前回のあらすじ 海で遊んだヒース達。ポロリもあったが全員楽しんだようであった 「大丈夫かアリシア?」 「はい・・・」 ・・・・俺がアリシアと一緒に霧の中で動けずにいるか、それは今から30分前にさかのぼる。 「くそっ熱心すぎる!その情熱を世界平和にでも使えば評価も違うだろうに!」 久しぶりにラグナロクの奴らが襲い掛かってきた。足場の悪い山沿いの道で・・・スカイーグルを使ってた NIの商品を使うあたり、NIが影で協力してる臭いがした。考えすぎかもしれないがこの方が儲かるだろうし 「敵はスカイーグル数機・・・それにオブスタンとヴァーキュリアが1と3ずつ!」 「ねぇ詳しくないから教えてよ!」 「ヴァーキュリアがバリアが硬くてオブスタンは魔力が膨大でフィールドを張る、これだけ覚えれば良い!」 ヴェータの言うとおり、ヴァーキュリアの相手をしているが攻撃するとバリアを張られてしまう オブスタンとか言うズングリムックリは膨大な魔力で無造作に魔力の弾丸を放っている 「ヴェータ!飛べない俺とペルソルナじゃヴァーキュリアの相手は不利だ!」 「分かってる、ウェンディと僕とメディナはヴァーキュリアを倒す、アリシアはヒース達を助けてくれ」 こういう時は飛べるのが羨ましい。オブスタンの魔法弾さえ受ければ・・・だがこちらは地に足が着いている 足場が崩れてしまう可能性も捨てきれない。それに俺には遠距離武器は・・・あるのだが 「弓矢じゃ心許ないな・・・」 「ヒースさん!爆撃来ます後ろへ!」 っと、そうこうしてる間にスカイーグルの爆撃が始まった。アリシアのアンジェラの後ろに隠れると 周りに結界が張られ爆撃から守ってくれる。こっちにはペルソルナのような反撃手段もない 「くそっどうすれば・・・」 「ヒース!相手が飛んでるならこっちも飛び移れば良い!」 「あれ危ないからやだなぁ・・・しょうがないけど」 爆撃が止むと結界からペルソルナが飛び出した、相手は飛んでいるが爆撃に近づいたのが運の尽きか 壁を飛び登って近くにいたスカイーグルへと着地、そのまま切り捨てて別のスカイーグルへ飛び乗った 「ペルソルナのような俊敏な機動力は禁忌には・・・そうだ、アリシア頼みがある!」 「何です・・・そ、そんなのむちゃくちゃです!」 何とかなる、アリシアは最初は否定的だったがしょうがないと、禁忌をアンジェラの背中に乗せてくれた このままオブスタンに取り付いて、魔力を吸い取ってしまえば飛ぶ事もできる! 「アリシア頼むぞ?」 「できるだけ接近します、落ちないでくださいね!」 オブスタンもかなり早いが、流石はアンジェラといった所か。フルスピードなら負ける事もなく 追い越してオブスタンの前に出た。今が飛び移るチャンスか 「ありがとう、行って来る!」 さて、オブスタンを利用させてもらうとしよう。飛び移ると振り払おうと暴れるが 禁忌のパワーでしがみ付けば、振り払われる心配はなかった。 「っ!」 「ヒースさんやっぱり無理です!乗って!」 だがフィールドを張って攻撃して、それで振り落とそうとするが大きな誤算だった フィールドの魔力を吸い取って、フェザードアップができる程度に魔力を蓄えた そしてこっちも誤算があった。だが嬉しい誤算だ 「敵の動きが鈍ってる!ヴェータこれならいける!」 「そうか、オブスタンはフィールドで味方に魔力を送れるが、それがヒースのせいで届かないんだ!」 敵の動きがさっきよりも鈍いのはそのせいか、このままフィールドを張り続けさせて魔力を蓄えてやる その間に援護がなくなったスカイーグルはペルソルナに切り裂かれて行く 「よし、そろそろだな!」 その時に俺は、フェザードアップを唱えようとした・・・がその時である。 ガクンとオブスタンが動きを止めて、そのまま落下し始めたのだ 「何っ!?」 「ヒースさん乗っきゃああああ!」 アリシアが俺を助けに来たが、アンジェラがオブスタンに直撃してしまった この機体、俺を道連れにするつもりなのか!?だがそうは行かない! 「フェザードアップ!アリシアー!!」 オブスタンから飛び離れて、一気に飛ぼう・・・としたのだが、翼は形成されずに禁忌がドンドン落ちて行く もう一度唱えたが、それで何かが変わるわけでもなく。ドンドン禁忌が深い・・・霧?霧なんてさっきはなかった 「くそっ皆!食料はあっちにもある!助けに来てくれよ!」 