「・・・」 「詰まらなくないか?」 「・・・」 「そうか。」 エキドナの事は大体分かった。エキドナは話す事は滅多になく、無口だがその態度や目線で 大体の事は分かった。さっきは別にと言っていた 「リーゼロッテ達のこと、信じれないか?」 「・・・信じれない」 やっぱりまだ信じてもらえない。まぁしょうがないだろうな、ただ単にリーゼロッテの事や ナナミのことを話しただけだし・・・信用を出すにはどうすれば良いんだろうか? 「・・・」 「ご飯か?いや良いよ」 俺に出された飯を見た後、俺を見たから恐らく飯を食べるかどうかだろう そう。と小さく言うとまたエキドナはそっぽを向いてしまった。 「・・・エキドナ、どうすれば信じる?」 「信じる信じないじゃない、私はここから私の大切なものを取ったのが許せない。」 ふむ・・・となれば、エキドナを信じさせるのに必要な事、いやエキドナを納得させる方法 だとすればエキドナにここよりも二人が外を選んだと言うべきかも知れない。 「エキドナ、話を聞いてくれないか?」 「いや」 これだけははっきりと言った、ならこっちも外の事を話すとしよう 「二人が外の世界に出て、戻ってこないのは外が良いからだ。分かるか?」 「・・・」 「外の事を詳しく話そう、どうやら碌に外の話を聞かされてないみたいだしな・・・ 「もう少しでバニアだな」 「なぁ、バニアってどんな所だったっけ?」 「ヤカリ覚えてないの?もうっ私が溶けないか心配してたのに!」 キルコプター火山へと近づいている、ここオブリビオは危険な地域だ。何故なら無差別破壊を目的とした 古代兵器と思われる機体がいるからだ。こうやってキルコプターで飛ばなければ僕らも危ないだろう。 「バニアは火山の国ですね、正確には種族の名前も兼用してるのですが。」 「あっ聞いた事ある、長寿の古代人なんだよね?」 「はい、罅割れた岩の皮膚を持つ種族なんです。それで今回はその王様に会いに行きます。」 大体の説明はアリシアのウェンディの言ったとおりだ、だが気になるのはその特質だ 彼らは外界との接触を拒む性質がある。その為か接触を試みた国は殆ど失敗に終わっている あのディオールやスリギィもがだ、挙句の果てにアウトバーンは壊滅寸前に追い詰められた程だ 「へぇ〜熱そうだな」 「実際に凄く熱いんです。私達の魔法で皆さんが焼けないようにしますので」 「安心しなさい。私とアリシアの水魔法なら溶岩に飛び込まない限り焼け死なないから」 まぁ二人の魔法なら、皆が焼け死ぬ事もないさ・・・闇黒の国のダークエルダー閣下が 僕らのために、交渉した結果、何とか会えるんだ・・・力を物にしなくては 「NI共を確実に倒すために・・・」 闇黒皇子と超龍騎 「ここで降りる、国家と言っても僕らの知る国家とは大分違う」 「らしいですねこの近くの活火山の一つ一つに集落があるとか。」 「アリシア詳しいね、流石は賢女って言われてるだけあるね」 そしてここが王城に当る火山。ここにバニアの王は眠っていると言う、いや眠っているわけではないが ここで生活をしているらしい。護衛の兵士もいない辺りよほど自信があるのだろう 「皆降りるぞ、機体に乗り忘れるなよ?」 「分かってる、メディナもアリシアもお願いね」 「えぇ、それじゃ皆入って」 「ジェルフィールドで行きます?」 「フリージングダウンの方が良いわよ、溶岩が凄いらしいし」 防御系の水属性魔法の事で二人が話してる間に、ペルソルナは巨大化してヤカリが乗り込み ウェンディと僕もソードマスターとズメウに乗り込んだ。 「それじゃあフリージングダウンで行きましょう」 「えぇ、今回は私とアリシアは戦えないからね?」 二人がアンジェラとアン・ギェーラに乗り込むと、僕らにかけた魔法は氷属性の結界を張る魔法だった 流石と言った所で、結界の強度や耐熱性能はかなりいい感じだな。 「何だかひんやりするよ、ねぇヤカリ大丈夫?」 「あぁ平気だよ、それよりアリシアとウェンディのが露出多いんだし大丈夫か?」 