メニューを開いてアリシアがシーフードリゾット メディナはサーモンのマリネでヤカリがタラコのシーフードスパゲティ、俺はいらないのでこれで注文。 「ヒース食べれば良いのに・・・」 「本当に今はおなかへって無いんだ、食欲も元々ないしな。」 不満そうなメディナを宥めつつ、食べ終わったらあのパーツ屋に行こうと言うと、特に予定も無いので皆OKを出してくれた それから10分、ここの眺めの良さを話してると、注文していた物がやってくる、アリシアのリーフードリゾットから トマトと磯の香りがして、普通の人間だったら食欲を刺激されるだろう、サーモンのマリネも綺麗だ・・・ そういえば、たらこスパゲティはバクフ国で出来たんだよな、あそこも国際化・・・してるんだろうか? 昔、宗教上の理由で追い出されてから、あの国は苦手意識がある・・・ 「ヒース少し食べるか?」 「むっ?それじゃあ少しだけ」 ヤカリがフォークに絡めた、たらこスパゲティを俺の口に近づけ、それを口に含むと・・・ ふむ、バクフ国で出来てそれが別の国に伝わったのが分かる、これは美味しい。 海苔も意外と合うもので、ヤカリに礼を言ってイスに深く腰掛け 「何よ幸せそうな顔して、こっちも食べる?」 「良いのか?」 メディナがサーモンの切り身を、フォークで刺して口に放り込んだ、これもまた美味しい レモンとハーブの香りも良いがサーモンが、柔らかく臭みも無いのがまた 「おなか減ってるんじゃないんですか?私のもどうぞ」 「あっすまない」 アリシアが食べさせてくれた、シーフードリゾットはトマトとシーフードがまた・・・ 何だ、何処かから視線を感じる・・・考えてみると、男一人が女3人に食べさせてもらってるって 赤ん坊みたいな感じもするか、恥ずかしくて赤くなった頃、マジックアイテムの手紙に連絡が来た 「えーこちら「ニジウラモーターズ」、ご注文のパーツが完成しました。」 「分かりました、後で取りに伺います。」 どうやらパーツが完成したらしい、食べてすぐはキツイだろうし、少し時間を置くとしよう。 そしてまったくの余談なのだが、実は視線はディファクターの残党の物で、黒騎士と姫君なんて題名で さっきの食べさせてもらってる所が、勝手に使われたりするのだがこれは別の話になる。 「操作系統が全然分からん、水中での使用は手動部分が多いぞ?」 「そうか、早速だが教えてくれ。」 現在、13時と27〜6くらいか?パーツを備え付けられた禁忌は、カラーリングこそ代わりはしないが 背中には巨大なハイドロジェット、両腕には銛を内蔵した、流線型の追加アーマーを装備している。 「それじゃあまずはコックピットに」 「分かった、禁忌。」 鎖が伸びて、俺に絡みつくとそのまま、コックピットに引っ張られて乗り込んだ(整備士がどうなってるのか凄い気になってた) 左腕の中指で掌を、押すような動作をすれば良いと言われ、その通りにすると背中から、フィンが回転する音がした 左腕なのは、盾を使うのが左腕でその方が良いだろうとの事だった、吹っ飛んでるが相手の事はちゃんと考えてるんだな。 「ありがとう、お代だがもう払っておいてあるし、大丈夫か?」 「おう、確かに貰ったぞい。」 20万でこれだけの装備、良いのか悪いのか分からないが、水中装備が手に入ったならそれでいい ふと見てみると、ペルソルナが別の店員に水中用装備を付けられ、中々ご満悦なようだ。 マーメイドタイプの装備で。元々、水中で戦えるペルソルナにはスピードアップの装備だけで 鱗の様なディテールかと思った物は、全部ハイドロジェットらしく、外付けのもあわせて凄まじい加速だろう 「・・・余裕で金があるし、買っても罰は当たらないよな・・・すまん、あれいくらだ?」 「50万だ、どうする本当に良いのかえ?」 残りが普通に1000万より・・・ん?