「外・・・二人とも、外が良いんだ・・・」 「あぁ、だから戻ってこないんだ、納得してくれたか?」 外の事は本当に知らないらしい、食べ物だって甘い物なんて滅多にもらえないそうで、アイスの事を知らないと言われ ケーキは名前しか知らないと言われた時は流石に焦った。強化人間は完全にバランス重視なのか 「二人とも外の方が幸せ・・・」 「あぁ、きっとここより幸せだな」 エキドナもやっと納得したらしい、そっだが遠くを向いて少し寂しそうだった、ここの暮らししか知らないし 去っていった仲間が外の世界を選んだなんて言うのは残酷すぎたかな・・・ 「すまん・・・」 「・・・」 黙り込んでしまった、エキドナも好きでこんな所にはいないだろう。だからナナミやリーゼロッテが 自分をおいて外に行ってしまったのが悲しいから、だから俺が嫌いだったんだろうな 外の方がここよりも良いのは確かだが、外に出れないエキドナにとっては悲しいだけか 「・・・」 「・・・外の事」 目が、強請る様な興味があるような、エキドナにしては珍しい目を見せた・・・そうか 外に興味を持ったのか。いい事ばかりではないが外の方が、ここよりはずっと楽しいだろう だからなんだろうな、仲間が外にいて自分が出られないとしても聞きたがってるのは・・・ 「そうだな、それじゃあディオールから・・・」 「エキドナ、何やってるのさ」 話そうとした時、やってきたのはもう一人のだった、あの犬のような水着の上に白衣を着た強化人間 不機嫌そうに俺を見ると、エキドナの肩を掴んだ。 「いい、僕達、強化人間は戦うために作られた、外で生きて行くなんて無理に決まってる」 「リーゼロッテは外で元気にやってる、ナナミもな」 「嘘付け!リーゼはともかくナナミが外でやっていけるわけない!」 まぁ、ナナミの事は一応は知っているが随分とあれだったしな、信じられないのも無理はないだろう。 「だが事実だ、リーゼロッテが頑張って普通に会話が出来るようになるくらいにな」 「そんな分けない、エキドナ騙されちゃダメ、天才の私が言うんだから間違いない!」 天才な、他の強化人間と比べると随分と感情が豊かだし特別扱いでもされているのだろうか? 「天才?」 「ふん、僕は天才なんだよ」 「綺羅は試験管ベイビー・・・」 あぁ、なるほどそういう事なのか。露骨にいやな顔をした綺羅がエキドナを睨んでいた 「天才か、狭い世界で知らない事を否定するか」 「うるさい!」 「少なくとも、ナナミは強化人間の時から良くなってる」 俺がそれだけ言うと、綺羅は不機嫌そうに出て行ってしまった、まぁしょうがないか エキドナにさっきの続きを話すとしよう・・・ 「エベリウスかー、マジであるんだなぁ」 「あぁ、エベリウスに行くのは僕も始めてだ」 ついに私の番かぁ・・・ちょっと心配だな、だって相手が神様だって、エベリウスは世界一高い山にある 鳥人たちの王国って話だけど、本当にあるのかは正直な事をいえば分からなかった 「エベリウスは本でしか読んだ事がないから分かりませんね」 「何か独特の文化が進んでるみたいね、高い山で孤立してるからって習ったわ」 「空気も凄く薄いって言うしね、気をつけてね皆?」 他に有名なのは魔力が篭っている鉱石、マナマウンテンドが有名・・・らしい、本当に文字通り雲の上 そんな所でしかも外交が殆どない(どこの国も行くコストとあっちの対応が分からないから怖い) そんな所なんだもん、私達が行くのは皆が皆、初めての場所になるんだよね・・・ 「何事もないと良いんだけどなぁ」 「不吉な事、言わないでよヤカリ・・・無事に済まなかったらどうするのよ」 何があるんだか分からないしね、けど暗黒の国の国主のダークエルダーちゃんがアポ取ったし レヴィアさんも安心しろって言ってたし・・・大丈夫だよねきっと 「まぁウェンディは大丈夫さ、ウェンディは強い僕が保障する」 「ありがとうヴェータ、私も迷ったりはしないだろうし大丈夫!」 