前回のあらすじ 崖に落ちてノイローゼなアリシアをヒースが慰め、ちょっと立ち直らせた 「ふんっ!」 「ルナ、お手」 「私犬じゃないよヤカリ!」 現在、ヤカリとメディナは尋常じゃなく距離を取りぴりぴりしていた。 その理由はいたって簡単である・・・二人が喧嘩をしたのだ 「ヒースさん・・・二人が凄く怖いです・・・」 「説得してみたがダメだった、どっちも随分ムキになってる」 「ペルソルナが何とかしてくれてるけど、どーしよっか?」 ・・・本当にどうしよう、こうなったのはそもそも、今から1時間ほど前に遡り ヤカリがスケッチの後に色塗りを終えて、絵の具が乾くのを待っていた時だった 「ヤカリ、後片付け手伝うわ」 「おっサンキュ」 ぺきっと何かが割れる音、メディナが落ちてた筆を踏み潰してしまったのだ。その筆がヤカリのお気に入りだったらしく ここでメディナが素直に謝ればこうならなかった、が素直じゃないメディナはここで・・・ 「何でこんな所においておくのよ!」 「んなっ!しゃーねーだろ!今終わって片付けてる途中だったんだから!」 これが喧嘩の始まりであった・・・小15分程度の口げんかの後、二人とも口を利こうとしない さらに荷台でもピリピリした空気を流して、とてもじゃないが一緒に入られないと皆逃げてきた 「どうした物でしょうね・・・」 「しょうがない、時間が経つのを待つしかないんじゃないか?」 「暢気だな・・・夜になっても続くだろ?直感だがそんな気がする。」 まさか、とヴェータの一言をその時は流したんだが、夕方になっても仲は一向に直らない さらに夜・・・えっとだな、本当に仲直りしないままとは思ってなかった。 「・・・何だか特殊な状況だな」 「あはは、お邪魔してます」 今日はアリシアはサイドカーに乗って眠ってる。ヴェータとウェンディは荷台の操者席(馬車を改造したから着いてる) ここに布団を持ってきて寝ていた。意外とスペースがあるから男女が寝るには苦労しない 「今日は災難だな・・・」 「しょうがないよ、もっと災難なのは巻き込まれて荷台の中で寝てるペルソルナだし」 そうそう、ペルソルナはヤカリのほう・・・かわいそうだがしょうがない。幸い機能停止に近いスリープモードもある 安心して良いだろう。何だかいつもと違う状況だが見張りに支障はないだろう。 「皆寒くないか?」 「はい、ここ暖かいです」 「こっちもだ、ウェンディが側にいるから暖かい」 「うん・・・私も暖かい」 大丈夫らしいな。ヴェータとウェンディを見て少し暖かそうに思えて、それが羨ましかった が、二人の仲を邪魔するわけには・・・お誘いがあったが、二人を見てる方が楽しそうだ 「アリシアおいで〜」 「えぇ、でも良いんですか?」 「何だか視線が痛いからな、皆で寝てる方が暖かいよ」 アリシアがウェンディの隣に入ると、暖かそうで・・・むぅ、誘惑に負けそうになる。 だが落ち着け、俺まであの中に入ったら熱くなる確立も高いし狭・・・ 「なぁ、ヒースこっちにこないのか?寝ても大丈夫だろう、こんな見つかりにくい場所なんだし」 「そうだよヒースこっち入りなよ、きっとあったかいし楽しいよ?」 「ヒースさん暖かいですよ〜、今日は肌寒いから気持ち良いですよ〜」 落ち着け、こんな誘惑に負けるわけには行かない 「ふぅ・・・暖かい・・・」 だが負けてしまった。皆の誘いもあったが本当に暖かそうだったんだ、いや実際に入ると暖かいんだが 人肌でちょうど良くほこほことしてて、それでいて布団の柔らかさがなんともいえない アリシアとヴェータに挟まれると思ったが、アリシアが逃げてウェンディの隣に行ってしまった。この前の事を気にしてるのか? 「ね?こっちに来て正解だったでしょう?」 「あぁ、気持ち良いな」 男女が4人で布団に包まるなんて、傍からしたら遭難したと思われるな。