あれ、なんでこんなにあるんだ?1ヶ月前より増えてるぞこれ えっとだ、それまでに盗賊も倒したし、暗黒連合やディオールから謝礼金も・・・あぁ、それでか このごろ使ってるし減ってると思ったんだが、皆が我侭、言わないのが一番大きいんだろうな。 「毎度、それにしても凄いのぉ出来れば、ずーっとこれを弄りたい所だよ」 「ははは、流石にそれはムリさ、またここに来たらお世話になります。」 お辞儀して、次に来たらサービスしてくれるようにウィンクすると、近くのレンタルショップで・・・ また客が入ってきた、ちょっと目が合ったのだが・・・ステアだ 「あっヒース!奇遇だね、ヒースもここで買い物か。」 「なんだ知り合いか?整備は完了しておるぞ。」 闘艇の選手・・・ふむ、ここで整備を受けていても不自然じゃない、ガレージから鋭角なデザインの船型の機体が ホバートレーラーで運ばれ、水路へと浮上、ステアが乗り込んでパーツを動かしてると コックピットから出て、グッと親指を立ててた、機体の調子が万全といったところか。 「サンキュ、これで明後日のレースは行けそう。」 「ほほほ、応援しとるぞ!」 ステアが機体から出てくると、俺によってくる、なんだろうと思ったら 「まだ名前、聞いてなかったよね?」 「なるほど、俺はヒースって言うんだ」 ヘルメット越しに見えた顔が、何だか複雑そうに俺を見てる。だが少ししてフッと息を吐いて 俺の方を叩いてきた、どうやら警戒されてないみたいで安心した。 「あんたがヒースね、随分と良い男じゃない。」 「良い男か・・・今じゃすっかり賞金稼ぎかあアプローチがなくなったがな。」 ハハハと笑っていると、アリシアがこっちにやって来た、けど何処か忙しい感じで珍しい というより、何処か興奮気味だ・・・なんだろう? 「あ、あのステア・ベルナートさんですか!?」 「えぇ、そうだけど?」 キョトンとした感じのステアに、アリシアが両手を組んで喜んでいた、こんなにアリシアが喜ぶなんて珍しい 子供っぽい笑いを浮かべるアリシアに、ステアが何か聞こうとしたが、それより早くアリシアが動いた。 「貴女のファンなんです!テレビで見てるんですが、とても凛々しくてカッコイイです!」 「あはは、嬉しいねサインいる?」 歓声を上げて、アリシアがどこからかサイン用紙を取り出してる、何だか何時もと違うアリシアに 少し苦笑いしていたのだが、これはこれで微笑ましい、アリシアもこういう所があるのだな。 「名前は?」 「エヴァック=アリシア=ディオールです♪」 「ブッ!?アリシアー!」 場が凍りついた、いや凍り付いてないけどポカーンとなった、アリシアが少しして笑顔から 冷や汗を流して泣きそうになってる、あっちで休んでたヤカリ達もやってきた・・・ 「ちょっディオールの王女様!?」 「い、今のは聞き逃してくださいー!」 あたふたとするアリシアに、俺がフォローを入れようとしたがすでに遅い。どうした物だろう ヤレヤレと額に掌を当てると、やって来た二人に事情を説明するのだった。 「なーるほどね、アリシアもおっちょこちょいね、まったく・・・」 「ごめんなさい・・・」 あれからいろいろあったが、まぁ特に問題は無かった、ステアはディオールの女王がファンだったと感激してるし 店の整備士は揃いも揃って「アンジェラを整備させてくれ!」だし。うん問題はないはずだ 「まさか物静かな賢女で有名なアリシア様がね、闘艇なんて遠い世界の事だと思ってたのに。」 「いえ、その逆なんです・・・私、運動が苦手な方だから憧れちゃうんです」 ちょっと照れてるアリシアに、ステアがサインを渡すとさっきと違い、少し抑え気味に嬉しそうにして アリシアが転移魔法で、自分の部屋に色紙を送って、お礼に頭を下げてるとステアが慌ててた 王女に頭を下げられては、普通どうしようと慌てるだろう。 「頭下げないで!何か凄い気まずい!」 