うん、私は焦ったりしてないしヴェータや皆がいて凄く安心してる、ヒースを速く取り返したい気持ちはあるけど 焦ってもしょうがないしね、焦るより落ち着いて確実にやっていく方が速いのは、何でも同じ事 「もう下が見えないわね・・・」 「それだけ上に来たって事でしょうね」 「キルコプターの外はもう息苦しいだろうな」 ヴェータがそう言うと、外に出るときにどうするかで少し考える事に、考えてみると私達は良いかも知れないけど 空気が薄い場所での行動なんて、慣れてなさそうなアリシアとメディナは危ないわよね 「となると魔法ですね・・・」 「何かいいのあった?」 魔法も万能ではない、この前の結界みたいに状況に合えば良いけど、今回はそうは行かないかな・・・ ちょっと困ったけど私はいいことを思いついた。サイクロンエッジでなら簡単に風を操ればいいんだ 「なるほど、風は空気の流れですからね、風を操れば空気の層も作れるわけですね」 「そういうこと、着いたらやろっか」 「ウェンディって学があるのな、と言うより生身でも風操れるのな」 「えぇ、こう見えても風属性の剣士だからね」 こうして空気の問題は解決、キルコプターも大分上昇してきて外はもう空気が薄いんだろうなぁ 「住んでる人達、どんな感じなんだろ?」 「翼は生えてるみたいよ?後は詳しく知らないけど普通の人と同じじゃない?」 「だと思いますよ、けど肺活量が凄いから地上に来れば息切れしないって話です」 そう、忘れてたけどここの人たちって凄い肺活量を持ってて、天然のスポーツ選手みたいなものなんだ ここがスポコン漫画なら、エベリウスにスカウトに行く監督がいても可笑しくないんだよね 「そうか、かけれるのはどれぐらいの範囲なんだ?」 「うん、アリシアとウェンディ見たいに上手くは行かないから、皆集まってね」 まぁまだ降りないから良いんだけど、段々と辺りが整備された「道」になってくる、それだけじゃない 明らかに不自然にでっぱった岩も多い、上の部分がまるで休めるみたいに平べったい 「そろそろエベリウスに着くのかな?」 「かもしれねーな、エベリウス人は翼があるんだろ?あの岩の出っ張りがあるだろ?」 「移動手段が飛行なら、休む為に岩を加工して不自然な出っ張りが出来るわけか?」 「だと思うんだよ、私がエベリウスに住んでたらそーする」 「ヤカリってこういう感は鋭いんだよね」 ペルソルナの言う様に、勘が鋭い・・・けど、これは誰も予想してなかったみたい。 家のような物が遠くに霞んで沢山みえてきた。その時にだった 「っ何です!?」 「何か凄いゆれてるよっ!?」 キルコプターの周りに何かがいる、ううん何かがいた、直ぐに通り抜けて気づかなかったけど・・・ しばらくすると、嬉しい事にまた増えてきた。今度は・・・ 「ゴーレム!?」 「なんでこんな所にいるのよ!ここって魔法に特化してた!?」 アリシアとメディナが驚いてる、ゴーレムって確か魔法大国とかにいる岩で出来たロボットの事よね? 目の前にいるのは岩石を重ねたようなロボット、まさにゴーレムって所ね 「警告する、お前達の所属と目的を言え!」 「これは・・・エベリウスの機体か。」 後ろにも気配を感じて、窓から見てみると猛禽類のようなロボットが3機、こっちに武器を向けてる 「僕達は闇黒連合から来た、そちらに話は行っていると思うのだが」 「闇黒連合?と言うと!失礼をさぁこちらです!」 よかった、ゴタゴタになる前に分かってもらえて私達は、石造りの家が並ぶ町並みを下にして 先にあるこれまた、岩で出来た王宮まで飛んでいくと、駐機場の上にキルコプターが止まった 「さて、それじゃあ皆集まって」 さて、サイクロンエッジを引き抜いてくるりと回転させると、空気の層が出来て私達を包んで 外に出ても大分、危なくなくなったわ後は降りるだけね 「行きましょうか」 「一度エベリウスの王に会う事になるから身だしなみは整えてくれ」 「どんな人なんでしょうね?」 いい人だと良いんだけど、キルコプターから皆で降りると、出迎えたのは・・・本当に翼がある 翼以外は変わらないけど本当に翼がある人達でいっぱいだった 「ヴェータ・スペリオル皇子にアリシア・エヴァック・ディオール第一王女ですね?」 「そうだ、今回はエベリウス王に用があり参った」 「私の名前も・・・まぁ王女だからでしょうか?」 「多分そうね、流石は王女様ね」 案内されて王宮に入ると、目に付くのは鳥の体の一部。