大丈夫だ、生物以外で生活に必要な物はこの前、さらわれた時を教訓にして荷台にも詰め込んである 連絡だってマジックアイテムの手紙でできるだろうし・・・問題はアリシアか 「ヒース!聞こえるかヒース!!」 「ねぇ、この霧変だよ!魔力がドンドン使えなくなってる!」 「先に陸に降りさせてもらうわ!このままじゃ私まで落下して洒落にならないし」 「ルナ、この霧が分析できるか?」 「やってみる!ヤカリはヒースとの連絡続けてて!」 「うぅ・・・ここは・・・」 私は・・・あぁ、さっきの戦いで崖から落ちたんだ・・・幸い、オブスタンの爆風のおかげで落下が止められて 吹き飛ばされた時に力を振り絞って飛んで・・・そのままここで気絶しちゃったんだ 「アンジェラ・・・動いてください、アンジェラ・・・・ダメですね」 アンジェラはもうピクリとも・・・周りの霧は濃く、外に出るのは危険ですね・・・けどどうして? アンジェラはこんなに脆くできていない。動くぐらいならまだ出来るはずなのに 「この霧が原因なんでしょうか」 この霧が魔力を分解してしまう効力があれば、あり得ない話ではないですね・・・ 私のアンジェラは魔力をメインにしてる分、魔力が使えないと動けなくなってしまいます ローザ団長は科学的な部分を多くしたからこういう時に強いんですけど・・・ 「はぁ、どうしましょう・・・」 誰かが助けに来るまで待つしか・・・けど、この霧の中で待つにしても地形があまりにも分かりません 幸いパンツァーシュナイダーは杖になってるし、足元を確認しながら歩くのに・・・ 「っ!足が・・・」 痛い・・・足の付け根が動かすとズキズキとして、その場に倒れこんでしまいました。 クリップを外して、ストッキングを脱いで見ると足の付け根が腫れていて触るとズキンと痛みが・・・ 幸い折れてはいないようで、動かす事は出来るけど歩くのは無理があるようです 「くぅ・・・パンツァーシュナイダーを杖にすれば大丈夫ですよね」 けど、周りがどうなっているかを確認したいし、アンジェラのハッチを開くと外へ・・・ どうしよう、少し差があって今落ちたら・・・何時もなら何でもないのに。 「・・・えいっ!ぁあああっ!」 少しだけ・・・だと思ったんですけどね、ダメでした・・・左足を使わないで着地しようとしたけど 右足だけじゃ不安定で結局、左足を地につけてしまう結果に・・・ 「痛いっ・・・・っはぁ・・・」 私はキャスカほど運動神経は良くない、当然の結果だったかもしれません・・・ 足を抱えてると、何か大きな足音がして青ざめました。今アンジェラは動けません ワーグルの牙にかかれば噛み砕かれてしまうし、ロボットだったら勝ち目がありません 「くっ・・・お母様・・・キャスカ、キャリコ・・・帰れないかもしれません・・・」 ウェンディ、ヴェータさんと幸せに・・・メディナちゃん。どうかディオールの今後を見守ってください ヤカリさんペルソルナちゃんと仲良く・・・ヒースさん・・・さようなら・・・ 「アリシア!無事か!」 「ヒースさん!?」 どうやらヒースさんが助けに来てくれたようです、良かった・・・本当に良かった・・・ 安心して腰を抜かしていると、ヒースさんが禁忌から降りてこっちに来ました 「アンジェラは?」 「それが動かないんです、原因は良く分かりませんが・・・」 「そうか、まぁ無事で何よりだ。アンジェラは封印できるか?」 一応戻す事はできて、アンジェラを戻すと近くで休もうと、ヒースさんも禁忌を戻して歩き始めました 足・・・心配はかけれませんよね、がんばれば杖を使って移動できるはずです 「っ・・・ふぅ・・・」 ほら、大丈夫・・・パンツァーシュナイダーが杖の形でよかった。そんな風に思いながらヒースさんの後を追うと 行き止まりにぶつかって、これ以上は進めなくなってしまいました 「・・・行き止まりか、ここの上なんだろうな」 「そうでしょうね・・・くしゅんっ!」 「アリシア?そうか霧で・・・テントでも張るか」 少し恥ずかしい所を見られてしまいました・・・けど、霧で寒いのは確かだからテントは欲しいです ヒースさんが骨組みを出すと、手伝おうとしたんですが 「っ・・・」 「アリシア?どうかしたか?」 足が痛い。