――どうして、こんな事になったのだろう   「よーこそ、諸君! 入学初っ端にジイさんどものクソ長い話をよくぞ耐え抜いた! 君達は既に一人前の兵士だ!なーんて!  はいはい、入学おめでとー。あたしは外崎梅雨海! 今日から君等の担任にして戦友予定なんでそこんとこよろしく!  ……ところで、なんでいきなり席が一つ空いてるの?」 「常盤君でしたら欠席です」 「何で?」 「さあ」 「シィーーーーーット! 初日からサボりたぁ良い度胸じゃねえか、常盤歩ぅ!  ようし、あたしは常盤を家庭訪問してくるから、後のHRは任せた! ……えーと、月代さん!」 「え? ええ!? な、なんであたしなんですかぁ!?」    ――何故、こんな事をしているのだろう 「何故、あんな無謀な作戦を!? こちらだけで三名、両陣営合わせて八人も死にました!  あの子達は兵器ではありません! 人間です! それをあなた達はいつまで……!」 「分かってます、分かっておりますとも。桜庭先生。  聖護院の目指す所はヤオヨロズとの完全なる協調。いたずらに彼らを危険視し、管理と称して人権を剥奪する帝神の様な輩とは違います。  その為の犠牲は、我々としても大変に重く受け止め……」 「詭弁はもう結構です!」 「……残念ですな。これだけ言葉を尽くしても、分かってもらえぬとは。  我々の思想を誰よりも理解していると思ったからこそ、貴女を教諭として迎えたのですが」 「ご冗談を。何だかんだ言いつつも、戦闘訓練の際にはヤオヨロズを使っての実戦を経験した教官が不可欠だからでしょう」 「貴女は疲れていらっしゃる様ですな、桜庭先生。しばらく休養を取る事を進めますよ。  温泉でも入ってのんびりしてくれば、考えもお変わりになるでしょう」  ――僕らは何も知らぬまま 「貴様……諏訪部!? 諏訪部玄一か?」 「その通り。お久しぶりです、赤土さん」 「……よくも、のこのこと面を晒せたものだな」 「ここは戦場ですよ? 敵同士である以上、いつかは顔を合わせるのは当然でしょう」 「貴様の裏切りのせいで何人死んだと思ってる!」 「それなりに手土産を持って行きたかったものでね。  ……にしても、貴女の言葉とも思えない。勝利の為には、誰が何人死のうと、いや自ら犠牲を差し出す貴女の口からそんな言葉を聞くなんて」 「もう良い。貴様は『フツヌシ』の刀の錆になれ。貴様が殺した同胞の元に供物として送ってくれる!」 「それはこちらの台詞ですねぇ。『ヨモツイクサ』従機、全機既に展開済みです。  つつがなく同胞の元に送ってあげますから、あの世で自分の間抜けさ加減でも詫びていろよぉぉ!!」  ――ただ、それが宿命なんだと信じるまま 「もうやめろ、天津。そいつは殺すな」 「どうしたんですか? 清和さん。ダメですよ。ヤオヨロズ使いはきちんと殺さないと、捕虜にするにはリスクが高すぎる。基本じゃないですか」 「基本も何も、んなこたあどうだって良い。お前、泣いてるじゃねえかよ」 「僕が? 何故です? ヤダなあ、清和さん。また一つヤオヨロズを潰せるっていうのに、なんで僕が泣いたりするんですか」 「天津……!」  ――欲望の為に、生きる為に、 「あの、顔波瀬くん」 「……高柴の奴、一命は取り留めたってよ。憎まれっ子世に憚るって、ありゃマジらしいな」 「……そっか。良かった」 「良かった……ねえ。高柴を囮に使ったのって九条、お前だよな」 「! そ、それは……」 「わーってるよ。  どっちにしろ高柴はあそこで突っ込んで行ってたろうし、当初の予定より犠牲が遥かに少なかったのは、お前の機転のお陰だ。  大丈夫、分かってる分かってる。だから……」 「そうじゃない、そうじゃないよ。顔波瀬くん、ずっとあたしに何か言いたいって顔してる。  言って? あたし達、かけがえの無いチームメイトでしょ? あたし、仲間との間にわだかまりなんて持ちたくない」 「そうだな。気づかれたなら、わだかまり残す方が危険だろうしな。正直に言おっか。  気持ち悪いよ、お前。さっきの高柴が生きてたって聞いた時の顔、何であんな風に切り捨てた後で何でそんなに暖かい顔できるんだ?  あんなの、もう偽善ですらない。同じ化物でも、お前に比べれば高柴や銅月の方がまだ、まともに狂えてる」  ――信念の為に、正義の為に、 「敵性ヤオヨロズ『タカミムスヒ』による第九弾の発射を確認! 着弾予定は2分13秒後!」 「くっそおおおおお! 彩陶、何とかならねえのかよ!?」 「無理だよ! 沖縄本島から砲撃してくる敵への反撃手段なんて、此処には無い!」 「第八弾着弾! 『シグナルフェイバー』、右腕上部30%破損! 総破損率は70%をオーバーしています!」 「狛江!」 「狛江さん! 『シグナルフェイバー』を盾にしての防護はこれ以上続行不可能と判断します! 第九弾が着弾する前に、至急退避してください!」 『出来ないわよ!』 「馬鹿! 敵の目的はどう見たってあんたの破壊でしょうが!」 「狛江! 気持ちは分かるが、これ以上はテメエが……!」 『あたしが退いたら、この街の人たちはどうなるの!? まだ避難も全然終わってないのよ!  見殺しになんて、あたしは出来ない! この手が届く限りは絶対誰も死なせないって、それだけを母さん達に誓ったんだから!』  ――殺しあう 「なん………………で………………戦う………………の………………よぉ  なん…………で………………………………殺す………………の………………よぉ  きら………………い……………………き………………らい………………き……らいきらいきらいきらいきらいきらいきらいきらいきらいきらいだいきらい!  みん………………な………………みんな死んじゃ…………え………………!」  ――それが戦い    ――日本を分断する八百万の戦い    日本分断YAOYOROZ きっと    笑う事も 泣く事も    僕達は何一つ上手く出来ない