と言っても殆どが嘴や翼を模した岩細工が目立った 岩にしては綺麗過ぎて、ただの岩じゃないって言うのは教養のない私でも分かるくらい綺麗・・・ 「わが国の文化は非常に珍しいでしょうか?」 「岩細工は中々見ませんね、けれど地上でも通用するほどに綺麗です」 「地上では大理石を使ったりするな、これは何を使ってるんだ?」 「純度の高いマナマウンテンドを使っております。」 マナマウンテンドって純度が高いとこんなに綺麗なんだ、ならこの王宮もマナマウンテンドなのかな? 「木製の物とかもあるけど、こんな高い山に森なんてあるの?」 「そーいやそうだよな、育ててる所でもあんの?」 「下の方にある森の木ですよ輸送費の問題もあるし、強度的にも材料的にも建築物は岩の方が使われてるんです」 文化は本当に独自の発展をしてるんだ、途中で見たメイドさんのメイド服なんて私達が着れば背中がほぼ丸見え 翼を出すために、服は背中に穴が開いてたりして一部は不恰好に見えた。全身鎧が無いのは飛ぶ為なんだろうね 「後は岩のほかにも、金属も使われてますね。鉱山が多いので」 「鉱山が多いか、資源が豊富とは聞いているし納得はいくな」 ドワッヘン辺りが泣いて喜びそうね、鉄はドワッヘンでも豊富だけどこんなに特徴的なマナマウンテンドは エベリウスにしかないし、エベリウスが地上に進出したらまず手を結びたがるのは地底の国かもね 「王の部屋に着きました、こちらとそちらでの違いがあるかも知れませぬが、ご了承を・・・」 「こちらから来たんだ、すでに了承はしている。」 「それでは、ハイス王!闇黒連合よりの客人をお招きいたしました!」 扉が開くと・・・中は意外と質素、下は絨毯で彩られて国旗とか壁掛けもあるし、地上と似てるんだけど 塗装とかはされてなくて布とかを取れば鋼色の部屋に変貌しそう。 「お待ちしておりました、私の名はハイス・エベリウス。エベリウスの王だ」 そして翼を広げたようなイスには、緑色の髪で美術館に飾ってあってもおかしくない、細部まで作りこまれた 装飾の美しい羽の形の耳当てをした初老の男性が一人、この人が王様のようね 「暗黒帝国皇子、ヴェータ・スペリオル、お初にお目にかかります。こちらはディオールの第1王女のエヴァック=アリシア=ディオール それに友のメディナ、ペルソルナ、ヤカリ・ミヒト。ウェンディです」 「話は聞いている、まずはそちらの用件からだ」 「はっ今回はエベリウス王にお力添えを願いたく。」 二人の会話は長くならず、練習してたみたいに話が進んで行く、エベリウスの王様って反応が随分早くて 5分もしないうちに、私達はエベリウスの王様に連れられて目的の風の神様に会うことになった 「闇の化身、ダークエルダーの頼みならばウィンヴィントも耳を貸してくれるだろう」 「ウィンヴィント?風の神の名でしょうか?」 「そうなる、ディオールには伝わってないようだな」 ウィンヴィント、その風の神には翼はあるけど実体はなくて、怒りに触れれば世界は竜巻で荒れ狂い 寒風で大災害が起きるって、気をつけて接しなきゃ・・・ 「大丈夫だウェンディとやら、いい瞳をしている。ウィンヴィントは寛大だから間違いでは怒らぬさ」 「は、はぁ・・・」 立ち上がった後の王座を見て少し驚いた、背もたれに穴が・・・鳥人には羽を休めるための必要なんだね 王様の翼は8枚もあるけど、どれもこれも綺麗・・・そのうえ宝石の飾りが沢山ちりばめられてる 「見た所、風属性の魔剣を操るようだな・・・うむ。よい風の使い手だ空気の層を作るとは」 「お、お褒めに預かり光栄です」 「地上にもこれほどの風の使い手がいるとはな、ウィンヴィントも君になら喜んで力を貸すだろう」 王様の後を着いて行くと、王座の後ろ・・・地震!?揺れが始まって壁に皹が・・・ 「エベリウス王!そこは危険です!下がってください!」 「皹が!危ないっ!」 「ははは、驚かせてしまったかな?」 ヴェータとウェンディの悲鳴をよそに、エベリウスの王様は壁の近くに立ったままでいると 壁が・・・皹じゃなかったんだ、壁が開いて隠し通路が出てきた。 「ウィンヴィントを祀る神殿への隠し通路だ、さぁ後に続いて」 驚いて損したと、皆が肩から力を抜くと王様の後に続いて、暗い通路をしばらく歩いて・・・ 歩き終えるとかすかな明かりが灯った、薄暗い場所に出てきた 「ウィンヴィント、いたら返事をしてくれぬか?」 