「えっ・・・わかりました」 首を傾げるアリシアに、ため息をつきながらメディナが突っ込みを入れてる、何時もしっかりしてるアリシアが こうなってるのはきっと。アリシアが興奮してるからなんだろうな、この光景を遠くから見てると ペルソルナが俺の服の袖を引っ張る、潮風・・・というほどでもないが、錆止めでも塗ってほしいのか? 「これ、買ってくれたんだ・・・ありがとう。」 「ん?あぁそれの事か。」 さっきの水中用の装備か、気にするなと言ったが、高かったのにとちょっと申し訳無さそうだった こんな顔をされると思わず、少し焦ってしまう・・・ 「イヤだったか?」 「イヤじゃないよ!けど・・・私、何か返せるもの無いよ?」 「そんな事か、ペルソルナが喜んでくれればそれで良い。」 そう言うと安心したのか、笑ってくれたような気がして、何だか安心できた。 おっと、そろそろ行かないと時間がなくなるかも知れん。 「皆そろそろ行かないか?」 「ん?何か用事あるの?」 「あっ・・・分かりました」 ちょっと残念そうなステアとアリシア、アリシアもこっちのが良いかもしれないし、どうするかな・・・ 「アリシア、これから水上バイクでも借りて、遊ぶかと思ったがどうする?」 「ん?あっなら良い考えがあるよ。」 アリシアより早くステアが、口を挟んできて俺とアリシアが、ほぼ同時に首をかしげる これからステアも、練習に入るから一緒に滑らないかと、アリシアが邪魔になると悪いと言うが 気にするなと言いアリシアも少し悩んだが、ちょっと頬を赤くして小さく頷いた。 「んじゃ決まりか、ヒースも一緒にどう?」 「むっ・・・」 「ええと思うぞ?というより、慣れておかんと。」 確かにそうだ、ぶっつけ本番は危ないし練習は必要だ、ステアが練習ついでにコツを教えてくれると言ってくれ 俺はステアを先生に泳ぐ事にした、メディナは遺跡が気になり、ペルソルナは買った水中ユニットを使いたいらしい。 何か全員、泳ぐ事になったのだが楽しいしいいか。禁忌に飛び乗ってエネルギーを送ると、どうやって俺の体に 禁忌を動かすほどのエネルギーがあるか、超古代文明の遺産なのか、それとも何処かの国が作ったのか だがそれは、すぐにメディナとアリシアのアンジェラとアン・ギェーラの出現で、忘却のかなたへ飛ばされた。 「わっスゲー!生アンジェラとアン・ギェーラ!!」 うむ。二人には悪いけど隠れ蓑になってもらった気分だ、禁忌を動かして水の中に少し入ると、案の定 沈んでいく、さっさとハイドロジェットを起動、バランスを取るのに苦労したが、何とか水中で真っ直ぐ立てた しばらく動けなかったが、追ってきたステアのアドバイスで、体を前に傾けると進み始める 「うん、その調子その調子。」 「分かった・・・よし、こうか?」 おぉ・・段々とだが、動かし方が分かってきた、あっ・・・これは楽しい、今まで沈むだけだったが 水の中で自由に動けるのが、こんなに楽しいなんて思ってもみなかった。 「楽しいなこれ!」 「すっかり夢中だね、下は遺跡になってるし散歩してきたら?」 元々、水中用なんだし水の中を潜るのもいいか、ステアに手を振って水の中に潜ると・・・ 水没した遺跡ってこんな感じなのか、まるで洞窟が沢山あるように見える。 「あっいたいた、ヒ〜ス〜」 「むっ?ヤカリとペルソルナか?」 人魚が後を追ってきたと思ったら、ペルソルナがマーメイドアームズを装備して、追いかけてきたらしい あっちは元々、水中戦ができるからか、スムーズにマーメイドアームズを使いこなしている。 「ヒースありがとね、ルナから聞いたよ」 「あぁ、気にしないでくれ、ヤカリも気に入ってくれたなら幸いさ。」 遺跡の奥に進みながら、ペルソルナが下半身のマーメイドアームズを楽しそうに動かしてるのをみて 高い買い物だったが良かったと、そう思えた・・・かわいい、そのまんまだが機械人魚と言った所か 「メディナとアリシアは、ステアと一緒に上で泳いでるってさ。」 