「はい、寒くならないようにしておいたので」 「私は太ももが少し肌寒いかなぁ、まぁ大丈夫かな」 皆大丈夫らしい、さて噴火口近くまで行かないと、アンジェラとアンギェーラがペルソルナを抱えて ソードマスターはペガサスエッジで翼を生やすと一気に頂上の方へと飛び上がった。 「本当に警戒心ねーのな・・・」 「そうだね、幾らなんでも油断しすぎだと思う・・・」 「ねぇウェンディ、風属性の魔法って今使える?」 急にペルソルナがウェンディに風魔法をせがみ、ウェンディが言われたとおりに簡単な風属性の魔法を使うと その理由が分かった。下から押し上げて一気に上へと昇ろうとしたのだ。 「ひゃっほ〜!こりゃ快適だなルナ!」 「きゃあああ!怖いですっ!」 「そう?楽しいじゃない、中々よ」 「ペルソルナってば頭良いね!けどね」 「なーにウェンディ?」 ウェンディが妙に申し訳なさそうだ、どうしたのか聞くと、まず僕らが上昇するのは良いが加減してないから 恐らく頂上を越えるらしい、まぁ活火山で熱で上昇気流が起きて・・・ 「ちょっ通り過ぎるのかよ!」 「うん・・・」 「ひぇえ!?ご、ごめんなさい!」 どうした物かと思っていたら、いきなり何かにぶつかった。いや皆同じようにぶつかったんだ 何か分からないが、結界と見て良いだろう。 「いたぁい!何これ!」 「結界よ見て分からない?まったくアンタの提案した作戦のせいでとんでもない目に・・・」 「まぁまぁ、ペルソルナだけじゃなく私も悪いんだから許してあげてよ」 「ふんっ・・・で、何で結界?」 「多分ですけど・・・王様のものかと」 なるほど、ここに王がいるのか・・・ノックをしたが反応が無い。どうすれば入れるんだ・・・ とにかく用件を伝えてみよう。そうすれば会ってくれるかも知れない。 「バニアの王、僕はヴェータ・スペリオル!闇黒帝国の皇子、今回は闇黒の国のダークエルダー閣下の協力の下 あなたに会うために来ました。どうかお会いになってください。」 しばらくすると、結界が溶けるように消えていって先に進む事ができるようになった。 僕らが先に進むと、頂上の火口はマグマで煮えたぎったなべのようになっていた。 「バニアの王よ、どこですか!」 「いないのかな?」 「それは無いだろ、結界が消えたんだし」 ヤカリが言うように居ないと言うのは無い。だとすればどこにいるんだ?周りを見ていると 溶岩がブクブクと 蒸発 していた。こんな光景は見る事も出来ないだろう・・・ 「わぁ・・・すげぇ、絵に描きたいなこういうの」 「な、何かが・・・凄い火の力・・・」 「うわっ何だか熱くなってる!」 「くっ氷の結界魔法を張ってるのに何よこの熱さ!」 炎属性の使い手なら、背筋に来るものがあるんだろうか?凄まじい炎の力だ・・・ 溶岩から浮き出て来る岩石の肌を持ち、罅割れた身体のその人は罅割れの中からマグマを噴出している 「ほぅ・・・小僧、お前がダークエルダーの行っておった皇子とな・・・」 「はい、貴方がバニアの王・・・なのですか?」 唾を飲んで、息が詰まりそうだった。あまりにも寂れた威圧感の強い声と膨大な熱の力 これがバニアの王なのか、だが後ろに下がるわけには行かない 「如何にも、我が名は源の王。バニアの王なり」 「頼みがあります、ダークエルダー閣下に頼んであなたに会いに来たのは力を授けて欲しいからです」 「ほぅ・・・あの闇の娘がのぅ・・・断る。」 目を丸くした、あまりにもあっけなく断られてしまったが、こんな事で諦めるわけに行かない! 「何故ですか!」 「敬語はいい、力を分けるつもりも無い。我らは外界との交流が苦手での」 「お願いだ!僕の親友を助けたいんだ!」 必死に頼み込むが、話を聞いてくれそうに・・・その時、マグマの中から何かが飛び出した それは源の王の横に立つとよく分かったがロボットのような姿をしていた。 「キングよ、良いじゃないか別に」 「エンマオーか・・・余計な口出しは無用だ」 「あの皇子様の目、随分と怖い目だが良い炎を宿してる・・・いや、あっちが本質なのかも知れんぞ?」 