『華貴ちゃんのラヴラヴ★大作戦 〜あなたと共にどこまでも〜 』 黒雲星羅轟天尊 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/153.html 華貴 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1553.html アシダカ坊 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/658.html 魔王イツォル http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/150.html 凶嵐 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/482.html デューグレス http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1534.html ベルガスト http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1535.html アラクネ http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1536.html ゼーディアン http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1584.html ------------------------------------------------------------------------- 視点1:凶嵐 戦士達の視界を覆った黒雲は、地に立つ総てを押し流す津波の如く珠弥山一帯を覆った。 逃げる事も許されず、強靭無敵を誇った一軍は黒雲の中に消えてゆく。 一個の生物の如く流動する黒雲はしかし質量を持ち、五体に纏わりつき彼らの動きを封じた。 遠くホツマの地からこの光景を眺めていた人々は、「妖成唖欺都」から吐き出される呪詛 を現実に見たようだと後に語った。 (…抗えぬ!) 石壁の中に放り込まれたかのような凄まじい重圧と閉塞感。 息を吸うことも吐く事も許されぬ絶対的な拘束領域。 六角棒『戒破』を用いて吹き飛ばそうにも指一本動かす事が出来ぬ。 しかしそれでいて、地に屈しようとする動きだけは許される。 (跪けと言うのか、このおれに!) それは、それだけは許されぬ。 我が主君にして創造主、絶対にして礼賛すべきイツォル陛下以外の者に屈服するなど…! しかし、その信念を貫くには、呼吸が足りない。 イツォルに創造された、有機物と無機物の完璧な調和ともいえる彼の体でさえ 呼吸を絶たれればその力を失ってしまう。 生命維持の本能が叫ぶ!息を!大気を! (ならばおれの体で黒雲を吸い尽くしてやる。俺の忠誠心が勝つか  羅轟の瘴気が勝つか…。) 意を決して肺腑の奥まで黒雲を吸い尽くす。 「ぐウっ!」 (…熱い! 体が… 焼けるように熱い!) 彼の体を駆け巡る黒い血の一滴一滴が沸騰し始めたかのような激痛。 (卑劣なり…羅轟…この期に及んで…毒を…) 戦士達がばたばたと倒れ伏していく中最後まで地に足をつけていた凶嵐は 黒雲の中、遂に屈服した。   *   *   *   *   * それよりもかなり前。 視点2:機人兵団と羅轟の配下達。 なんとも奇妙な事よ、本来すぐにでも刃を向け合うべき敵同士が同じ空を仰ぎ 同じように固唾を呑んでいるとは。 腹部に人面模様を持った巨大な蜘蛛の怪物「アシダカ坊」はその鋏角をカチカチと鳴らした。 いや、固唾を呑むというのは些か当を得ぬ現し方かもしれぬ。 …何故ならあのカラクリ人形達は口を持たない故に。 薄気味悪い連中よ、球状の頭を持った四足が奇妙なリズムの音を発したと思った次の瞬間 奴らの総てが寸分の狂いも無い動きで膝を突き、空を見上げたのだから。 