『1010001001001000000101100000000011001100000010110100101』 登場人物 黒雲星羅轟天尊 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/153.html 華貴 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1553.html アシダカ坊 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/658.html 凶嵐 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/482.html デューグレス http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1534.html ----------------------------------------------------------------- 視点1:凶嵐。 熱い。 体中が燃えるように熱い。 ただ外気から伝達される熱が身を灼いているのではない。 身体の中心に煮えたぎる硫黄をぶち込まれたような、そしてその硫黄の 穢れが体中を駆け巡っているような… 指の先、足の先、髪の毛の一本一本までもが毒され、悲鳴を上げている。 朦朧とした意識の中、凶嵐は微動だにする事ができず。 ただ生まれ堕ちてはじめて味わう苦痛に困惑していた。 地に倒れ伏してから一体どれだけの時間が過ぎたのかもはっきりとしない。 もしかしたら長い間意識を失っていたのかもしれない、もしかしたらそうでないのかも。 自分がどこにいるのかすら曖昧だった。 これは夢か?現か? 違う。夢のはずがない。おれは夢など見たこともないはずだ。 概念としては知っている。だがおれのようなカラクリと生き物の合いの子が 夢など見れるはずがないのだ。 全ては「皇帝」陛下の意のままに。おれは余計な事を思考する能力を奪われた…いや 喜んで差し出したのだから。 「皇帝」陛下…陛下は俺に最後なんと仰ったのだったか。 逃げろ、とそう号令を発されたのだ。 何故? 黒い雲が…我々を… 凶嵐の眼がかっと見開かれる。 そうだ、羅轟!彼奴の得体の知れぬ業によって我々は倒れ伏したのだ! 思考を覆っていた薄靄が吹き飛ばされ意識が覚醒する。 「イツォル陛下!」 絶対なる主君の名を叫び、飛び起きる。 が、何故だというのか体に上手く体が動かない。よたよたとよろめき、尻餅をつく。 「これ…は?」 力が入らないのではない。自分の思った以上に、自分の体が敏感に動いてしまう。 横に転がっている戒破を掴もうとして手を伸ばすと、その勢いに体が、ぐい、と引っ張られる。 戒破を掴むどころの騒ぎではない。一尺は先の地面を抉り取ってしまった。 そして眼は、飛び散る土くれの一粒一粒までも読み取れるかのように鮮明に見え 耳は見渡す限りの全ての音を聞き取れんばかりに鋭い 毒?いや、違う! まるで…まるで魂だけを他の器に移されたような。 それとも身体が全く別のものに作り変えられてしまったかのような。 年老いた馬から荒馬に乗り換えた御者の感覚。 そして、解る!今の俺は誰よりも速く、強く、鋭い! 「お…おおおおお!」 暴れる身体を無理やり従えようとするかのように、渾身の力を込めて 珠弥山の頂上を暴れ狂う。大岩は吹き飛び、大地には深い裂け目が走る。 少しづつ、少しづつ、無軌道だった凶嵐の身体の動きが御されてゆく。 子供の喧嘩のような大振りで隙だらけの動きから 最短で最大限の威力を発する攻めの型に。 人間の単位にして約半日ほど、休まずに動き回る。 珠弥山の頂上に顔を出していた大岩は一つ残らず粉みじんにされ 足元もまた削り取られ、珠弥山の標高は少しだけ低くなった。 この上ない満足感に包まれた凶嵐。 その直後、耐えがたき苦痛がまた彼をどん底に突き落とす。 「う…?う…うう…っがああああああ!」 体中が痛痒い!自らの肉をそのまま抉り取ってしまいたい程に! 己の肉が戦慄いている!悲鳴を上げている! 躯を構成する繊維の一本一本が、傷つけられた痛みと、再生の痒みを主張している。 身体を覆っていた鎧を脱ぎ捨てて皮膚を掻き毟っても、一行に痒みは治まらず 破壊された皮膚組織から血が噴出してくる。 手にべっとりと付いた血は「生暖かかった」 「今のおれは…本当におれなのか?この暖かい液体はまるで俺の血ではない!  それに…この鎧もおれが纏っていた、陛下からの贈り物には程遠い!  そして…」 新品同様に光り輝く漆黒の鎧の表面に己の顔を映し出し、凶嵐は困惑する。 「この貌は本当におれのものなのか!?陛下が与えてくださった、あの美しい貌はどこに消えた!?  おれは…今のおれは…」 球面に映る歪んだ顔。球状の表面に歪められたのではない。 