そんな事を思いながら 寝てしまいそうになる俺の横で、アリシアが少し目を閉じたまま喋り始めた 「一応、メディナちゃんには言っておいたから明日には仲直りすると思います。」 「おぉ、でかしたアリシアけどいつの間にしたんだ?」 「それはですね、夕飯の後になんですけど」 「メディナちゃん、あれはメディナちゃんも悪いんですし謝りなさい」 「・・・」 「素直に自分の非を認めるのだって大事です。そうすればきっと視野も広がりますよ?」 「・・・分かったわ、明日の朝にでも謝っておくわ」 「と言うわけなんです」 「へー、アリシアやるー」 「ふふっ少し私も成長しましたから、あら・・・」 ZZZZZZもうだめだ、意識がとどめて置けない。こんなに心地良いんじゃ寝るしかない ほこほこして、それでいて・・・・ZZZZこうやって皆で包まったらもう・・・ZZZ・・・ 「ふぅ・・・・」 朝ごはんも食べないで、今日は早起き。何をしにいくかは決まってるの ヤカリの筆の代わりになる頑丈な木を使って、構築系の練成魔法で筆を直すのよ 「ふんっ利子つけて返してあげるわ・・・」 幸いここは森の中、いい感じの木ぐらいなら1本や2本はあるでしょうし、利子つけて返してやるわ! っとそれにしても木が多くてヤになるわね。少しぐらい切り倒した方が良いんじゃないかしら? 「陰になって下にはろくな植物が生えないし、ここは木だけなのね」 ・・・おかしいわ。泊まってた場所は草は生えてたしさっきまでは・・・まさか、いやな予感がして振り返ると 来た道が明らかになくなってる。道に迷ったみたいね・・・ふふっけどそれほどバカじゃないわ 今は着信拒否状態だけど手紙があるから帰り道は分かるわ。 「さて、太くて逞しい木をさっさと探さないと朝ごはんに間に合わないわ」 朝飯前なんてよく言うけど、私は朝飯後になっちゃうかもしれないし、それだと格好がつかないわ 皆も心配するだろうし、さっさと探して帰らないと 「どれもこれも同じようなのばっかりね・・・良い感じに使えそうなのがないわ」 それにしても全部が全部普通ね、ノックしてみたけどあまり良い印象はないわ。こつんっと子気味の良い音しかしない もっとゴツンとした感じの硬い音が聞きたいのに。それを繰り返して30本ぐらいだったかしら? 適当な木をノックしようとしたら、虫がいきなり飛んできて私の手の上にとまろうと・・・ 「いやぁあああああ!?っ!!!ちょっと何よ!」 腕を思いっきり振るうと、ゴツンと重いずっしりとした音がして振り返ると、そこには見た目こそ変わらないけど 他と硬さが違う、私の求めていた木があった。好都合だわこれを使わせてもらいましょう 「ちょっと使わせてもらうわ。折れた木に新たな目を、汝の種を望む・・・っふぅ」 ふふっ、折れた筆も直したしこれで大丈夫ね。さっさと帰ってヤカリに謝らないと・・・ 筆をポケットにしまって、帰ろうとすると人影が・・・あら 「ヤカリじゃない、散歩にでも来たの?」 ちょうど良いわ、変える手間が省けた。ヤカリに筆を出そうとするとヤカリは怒り気味で 私が筆を出すより早く怒り始めた、ちょっと何で怒られるのよ・・・ 「メディナがいないって皆、心配してるんだぞ!」 「なっ!」 あんたの為にやってるのに!何よ!人が折角、謝るついでに筆まで直してあげたのに! もう良いわ!こんなのに謝る必要ない! 「ふんっ!てっきり筆の事でまだ怒ってるのかと思ったわ」 「今は関係ないだろ!早く帰るぞ!」 「後で帰るから良いわよ!ほっといて!」 あぁイライラする!何で怒られなきゃなんないのよ!そっぽ向いて少し遠回りして帰ろうと思ったら 足元がなくなって・・・・えっ 「きゃあああああああ!!」 「メディナ!?っやべ!」 急斜面になってて、足が取られてそのままズルズルと下へと吸い込まれて行く。魔法でも使えば落ちるのは何とかなったけど この時に驚きすぎて使う事すら忘れてた。