「そうか、俺はしばらく遺跡の中を泳ぎまわるよ。」 「ねぇヤカリ、私達も遊んでようよ」 ヤカリがニカっと笑ってOKを出すと、ペルソルナとヤカリが遺跡から出ていった、俺は遺跡をさらに進む事にした まるで永遠に続くような、そんな錯覚を起こさせる遺跡の通路に、吸い込まれていくように進むと 道が分かれ始めた、迷わないように注意しないとな・・・ 「きゃ〜凄いです!こんなの初めてです!」 「アリシアってばお転婆なんだ!もっと飛ばすよー!」 ヒースさんが潜って数分、今はステアさんのロッソ・スクアーロに乗せてもらって、水の上を走り抜けてます こんな風に、実際に水の上を走り抜けるのなんて初めて、まるで風になったように心地いい・・・ 「それにしても本当、意外だよ王女様が何で博打なんて?」 「博打には興味ないです、こうやって水の上を風になって走り抜ける姿が大好きなんです!」 「へぇ、それじゃフルメタルフットボールは?」 あれは、あまり好きではなかったり・・・だって、やってる事が殆どスポーツじゃない・・・ いうなればスポーツの皮を被った、代理戦争のようにも思えて、それがイヤだったりします ディオールのチームもあったけど、前に暗黒連合との試合で殆ど全滅してしまって、何だかヤな気分になって それ以来はもう、フルメタルフットボールは、あまり好きではなくなってしまいました。 「へぇ・・・アリシアは戦いが嫌いなんだね」 「そうですね、こういう競技は大好きですけど。」 「こら、何よのけ者扱いして・・・」 水を切って走るのに夢中になってて、横で走ってるメディナちゃんをすっかり忘れて、ちょっと怒られると ロッソ・スクアーロがスピードを緩め、今度はシュコトーを案内してもらう事になりました。 「おーい、ヒースさんには伝えてきたよ〜」 「あれ?もう走り終わったの?」 丁度良くヤカリさんとペルソルナちゃんも帰ってきて、4人で町をゆっくり探索、と行きましょう さっきと違い、ゆっくりと移動するロッソ・スクアーロのコックピットが開いて 涼やかな風が入り込んでくると、さっきまで興奮して、熱った体が冷やされて幸せな気分になっていきます 「涼しい・・・」 「練習の後の風は格別だよ〜」 幸せそうな声のステアさんに、メディナちゃんがアン・ギェーラから顔を出すと、怪しそうな顔をしてて なんだろうと思ったら、確かに知らない人が見たら、凄く気になるような事を言ってきました、確かに気になりますよね 「なんでステアはヘルメット取らないのよ?暑いでしょ?顔に火傷でもあるのかしら?」 「これ?私ヘルメット中毒なのよ〜」 そう、ステアさんはヘルメット中毒なんです、無茶苦茶な中毒だけど本当らしくて、外すと息苦しいとの事 前に見た雑誌で、ステアさんが大会優勝の時に受けた、インタビューで世間に知れ渡って それまでは皆、顔の下に傷があるとか、そういう理由だと思ってたみたい・・・(私も同じでしたけど) 「ヘルメット中毒〜?そんな中毒あるのかしら?本当は元、有名人で顔隠さないと平穏に暮らせないとかじゃないの?」 「無茶があるって、大体それなら闘艇なんて出場しないよ。」 確かにヤカリさんの言うとおり、有名人が平和を求めたなら、山の中で隠居したりするのが自然です 自分のヘルメット中毒に、苦笑いしてるステアさんは不便です・・・ 「それにしても広いね〜、もしかして道路より大きい?」 「普通に広いよ、埋め立ても一時考えられてたくらいにね。」 「なんで埋め立てられなかったのよ? メディナちゃんが首をかしげると、ステアさんが理由をドンドン話してくれました、まずは遺跡を壊しかねない事 もう一つは闘艇が出来なくなる、ステアさん達も反対運動に参加して、それで詳しいんだそうです 「あそこが競売上、チケット売ってるし賭け事したいなら行くといいよ。」 