ヒースさんに言うと心配をかけてしまうし・・・何でもないと言っておくと ヒースさんは早速テントを張って、ものの5分で完成させました 「よし、大丈夫だな・・・アリシアこっちだ」 「はい・・・」 テントの中にヒースさんが先に入ると魔法で、足を直せないかと回復魔法でも基礎のキュアを使ってみたのですが これも発動しない・・・もしかして、ここはどんな魔法も発動できないんでしょうか・・・けどさっきは・・・ 「アシリア、早くしないと風邪ひくぞ?」 「あっごめんなさい・・・」 足を少し引きずりながら、いやな予感を感じつつ私はテントへと向かうのでした・・・無事に帰れるかな・・・? 「ヴェータ、聞こえるかヴェータ!」 「ダ・・・イズ・・・が混じっ・・・上手く・・・こえない・・・」 ノイズ交じりだが、おそらくあっちも同じでノイズで上手く聞こえないようだ。 面倒な事になったな。さっきまで使えた魔力が今は完全にダメになってる 「と・・・・霧・・・・れるまで、うご・・・・な」 「了解、霧が晴れたら探しに来てくれ。」 通信を終わらせると、少し困った事になった。マジックアイテムが何故か使えないし魔法も当てに出来ない 飛行系の魔法も使えないから上に上れず、捜索もこの霧じゃ大分遅れる事になるらしい 「・・・この霧が原因で魔法が使えないんでしょうね」 「そうなのか?」 アリシアが言うには、この霧には魔力を分解させる力があって、そのせいで魔力を使った力が発動しないと言う なるほど、魔力で動くオブスタンが動けなくなったのもアンジェラが動けないのも、翼が出なかったのも納得だ 「晴れると良いんだがな・・・」 「はい・・・っしゅん」 アリシアがまた恥ずかしそうにしてる、そう言えばアリシアの格好はいつものドレスだったし寒いか 少し厚めの服を取り出すと、アリシアに渡して外に出た。 「それ着てた方が暖かいだろ?」 「ありがとうございます・・・痛っ・・・」 何だ?どこか痛むのか?テントの中でアリシアの小さな悲鳴が聞こえたから、中に入ってみると アリシアがまだ着替えてる途中で下着だ・・・むっ? 「アリシアその足・・・」 「あっ・・・大丈夫ですこれぐらい」 アリシアの足首が紫色になって腫れていた。白い肌に不似合いなこの醜い腫れは、捻挫か何かだろう だが何で放置するんだ?アリシアなら魔法で・・・そうか、ここは魔法が使えないからだ 「ちょっと痛いだろうが我慢してくれ。」 「これぐらい自分で出来るからお構いなく・・・」 「また我慢されて、この細い足がダメになったら後味が悪い。」 確か薬があったはずだと、次元層から出したのは救急箱1と書かれた箱。2は荷台に積んである 中に確か塗り薬があったはずなんだ、痛み止め兼用して腫れを引かせるのが 「どれだ・・・鎮痛剤・・・あった。ってこれじゃない・・・」 「ヒースさん自分でしますから・・・」 「この足では一人じゃうまくできないだろう?」 あった、効能と説明書の欄に書いてある。アリシアの足のサイズから言えば片手に半分程度 それを塗り広げるように書いてある少し痛いだろうが・・・ 「アリシア、痛いと思うから我慢してくれ」 「はい・・・」 出来るだけやさしく塗りこんだが、痛みで顔を歪めるあたりかなり痛いんだな・・・ 後は包帯を巻いて固定しておけば良いか。こっちは自分でも手馴れてると思ってる 「・・・ありがとうございます」 「アリシア、どうして見つけた時に言ってくれなかったんだ?」 包帯を少し過剰に巻きながら聞いてみると、アリシアは少し口を閉じてしまった。 ・・・シュコトーの時と同じかもしれないアリシアは、意外と抱え込みやすくて一人で何とかしようとする 迷惑をかけると思って黙ってたりもする。そういう場合は誰かが見通すんだが 「迷惑・・・かけると思ったか?」 「・・・はい」 包帯を巻きながらで目を見れなかったが多分、今のアリシアは申し訳なさそうに俯いてるだろうな 巻き終えると最後の仕上げに包帯を結んでから今度はアリシアの目を見た、少し潤んで悲しそうにしてる 「抱え込まないで言ってくれテレサにお前を守るよう頼まれてるのもあるが・・・」 「・・・・」 「こうやって苦しんだりしてるのを見るのは辛い。頼ってくれても良いんだ、頼りないかもしれないが」 「あの・・・ありがとうございます。」 「本当ならこっちが普通なんだ、気にするな」 少し無責任かもしれないがアリシアがこれ以上こんな怪我を増やしたりすると気の毒だ それにアリシアの白くて細い身体に、変な傷が増えるのは護衛を頼まれた身として気に入らない 「ヒースさん・・・あの、早速なんですが」 「どうした?」 