このまま転げ落ちて行くのが普通だけど 「あぐっ!?」 「よしっ今引き上げるからな!」 ヤカリが何かで私を捕まえて、そのまま引き上げた。けどヤカリも途中まで落ちていて、支えてるのは命綱が一本だけ これには冷や汗が出たわ。なんでこんな危険な事をするのかしら・・・ 「何でここまで来たの?」 「あのままじゃ落ちてたろ、とにかくじっとしてろ」 そのまま引っ張られて、脇に抱えられたけど今度はヤカリが上に上がらない。何でなの? 「・・・わりぃ、夢中だったから帰り考えてない・・・」 「登れば良いじゃない!んっ・・・・きゃああ!」 上ろうとしたけど、その前に転がって上れない・・・ちょっと!どうしろって言うのよ! 「メディナ、魔法で何とかなんね?」 「無理よ!もう・・・」 どうしたものかしら、落ちる心配はないにしてもこのままなんてイヤよ。どうしようかしら・・・ 「はー、やんなるなぁ・・・」 「はぁ・・・何で考えなしに飛び込むのよ・・・」 「仲間が大変な時、メディナならどうする?」 ・・・ヤカリらしいといえばらしいわね、仲間か・・・落ち着いて考えれば、さっきのも私のためだったのかしら いきなり朝早くに黙っていったら、アリシア達が心配するわよね・・・ 「・・・ありがとう、さっきはごめんなさい」 「なんだ、珍しく素直じゃん?」 「何よ、素直じゃ悪い?」 何だかすがすがしいわ、本当の早く誰か・・・あら?上の方に人影・・・ペルソルナ! 「二人ともー!今引き上げるねー」 「何で分かったの!」 「魔力だよー、メディナの魔力が感知できたのー通話してよー」 あぁ・・・私ってば急いでて忘れたけど、手紙で助けを呼べばよかったんじゃない・・・ ペルソルナの引き上げて、何とか上に戻ると私からヤカリが何かを外してる。投げたのはトンファーだったのね トンファーに縄がくくられてて、これで私を捕まえたのね・・・・ 「ヤカリこれ、昨日は本当にごめんなさい」 「今日は槍でも振るか?んっ・・・」 「槍は振らないけど筆は落ちるわね、私先に帰ってご飯食べてるわ」 筆を投げ渡すと、ヤカリってば受け取り損ねておでこにぶつけてた。素直に謝ったりも悪くないわね さて今日のご飯は何かしら?アリシアの作ってくれるスープは美味しいから楽しみ 「ウェンディ・・・」 「ヴェータ、ダメだよ・・・見つかっちゃう・・・」 ここは荷台の裏側、もう皆は寝静まった頃に響く男女の薄い声・・・喉を伝うコクンと言う 何かを飲み込む音と吸い付くような音。 「ん・・・はぁ・・・」 「甘い味がする・・・それに感覚が麻痺するぐらい甘い臭いだ」 「ひぁああ・・・」 一度離れたが、また吸い寄せられて重なり合い。そして貪るように混ぜあう・・・ 「こっちは良い具合じゃないか・・・」 「ひゃぅ・・・・声出ちゃう・・・」 離れた後、ちろりと舌を出すような音の後に、少女の細い抑えた悲鳴が闇夜に小さく響き渡る 甘い甘い桜色を嘗め回す、水気を含んだこするような音の後。吸い付くような音へと音は形を変えて行く 少女の悲鳴は危なく響きそうになる、それは何かを甘く噛む事で抑えられてるのか。曇った悲鳴が小さく聞こえる 「んっ・・・ふぅ・・・んぅっ!?」 はむっと、優しく甘く噛み付くような音の後、少女の声が聞こえなくなり、代わりに少し荒い呼吸音 ちゅぱっと唇が離れ、悪戯になめるような音の後には少女の声が続いた 「んぅううっ!」 声を出していれば、きっと甘い声が響き渡るだろう。だがそれはなく小さく小さく 布を噛み耐えるような声が響くだけだった。