■極東SS■ 『舞え、舞え、画龍』その八 登場人物 頼片 蓬莱(ヨリヒラ ホウライ) ・三味線弾き ・ダメセクハラロリコンキタナイクサイクズハゲヘタレヒゲお父さん http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/669.html 霜舟(ソウシュウ) ・墨絵描き ・いい女 ・お母さん http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1440.html ゲスト出演 物取りっぽいガキ http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/152.html 飛鳥=狭霧=瑠鵜主 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1141.html もふもふした生物 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1271.html ※ このSSは閲覧環境によっては正しく表示されない可能性があります ※ ----------------------------------------------------------------------- うーむ、あれは一体いつの話だったろうか… そんなに前じゃなかった気がすんなぁ。えーっと…この前に戻ってきたのが、えー  サッ!   ┌────────────────┐   │浮草に戻って霜舟とヤったのが五年前│   └────────────────┘ ミ *‘ ω‘ ミノ 彡 おお、ありがとうよ。そうだ、その半年前だから五年半前だ。 場所は良く覚えてる。 あんときゃあ確か楽術師とかいう触れ込みの娘と酒場で一緒に演ってたんだよ。 そしたら随分と盛り上がっちまって真夜中まで酒場占拠してたんだよ。 そうそう俺も大分飲んでたもんだから止まんなくってなぁ。 そしたら店仕舞いだっつって追い出されてよぉ。 また外でぺんぺん弾いてたらいつの間にか客がほとんど居なくなっててな。 気付いたらガキ一人なんだよ。随分と日に焼けた肌してて金髪で…なーんか胡散くせぇ奴だった。 「オッサン見てるとよー、人が才を導くんじゃあなくて、才が人を導くってーのを信じたくなるねぇ。」 「あー…なんだ、よくわかんねぇけど褒めてんのかいそいつぁ?」 「当ったり前だろ!俺が『人』を褒めるなんて中々無いんだから光栄に思っていいぜ!」 ニカッと歯を剥きだしにして笑顔を見せるガキ。 屈託の無い笑顔ってーのはああいうのの事を言うんだろうなぁ。 「おう、じゃあ有難く受け取っておきゃあすぜ旦那。」 大分眠くなってきたもんだから、宿になりそうな場所を探しに去ろうとしたらガキに袖を掴まれた。 「お代やったんだからもう一曲頼むぜ。なぁ。」 「随分と調子のいい事言いやがるじゃあねぇかお前ぇさん…本当なら飯か金を頂戴してぇところだが…  しょーーがねーーなぁーー!」 「そうこなくっちゃあ!」 「我が宿は、真ん丸目玉を臨む場所、其を草原と人は呼ぶ也…ってね。『風宿』」 一人宛ても無く旅をするのは楽しいものだが、ふと故郷を思うといつも宿代わりにしている 草原の風が、やけに沁みるのだ。 なぁんて、即興だから特に深く考えちゃあいねぇけども。別に帰りたいとも思やしねぇし。 適当な所で区切りをつけて弾き終えて一礼すると、拍手の音。 まぁ、一人だから侘しい拍手だが。 「いやあ、沁みるねぇ!うーむ、地味な音だからこそ聞き手の心に響いたりするんだろうなぁ…  なぁオッサン、その子とはいつからの付き合いだい?」 何を言いてぇんだかさっぱりだった。俺とそのガキ以外には鼠一匹いやしなかったんだからな。 