「遠慮しておきます、賭け事は嫌いですから」 「だね、可能性がめちゃくちゃだし。」 「あら?ヤカリは好きそうだと思ったのに。」 「あのね、ヤカリは前に賭け事で引き際、間違えて危なく身包み剥がされかけたの。」 ヤカリさんが慌てて、ペルソルナちゃんを止め様としたけど、ペルソルナちゃんの音声ユニットを防げるはずも無く 昔ギャンブルで大負けした事を話され、皆で笑ってから、あのお店に戻る事になりました。 ヒースさんはどうしてるかな?遺跡からもしかして、石器でも見つけたりして、なんて思いながらちょっと遺跡を見たのでした 「・・・・」 なんだろう、遺跡の中をグルグルしてたら、本を見つけてしまった・・・何の本だ?少なくとも紙じゃない 鉄だ、鉄で縁取りされてるんじゃなく、紙の変わりに鉄を使ってる本、禁忌に拾わせると 後で市役所にでも届け・・・ん?なんだ?ゴロって・・・岩っ!? 「ベタにも程って物があるだろう!?おい!!」 ハイドロジェットをフル出力にして、急いで来た道を引き返すが、岩は凄いスピードで転がり迫る 水の中なのに何でこんなっ!くそっ逃げ切れるのか!? 「くそっこっちは・・・右だ!」 逃げ切れた、そう思ったのだが岩が方向転換をした、なんなんだこの遺跡! 出口までフルスピードで飛ばしても、間に合うか危うく感じる 「永遠に追いかけてくる気か!」 この時、俺は致命的なミスを犯してしまった・・・左へ行かなければならないのに、右に行ってしまった この先は行き止まり、急いで武器を出さないと!焦っている間にも岩は・・・? 岩が通り過ぎてしまった、恐る恐る、岩の通り過ぎた後を見たが、影も形も無い。 そのまま出口まで向かうと、出口の外には岩が転がってた、どうやら出口まで追いかけるよう出来てるらしい。 「人騒がせな・・・・あっ」 上を見てみると暗く、もう月がユラユラと揺らめいてる、時計時計・・・あっ!?もう20時!? 大変だ皆、心配してるかもしれん!ニジウラモーターズに上がって、禁忌からハイドロアーマーを解除 次元層にしまい、禁忌も次元層に返すと宿屋に走って、何とか21時までに・・・ 「ヒースさん!?」 「すまない!いろいろあって遅れた!」 まぁ当然だが、こっぴどく叱られてしまった、今から警察に捜索願を出す所だったらしく、涙目のアリシアに正座させられ 10分程度、お説教タイムでこれからは、ちゃんと遅れる時は連絡するように言われ、マジックアイテムの番号を教えられた 泣きそうな顔で怒るアリシアを見て、本当に悪い事をしてしまったと反省して、ちょっと落ち込み気味に頭を撫でると 安心したのか、泣いてしまった・・・涙を拭いた後、隣の部屋に行くとまた怒られた。 「ヒース!あんた何してんのよ!遺跡で死んだかと思ったじゃない!」 「アリシアがすっげー心配してた、ちゃんと謝った?」 「あぁ、皆ゴメン・・・もう飯は食べたか?」 「食ってるわけないだろ!アリシアが手続きするとか言ってたけど、喉通るかよ・・・」 それもそうだよな、今度からは皆を心配させないようにしないと、これから皆でご飯食べに行こうと思ったが もう食堂が閉まってるか、少し遠いがレストランがあったし、今日は皆でそこに食べに行くとしよう 「分かった、ヒースもちゃんと食べろよ?」 今度はまたアリシアを呼びに行く事になる、部屋に入るとアリシアはもう泣いていない、何時ものように凛としてる メシを食いに行くと言ったが、捜索願を取り下げに行くから、俺達だけで食べてくれと言われた 「俺が行くよ、俺のまいた種だし」 「大丈夫です、ヒースさんがいない時は私がしっかりしないと。」 抱え込んでるっぽい、こうなればと無理やり手を引いて、宿の出口まで無理やり連れて行った ちょっとビックリしてるみたいだが、これぐらい強引じゃないとダメな気がした。 