少しすると布がこすれる音がする 「声、出したら気づかれるだろうな・・・それはそれで面白いか・・・」 「はっ・・・・やぁぁ・・・・」 否定するような、肯定するような声色の少女を知ってか知らぬか、少年の声はまるで楽しんでいるようだった 少し粘着質の水音が響き、ぬるぬるとした音は静かに夜の中へと消えていった それから、何かをこするような音が始まると、少女の悲鳴は抑えきれなくなっていた 「ふぁっ・・・・んぅぅ・・・・ぁ・・・」 くぷっと、粘着質を含んだ空気が漏れる音と共に、少女が少しだけ大きな悲鳴を上げてしまう いやいやと首を振るが、それを拒絶するようにかき混ぜるような音が耳を侵していく 「ぁっ・・・ゃっ!ぁぁぁああ・・・・」 そのかき混ぜる音も、満足げになりにゅるりと抜ける音で最後となった。だがそれは終わりではなく ピタリと、ヌルリとが重なった音で、少女は悲鳴ではなく哀願をするようになり始めた 「も、もう終わらせようよ・・・」 「あぁ、これが終わったらな・・・」 「あっ・・あぁ・・・だめぇ・・・」 大きな声が出せれば、めいいっぱいの悲鳴が響き渡っただろう。くぐもったうめき声のような悲鳴だけが 我慢したように小さく響くだけで終わり。次に肌とはだがぶつかる音が混じる だが更に、少し前に止まったチュッと言う吸い付く音と、こする音がいまさらになり戻ってきた 「そんなっ・・・あっ!胸も・・・そこも・・・・やだぁっ!」 「気づかれるぞ?」 脅すような一言で、涙声の少女はただ耐えるしかなく。肌がぶつかり吸い付き、こする音の三重奏は少女の耳を 心を犯して、フィナーレの何かが噴出すように、どろりと押し出される音と少女の悲鳴でこの闇夜に響いた 甘い演奏会は幕を閉じて、小さなため息と呼吸音だけが拍手のように闇に解けて行くのだった・・・ 「もう・・・無理やりはヤダからね・・・?」 「ごめんよ、今度はちゃんとした場所でするし、こんなに苛めはしないよ・・・」 優しい撫でる音は、先ほどの意地悪く残酷な音色ではなく、優しく包むように少女をうっとりとさせ 段々と疲れが心地よく眠りへといざなうのだった・・・ 「・・・・なんだろう、このネバネバしたの・・・」 「変なにおいですね・・・昨日のうちに獣でも来たんでしょうか?」 「まぁとる前に俺達の気配で逃げたんだろうな」 後始末を少しだけ忘れてしまい、ギクッとなるヴェータとウェンディであった。 「♪〜」 「ルナ、どーしたんだそんな嬉しそうにして」 えへへ、今日はとっても良い日。実は私達がこうやって皆で旅をしてからで 私が書いてる日記が埋まった日なの。皆との思い出が沢山出来てうれしいなぁ〜 「日記だぁ?お前一体どこに・・・」 「私の頭の中に書いてるの、要領の問題はあるけどいっぱい書けそう♪」 もしもの時は、クゥルセルヴェの人たちに頼んで、書き写しさせてもらえば残せるしね ヤカリが感心してると、適当に面白い話を聞かせてくれって言うし・・・どうしよう 探してみてると・・・あぁ、良いのがあったっ 「 月  日 今日はアリシアがヤカリにお洒落をさせてた、ヤカリは似合わないって逃げようとしたけど 服を洗濯してるからしょうがなく、ひらひらの服を着てたけど、まんざらイヤじゃないみたいだった」 「あれ覚えてたのか!?ったく〜お前は性悪だなぁ」 ふぇえ!痛い痛いっ!ぐりぐりしないでぇ〜! 「うぅ・・・酷い目にあった・・・」 「どうしたんですペルソルナちゃん?」 あぁ、アリシアだ!アリシアにこの事を話すとアリシアは困ったように笑ってた。ちょっとふざけただけなのに けどいいや、アリシアのひざの上で休んでると、アリシアも何か面白いお話がないか聞いてきた ・・・アリシアなら大丈夫だよね、少し驚かせようと私は9ページぐらい遡った。 「 月 日 アリシアが少しだけ変だった、ため息混じりに顔が赤いし。ヒースに話しかけられるとビックリしてるし 風なのかな?けど熱はないみたいだし。どうしたんだろう?」 「きゃああああ!?ぺ、ペルソルナちゃん!?」 へっ何!?いきなり驚いて立ち上がったせいで私は転がり落ちて、顔から床に衝突して顔が・・・ うぅ〜凄く痛い!