大体こんな美男子捕まえてオッサンたぁ無礼な話だとおもわねぇかい? 「だーれがオッサンでぃこの野郎!」 「オッサン意外に誰がいるっつーのさ?」 このガキゃあ一度ならず二度までも… 「子供はお家かえっておねんねの時間だぞ。帰ぇれ帰ぇれ!」 「家なんかねぇよ、ねぐらはあるけどな。それより答えろってオッサン。『その子』いつから  あんたの傍にいるんだい?」 ガキが指差してるのは『舞姫』、俺の相棒だってのがやっと解った。 家がねぇってことは浮浪児かなんかだろうかね、物盗りに堕ちるやつも多いから気をつけねぇと… しっかし気味悪ぃ奴だ、三味線を「その子」だとよ。 「んあー…かれこれ十年位か?あっちこっち直して直して、いまや継ぎ接ぎだらけだけどな。」 急にガキの眼が輝きだした。ものの例えじゃあねぇ、俺にゃあ本当に輝いてるようにしか見えなかったんだ。 「すげぇ!やるなぁオッサン!ただの継ぎ接ぎの木が十年も現役ってのは、あんたがその子を愛して  んでその子に愛されてる証拠だぜ!」 「なぁにを大げさな…」 「いやいや、俺が言うんだから間違いはねぇ…俺にゃあ聞こえるんだ  『あんたと死ぬまで一緒にいたい』って声がさ。」 どうも嫌な客に捕まっちまったみてぇだ。付喪神の話を持ち出すとはいよいよ持って気味が悪ぃ。 そんなに俺の『舞姫』に惚れたってのか? あ…野郎、『舞姫』を盗るつもりじゃあねぇのか?俺を褒めちぎって調子に乗ってるところでこうサッと… 「なぁなぁ!俺に貸してくれよ!」 ほぉらきた! 「やなこった。誰が初対面のガキに俺の片割れを触らせるもんかよ。」 「いいじゃねーかよー!」 膝立ちでにじり寄ってくるガキ。こいつぁ本気だ。 「寄るんじゃあねぇったら!まだ二、三日はこの町にいるんだから演奏を聞く機会はいくらでもあるだろうよ!」 「いいからさ!俺ならその子を目覚めさせる事が出来るんだってば、あんたじゃあ一生気付かないその子の  魂をな。ほれ貸せってば、貸せよオッサン。」 堪忍袋の緒が切れた、とかそんなんじゃあねぇ。 ただ、月明かりを背にしてるのに、あのガキの眼は金色に輝いてた それが怖くて…つい足が出ちまったんだな。 「寄るなっつってんだろぉが!」 尻餅をついたまま、顔を俯けてるガキを見て…俺ぁなんだか可哀想になっちまったんだ。 だから逃げもしなかった。…まぁ逃げたところでどうしようもなかったんだけども。 「おい…あー、すまねぇ。長いこと浮草暮らししてっとよ、変に用心深くなっちまうんだ。  こいつを貸してやるこたぁできねぇが、一番良い席で聞かせてやるから堪忍してくれ、な?」 手を貸してやろうと腕を伸ばすと、軽く払われた。 「うおっ!」 なんだこりゃあ!?手の甲が触れたか触れねぇかぐらいだったのに、腕が吹き飛びそうだ! 「薄汚ぇ手で俺様に触れるんじゃあネーヨ、クソが!」 ゆっくりと立ち上がるガキ。逆に尻餅をついた俺を見下すその眼は虫けらを見るよりも冷ややか。 「人が下手にでてりゃー調子に乗りやがって…せっかくルシャナーナの元に推薦してやろうと  思ってたのになー…ご破算だ、ああもったいねー。」 なんだなんだ?ルシャナってぇのは王族かなんかか?実は浮浪児に身をやっした王子様とか? 「まぁでも良い演奏聞かせてもらったからなぁ、それなりの報酬をやらないといけないな?  二曲目分のお代がまだだったヨなぁ?ヒヒ…」 おれは見た!小ぶりだけれども黒い羽根がガキの背中から突き出るのを! 夢じゃあねぇ!俺は今夢を見てるけど、あれは夢じゃあねぇ! ガキはボロボロの服を引き裂くように脱ぎ捨てたんだ、そしたら呪符で包まれた体が出てきた。 美しかった、彫刻みてぇえに。隅々まで滋養に満ちた身体だった。 「ヒャハ!この姿ならとても物盗りには見えねーダロ!どーだ?」 頷くしかないよな。 