万物の怨敵たる魔王。強大にして邪悪なる闇の眷属。  その存在は恐怖を以って語られるが、その実態は厚いベールに包まれ、杳として知れない。  我々は今回、その中でも特に高名なる魔の同盟の会談の記録を入手した。  そこに記されていたその恐るべき内容を、此処に公開したい。 ■いつもの魔同盟集会 議事録■ 参加者 『愚者』フィリア=ペド 『魔術師』ルシャナーナ 『皇帝』イツォル 『恋人』エト=エーノ 『節制』コウ=ツシ=ギコウト 『悪魔』アドルファス 『星』ヴァニティスタ 『世界』ジェイド=T.A.S.A.=ルーベル 時と場所 いつかのどこか アド:「来たのはこれだけか」 ヴァニ:「大体いつもの面子じゃね」 ルシャ:「フォルサキューズは? あいつこういう場だけはフケるんだから、もう〜」 コウ:「あはは。ルシャナーナさんに言われたらお終いな気もしますけど」 フィリア:「君もさらっと毒を吐くようになりましたねえ」 エト:「ま、良いんじゃね。さっさと始めてさっさと終わろうぜ」 ジェ:「え〜、それでは〜、第……何回だっけ? まあ良いや、魔同盟定例集会を〜、始めたいと思いま〜ス」 わー ぱちぱちぱちぱち(拍手の音) ジェ:「え〜、あ〜、今回の議題は〜…………特に無えや。あーっと、誰か、なんかあります? 議題になりそうなネタ」 アド:「別に」 フィリア:「何も」 ヴァニ:「あーと、そういやアルダマス爺様んとこのがなんか失態かましたとか何とか」 ルシャ:「良いじゃん放っとけば」 アド:「だな」 エト:「んだんだ」 ルシャ「他には? なんかある?」 エト:「俺ヨー、この前変なオヤジにぶっ飛ばされそうになってよー。ひでーよなー、何したわけでもねーのによー」 コウ:「うわ、それは酷いですね」 ヴァニ:「最近じゃ人間の方が物騒じゃね?」 エト:「ヤベーヨ。魔王圧されてるよ魔王」 コウ:「頑張った方が良いのかなあ……」 ルシャ:「言えてる言えてる。うちでキナ臭い事やってるのは、天尊と閣下とジェイドぐらいじゃない?」 エト:「爺やユリエータも結構アレだぜ?」 ヴァニ:「それだけいれば充分じゃね?」 コウ:「ですよねー」 アド:「俺様を忘れるな!」 一同:「はいはい」 ジェイド:「あー、えー、他に何かあります?」 エト:「ねーよ」 フィリア:「ありません」 コウ:「ないです」 ヴァニ:「帰りてー」 ルシャ:「だるいー」 エト:「もう終わろーぜー」 ジェ:「んじゃー、まあ、これで今回の魔同盟集会を終わりま〜す」 エト:「は〜、終わった終わった〜」 アド:「ふん。毎度毎度鬱陶しいったらないわ」 ルシャ:「ね、ね、アドちん。これから予定ある?」 アド:「予定? 今日は別に無いが」 ルシャ:「コウっちは?」 コウ:「僕も別にありませんけど……」 ルシャ:「んじゃさ、これからボレリア行かない? クライネスト大劇場でクーフェ・ニーザルの『龍にまつわる小夜曲集』やってるんだよね」 アド:「構わんが、今から行って席はあるのか?」 コウ:「それに盛装も……。この格好じゃマズイでしょう流石に」 ルシャ:「あーあー、そこら辺は大丈夫! ブリジットにたかって確保してありまっす!」 アド:「用意の良い事だな。貴様等はどうする?」 エト:「ボレリアか。あそこの町並み、おもしれーから好きなんだけどな。今日はオペラって気分じゃねーからパス。また今度誘ってや」 ヴァニ:「料理も結構いいんだよネー、金に任せて色んな食材が集まってるから。行きたいんだけどナー。先にアポ入っちゃってンのよ。すまんねー」 フィリア:「私も今日はちょっと……。また機会がありましたら、お願いいたしますね」 ルシャ:「もう何よ何よ、皆ツレなくなくな〜い?」 コウ:「まあ皆さん、忙しい身ですから……」 アド:「さっさと行くぞ〜。ボレリアはそこそこ遠いからな。ダラダラしてたら間に合わん」 ルシャ:「あいあ〜い!」 ジェ:「あの〜、俺は誘ってくんない……のね。ま、別に良いけどさー。     あ、イツォル閣下〜、もう終わりましたよ」 イツォ:「ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ……」 ジェ:「うわ。妙に静かだと思ったら熟睡してるよ。どうしよっかな。ま、良いか。放置しても問題は無いでしょ」 閉会  いかがだろうか。  恐怖の対象たる邪悪なる彼らは斯様におぞましく禍々しい密談を重ね、彼らが価値を認めない人類を滅する機を窺っているのだ。  人類を守る為にも、彼らの如き邪悪なる存在を許さない敢然かつ断固たる態度が必要だと、我々はこの資料を以って警鐘を鳴らしたい。 end