「その・・・ヒースさん・・・着替えさせてください・・・これじゃ恥ずかしいです・・・」 アリシアに何でこうも簡単に包帯を巻けたか、それは下着だけで作業を邪魔する布地が少なかったからだ つまり俺はさっきからアリシアを半裸の状態で・・・ 「うぉおおおおぁぁあああ!?アリシアすまん!えっとえっと・・・こ、これ着ててくれ!」 「あの・・・足動かすと痛いから手伝ってください・・・お願いします」 「ちょっと待って!落ち着けアリシア!そ、そのだな・・・くぅ」 この前の水着と同じだと思えば良い、そうだその手が・・・じろじろ見るべきじゃない アリシアも真っ赤になってるし・・・早く霧が晴れてくれると良いが・・・ 「紅茶だ、アリシアやヤカリほど上手に淹れれたか分からないが 「ありがとうございます・・・」 ちょっと厚手のワンピースとカーディガンを着て、さっきより暖かくしてるけど足の痛みは治まらず 寒くなって来たからと、紅茶を淹れ様としたけど足を動かすなとヒースさんが淹れてくれました 「はぁ・・・暖かい・・・」 「もうお昼過ぎて夕方、こんな山の中じゃ寒くもなるか」 皆どうしてるんでしょう・・・ご飯、大丈夫かな・・・ヤカリさんとウェンディがいるから大丈夫だろうけど そういえばご飯・・・作れるかな?最悪の場合でもご飯を炊いたりは・・・ 「あの、ヒースさんご飯作れます?」 「あぁ、一応カップ麺とかあるし大丈夫さ」 カップ麺・・・お湯を入れて作るラーメンですね・・・けど、あれって栄養価が偏ってるし美味しいか分からないし 迷惑かけちゃったし美味しいもの食べて欲しいし、少しがんばれば・・・・ 「あぅっ!」 「アリシア無茶はするな・・・」 よろけた所を抱えられ、また寝るとヒースさんが作ると言ってくれたけど・・・私って・・・ しばらくするとヒースさんがお湯を沸かして、カップの蓋を開けてお湯を入れて私の出番はないようです 「・・・」 「そう落ち込むな。口に合わないかもしれないが、腹が減るより良い」 違うのヒースさん、美味しい美味しくないは私が食べるならどうでも良いんです。けどヒースさんには美味しい物を・・・ このままじゃ足手纏いですもの。せめて何かしたいです 「ほら、3分経ったぞ」 「えっ・・・ヒースさんの分は?」 「俺はロボットだから要らないのさ」 そう言っていつも、こんな時は何も食べないんですよね・・・もしかしてヒースさん、本当はご飯食べたくないのかな? 私が作ったりして食べないと悪いから食べないの?もしかしたらヒースさんの旅に私は・・・ 「アリシア?どうしたんだ?」 「へっあっな、何でもないです・・・」 それ以前に、食べ物が必要ならこうしたインスタントのほうが早いんですよね、3分で出来るんですし・・・ 「・・・」 そんなに美味しくないわけじゃない。3分で出来る割には美味しい方で・・・ 私の存在意義って他に何があるんだろう・・・ 「・・・」 「ヴェータ落ち着いてよ、イライラしてるでしょ?」 その頃ヴェータ達は、霧が晴れるのをただ待っていた。動けないのがイライラするのかヴェータは外を眺めて 晴れない霧にため息をつき。ウェンディも何だかんだで落ち着かず。自分と同じ心境であろうヴェータを宥めていた 「・・・大丈夫かしら、アリシアとヒース・・・」 「珍しく落ち込んでるね、だいじょーぶっ!二人ともこんな事でへこたれないよ!」 「ヒースとアリシアは合流できたんだし大丈夫だって」 そんな中、メディナは妙に寂しそう・・・いや、それだけでなく不安が混じった声で暗く落ち込んでいた 「珍しいな?メディナがそんなに落ち込むなんて・・・闇の国や暗黒帝国で見た時でもめったにないぞ?」 「あー・・・きっとコイツ、アリシアが心配で心配でたまんねーのさ」 「それだけアリシアのウェイトが大きいんだね、まぁお母さんと娘かお姉ちゃんと妹ってぐらい仲良かったし」 メディナは反論もせず、外を見て不安げにアリシアが落ちていった場所を見ていた。通信があってある程度 安心こそ出来たが。怪我をしていないか、寒くないかなどメディナの心配は尽きなかった 「霧・・・いつになったら晴れるのかしらね?」 「早ければ早いほど良い。まだ先だろうがな」 隣にヴェータが座り、窓から外を見るとまだ霧は深く。メディナの心のようにどんよりとしていた この霧が晴れるのがいつになるか、それはまだ先になりそうである 「アリシア・・・ヒース・・・早く帰ってきなさいよ・・・」 「・・・・静か過ぎるな」 「いつも見たいにヒースさんの昔のお話、聞かせてくれません?」 