「あ…その…どこぞの王子様か…何かでいらっしゃいますかい?」 「ブッブー!惜しい!惜しいぜオッサン!俺は『王様』ダ!イェイ!」 「あ、左様でごぜぇますか!いやーははは、こいつぁ失敬失敬…あはは、ははは」 「ヒャハハハハハハ!しかもヨ、ただの王様じゃあねーよ。お前らの国で言うところの『妖怪』の王様だ!」 あらあらあらー、終わった、俺終わった。 『妖怪』の王様って、様は終鼈甲とかそこらへんと肩を並べるっちゅうことだろ? 「こんな所になんか妖怪?なんちて。」 「オッサンつまんねー!つまんねーヨ!ヒャハハハ!」 「あっははは!いやぁ、我ながらつまらんですね!あははは!」 二人の笑い声が広場にこだまする。 あ、気付かないうちにこんなとこまで歩いてきてたんだ、俺。 「あっははは…はぁ…じゃあ、あっしはここらで…」 「逃がすかよボケナス!」 「やっぱりぃい!?」 どこからともなく現れた真っ黒い短弓がガキの手に握られる。 うわぁ、あの人思いっきり矢を番えてますがな。 鏃はテッカテカに磨かれたハート型の黒曜石。 あら、可愛らしいじゃあないの。 「貴方と私が夢の中!  汝等一切の望みを捨てよ!   喰らって天国!喰らって地獄!   メンデルスゾーン  『血婚昂進極』!」 俺の目前で真っ二つ分かれた矢が『舞姫』の下棹と俺の心の臓に突き立つ。 「アッー!」 死んだ、これは死んだ。野郎、蹴られたからってここまでするこたぁねぇじゃねぇか! ちっくしょう…せめて後十人は女を抱いて死にたかった… あと、食って無い名物も一杯あるのに… あと、美味い酒も飲みつくしてないのに… あ、あとまだ唄ってない曲も二、三曲… 「…!?」 おかしくねぇか?心の臓に矢を突き立てられたっちゅうのに何でこんなに色々考える余裕が? 走馬灯とかもぜんぜん見ないし… 「ヒャハハハ!死んだと思っただろ?な?な?」 腹を抱えて転げまわるあのガキが見えた。すごい明瞭に。 胸をまさぐってみる。何も刺さってない。 …なぁんだ!はったりかよ! 「ちょっとー、やめてくださいよ旦那ー!ホントに死んだかと思ったじゃありゃあせんか!」 正直まだ臆病風がびゅうびゅう吹いているので『旦那』なぞと呼んじまうが… いやあ良かった!ホントに良かった! 黒髪の可愛らしい娘さんが半泣きで俺に抱きついてくる。 「はは、こらこら。」 黒髪を撫でてやると、えへへ、と舌を出した。 自分の胸のあたりをさすりながら『あたしもしぬかとおもったよー!』と涙を拭う。 うーむなんとも俺の心を射抜く仕草だぜ。 よく見ると彼女は人魚らしい。まさか本物をこんな所で見れるたぁおもっちゃあいなかったが。 鱗の模様を見る限り、鯉の人魚らしい。 人魚は海の生き物だって聞いたが、意外だ。川魚の人魚ってぇのもいるものなのか。 「全く旦那も人が悪いよなぁ。まぁ俺をぶち殺すなぁともかくこんなに可愛い娘さんを…」                      誰? 「ヒヒヒ、『誰?』って顔してるな?」 『ひどい!ひどいよー!ながねんつれそったあいぼうを、だれ?だなんてー!』 おっかしいなー!ただの三味線の音が、人の声に聞こえるぞー!? ふと娘さんの顔を見る。間違いない、三味線の音はこの娘さんの口から発せられている。 矢に突き刺されたのは誰だっけ? 俺と… 「舞姫?」 『いぇす!』「ザッツライ!」 ガキと舞姫は親指を突き立てて、俺の正答を祝ってくれた。全然嬉しかぁねぇ。 「言ったろ?『その子』の魂を目覚めさせてやる、ってサ。カワイコちゃんでよかったなぁ!  ガチムチ系兄貴だったらもう目もあてられねぇもんなぁ!」 「はぁ、左様ですか。」 唐突にそんなこと言われてもなぁ。付喪神なんざ話に聞いただけのもんだしよぉ… 「おいおいおいオーイ!もっと喜べよ!お前は一生『舞姫』と一緒になれたんだぜ?  