どうしたんだろうアリシア、こんなに慌てて・・・ 「ご、ごめんなさい!」 「うぅ〜痛いよアリシア〜」 顔を抑えてると、アリシアがもう一回、私に膝枕をしてくれて私はまた気持ちよくしてると アリシアがため息をついてる、何だかヒースと一緒に入るときのため息に似てる・・・ 「どうしたの?喧嘩したの?」 「いいえ・・・違うの、喧嘩とかじゃないんです・・・」 ならどうしたんだろう?何だか少し赤いし・・・よく分からないけど、ヒースが下着姿でも見たのかな? まぁいいや・・・今は凄く気持ち良い・・・ 「うー・・・少し寝て良い?」 「良いですよ、おやすみなさいペルソルナちゃん」 少し・・・のはずが、2時間ぐらいアリシアと一緒に寝ちゃった。気持ちよくてもう少し寝てたかったかなぁ 「ふへぇ・・・」 「きゃっ!どうしたのペルソルナ?」 あぁ、ウェンディだ・・・さっきので寝すぎて眠たくなっちゃった。ウェンディにその事を言うと 今は暇だからと膝に乗せてくれた、ウェンディの胸が頭の後ろに当たった何だか気持ち良い・・・ 「んー・・・気持ち良い・・・」 「そう、ねぇ日記って書いてるの?」 「ううん、記録してるの」 うとうととしてると、ウェンディが頭を撫でてくれてもう眠気が・・・・ ウェンディが自分の事も書いてるかと聞いてきたし、寝る前に喋っておこう 「うん、そうだね・・・色々と、それじゃ適当に選んで」 「わーい、ありがとう」 「 月 日 ウェンディがジタバタしてるのを見かけて、助けようと思ったら後ろにはヴェータがいて ウェンディが誰かに気づかれるって言うけど、無理やりキスをしてた・・・これが大人の世界なんだ」 「ひぅあああ!?」 「わぎゃん!」 痛い・・・ウェンディが驚いて立ち上がると、そのまま転んで顔から床に落とされちゃった 顔を抑えてるとウェンディが真剣な顔で私の形を揺らす、うぐぅ・・・苦しい〜 「だ、誰にも言わないでね!?」 「わ、分かったよぉ〜放してぇ〜」 安心したようにため息をつくと、ウェンディはどこかいっちゃった・・・うぅ・・・目が覚めちゃった・・・ 「あっメディナ」 今度はメディナがやってきた、何だかイライラしてるみたいでイヤーな予感が・・・ ふぎゃう!いきなり抱きしめるなんて!ふえぇ痛い〜!! 「はぁ〜気持ち良い・・・」 「痛いよ〜っ!メディナ緩めて緩めて!」 うぅ、メディナって時々こうやってストレス解消に抱きしめてくるんだけど、強すぎるのは勘弁して〜 じたばたしてると、ようやくメディナが話してくれた。ふぅ・・・苦しかったなぁ 「機械なのにこれぐらいで痛いの?」 「もー、小さくなってぬいぐるみ並みなの!」 小さくなると何故かもふもふして、ぬいぐるみみたいになっちゃうのがネックなんだよね・・・ クゥルセルヴェの人たちの趣味なんだろうけど、これ不便だよ・・・ 「まぁいいわ、しばらくこうさせて」 「もー、しょうがないなぁ」 あっ、今日の日記はアリシアとウェンディが同じような動作をして私が顔からぶつかって、その後にメディナは不機嫌で 私を抱きしめてたって書こっ 「はぁ・・・・」 このごろ、何だか変・・・ヒースさんをマジマジと見れない・・・やましい事なんて考えてないはずなのに 顔を見てると・・・はぁ、どうしたんだろう私・・・苦しい・・・ 「・・・はぁ」 一度・・・一度こんな感情に襲われた事はあるし、これが何なのかは知っています。知っているけど・・・ けど、けど・・・ 「好き・・・」 10歳の時に家庭教師の先生が・・・けど、けどどうしてヒースさんを?この前の事で? いえ、けど・・・けど、ヒースさんに何度も助けられて、それでヒースさんのことが? 「優しくて・・・それでいて頼れて・・・」 かっこよくて・・・それでいて強くて・・・私の事をいつも守ってくれて、一緒にいてくれて だからなんでしょうね、こんなにヒースさんの事でどきどきするのは・・・けど 「けど、ヒースさんは・・・」 私とは身分が違いすぎます。