『いつかの教室 魔の一組』 〜 ディなんとか君奮闘記 〜 主人公:ディ(略 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/171.html --------------------------------------------------------------------- 運動部の朝練を横目に見ながら登校するのが僕の日課だ。 「…っしゃー!…っけオラ!」 「…出し遅いよー!気合入れてけー!」 僕はあまり体を動かすのが得意じゃないから、彼らを見て純粋にすごいって思う。 僕はきっとあんなに大きな声は出せないし、彼らみたいに早くは走れないもの。 キャプテンのジェイド君とふと目が合った。汗かいてキラキラしてる彼はかっこいい。 まさに青春!って感じだね。 「おーディオっち、おはよーっす!今日も早いなー!」 精一杯の笑顔を浮かべて会釈する …これが僕には限界だ。 彼は底抜けに明るいし、僕みたいなのにも教室で話しかけてくれる。 裏の無い本当に良い人、だと僕は思う。 でも、だからこそ辛いんだよ。一人きりの暗闇に慣れきってしまったから。 足取りは、重い。 「おはようございます。」 この時間に誰も居ないのは知ってるよ。知ってるからこの時間に僕は来るのさ。 この静寂を僕は愛してる。誰に気を使うこともなく、授業の始まりまで、ゆっくりと寝れるから。 教室の隅っこ、僕は席に向けて歩く。おかしいな、落書き塗れの天板が見えない。 机がひっくり返されていた。 「…全く、くだらない。」 誰に聞かせたいわけでもない、独り言。何の感情も湧いてこない…はずはなかった。 僕は今、彼らを否定する事で自分を慰めようとしてる。 もう表情は凍り付いてしまったから、もしだれかがこの様子を見ていたとしたら 僕の事を幽霊とでも呼ぶのかな? 教科書を拾い上げて机に戻す。 もしかするとこれから毎日こうやって中身がぶちまけられてしまうのだろうか。 それは面倒くさいなぁ… そんな事を考えながら僕は机に突っ伏して眠りに着いた。  … … … きづけば一時限目が終わっていた。誰が起こしてくれたわけでもない、うるさくて目が覚めた。 隣の席ではエンダーワンツ君が小首を傾げたまま虚空を見つめている。 前と斜め前の席のベルティウス君とアルダマス君はお互い次の時間の予習中。 喧しい教室の中で、ここは真空地帯。それでも試験が近づくと前の二人を目当てに急に人が集まりだす。 そんな時僕は皆に席を譲らなくてはならない。 エンダーワンツ君は剣道部の皆と一緒にどこかへ行ってしまう。 僕は居場所が無い。  … … … 昼休みになると僕は教室を出る。秘密の場所に移動する為だ。 旧校舎の更に裏。誰一人通らないあの暗がりは、僕のためだけに用意されたのだと思いたくなる。 屋上は駄目だ、空手部主将の羅轟君とその取り巻きか、そうでなければバスケ部主将のイツォル君たちが いるから。煙草吸ってるところを見たのがばれたら、多分殺される。 道路と学校の敷地を区切るフェンスの内側には生垣が植えてある。 だから外から見られることも無い。角を曲がっていつもの場所に行こうと思ったら… 「あ。」 抱き合ってる男女を見た。 あれは…フォルサキューズ君と…?誰だ?制服からして多分中等部の子だろう。 知らなかった。硬派でとおってるフォルサキューズ君が、あんな可愛らしい子とつきあってたなんて! 「あっ。」 こっちを振り向いた二人と、ばっちり目があってしまった。 「貴様…我々の関係を知ってしまったからには生かしてはおけん!断罪!」 フォルサキューズ君が怒りに拳を震わせながらこっちへ向かってくる。 「あわ、あわわわ…」 我ながら情け無いが恐ろしすぎて腰が抜けてしまった。地を掻く様にあとずさるが、到底逃げ切れないだろう。 「先輩やめてっ!」 女の子がフォルサキューズ君の腰に抱きつく。まるで兄妹みたいな身長差だ。 「私、暴力ふるう先輩は嫌い!もう乱暴はしないって約束したでしょ!」 「む…う…。」 振り上げた拳を下ろすフォルサキューズ君。…助かった、のか? 「命拾いしたな、カスめ。」 ふん、と鼻で僕を嘲ると、彼はすたすたと歩いていってしまった。 「ごめんなさい…でも、本当に誰にも言わないでくださいね。先輩、待って!」 後を追いかけるようにして女の子も去った。 僕は腰を抜かしたまま立つ事もできなかった。 ただ、なんとなくあの女の子と彼のキスシーンを思い出して …少し興奮した。 〜続かない〜