アシダカがただの音の羅列としか感じ取れなかったのも当然のこと。 彼らは言葉ではなく信号で命令を伝えているのだ 「01011011100010100101(KNEE )0000001100011110111101011000001010110000(LOOK UP)」 彼らは総てを解し、0.45秒で右立て膝を突き(※二足歩行タイプ以外はこれに準じた姿勢) 0.77秒で武装を右脚部より15cm離れた地面に置き、0.5秒で両手を右膝部の頂点より20cmの位置で組み 仰角55度、つまり絶対管理者「E-tz-011」の元へと視線を向けた(※レーダー感知タイプも同じく頭部を上げること) 夜の明ける直前の薄闇に溶け込み微動だにせぬ彼らは、失われた歴史を物語る 石像のように見えた。 「心配しているのかえ?アシダカや。」 空を見上げたまま、あくまで平静を装いながらも血の滲むほど拳を握り締めている 二足歩行の九尾狐「華貴」 獣の顔を持ちながらも、人を惑わすような妖艶な雰囲気を持つ女狐。 彼女の眼には憎き「皇帝」と刃を交える最愛の人の姿しか映ってはいない。 「まさか。万が一にも我々の主はかの如き土人形に遅れは取らぬ。」 とは言ったものの、この勝負、どちらに転んでもおかしくは無いとアシダカは踏んでいた。 自らの主君を侮るわけではない。ただ、強大無比な力のぶつかり合いとは その行く末の見えぬものだと知っているだけだ。 主君の敗北は、そのまま我々の敗北を意味する。 今この場を見れば一目で解る。 「皇帝」が操るは異様なまでに統率された死をも恐れぬカラクリ人形達。 更に魔王にも匹敵する支配力を持った将軍達。 「皇帝」が没しようとも、彼らの力があれば軍団をまとめる事は容易いだろう。 対して我々は主がいなければ、ただ獣と等しいだけの知能しか持たぬ有象無象の集まり。 一騎当千の大妖達を多数抱えるとはいえ、領地でも兵の数でも大幅に下回る我々はあっという間に 追い込まれ数々の英雄譚を飾る敵役に成り果てるだろう。 その最後はすべからく… 華貴の、またワシも含めた大勢の者達の無念は痛いほど解る、しかし敬愛する主の言葉を 破れる臣下がどこにいようか! 「例え『皇帝』の刃が我の身を切り刻んだとしても、邪魔立てをするようなら  貴様らであろうと容赦はせん。ただ、我の全き勝利を祈っておればよい。」 なんと無慈悲な!なんと残酷な言葉!ただ、祈るしかないとは! 「ああっ!」 誰の者ともつかぬ声が上がる、遂に「皇帝」の刃が主の御身を捉えたのだ。 「天尊様ぁっ!」「黒雲の君!」 百鬼夜行の如く群れる大妖達が次々に悲鳴をあげる。 泣き出す者もいれば地に蹲ってしまう者もいた。 アシダカですら顔を背けてしまった中、ただ一人動揺せぬ者。 「黙れっ!」 華貴の一喝が皆の狼狽を吹き飛ばした。 「妾達に与えられた命はただ祈る事!そなたらが其の様に無様な姿を晒しては  天尊様の勝利も揺るいでしまうわ!ただただ一心に、天孫様の御武運を祈るのじゃ!  案ずる事は無い!妾達の祈りは必ずや天尊様の元に届く!いかに御身に傷がつこうと  我々の祈りは天尊様の御心を奮い立たせてくれるはず!祈れ!一心に祈るのじゃ!」 (言いおるわ、小娘が!) アシダカは自らの見地を改めなければならぬと感じた。 身の程知らずの色狂いと思っていた小娘が、ここまでの忠士であったとは! 皆の思いが一つになる、泣いていた者も、力なくへたり込んだものも立ち上がり その熱き視線を主君へと向ける。 ちらと、天尊がこちらを向いたような気がした。 …と「蛮鷲」を力強く天に掲げ、気を込め始めた。 「おおお!」「あれは!」「あれこそは!」 「天尊様の最強にして最大の魔技!」 雷鳴にも似た天尊の大音声が地を揺るがした。 『激水の疾くして石を漂すに至る者は、勢也!  鷙鳥の撃ちて毀折に至る者は、節也!』 そして、忠臣達の声と天尊の声が共鳴した。   カ  ミ  カ  ゼ ! 