静かに時間が流れて、少し物足りなく感じてるとアリシアの一言で、また昔の事を・・・だが 悲しいかな真新しい事はアリシアと体験して・・・そうだ 「なぁ、今度はアリシアが話してくれないか?」 「えっ・・・はい・・・」 アリシアの話はあまり聞いた事がなかった、ディオールの王宮での暮らしはどんなものなのか 少し楽しみではあった。もしも・・・もしもこの時にアリシアの表情に気づいてたら、良かったか悪かったかは分からない 「ご存知のとおり私の母は優しいし、妹達とも仲良くして不自由な事もなく・・・」 王宮の生活は俺が思ってた華やかなものだが、朝から勉強で随分と大変なようだ。礼儀作法から政治の事まで ゆるい感じに見えたがしっかりしているんだな。10歳までで殆ど勉強は頭に入り込むらしい 妹は中々苦戦していたが11で殆どの事を覚えきったそうだ。アリシアもその時は手助けをしたそうだ 「長女だからがんばらないとって」 「ふむ、いい姉さんじゃないか」 隣のアリシアの顔が優れない、具合が悪いのかそれとも俺がイヤな事でも言ってしまったのだろうか? 俺が尋ねようとしたがそれよりもアリシアの口が開くのが早かった 「・・・良いお姉さんではないですよ。」 「アリシア?」 「その時は私も悩んでたんです、今もですけど・・・政治の事や外交でうまく自分をコントロールできるか・・・」 アリシアがこんな事を言うなんて以外だった。俺が驚いてるとアリシアの口はまだ動いた 「だから勉強を教えてる時、本当は自分の勉強がしたかった・・・」 「・・・」 「一番下の妹には、あまり勉強を教えてあげれなかったかもしれない。自分の事ばっかりで・・・」 何だろう、こんなに落ち込んでいるアリシアは初めてかもしれない、落ち込んだりした事は何回かある だがこんなに悲しげで、まるで迷子のような目のアリシアは・・・ 「キャスカが・・・妹が旅に出て戻って来た時、少し大きくなったキャスカが羨ましかった・・・私も 私も少し大きくなれるかなって、だから旅に出ようとしたんです・・・けど本当は・・・本当は逃げたかったのかも知れません」 「逃げたかったか?」 「少しでも王族としての立場から・・・心の中で、そう思ってたんでしょうね・・・けど、けど結局 迷惑かけてばっかりで・・・私の存在意義だって分からないし・・・」 泣き出しそうなアリシアがそこにいた、抱え込んだりする癖があるのは知ってた、だがなぜいきなり? アリシアの頬を優しく、慰めるように撫でると分けを聞く事から始めた 「どうしたんだ?何でそんなに落ち込んでるんだ?」 「・・・王族としても、姉としても・・・旅の仲間としても、迷惑かけたりちゃんとできなくて・・・」 「アリシアはダメなんかじゃない。」 「私は・・・私は妹達ほど運動も出来なくて、簡単に怪我もするし魔法だってメディナちゃんが使えて 料理だってヤカリさんも出来るし、最悪インスタントで済んでしまいます・・・私もういらないんです、迷惑かけちゃう・・・」 頬を撫でていた手の上に、暖かい雫が流れ落ちていった。雫が手を流れた感触が妙に熱くて胸の中で どうしようもなくやり切れない気持ちと、ないているアリシアが見たくないのが重なった 「アリシア、そんな事はない・・・!」 アリシアを抱きしめていた。手の上の雫の火傷は燃え上がっていき、アリシアを安心させるまできっと治らない アリシアの不安を全部否定して、霧が晴れるまでにアリシアをまた笑わせてやりたかった。 「けど・・・私・・・私・・・」 「アリシアのあの時の目、逃げたいから何て理由じゃなかった。王族として人として成長したかったからだ」 アリシアは喋らない。救いになると信じて俺は言葉を続けた。俺の目に映ったアリシアの姿を アリシアが自分で思ってるほど、自分の存在意義がない分けじゃないことを 「メディナは少し捻くれてる。けどお前を姉と慕うのはなぜだと思う?」 「年上・・・だから?」 「それだけじゃない、メディナは大人でも慕ったりはあまりしない。それはアリシアが姉として・・・人として 頼れるように思えたからこそ、あんなに慕ってるんじゃないのか?」 「そんな事・・・」 「それならメディナは何でお前を慕うんだ?いやメディナだけじゃない。