エンマオーと名乗ったそのロボットは、僕の味方をしてくれるようだ。 今は流れに身を任せるしかない、口出しをして余計な事を招くわけに行かないしな 「確かにあの皇子の炎はいい炎だ、だがそれだけの価値はあるか?」 「あるね、俺はそう確信してる。」 「・・・お前がそこまで肩入れするなら、良いだろうダークエルダーも私を頼ったようだし、二人に頼まれてはな」 「それじゃあ!」 どうやら僕の頼みを聞いてくれるようだ、喜びに浸っていたが条件があると、源の王は手のひらを見せた 「皇子ヴェータよ、そなたの頼みを聞いても良いが・・・条件がある」 「条件・・・?」 「我と戦うのだよ」 一国の王に牙を向けるなんてと、穏便に済ませようとしたがエンマオーが僕の隣まで来て ズメウの肩を叩いた、それは応援するような気さくな動作だった。 「キング・・・いや、源の王は考えがあるんだよ、まぁ俺は観戦させてもらうぜ」 考え・・・エンマオーはそれだけ言うと、ウェンディたちの方へと歩いていって 隣に座っていた。どうやら本当に観戦するだけのようだ 「分かりました、受けて立ちます。」 「それでよい。これを受け取れ」 投げ渡されたのは、溶岩のように真っ赤な宝石だった。持っておけといわれてどこに仕舞うか迷ったが 無難にズメウの口の中に放り込んでおいた。戦いの場所はこの溶岩の真上だそうだ 「ふぅ・・・グゥウウウウウ・・・」 お互いに溶岩の真ん中に移動すると、源の王の身体の皹が悪化して割れて行く 流石にあのままとは思っていなかっいた・・・が、変化した姿を見て身震いした 「我が愛機ケル・ヴォ・ノースだ、これと戦う事がお前の力を得るための試練だ」 炎のケルベロス、そう表現するしかない・・・それはマグマのような装飾なんかじゃない 本当にマグマで出来たケルベロスだった。だがズメウも炎の力を持っている・・・ 「ヴェータ・スペリオル!邪竜騎ズメウ!いざ!」 負けれない、必ずNIを倒す力を得てヒースを奪い返すんだ! 「ヴェータ!」 あれから5分、ヴェータが防戦一方・・・ううん、ヴェータが攻めてるけど全部、通用してない・・・ 槍での連続攻撃も、巨大なはずのケル・ヴォ・ノースは軽々と避けてるし、ヴェータが劣勢 「ヴェータさんなんだか技にキレがないですね・・・」 「だな、何だか焦ってると違うけどさ、怖いって感じだ」 そう、ヴェータは壊す目をしている・・・力を求めてるけどそれは壊す力・・・ 「ひゅ〜・・・何だあの坊主、こんな美少女引き連れて・・・ハーレムって奴か?」 ・・・さっきのエンマオーってロボットが、暢気そうに観戦しててイラっとした 何よ、ヴェータが大変なときに暢気に口笛なんて吹かないでよ! 「貴方少し不謹慎よ!このソードマスターに乗ってるのはヴェータの恋人なのよ!」 「へぇ、あの皇子様がね・・・いい女だな、そんな心配そうに見てくれる恋人もって幸せだろうに」 「冗談もいい加減にしてください!ウェンディが悲しんでるのに!」 「君のはアンジェラか、いやまさかこんな所でレプリカ品に会うなんてね・・・っと、ごめんごめん」 流石に皆の視線が鋭くなって、態度を改めたけど・・・ヴェータは一向に優勢にならない 「くそっどうすりゃ良いんだよ!」 「どうしようもないよ・・・ヴェータの戦いだもん・・・」 「自立タイプ、しかも成長型か・・・随分と高等だね、どうだい今度一緒に」 「遠慮します!私そんな尻軽じゃないもんっ!」 ペルソルナに怒られて、エンマオーはやれやれとまた座って観戦・・・もう、こっちは放っておこう 「アリシア、コキューストダウンは・・・」 「恐らくもう直ぐ効力を失います・・・ヴェータさんのズメウならしばらくは持つでしょうけど・・・」 「うーん・・・それはアンジェラのレプリカ?中々いいじゃないか、色っぽい」 「・・・貴方ってロボットの癖に発情してるの?ヒースを見習いなさいよ・・・」 「情熱に燃えてるのさ」 ヴェータ・・・どうしよう、ヴェータがこのままじゃ負けちゃう・・・助けに入りたいけど バリアが張られてて入れないし、もうどうしよう・・・ 「・・・なぁ譲ちゃん、お前さんあの皇子様の恋人なんだろ?」 