『 鉄  風  雷  火 !』   *   *   *   *   * その直前。 視点3:「皇帝」 奇妙な呪文とともに羅轟の内在魔素の濃度が急に「下降した」のを計測した。 0.0003秒ではじき出された結論としては、これは羅轟にとって一つの賭けであると言う事だ。 内在魔素の容量が異常なほど高い事が、羅轟の強大な戦闘力の秘密である。 蓄えが多く他の魔王よりも一度の戦闘に使える力が多いためだ。無論その持続も。 圧倒的、且つ無限に続くかと思われる力の放出。 そのアドバンテージを敢えて捨て、一度に全ての力を放出する…。 (ふむ…まさに戦車の突撃よの。) 短期決戦を望んでいるというよりは (賭けに出る…余の力を見縊ってはおらぬという証明…) (余もまたそれを防ぎきれるかどうか…確率は…ふむ、五分と五分。) それを現す的確な語彙が管理プログラムからはじき出される。 (おお!これが『好敵手』というものか!) (好敵手とは、「同格」を意味する…) (『絶対号令』は効を成さぬか。) (…然れば。) この間0.0008秒。 「来い!猪武者め!汝の総てを以って余を蹂躙してみせよ!  …出来るものならな!」 百の、千の、万の…いや億を越えようかという無数の黒雲の刃がイツォルの全方位を包む。 漆黒の球体の内にある「皇帝」の姿を視認出来る者はいない。 逃げ場の無い、絶対的な死。 (全てを避けきる確率は0.00015%…ふふ、やはり無傷では済まぬというわけか。) (予測される軌道からして機人兵団に甚大な被害が及ぶ可能性がある…) 「0415040705(DODGE)」 その信号に呼応して機人兵団は即座に隊列を崩して移動を始めた。 (良し。処理能力を全て回避にまわす。) (貴様が死力を尽くすというならば、余もそれに答えようではないか!) (初めての『好敵手』よ!) 「皇帝」の頭の中に大音量のアラートが鳴り響く。 推奨される対処法:無し   カ  ミ  カ  ゼ ! 『 鉄  風  雷  火 !』 (25,16,78)(-13,44,-68)(33,-48,31)(-24,-19,-89)… 迫り来る刃の速度、角度をリアルタイムで演算し、最適な角度で身体各部を動かし 切り払い、避けてゆく「皇帝」。 中央思考回路をオーバークロックし、処理能力の限界を超える境界線の間際。 後に抽出された語彙は「無我」であった。 圧縮された時間。引き裂かれた「皇帝」の体が白銀の血を噴出すよりも早く 羅轟の黒雲の剣は、イツォルの双剣は疾走した。 圧縮された時間。己の機能停止を意識する事もなく、機人兵団達は粉々になり。 圧縮された時間。認識と認識の隙間…ただの一点を…「皇帝」は見逃さなかった。   *   *   *   *   * その少し後。 視点2.5:羅轟の配下達。 『鉄風雷火』が発動した。 皆、己が身を捧げるようにして両手を広げ、立ち尽くしている。 おそらく数瞬後には、黒雲の刃が体を貫き、死に至るだろう。 敵味方の区別なく、主の刃はこの戦斗を見るものを貫くのだ。 それでも構わない。 敬愛する主君が、全き勝利を得てくれるならば。 己一つの命を失ったところで、天尊様の猛進は未来永劫弛むことは無い。 一人一人がそう確信していた。 逃げようと走り足掻くカラクリ共の音が聞こえる。 続いて轟、と風を切る音。 大地が揺るいだ。 …。 …。……。 「…何故じゃ。…何故妾は生きておるのじゃ!」 無残にもバラバラになった数多の機人達。滅多刺しにされた大地。 しかし、大妖達の周辺だけは何事もなかったかのように平静。 そしてふと見上げた空の上。数多の傷を負いながらも、天尊の体に深々と巨剣を突き通した「皇帝」。 誰一人声を上げなかった。 「…愚かなり羅轟!刹那でも花を踏みにじる事を躊躇った『戦車』が  敵を蹂躙し尽くせるとでも思ったか!」 「乗り手のおらぬ『戦車』もまた…征く果てを知らず力尽きるのみ。  くくっ…カラクリ人形には…理解できまい…な…。