皆だってアリシアの事 大切に思ってるし迷惑だ何て思ってない、料理なら他の人でも出来るというが・・・そのだ」 こんな事を言うとヤカリのプライドを傷つけるが、決してヤカリの料理がまずいわけではない 「アリシアの料理は美味しいんだ、ヤカリだって美味しいけどアリシアの料理は食欲のない俺でも 食べたいって思う時があるくらいに・・・それに栄養とかもちゃんと考えて献立してくれるし、おかげで皆元気なんだ」 「本当・・・?本当にそう思います?」 「嘘を言ってどうなる。魔法だってメディナ一人じゃ辛いだろうし、運動神経が鈍くても 人は欠点は一つぐらいあるんだ、しょうがないと思うぞ?それにだ・・・本当にアリシアにしかできない事がある」 「私にしかできない事・・・?」 「あぁ、アリシアがいると落ち着くんだ・・・メディナのお姉さん分がアリシアなみたいに、アリシアは心の支えになってるんだ」 少しアリシアが俯いて、顔が俺の方に当たる感触があったが、すぐに離れて抱きしめてる俺の腕を解いた 「本当に・・・本当に私、迷惑かけてませんか?」 「あぁ、迷惑なんてかけてないさ。将来の事とか妹さんとの事とか。俺が言っても説得力はないかも知れないけどな」 ふっと頼りなく笑って、アリシアの頬を撫でるともう涙は流れていない、枯れてしまったのか安心したのか 心配になったが杞憂に終わってくれた。アリシアがふわりと微笑んでくれたからだ 「良かった・・・私、邪魔じゃないんですね・・・」 「アリシアは抱え込んだりして、連鎖してさらにネガティブになるのが悪い所か。」 安心したのか、また泣きそうなアリシアに釘を打つように、ちょっとだけ厳しい事を言っておこう 「そうやってネガティブになると、皆が心配するだろうし・・・何かあったら我慢しないでくれ」 「良いんですか・・・?私、怪我とかしやすいんですよ?」 「我慢され続けて、泣かれるより迷惑になっても打ち明けてくれて、アリシアが笑ってくれてるほうが嬉しい」 ちょっと厳しかったかもしれない。アリシアがまた泣き出して胸に飛び込んできた。 どうすれば良いか、あたふたとしていると、アリシアが顔を上げたその顔は・・・どこか嬉しそうだった 「ありがとうございます・・・嬉しい・・・こんなに、こんなに心配してくれてたんですね・・・」 「すまん、厳しい事を言って泣いてるのかと思った・・・」 「違うんです、迷惑かけてもいいから笑っててくれって、それが嬉しくて・・・」 こっちも安心した、悲しかったりで泣いてるわけじゃなく、喜んでるみたいで嬉しかった アリシアの頭を撫でて、離れるかと思ったが逆にぎゅっと押し付けてきた 「今日は・・・肌寒いから一緒に寝てください・・・」 「あぁ・・・分かった、打ち明けてくれたな・・・これからもよろしくアリシア」 「はい・・・お願いします、ヒースさん」 このまま・・・寝ようと思ったが、今の状態じゃ寝苦しいだろう。足を動かさないように抱えて 体位を変えると俺が後ろから抱きしめる形になったが、これが足首を一番負担が少ないだろう 「暖かい・・・」 「アリシアもな、このまま寝てしまいたいぐらいだ」 「・・・さっきは、くらいお話になっちゃいましたから、今度は本当のお話です」 アリシアの声は甘く、眠りを誘うのだが・・・不思議と、王宮での暮らしを聞いてると続きが気になって 眠らなくてすんだ。話が終わる頃にはアリシアはうとうとしていて、目を閉じると夢の中に入っていった 「・・・暖かいな、本当」 アリシアの体温を確かめ、ふと目を閉じそうになったが、俺は睡眠欲を無視できるんだし見張りをしておこう 何かが来た時に大変だ。ウトウトとした欲求に悩まされながらも、それよりも良い物が目の前にあった アリシアの寝顔と、時々漏らす寝言だ。幸せそうな顔で家族の事やメディナの事を口に出している、つい眺めてると夢中になっている 「良かったなアリシア・・・もう、あんなふうに抱え込んだり、悩まないでくれよ・・・」 「んーっ・・・あったかい・・・・はわっ!?ひーすさん!?」 「アリシア、おはよう」 アリシアが目を覚ますと大分混乱してた。寝ぼけて昨日の事を忘れているらしく、ぺこぺこ頭を下げて謝ってる 「アリシア、昨日の事覚えてないか?」 「えっ・・・あぁ・・・そうでしたね、少し我侭・・・言っても良いんですよね」 答える代わりに、笑ってうなずくとアリシアは着替えると言い、一度俺はテントの外へ出た 昨日みたいに下着姿を見たり、そのままで何かしたら、きっとエマが起こるだろうな そんな事を考え笑っていると背後から、何かが来る気配がした。