「ヴェータがこのままじゃ死んじゃうかも知れないのに!」 「だからこそだ、あの目に宿ってた炎は燃やし尽くす物には見えなかったんだよなぁ?」 このロボット、ヴェータの変化を察知してる・・・確かにヴェータは守る力じゃなくて 壊す力を今は求めてる、けどどうすれば元に戻るかなんて分からないよ・・・ 「応援すればいいんじゃねーか?」 「応援・・・」 「そうよ、私だって皆の応援があったからやれたんだし、ウェンディも!」 「ウェンディ、ヴェータさんを応援しましょう!」 ヴェータ・・・私にできる事はそれだけかな、待っててヴェータ! 「くそっフレアシュート!」 「甘い、我を失望させるなよ?」 ダメだ、攻撃が次々と弾かれて行く。同じ炎属性にしても闇属性が混じってる分で、簡単に破られないはずだ くそっ槍での物理攻撃は簡単に避けられてしまうし・・・ならば! 「炎獄剣!ヴァニッシングセイバー!!」 切り札の出番だ、槍を捨てて炎の宝剣を作り出してケル・ヴォ・ノースへと向けるが 相手は動じる事すらない。ならばこのまま切り結ぶ! 「行くぞ!」 「見込み違いだな・・・」 ヴァニッシングセイバーでの連続斬りは成功、何度もケル・ヴォ・ノースへと炎の宝剣が刃を剥き 切り裂いたが・・・切れ味を感じない、それどころか歯ごたえさえない 「お前のその炎ではダメだ。最早ここまでだ」 「っうぁあああああああ!!」 無造作に身体全体を押すような体当たり、それだけでズメウが吹き飛んだ。そんな・・・ パワーで負けた事もある、だが、これだけの力を持ちながら今まで反撃されなかった事もショックだった 「ふんっ!!」 「っぐぅううう!!」 「持ちこたえたか、だが詰まらんぞ」 今度は無造作に腕が振るわれる、ヴァニッシングセイバーで防ぐものの、そのまま一回転して 尻尾でズメウを横から薙ぎ払い距離を作った。ダメだパワーだけじゃないスピードでも負けてる! 「はぁっ!」 迫撃をかけて、今度は三つの口から炎の玉を連続してガトリングガンのように発射してきた これを伏せぐ術などなく、ズメウは吹き飛ばされて結界へと叩きつけられる形で吹き飛んだ 「うあぁああああ!!」 そしてその衝撃は凄まじく、僕を背中から貫くような衝撃を与え、更に前からの火炎弾で挟み討つ 意識が飛びそうになったが何とか気力を持たせる事ができ、気絶だけは免れた。 「・・・・」 「ふぅ・・・のう、お主は何故戦う?」 「それは力が欲しいから・・・」 「その力を求める理由は何だ?」 力・・・僕はヒースを助けるために、NIを滅ぼすだけの力が欲しかったんだ・・・それなのに・・・ 「守る為に滅ぼすのか?友を救うのは壊す力か?」 「何・・・どういうことだ・・・」 「力を求める意味すら分からぬか・・・もういい、滅びよ。」 この有様か、メディナすまない君をあの時、攻めれる立場じゃなかったんだな。僕は弱い・・・ ヒース、君を助けれそうに無い・・・ウェンディ・・・僕はもう・・・ 「ヴェータ!」 「ウェンディ・・・?」 ウェンディ・・・結界の外でソードマスターがズメウを見ている、情けない最後を見せる事になるな・・・ 「ヴェータ聞いて!滅ぼす力じゃ守る事は出来ないの!」 「ウェンディ・・・?」 「ヴェータが本来欲しかったのは何?滅ぼすだけ力なの?」 「僕が本来欲しかった力・・・」 僕が欲しかったのは何だったんだろう・・・もう思い出せない気がしてきた。ヒースを取り返したかった NIから取り返して守りたかったんだ。その為に・・・あれ・・・僕、何で壊す事だけを考えてたんだ? 「そうか・・・滅ぼす力は目的ではなく、手段なんだ・・・目的は守る事・・・守る力が欲しかった・・・」 「ヴェータ、やっと思い出したんだね・・・」 まだだ・・・ウェンディが思い出させてくれたんだ、まだ負けるわけには行かない・・・ ズメウの身体に力を込めて、もう一度攻撃のチャンスを狙った。 