臣民を持たぬ『皇帝』よ…」 「吐かせ、下郎。」 双剣を引き抜く。  イキモノ 「貴様もまた…一個の下等存在よ」 --------------------------------------------------------------引用 その直後。視点1:凶嵐 その巨体が傾ぐ様は凶嵐の一族郎党が棲む珠弥山からも視る事が出来た。 嵐を呼ぶと言われる龍の巣が崩れ落ちるかのような それとも天が堕ちるかのような… -------------------------------------------------------------- その直後。視点4:羅轟 どのように心が叫ぼうとも、一直線に向かってくる「皇帝」に届きはしない。 「皇帝」は無慈悲に、剣を振るう。 「雄雄雄っ…!」 身を庇うようにして突き出された羅轟の左腕は大剣に易々と切り裂かれた。 二の太刀がやってくる。死を与える確信を持った力強い一閃が。 「があっ!」 力なく振るわれた「蛮鷲」は僅かに剣の軌道を変えたに過ぎなかった。 世界の右半分が、赤く染まる、そしてその刹那を過ぎて、暗黒になった。 ---------------------------------------------------------------引用終り その直後。視点2の1:羅轟の配下達。 羅轟が顔面を割られた瞬間、華貴の意識はふっと遠のいた。 膝から力が抜ける。自分の足元が深淵に変じた。 今ここで、倒れるわけにはゆかぬ。立たなければ。大地を踏みしめていなければ。 …誰のタメに?天尊様の命が消えかける今。 …何の為に? 放心の極致にある忠臣たちの中、一人冷静なアシダカ。 その数を半数以下に減らしてしまったとはいえ、未だ命令系統には混乱の無い機人兵団。 彼らに悟られぬように声を伝えるため(機人達は世界で話されるほとんどの言語を解する事ができる) 極細の糸を仲間達の耳に這わせる。 (立て、お前達。天尊様が御倒れになった以上、最早我々はこの戦に勝つ事はできぬだろう。) (しかし、せめて彼奴らに一矢報いてやろうではないか。) (我々は追い詰められた小鹿の如く、怯え、震えながら絶望の内に死ぬのではなく…) (窮鼠の如く仇の喉笛に喰らいつき、憤怒の炎に身を焦がして死ぬのだ…!) アシダカの言葉に煽られ、彼らの眼に炎が宿る。 護るべきものの何も無いこの身ならば、捨てても惜しくは無いこの命ならば、それを鉄槌に変え 奴らの脳天を打ち砕いてやろう…! 『 阿 呆 が ! 』 聞きなれた怒声が彼らの耳に、いや頭の中に響く。 『我が身を呈してまで生かした命を、うぬらが投げ捨ててなんとする!?』 「この御声は…」「天…尊…様…?」「そんな、まさか!」 「聞き間違えるものか!天尊様じゃ!天尊様は生きておられる!  生きて妾たちを御導きくださるのじゃ!」 「…雄々!皆の者あれを見よ!」 思わず大声を上げたアシダカ。隊列を整え始めた機人兵団たちも、「皇帝」までもが目を見張る。 堕ちながらも徐々に徐々に溶けてゆく羅轟の輪郭。 異変を察知した「皇帝」が更なる駄目押しを見舞おうとした、その刹那。 羅轟は、天から地までを埋め尽くすような巨大な黒雲へと姿を変えた。 「なんと禍々しい…なんと神々しい御姿…」 黒雲と化した天尊はその内に秘めた魔力の奔流を突風に変え「皇帝」を西の空へ吹き飛ばした。 万全の状態ならいざ知らず、疲弊しきった「皇帝」の体にはそれに抗う力は残されていなかった。 鳥型の機人ゼーディアンは驚愕しながらも配下達に命令を下す 「クケーッ!クケーッ!一大事ダ!追エ、追エ!陛下ヲ追エ!」 辛うじて機能を停止せずに済んだハイヴァルチャー達は「皇帝」を追って一斉に飛び立った。   は し 『 疾 走 れ !』 『 我が元に集え!次なる斗いのために生きながらえる事は恥では無い!』   は し 『 疾 走 れ !』 「御意!」 叫ぶとアシダカは宙を舞い、投網の如き蜘蛛糸を集結していた機人兵団に投げかけた。 