ヤカリ達にアリシアを頼むと、俺はレストランで先に場所を取るように頼んで、警察署まで行くのだが ここでも大目玉だった、今度から遺跡に入る時には、深く入る時にサインをしろと言われてしまった 「さて、皆をこれ以上は待たせれんぞ・・・」 折角だ、今度は皆を待たせないために使おうと禁忌を呼び出して、ハイドロアーマーのハイドロジェットだけを装備 一気に駆け抜けて、レストラン前・・・より、少し過ぎた場所で止まると禁忌を次元層に返した 店に入ると、この時間はもう食べ終えた人が殆どで、いるのはアリシア達だけで、席に座ると皆メニューは決めてた 「ヒースが決めれば最後よ、何食べるの?」 「俺は・・・ホタテのバターしょうゆ、これでいいか。」 注文が決まり、料理が来るまで他愛も無い会話をして、ちょっとすると料理がやって来た 良い匂いだ・・・バターと醤油の相性が良いのは本当だな、だが食べるのより話すのに夢中だったりする 「アリシアは一人で何とかするんじゃなく、皆に頼っても良いと思うんだ。」 「まぁ確かにそうね、さっきもヒースが無理やり連れてこなかったら、一人で何とかするつもりだったんでしょ?」 「えぇ・・・けど、この中じゃ私が二番目に年長ですし・・・」 「気にしすぎさ、私ら皆で頑張ろうよ。」 「ちょっと我侭、言っても良いと思うな私。」 ちょっと困ってるアリシアに、メディナが肩を叩いて、頼ってくれと言うと少し俯くが 嬉しそうに、皆を見て頷いていたこれで大丈夫か、俺のは量が少ないからすぐ食べ終わったし 皆でゆっくりと、歩いて帰ることにした、水面に映る美しい月に皆うっとりしてた 「綺麗ですね・・・」 「さっき急いでたし、気づかなかったわね・・・」 アリシアとメディナはこういうの、見る機会が少ないからか見蕩れて、足を止めていた ヤカリとペルソルナは綺麗だ、程度で流してるのを見ると、結構、見慣れてるんだろう。 「・・・んっ?」 「何か来るよ?大きい・・・ロボットだよ!」 何だ?サーチアイを発動してみると・・・あれは、ステアの機体か? 俺達の前を通り過ぎると、その近くでブレーキをかけた、練習の途中だったか? 「タイムが0・2秒・・・凄いな、整備の後だからか?」 「だろうね、今日は調子が良いんだ。」 ステアのお父さんもいる、やっぱり練習中だったんだな、アリシアは何だか目を輝かせてる 近づいてみると、ステアが気づいてこっちに手を振っていた。 「おーあの時の、何だお前さん女たらしだったか?」 「違う、練習中だったか?」 「あぁ!明日の大会の為に最終調整さ」 なるほど、頑張れよと俺が手を出すと、ステアが握手をしてくれた。 グローブ越しでも分かる、汗でびっしょりだ・・・?何だかさっきから アリシアがおずおずしてる、何か言いたいのだろうか? 「・・・アリシア、練習みたいのかしら?」 「ん?おー別にいいぞ?見られても、最善の力がだせんと。」 「えっ・・・でも、今からじゃ遅いし皆に迷惑・・・」 俺が言うより先に、ヤカリがアリシアの肩を押した 「いいじゃん、少しは我侭でもさ。」 「そうだよ、見たいなら見てもいいんだよ!」 「番号は聞いてあるんでしょ?ねぇヒース?」 俺が頷くと、皆の押しのおかげもあってか、アリシアが嬉しそうに水路の手すりを掴んだ 俺達は手を振ると、アリシアも手を振っていた、しばらくするとモーター音がした アリシアも不安が解けたみたいでよかった、これでハッピーエンドだな。 「ただいま帰りました。」 「お帰りアリシア、シャワー使えるぞ?」 あれから2時間、アリシアが楽しそうな顔をして帰ってきた、よっぽど楽しかったんだろうな 着替えを取り出すと、シャワールームへ行って、30分ほどすると戻ってきた。 「今日はありがとうございました、楽しかったです。」 