大きさからしてロボット・・・ 「ヴェータ達か、はやか」 ちがう、ずんぐりむっくりした体系のオレンジと黒のカラー、魔力にあふれる身体・・・・ 俺達をここに落とした原因を作った機体、オブスタンだった 「起動したのか!?アリシアっ!!」 無人機だと聞いていたが、なぜ今になって!理由を考えろ・・・そうか、奴のエンジンは魔力で動いてる それが原因か、霧で動きを止めていたのが霧が晴れたから・・・破壊しておくべきだった! 「ヒースさんっ!?」 「うわっ!?っと今はそんな時じゃないか、すまないが来てくれ!」 アリシアは着替えの途中で、下着姿のままだったが緊急事態だ。アリシアを抱えると呼び出した禁忌へ飛び乗り 体中を鎖で巻きつかせた。アリシアは足に負担をかけないように抱えて、足を縛らないようにしておけば心配はない 「敵だ、すまないがしばらくこのままだ」 「敵?一体なにが・・・」 禁忌の視界と俺の視界はリンクして、ここからじゃ何も見えないのか。リンクを書き換えて俺の視界から コックピットにモニター式で移しこむと、アリシアも敵の存在を確認してパンツァーシュナイダーを構えようとした 「アリシアの足はまだ休ませておけ」 「けど!もう痛みだって取れてきたんです!」 「ダメだ、アリシアには出来るだけ早く足を直してもらいたいんだ、我慢してくれ」 先制をオブスタンに取られて盾で防ぐが、流れ弾が背後の崖を直撃して後ろからも岩が襲い掛かる これをまともに食らうとやばい、走って逃げきるつもりだったが、オブスタンが両腕を広げた 「っ!ヒースさん逃げて!」 アリシアの声が聞こえた時は、岩から逃げるのに必死でその事かと思っていた、だがそれは違かった オブスタンから膨大な量の魔力が放出され、禁忌を吹き飛ばしたのだ。 「これは!?魔力フィールドか!」 「みたいです!ヒースさん対抗策は?」 あれば使うのだが、それがない・・・力技でならあるいは、いやこれしかない 魔力が溜まるのは待っていられない。ランスを取り出すと盾に差込み、ランスオブダークネスを構えた 「アリシア、しっかり捕まってろ!」 「は、はいっ!」 鎖でつないでいるが、アリシアがランスオブダークネスの負担を受けるのは、今の身では酷だろう アリシアの爪が肩に食い込むのを確認すると、一気に勝負を仕掛けた 「ランスオブダークネス!」 おかしい、無人機と言えなぜ動かない?近づくにつれて段々と、何かが変わってくるのに気がついたが もう少し早ければ、それを防げたかもしれない。加速がいつもと違い一気に倍の速度になった 「うわぁああああああ!?」 そのままオブスタンは最小限の動きで、ランスオブダークネスをかわして、禁忌は岩の中へと突っ込んでいった どういう事だ、ランスオブダークネスをオブスタンがコントロールしたとでも言うのか? 「さっき・・・凄い魔力を感じました・・・きっとそれで、能力が上がって加速が・・・」 「何だって!それじゃあ擬似的にオブスタンは攻撃をコントロールできるのか」 面倒な事になった、それではどの攻撃を使っても、ある程度のタイミングをオブスタンが掴める事になる アンフェリターンズで奇襲?いや帰って来た時にコントロールがダメになれば、俺の首を絞めることに 「・・・ヒースさん」 「戦うのはダメだ、最悪の場合は盾で・・・」 「違うんです!ヒースさんの武器でハンマーはありましたよね?」 それがどうしたと、頷くとアリシアが俺の耳元に口を寄せて、オブスタンを倒す戦法を提案してくれた なるほど、それを使えばオブスタンの裏をカクことは出来る。 「アリシア!負担が大きいから離れるな!」 「はいっ!やっちゃってください!」 右手にはランス、左手にはハンマーを持ち、ランスオブダークネスとクラッシュアンカインドを構える オブスタンはさっきと同じように、フィールドを展開するのだが、ここが狙い目だ 「ランスオブダークネス!!」 これをまずは回避するが、次からが重要だったこれで通り過ぎた瞬間に、間髪を入れず次を決めた 「クラッシュアンカインド!!」 「っ!!」 俺もアリシアも身体に響く振動に、思いっきり力んだ。アリシアの力なら痛くはないのだが爪が食い込んで 振動が足にいったのか悲鳴を漏らしていた。