飯食うときも、クソをする時も、風呂入るときも、寝る時も、女を抱くときも、いつだって一緒だ!  大事な大事なだぁあああいじな『舞姫』と一生離れずに居られるんだ!ヒャッハハハハ!」 俺の腹の上に転がる『舞姫』。立ち上がるとそのまま落ちてゆく。 が、爪先から離れない。持ち上げて放り投げようとしても指先から離れない。 「え…」 「『舞姫』がお前に惚れこんでいる限り、お前達は離れる事ができないのサ!」 「冗談じゃあねぇぞおい!碌に手入れも出来やしねぇ…どころかどうやって日々過ごせっちゅーんだ!」 「そこは愛の力でカバーだ!共に泳ぐ夫婦魚の如く、お前達は一つ所にとどまらず流れていくのサ!」 「ちょっと待て!!後生だからなんとか…」 ふわりと飛び上がってあかんべぇをしやがるガキ。 「いやなこった!誰にも触らせたくないんだろ!?じゃあ丁度いいじゃーねーノ!  じゃあなオッサン!」 こいつがとんでもない大妖だって知ったのはしばらく後の事だ。 『いっしょういっしょ!いっしょういっしょ!』 「うわっぷ!」 『んーーーーーー』 「むーーーーーー!」 首に腕を巻きつけられて思いっきり押し倒される。『舞姫』の接吻は強烈極まりなかった。 もうそれはねっとりとむっちりとべっとりとぬるぬると…もふもふともふもふと …もふもふ?   *   *   *   *   * 「キュンキュン!」 「!?むわっ、ぐわあ!」 目を覚ますと目の前が全部毛でした。 なんという圧迫祭り! しかしこの柔らかなさわり心地…しなやかでそれでいてふんわりとした毛の感触。 毛の奥の肉体から伝わってくるわずかな温もり… 嗚呼、このままずっと埋もれていたい… 「マリ!お止めなさい!」 少女の声と共に至福の一時は崩れ去った。開けた視界の先にはカンカンに照りつける太陽。 「むぅん…」 突き刺す光に思わず眼を庇う。目覚ましにしちゃあ強烈過ぎる… 真上にお天道様があるっちゅうことは、丁度正午ぐらいか。 「お気づきになられましたか。どこか具合の悪いところはございませんか?  随分と長い間倒れていらっしゃったようですけれど…」 薄目を開けて声の主を見ると、まだ十を一つ二つ越えたぐらいの娘だった。 服装から察するに双社様んとこの巫女さんだろう。 「んん?」 よく見ると耳が有り得ないぐらいにとんがらがっている。 あ、そういや双社様んとこにゃあ妖混じりの巫女さんがいるってぇ噂だったなぁ。 「へぇ、あんたが噂の。」 「噂…ええ、『妖混じりの巫女』と呼ばれております。少しばかりまじないが使えるものですから  お力になれるかと思いまして。」 『妖混じり』というのは鬼以外の人外たちと人との合いの子の事を指す。 純血の妖怪達からは半端者として蔑まれ、人間達からはバケモノとして気味悪がられる不遇の存在。 特に人間達の生活圏に妖混じりはほとんどいない。 奇妙な話だが極東の人間には、鬼の血は受け入れられても、妖怪の血は穢れとして忌み嫌われるのだ。 まぁここらへんはユニ=コロネの著作に詳しく書いてあるので参照されたし。 真実を言えば飛鳥=ルーティスは「妖怪=魔物」との混血ではなくエルフとの混血であるのだが そんな事は噂好きには関係ない。由緒正しい双社様の元に『妖怪混じり』がいる、これだけで しばらく酒の肴になるのだから。 噂という言葉を聞いた瞬間、飛鳥=ルーティスの顔に少し悲しみが浮かんでいた。 うーむ…こいつぁ… 「…別嬪さんじゃあねぇか。」 「えっ?」 「いや、俺ぁてっきり鬼のような大女だと思ってたもんだからよぉ。  なぁんだ皆法螺吹きゃあがって。こんな別嬪さんを見もせずにバケモン扱いするなんざ  お天道様が許しても、この俺様が許しゃあしねぇ!」    ,、  ,、  ミ *‘ ω‘ミ <キュンキュン!  