「さらばだ、バーンバーニング!」 口からマグマの光線が発射された、チャンスは今か・・・三つの顔が真正面を向いている 恐らく下に潜り込めば、追いつく事はないはずだ行ける! 「まだだ!」 「ぬぅっ!?」 予想的中、真下に着くころにはビームを止めようと必死になっていた、ヴァニッシングセイバーで切りかかった だが源の王のケル・ヴォ・ノースも半端な機体じゃない、鞭のように尻尾を振るいズメウに一撃を与えた 「っ!」 「あぁっヴェータさんのズメウが!」 「魔法が切れたのよ!」 当った肩が熱がこもり赤熱下していた、だがまだ行ける!ヴァニッシングセイバーで腕を狙うと 多少は通用したらしい、少しひるんでいる。まだだ・・・まだ行ける! 「うあぁあああ!」 「いい動きになったな、どうやら恋人に求めていた力を思い出さされたようだな!」 魔法が切れて近づくだけで熱い、だが不思議だ・・・ひるむ気がない、まだ前に進める気分だ ヴァニッシングセイバーを何度も斬りつけていると、ケル・ヴォ・ノースにも変化が見られた 腕にひび割れが出来ている、ダメージが少なからず発生しているんだ 「行ける・・・うあぁあああっ!!」 「ヴェータ!どうしようズメウが燃えてる!」 その時にヴェータのズメウは、身体のパーツがだんだんと燃え上がっていた、このままでは全身が燃え上がるのも 時間の問題であろう、ウェンディはその事を危惧して結界の中へと入ろうと必死だった 「ヴェータさんが燃えちゃう!メディナちゃんこの結界を壊しましょう!」 「えぇ!ヤカリ達も手伝って!」 「おう!やるぞルナ!」 「OK!いっせーの だがそれを止める声があり、全員の攻撃が発動する前にそっちを見てみると、止めたのはエンマオーだった 「これでいい、見てるんだ・・・恋人ならアイツを信じてやってくれ」 「・・・分かったわ、ヴェータが勝つって信じてみる・・・」 懐かしむようなエンマオーの声に、ウェンディは静かに、ただ静かにズメウとヴェータの戦いを見るのだった 「うあぁああっ!」 不思議だ、熱さを感じるが苦痛ではない・・・いや、心地いい暖かさを感じる・・・ パーツが燃えているのに、ズメウはまだ戦える・・・いや、力が増している 「ふははは!皇子よ、どうやらエンマオー達の見込みは間違ってないな!」 「あぁ、僕はヒースたちを守る力を手に入れる!」 残っていた胴体も燃え始めた、ズメウの竜の顔が悲鳴を上げる・・・が、それは悲鳴なんかじゃない それは咆哮・・・力強い叫びだ、決して後ろ向きじゃない前向きな叫び声だった 「ズメウ・・・うぉおおおおおお!!」 「これは驚いた・・・」 完全にズメウが火達磨になったが、それは直ぐに燃え尽きてズメウの中へと吸い込まれて行く・・・ 「ズメウ!これが僕の求めた力なのか!」 「ほぅ・・・手に入れたか」 ズメウの姿が生まれ変わった、黒一色のカラーリングは赤でアクセントがつけられ、その姿は邪悪な竜ではなく 騎士の甲冑を纏ったような竜となり、肩も2頭の騎士竜の顔となり、頭部の顔も違うものへと変化し この時、自分の体の変化には気づかなかったが。来ていた軍服は黒炎のような装飾をされた服へと変化していた。 「今のズメウは邪竜なんかじゃない・・・今のズメウは超龍騎ズメウだ!!」 二つの真っ赤な目は、真紅のように赤いが燃える炎も確かに宿していた。今のこの力なら行ける ヴァニッシングセイバーで斬りかかると、ケル・ヴォ・ノースが吹き飛んだ。 「うぉおおっ!?」 「凄い・・・っ!」 今なら行ける気がする、ヴァニッシングセイバーを構えて、必殺技の体勢へと移った 果たしてどこまでいけるか、それは僕の力次第といったところか! 「超龍一閃 ヴォルカニックインパクト!!」 炎の一撃は、溶岩を焼き広げながらケル・ヴォ・ノースへと向かって行く、ケル・ヴォ・ノースもそれを受止めようとしたが 結界へと押し付けられて、炎の衝撃波と共に大爆発を起こした。 「やった・・・のか?」 「ふっ・・・ふふふ、皇子よ合格だ。