だがこれで逆転のチャンスが回ってきた 「っィけぇええええ!」 そのままハンマーを軸に回転、方向を転換するとオブスタンの背中目掛けて、ランスオブダークネスが襲い掛かった もくろみは見事に成功して、オブスタンの右半身は風穴を開けられその場に沈み込んだ 「っはぁ・・・やったな」 「うぅ・・・足が・・・」 安心したのもつかの間、アリシアの足の痛みが再発してしまったようで、鎖を解き放つと急いでその箇所を冷やした 氷と水しかないが、これを桶に入れて足を突っ込めば大分マシになる・・・ 「痛い・・・です・・・」 「ここか?」 昨日の捻挫した部分を触ると、アリシアがまた悲鳴を上げて唇をかんだ。アリシアの捻挫の事をもう少し考えるべきだった だが少ししたら痛みも引いて動かしても大分良いみたいだ。ほっと一安心すると、もう一度アリシアの足に包帯を巻いた 「アリシア、また役立ったな・・・」 「はい、役立てたみたいですね・・・良かった♪」 「これでアリシアももう悩まないですむな」 「とっくにすんでます・・・ヒースさんのおかげで」 ふっと笑いあってると、また何かか陰になって俺達を隠した。おいおい今度はスカイーグルか何かか・・・ いや違う、あの禍々しい竜の姿は・・・間違いない! 「ヒース!良かったそこにいたのか!」 これでもう安心だ、ヴェータ達が機体に乗ってこっちまでやってきたのだ。包帯は巻き終わったがこれでメディナの回復魔法や ヤカリの知識が得られる。捻挫なんてすぐに治るだろう・・・ 「・・・ヒース・・・SMはどうかと思うぞ」 ヴェータが言うと、俺はやっとアリシアの今の有様に気づいた。鎖で縛られた後があり下着姿・・・勘違いされても可笑しくない ヤカリ達が来たら誤解される!ヴェータは話を聞いてくれるがメディナはもう・・・ 「アリシア!急いで着替えるぞ!」 「は、はいっ!て、テントの中までつれてってください!」 アリシアは走れないし、俺が抱えて行く事になるのだが、距離が結構あるしもう機体の浮遊音が聞こえてくる 滑り込みで間に合ってこの時は本当に安心した、バイクに戻ってメディナが魔法をかける時までは・・・ 「アリシア、本当に心配したんだから・・・もうっ!捻挫なんてしないでよ!」 「ごめんなさい・・・心配かけてしまいましたね」 「いいのよ、無事に戻ってきてくれたんですもの・・・」 「おーおー夜に私に「アリシアが死んじゃったらどうしよう」なんて泣き付いてたくせに」 ワーワーと騒ぐメディナとからかうヤカリに、いつもの風景を感じつつウェンディがアリシアのソックスを ガーターベルトから外して、捻挫した箇所を見ようとした時・・・悲劇は起きた 「さら?何この後・・・鎖?」 「何ですって!?何で鎖なんて・・・まさかヒース!!」 「アリシア!?おいヒースてめぇ!性欲がねーよか言ったくせに何てことを!」 「二人とも落ち着きなよっ!そんなありえないってば!あぁっヤカリ、トンファーはダメだよ!誰か止めてー!」 これで小一時間、きっちりと事情を話す事になって30分あたりから質問がループし始めたのは覚えてる ウェンディとペルソルナが止めてくれなければ、きっとヤカリのトンファーとメディナのメイスでぼこぼこだった・・・ それからバイクを走らせると、メディナはアリシアにべったりとくっついて、本当に何かされなかったかアリシアにまで聞きだした 「された事はされましたね・・・悩みを取ってくれました。」 「悩みを取る?何があったの?」 「それじゃああの時の事を今からお話しましょう・・・」 「おー、何何?何があったんだ?」 ・・・アリシアも慎ましいのは変わらないが、我慢のしすぎはもうないだろうな・・・ バックミラーで、メディナに膝枕をして姉のように優しく接して、後ろから抱きついたヤカリに ビックリしてるアリシアを見て、なんとなくだが笑いがこぼれてきた。 「良かったなアリシア・・・」 そのころ、倒されたオブスタンは放置されていたのだが、そこへ何かが飛来してきた スカイーグルが数機、オブスタンを足で掴むと輸送を開始した・・・ それと同時にオブスタンの二つのモノアイは、不気味に光を取り戻したのだった 「データシュウシュウカンリョウ、ニンムカンリョウ」 不気味に響く機械の声、果たしてオブスタンの任務とは?ラグナロクは何をするつもりなのだろうか? アリシアの抱え込む癖が治ると同時に、もう一つ新しい恐怖が迫りつつあったのだった・・・ 続く