「3人に行ってくれ、それより今日は不安にさせて悪かったな」 アリシアがベッドに横になると、もう大丈夫と言っていたが、次から注意するというと 手を出してきた、小指だけが出ていて、よく分からない形だったが 「指きりって言って、こうやって小指を絡ませて約束するんです。」 「ふむ、こうか?」 言われたとおり、こっちも小指を絡ませると、指きりを完了してアリシアが手を戻した そろそろ寝ないと、明日の闘艇に間に合わないかも知れない、俺も寝るとしよう。 「ヒースさん、我侭・・・良いですか?」 「何だ?出来る事なら。」 「明日、起こしてください・・・おやすみなさい」 起こすか・・・それ位ならお安いごよう、悪戯っぽく笑って目を閉じたアリシアの 頭を少し撫でると、俺も目を閉じて、夜へと別れを告げて朝を待つ事にした 「始まりますよ皆さん!」 次の日、闘艇のコースの席は凄い熱気だった、さすがシュコトーの国民的スポーツか ステアのロッソ・スクアーロから、手を振っていた、開始の合図が近づくと ステアが親指を上げて、ロッソ・スクアーロの中へと入った、もうすぐスタートだ 「ライバルはあの黒い機体です、ベテランで大会での優勝数も少なくないです。」 「詳しいわねやっぱり、まっ応援しましょうよ。」 シグナルが青になりスタートの合図が鳴り響くと、凄まじい水しぶきと風と共に、いっせいにロボが発進する 最初は全機が同じ速度だったが、次第にカーブで追い抜かれていく機体が出てくる、こちらから見えなくなると 巨大なテレビ画面が出てきた。これで状況が分かるのだ先頭にステアがいて安心したが まだ7位・・・安心はやっぱり出来ない、アリシアが心配そうにしていたが、次のカーブで二人抜いた 「やった!あと5人です頑張ってステアさん!」 「こんな熱中してるアリシア、初めてだね?」 「そうだねぇ・・・アリシアさん、何だか子供っぽくて新鮮な感じ。」 ペルソルナとヤカリの言葉もどこへやら、また二人抜いたステアに、もうアリシアはメディナに抱きついて大喜び メディナが苦しそうだが、イヤではないのか、そのままにされていたが、また抜くと命一杯に抱きつかれ 今度は苦しくて、アリシアを胸をドンドンと叩いて、アリシアが気づいて抱きつくのをやめていた 「まったく、熱中しすぎよ!」 「ご、ごめんなさい・・・」 「あっアリシアさん見て!2位になった!」 ペルソルナが指差すと、ついにステアが抜くべき相手は一人、アリシアが言ってた黒い機体だ、直線では 同じパワーなのか追い抜けない、この先にカーブがある、それが最後の戦いになるだろう カーブが近づくと、ステアが壁際に近づいていく、ぶつかるっ!? 「ステアさんなら大丈夫、きっと曲がれます!」 アリシアが祈るように手を合わせると、ステアのロッソ・スクアーロは少し水に沈みながら、壁をギリギリで曲がり 1位の黒い機体と並んだ、これで競い負ければ、ステアの勝機はゼロ・・・どうなる、勝てるのか? 「あぁっダメっぽい!あの黒い方が少しパワー上だ」 「いえ!ロッソ・スクアーロには対抗する手段があります!ステアさん頑張って!」 アリシアが身を乗り出して、まだ見えないロッソ・スクアーロを応援すると、テレビ画面には 黒い機体をダンダンと追い越すロッソ・スクアーロが見えた、背びれのようなパーツから ブーストを出している、これが切り札か凄い加速を見せている、あっ見えてきた! 「ステアさーん!もう少し!もう少しです!!」 「アリシア下がって!危ないじゃない!」 もう熱中してて、周りが目に入らないらしい、メディナの言葉に気づいて体を引っ込めると 応援席から、さっきの勢いで応援を再開する、もう少しで勝負が付く、ほぼ同じスピード ステアのほうがリードしてる、がブーストがあと少しで切れた、このまま切り抜けれるのか!? 水を切り裂いて、それで隠れてしまい勝敗が見えなかった、一体どっちが勝ったんだ? 