絹糸のように細くとも鋼線よりも固く千切れぬ彼の糸は見事絡み、機人達に混乱が生じる 「1001100000001110000001001000001010000000!(S H I T !)」 一番の被害を食らったのが球状の頭を持った四足、機人兵団大隊長の「アラクネ」である。 四足の彼は頭部レーダーに絡みついた糸を払う事ができず、部下達に正確なデータ伝達を出来なくなった。 「征くぞ皆の者!天尊様の元へ!」   *   *   *   *   * その少し後。 視点2の2:機人兵団。 …次の瞬間、華貴の頭部を魔導加速砲の一撃が吹き飛ばした。 「危機レベル4。ケース010。強制指揮権発動。  総員、視覚データ式目標捕捉に変更。以後、機動可能な個体は大隊長復帰までの間  ギガンアーム026の指揮下に入れ。」 「サー、イエス、サー!」 「構え、撃て。」 ギガンアーム026(個体名:デューグレス)の命に従い、残兵達が魔導銃を撃ちまくる。 地平線の果てにある豆粒でさえ正確に打ち抜けるといわれる彼らの射撃能力の前に 羅轟の忠臣たちはばたばたと倒れていった。 「撃ち方止め。検索中…。第三分隊長トライアイ175、大隊指揮官殿の救助にあたれ。  検索中…。フットソルジャー10037,22039,18790,09526,16387,11763,00021,00267は『皇帝』陛下の  救援に向かえ。それ以外は待機。自己修復に取り掛かれ。」 「サー、イエス、サー!」 持ち前の修理器具を使って糸を切断し、ヒョコヒョコとアラクネの元に向かうトライアイ175(個体名:ベルガスト)。 アラクネは獣のようにもがき、必死で頭を地面に擦り付けている。 丁寧に糸を切り終えたトライアイ。作業完了までに約15分たっぷりかかった。 黒雲と化した羅轟は、嵐の日の雲をはるかに越える速度で東に流れ 珠弥山一帯を覆い尽くしていた。 「ダイタイチョウ、ドノ、サギョウ、ヲ、カンリョウ、イタシマ」 とここまで音声化したところで思いっ切り蹴り飛ばされた。 「イタイ、ナニカ、フビガ、アリマシタ、デショウ、カ」 「10011001110100110100!!(SHIT!!)0111000101101110000000100000011010000001!!(NEW DATA!)」 視覚に頼らぬデータが使用可能になった今、アラクネはとんでもない状況に気づいたのだ。 修正された目標位置が全員に送信される。 たった今出来上がった死体の位置には何の反応もなく。 はるか先に高速で移動する一団。 「処理能力に欠ける我が頭脳には理解不能であります、大隊長殿。」 デューグレスが信号を送る、と、アラクネは威力を弱めた魔導弾で一帯を覆う蜘蛛糸を焼き払った。 残ったフットソルジャーが何機か機能停止したがそんな事はどうでもいい。 「アツイ、アツイ」ベルガストが跳ね回る。 …大地が炎に嘗め尽くされた後デューグレスの光学情報感知レンズにはただ焼け焦げた地面しか映らなかった。 炭化した死体など、どこにも見当たらない。 「幻、でありますか。」 アシダカの幻術はセンサーやレーダーには敵わずとも、「眼」を欺く事にかけては一級品である。 まんまと、出し抜かれたのだ。 獲物を狙う猫科動物の如く姿勢を低くするアラクネ。四足から射出された杭を大地に突き刺し、体を固定する。 衝撃吸収のためにさらに四つの補助脚を展開し、砲塔を64.265度に定める。 逃げる一団の予想到達地点。 「100101010101110!100101010101110!100101010101110!(RUN!RUN!RUN!)  01011010010110001100!01011010010110001100!01011010010110001100!(KILL!KILL!KILL!)」 どん、と言う発射音が響くと同時に 足を縺れさせて派手にスッ転んだベルガストを置いて 機人兵団たちは逃げる敵を追った。 〜続く?〜