し- しーJ   ↑ 同意スルカノヤウニ鳴き声ヲアゲル謎ノ毛玉図。 娘さんの飼い…飼い毛玉だろうか? …あ、冒頭で夢に出てきたのはこいつか! 「お前ぇもそう思うだろう毛玉!いいか、ご主人様に石投げるような奴がいたら頭突きを食らわせて…」 こつん、と小石が蓬莱の頭にヒットした。 「うわっ、外しちまった!逃げろー!」 振り向くと洟垂れのガキどもがすたこらさっさと逃げ出している。 「…人様に石を投げるようなクソガキにゃあ、きっつーーーいお仕置きが必要だよなぁ…  やったるぞ『舞姫』!」 下帯に挟んでいた撥を取り出して高々と右手を挙げる。 先端の鼈甲が日の光をきらめく黄金色に変えた。 「お止めください!」目前に立ちふさがり蓬莱を制止する。 「なぁに言ってやがんだお前ぇさん。このままじゃあいつかその綺麗なほっぺたに傷がつくかも  しれねぇんだぞ?ここらで少しゃあ懲らしめてやったっていいじゃあねぇか!」 悲しそうに首を振る飛鳥=ルーティス。ちっくしょう、こういう表情も可愛いなぁ。 ハッ!いやいやいや!俺にゃあ霜舟という、嫁さんが… あー、俺もおとっつぁんになるっちゅうことかー…やだなー… 「地にまかれた種が寒さに耐えやがて森になるように、耐えることによって開ける道もある。  …遠い昔にいなくなった母の教えです。」 「道が開けるまでにどれだけかかるっちゅうんだよ。しわしわの婆さんになるまでかかるかも知れねぇぞ?」 「大丈夫です。私長生きですから。」 この娘っ子、ニコッと笑って見せやがった。 「いやぁお前さんはいい女だ。…俺ぁいい女には一曲唄ってやることにしてんだ、御代はいらねぇ。  野の堅き土に眠れよ花の種 春の芽吹きを夢見待ち侘び 『芽吹雨』 」 道端の小さな独奏会、観客は小さな女の子と毛玉だけ。 他の誰でもない目の前のひとに向けての独奏。 三下がりの調子はゆったりと、しかし力強く飛鳥=ルーティスの心を包んでいった。 嗚呼…やっぱり別嬪さんだなぁ…おしとやかな感じもたまらん! 霜舟もこれぐらい大人しかったらもっともっといい女なのによう… 霜舟…? あ。 「いっけねぇ!こんな所で油売ってる場合じゃあなかった!ちょっとまて、今どれくれぇだ!?」 突如演奏を中断して飛鳥=ルーティスに問う。彼女はぽかんとしている。 「え、ああ時間ですね?九つ半ぐらいだと思いますけれど。」 「キューンキューン!」 毛玉の抗議の鳴き声に構っている暇は無い! 「ちょ、ちょっとまて俺ぁ半日近くくたばってたってのか!?こいつぁ洒落にならん!  おう、悪ぃが続きは又今度だ!」 「お待ちください!」 飛鳥=ルーティスは手を胸の前で組み、呪文を唱え始める。 極東の「まじない」ではなく大陸の「魔法」であった。 『大いなる不動の地獣に我祈り願う。彼の者の傷を癒し汝の背を駆ける許しを。』 天孫結界の内においても大地の獣の力は健在だったようだ。 地面から緑色の光が蓬莱の身体にせり上がって来、疲れと傷を癒す。 「おお、なんだかむずむずするが…なんだか思いっきり走れそうな気がしてきた!  ありがとうよ、お嬢ちゃん!達者でな!」 手を振る飛鳥=ルーティスを振り返りもせず走り蓬莱。 まるで一陣の風のように、男は飛鳥=ルーティスの前を去っていった。 曲の続きを待つ楽しみだけを残して… しかし!オリュドライザーの御加護は衰えはじめた肉体までをもカバーしてはくれなかった! 三時間後、蓬莱DOWN! いや、でも良く走ったよ!その後六時間ぐらい休憩してたけど! 結局彼は普通に歩いた分程度しか進めなかったのでした… 〜続く〜 おまけ--------------------------------------------- もっふもふにしてやるキュン!    ,、  ,、   ミ*‘ ω‘ミ =っ   c    =っ≡っ    し─J