「少しすればモニターのVTRが映ります、ステアさん・・・」 「あっ出てきた!」 モニターには付く瞬間の少し前から始まり、数秒後の勝利者を映していた、その勝者は・・・ステアだ ステアが勝った、わずかな差で先に、ステアのロッソ・スクアーロがラインを通り抜けていた。 「あぁ・・・やりました!ステアさん勝ったんですよ!」 「わっ!?落ち着いてよアリシア!?」 「苦しいですってば!助けてメディナ〜ヒースさーん!」 喜びのあまり、今度はヤカリとペルソルナを抱きしめて、アリシアがキャッキャとはしゃいでいた 少しすると、二人を放してロッソ・スクアーロのほうに手を振り、ステアもそれを返すように手を振っていた 「おめでとうございます!ステアさんかっこよかったです!」 「応援ありがとう!これからも応援よろしくな!」 あれから私は、ステアさんの家にいたりします。ステアさんに呼ばれて感激してたりします。 何か作らせて貰おうと、台所を借りようとしたら、王女様に料理を作らせるなんてと 拒否されてしまいました、けどお祝いに何かしてあげたいし、無理を言ってキッチンを借りると ちょっと汚かったから、掃除をするとステアさん、何だか気まずい感じでした・・・ 「ゴメンね、掃除までさせちゃって・・・」 「いえいえ、それより食べたい物あります?何でも作ります!」 「えっ・・んーそれじゃステーキ、それに・・・」 冷蔵庫を見ると、材料はあるし大丈夫ですね、お酒が何だか一杯あるけど、使わせてもらいましょう 帰るの遅れちゃうけど・・・我侭、またしちゃいましょう。ヒースさんに連絡を入れると、二つ返事で許可が下りて エプロンをすると、ステアさんの為にある程度、料理を作るとステアさんのお父さんが、こっちにやってきました 「おー凄いな!流石、王女様だけある!今日は久々のご馳走だ!」 「私の料理で喜んでもらえれば幸いです、運ぶの手伝ってくれますか?」 ステアさんのお父さんが、料理を運んでいく時、楽しそうだったけど。なぜか悲しそうで 首を傾げていましたが、後で思い出したのですが、ステアさんのお父さんは昔は有名な闘艇の選手でしたが ある事件を境に、お酒に溺れていて、使ったお酒がステアさんのお父さんの、お気に入りだったようです 謝ろうとしたけど、ステアさんが別にいいと、慰めてくれたので少し安心でした。 「んっ・・・うめぇ!アリシアは将来いい女王様になるね!」 「お口にあって何よりです♪」 憧れの人に、喜んでもらえると嬉しい物です・・・お父さんは、お酒を飲みすぎて泥酔してしまい ステアさんがベッドに運びました、料理もステアさんが殆ど平らげて、しばらくはお喋りをしてました 何で闘艇をしてるか、辛い事や悲しい事、その逆に聞かれたり・・・楽しい時間でした 「ねぇアリシア、またいつか会えるかな?」 「難しいかも・・・しれません、けどお話だけなら、これで出来ます。」 マジックアイテムを見せると、なるほどと番号をメモして、後で連絡すると言ってくれました そろそろ帰ろう、名残惜しいけど明日に響いてしまう。 「がんばってくださいね、いつまでも応援してます!」 「あぁ!アリシアもいい旅でありますように!」 お互いに手を振って、別れを告げると私は宿へ、ステアさんは家へ戻っていきました 宿に着くと、ヒースさんがもう寝れるように、ベッドを直しておいてくれてます 速くシャワーを浴びて、寝るとしましょう・・・ 「ヒースさん、明日は何時に?」 「10時だ、エルフィーナが近いからエルフィーナに行く予定だ。」 エルフの国か・・・NIといざこざがあって、同盟国のディオールも困っていたし、迷惑をかけないといいけど ・・・前向きに考えましょう、きっといい事がある、そう思いながら、服を脱衣所にしまって 私は一日の汚れを、シャワーで洗い流すのでした・・・明日もいい事があるといいなぁ 続く