彼は放浪のロボット・・・私はディオールの王女、幾らヒースさんが好きでも・・・ 私が国の将来のために好き勝手するわけにはいかない、私はどこかの位の高い人と結ばれなければならない それが私の役目なんですから・・・ 「・・・ヒースさん・・・」 けど、けどヒースさんの事は好きなのは・・・偽れないのかな・・・側にいるだけなら 思いを伝えなければ、側にいるだけなら許されても良いでしょう・・・? 「キャスカ・・・あなたは幸せになれますか?」 今だけは・・・今だけは長女である事を、王族である事を恨みます・・・ 「・・・」 ふと、時々思う事がある・・・こうやって、皆で旅を出来るのもいつまで続くのだろうか? ヴェータとウェンディは、仇をとり終わるまでか?メディナは生き方を見つけ次第・・・ ヤカリは恐らく気分しだいだろう。アリシアは・・・大きくなったらだろうか? 「どうしたんだろうな・・・」 「ヒースさん?」 別れたくない。ずっと一緒にいたい・・・それは当たり前に起きるだろう。だがアリシアだけが違かった 元々、魅力的だったし普通の男ならそう思うだろうが、俺にはそんな感情は生憎持ち合わせてない 大体それならヤカリやメディナだって魅力的だ。だがアリシアはその・・・側で守ってやりたい 「ヒースさん!」 「むっ・・・あ、アリシア!?」 ビックリして転びそうになった、アリシアがいきなり隣にいた、いや俺が気づかなかっただけなんだろうが 「ヒースさん、どうしたんです?」 「ちょっと考え事をしててな・・・」 「ふふっヒースさんでもそんな時があるんですね。何考えてたんですか?」 「えっとだな、まぁ今日の晩御飯の事でも」 見え透いた嘘だが、アリシアなら気にしないでくれと察してくれるだろう。クスっとアリシアが笑うと 胸の奥で何かがうずく様な、くすぐったさに似た物に襲われる・・・アリシアの微笑みはズルい この前から万遍の笑みの中に少しだけ、悲しさのような物が見え隠れしてる。だから何だろうな・・・ 「守りたくなるのは・・・」 「何か言いました?」 「んっいや、何でもない」 側で守ってやりたくなるのは。その悲しげな微笑を消し去ってやりたい。前に微笑んでくれた時は こんな悲しげじゃなかったのに、何かがあったのだろうか?胸が苦しい・・・ アリシアを守るようテレサに頼まれてるが、そんなの関係なくアリシアを守りたい。 保護欲が分厚くなってしまったのだろうな。この前の涙を見たせいなのかもしれないが・・・ 「悩んだりしてないかアリシア。」 「えっ?そんな事ないですよ?今はもう抱え込んだりはしてないですもの」 ・・・そうだよな、前にアリシアに抱え込むなと言ったのは俺だ。きっと過保護になってるだけなのだろう だが・・・だが出来るなら、ずっとアリシアの側でアリシアを守ってやりたかった・・・ 「さて、晩御飯の支度しますね」 「あぁ、今日は何を作るんだ?」 だが俺には出来ないだろう。ならばこの旅の中だけでも守り抜こうきっと、終わる頃にはアリシアの寂しげな微笑は 強く美しい王女としての微笑みに変わっている。アリシアならきっと大丈夫だ・・・きっと この時、俺はまだ旅は終わらないと思っていた・・・それなのに・・・旅の終焉は唐突に訪れるのだった 「ヒース・・・がはっ・・・」 「ぐぅっ・・・もうダメなの・・・?」 そう、それは唐突過ぎた 「ヒース!ヒースを返しやがれ・・・ちくしょう・・・」 「こんなのヤダよっ!こんな終わりないよぉ!」 皆・・・ 「ぐすっ・・・私まだ・・・まだアンタに言われた生き方・・・見つけてないのに・・・なんで・・・」 「ヒースさんっ!ヒースさぁあああん!」 ごめん・・・・ NEXT ―ブラックナイトエンド 黒騎士と終わり―