それには今まで凶嵐が持ち得なかった「表情」が湛えられていたのだ。 「まるで、鬼そのものではないか!」   *   *   *   *   * それよりもかなり前。 視点2の1:羅轟の配下達。 天尊様がこれから何事を成そうとしているのかは知る由もない。 しかし、我々の行く先を示してくださった以上それに従わぬ我々ではない。 何時如何なる時もそれが最善であったのだ。 (しかし…不味いな) 希望に満ちているはずの状況にもアシダカは決して楽観視しない。 天尊がその身を以って蔽った、破天帝国極東部に位置する珠弥山一帯は如何に早く走ろうとも 半日はかかる遠さである。 いくら大妖とはいえど無限に走り続けられるわけではない、疲れも溜まれば息も切れる。 しかし途中で足を止めようものならカラクリ共に追いつかれてもおかしくはない。 小手先の眼くらましがいつまでも通用するような相手とは思えぬ。 木々をなぎ倒し、川を飛び越えて進む一同に全く疲れの色は見えぬが しかしそれもそう長くは続かないだろう。 (いざとなればワシが身を呈して彼奴らの追撃を留めるより他あるまい。) (天尊様…我らに力を…) ふと彼方に見える黒雲を見上げた時、視界の上方をちらりと何かが掠った。 (光球…?) 夜明けの空に尾を牽きながら飛来する。 光の球はぐんぐんと大きさを増し、まるで疾走する一同を追いかけてくるかのようだ。 「…!いかん!皆の者!散れぇえい!!」 アシダカが叫んだ瞬間、上空で光の球が弾ける。 と、そこから光の矢が雨のように降り注いだ。 「うわああっ!」 「慌てるな!軌道を見極めよ!」 しかし、ほんの一瞬だけ発見が遅かった。 巨体の牛頭馬頭鬼、刑天らはひとたまりもなく蜂の巣にされ、残った者の殆どもまた 手足に傷を負っている。 唯一無事なのはアシダカと華貴のみであった。 「皆の者!無事か!返事をするのじゃ!」 呼べど答えるものは数少なく。 「華貴殿、アシダカ坊、我々はもうここまでのようです。斯くなる上はこの命を懸けて  彼奴らをここに足止めいたします。御二方はお行きください。」 腕を吹き飛ばされた「火車」が決意を口にする。満身創痍の忠臣達の誰もが、無言で頷いた。 「馬鹿者!お主達を置いてなど行けるものか!傷ついた者を見捨てて逃げるなど…  天尊様に顔向けが出来ぬ!そうじゃ、アシダカ!傷ついた者をお主の背に乗せて  行けばよいのじゃ!」 「戯けた事を申されるな!そのような事をすれば歩みが遅れるは必至!  お二方とも巻き添えで命を落とされるおつもりか!」 「人虎」の説得にも華貴は耳を貸そうとはしない。 「ならば妾も戦う!お主達だけを死なせてたまるものか!」 「あなた方お二人は天尊様に無くてはならぬ。我ら如きに構う暇があれば、少しでも遠くに  お逃げください。…もう時間が無い。」 「…嫌じゃ…嫌じゃ!」 叫ぶ華貴の背後からアシダカの蜘蛛糸が襲い掛かる。 決して身動きの取れぬよう厳重に手足を封じて。 「このっ!…離せぇっ!」 「御坊、頼みましたぞ。」 「…うむ。」 「天尊様にお伝えくだされ、我々は最後まで闘い、誉れ高き死を得た、と。」 「離せ!嫌じゃ!離せアシダカ!」 「約束しよう。…願わくば、次の輪廻の時もお主らと共に戦えるよう。…然らば!」 雁字搦めにされた華貴を背に乗せて、また走り始めるアシダカ。 視界の彼方に消えた二人を見て、束の間の安堵を得る忠臣たち。 そして平穏を破る鉄の足音。 「さて、どれだけ持つか解りはせぬが…せめて一歩でも彼奴らを後退させてやろうではないか!」 「我々は追い詰められた小鹿の如く、怯え、震えながら絶望の内に死ぬのではなく…」 「窮鼠の如く仇の喉笛に喰らいつき、憤怒の炎に身を焦がして死ぬのだ!」   *   *   *   *   * その直後。 視点2の2の1:ギガンアーム026(個体名:デューグレス) 敵対目標が大隊長殿の多弾頭式魔導弾によってどれほどの被害を受けたのかは 現在位置からは把握しきれないが、恐らく甚大な被害を受けているはずである。 と、弾道補正に注力していた大隊長殿からの信号が再開し、当初の予想通り 半数以上が沈黙、残りの殆ども動きが鈍くなっているのが解った。 危機レベル:1。ケース184。 約45秒で掃討し、未だ逃走を続ける二体を追跡予定。 「おおおおおっ!」 高熱を纏った敵勢力の一体が突撃を仕掛けてくるのが視認できた。 先を走行していたフットソルジャー08823,11167,00274が機能を停止した。 いたって軌道解析しやすい直線状の突撃だったため、右方向に身体を旋回し 腰部のヒドゥンブレードを展開。 交差する0.005秒の瞬間、ブレードを用いて頭部を切断。 5秒後に続く一団が肉弾攻撃を仕掛けてこようと接近。 魔導加速砲及びフットソルジャー00087,01628,16098,11223,00665,19233 の魔導銃によって迎撃。 35.8秒で殲滅し追跡を再開した。 〜続く?〜