まさかこれほどとは思わんかったぞ」 やったのか・・・結界がとかれると、安心したのかズメウを噴火口近くへと運ぶと、僕はそのまま気絶してしまったようだ・・・ だが最後に覚えてるのは、ウェンディが心配そうに駆け寄って、倒れた瞬間に悲鳴を上げてアリシアにしがみ付いてる所だった 「のぉ、エンマオーよ・・・なぜあの小僧を信じた?」 「んっ?そーだな、可愛い子連れてたから、じゃダメか?」 あの一戦の後に、エンマオーと源の王は溶岩の中にある、源の王の王宮でくつろいでいた。 客間のソファで、ゆったりとしてるエンマオーは源の王にやれやれと言われていたが。 「似てたんだよな、すげー昔に俺に乗った人間と」 「それだけか?」 「それだけ、迷いもあったけど正しい力を持ってた。そんな奴だから力を発揮できると思ったのさ」 エンマオーは意味ありげに、外のマグマを見るとフッと笑っていた、それはどこか悲しいような そんな感じであった、それを見た源の王はエンマオーにしては珍しいと首をかしげた 「お前と会って数百年だが、珍しいの?」 「俺もセンチメンタルな時はある、いい男には影もあるってな・・・」 「ふっ言ってろ」 「ちぇっそれにしても、俺が一人だけで動くようになる前が懐かしいな・・・」 エンマオーが懐かしむようにしている、エンマオーの過去はまた別の話になるだろう。 ただいまは源の王もエンマオーも満足しているようだった。 「んっ・・・うぅ・・・」 ここはどこだ?僕は確か・・・目が覚めると、皆がいて・・・あれっここはどこだ!? 地面の冷たさに慌てる僕に、アリシアが的確な回答をしてくれた。 「キルコプターの中です。」 「源の王とエンマオーは・・・」 「帰ったんだよ、二人ともヴェータによろしくって」 ペルソルナが元のサイズ、夢ではないよな・・・触ってみるとひんやりとしていた。 夢ではないな、どうやらあの後に完全に気絶してしまったらしい・・・ 「あの時はビックリしたわ・・・けど、確かにパワーアップは見届けたわ」 「ヴェータお疲れさん、水飲むか?」 ヤカリの問いかけに首を縦に振ると、ウェンディが頬に冷たいコップを当てた さっきので疲れた僕には、程よい冷たさでため息が出てきた。 「ヴェータ、心配したんだから・・・けど良かった・・・」 「ごめんよ、ありがとうウェンディ君のおかげでパワーアップできたんだ。」 抱きしめたいが、水がこぼれてしまうしそれは諦めた。コップの中身を飲みながら ウェンディがズメウに関する説明を開始した。 「ズメウはね、最初に貰った玉でパワーアップするんだって」 「あれでか?」 「炎属性を強化するんだって、それで力が欲しいって思ったときにあの姿になれるの」 なるほど、ズメウの口の中に入れたが、今頃はズメウと一体化しているらしい。 何だか安心したな・・・・だがおちおちしていられない。 「行こう、次はエベリウスだな・・・」 「待てよ、今は少し休んでおけ」 「ヴェータさんは疲れてるんです、休まなきゃ次に進めませんよ、お茶淹れて来ますね〜」 「おい・・・」 「ヴェータ、皆の意見に甘えようよっ!」 「そうよ、ねっ・・・?」 ウェンディに抱きつかれてビックリすると、メディナが悪戯に笑って魔法をしかけたのか、ウェンディと僕の小指に 赤い糸がつながっていた、ヒースを救わなきゃいけない時だって言うのに・・・だが息抜きは確かに必要か・・・ 「だらけすぎない程度に休むか・・・」 「ふふっそれじゃあ新婚さんは休んでなさい、ヤカリ行くわよ」 「あっメディナに先越された!」 「あっ待ってよ〜!」 むぅ・・・恥ずかしい所を・・・だが、イヤじゃないな・・・直ぐに終わる状況なんだろうが ヒースを助けた後にはまたこうしていられるだろう・・・きっとな。ヒース待っていろよ・・・ 「次は私の番か・・・頑張るね」 「あぁ、頑張ろうウェンディ」 こうしてアリシアがお茶を持ってくるまで、僕らは小指の赤い糸を放さないでいた、ズメウの熱さも慣れたが やはり僕にはウェンディの暖かさの方が合っていると思いつつ・・・ 続く