「・・・ハイスか?客人を連れてきたようだな」 奥から・・・凄く威圧感がする・・・透明で掴みどころがない綺麗な声は、王様に久しぶりと言いたげで 軽く広い足音・・・出てきたのは光の翼を持ったロボット、この人がウィンヴィント? 「紹介する、彼らは遠くから来てくれた私の客人だ」 「ほぅ、随分と力を持っているようで・・・ダークエルダーが話してた奴らか?」 王様のほうをチラリと見ると、まずはヴェータが前に出た。 「お初にお目にかかります風神ウィンヴィント。私はヴェータ・スペリオル暗黒帝国の皇子です」 「同じくお初にお目にかかります、ディオールの第一王女エヴァック=アリシア=ディオールです」 「そ、その付き添いのヤカリ・ミヒトであります此方は相棒のペルソルナです」 「はじめまして、紹介にあったようにペルソルナといいます」 「私はディオール王家の分家の娘、メディナと申しますお見知りおきを」 私の番が来た、用件を言う分で私が一番緊張してると思うけど頑張らないと、私も前に出てひざを突くと 私が持てる限りの礼儀を尽くした言葉で、深く頭を下げた。 「私はウェンディ。旅の剣士でございます・・・今回ウィンヴィント様に用があり参上いたしました」 「ふむ、剣士か・・・魔剣サイクロンエッジ、いい剣を持っているのだな」 「お褒めいただき、光栄にございます」 「で、用件とは?」 「貴方の力をお借りしたくここに、どうかウィンヴィント様のお力添えを・・・」 しばらく沈黙が流れて、息が止まりそうだった。風の神様だから力を使えば実際に止めれるだろうし 心臓もバクバクして怖くなってきた。力を貸してくれなかったら何とか粘るしか・・・ 「ダクエルの言ってた若いのも、随分といい度胸と目をしている・・・奴の頼みもあるが、気に入った力を与えよう」 「本当ですか!?ありがとうございます!」 「後、敬語はよせ堅苦しいからな。普通に喋ってくれてかまわん。得にそこのヤカリかと言うのは普通の方が綺麗な声がしそうだ。」 「へっ私!?」 飄々とした感じに言うと、私は一度落ち着いて普段の喋り方にシフトした。それでも敬語交じりで変だけど 「と言っても、ある程度の試練が待っているから頑張らないといけないぞ?」 「承知の上です!私頑張る!」 「よしよし、完全に敬語になってないあたり切り替えは早いほうなんだな」 ウィンヴィントがクルリと人差し指で輪を何度か描いてると、それは段々と風をわたあめのように集めて 風の繭を作り出した、何なんだろうこれ?風を吹いてきて髪を遊んでる、この繭に首をかしげた 「まぁ試練とはこれの事だ、中に入れば試練が始まる。」 「分かりました、それじゃあ早速!」 「まぁ、仲間達と挨拶は済ましておいたほうがいい、出れるのがいつになるか分からないだろう」 いつ出れるか分からない・・・少しだけ不安になるけど、必ず直ぐにクリアしてやるわ! 「皆、行ってくるね」 「・・・気をつけるんだぞ?ウェンディ必ず戻ってきてくれ」 「お気をつけて・・・」 「怪我するなよ?これの後にはヒース救出があるんだし・・・な?」 「こっちから声が届くか微妙だから、最後に・・・がんばって!」 「貴女なら信用できるわ。早く帰ってきなさいね?」 さて、皆との挨拶も済ませたし・・・いざ決戦の地へ、なんてね。必ずクリアして戻ってくるんだから サイクロンエッジを引き抜いて、空に円を描くと風が吹いて一箇所に集まる。 「我が盟約の下、剣の主よ我と共に!ソードマスター!」 風を引きして、ソードマスターが現れる。飛び乗って皆に手を振ると、私は繭の中へと進んでいった 「試練は入れば説明する。期待してるぞ」 「はい、行って来ます」 ここは・・・・なんて事はない、普通の平野だった。何なのかしら・・・あたりを見回すと 「えっヴェータ!」 ヴェータのズメウが倒れてる、そしてそれを狙う黒いロボット・・・これは一体どういう事なの!? 「試練は簡単だ、黒いのはお前の仇だと思え、今お前はそれと戦っている。」 「仇と!?」 「試練の内容は問題だ、答えは風となり風を求めれば分かる」 この状況だと黒い機体を倒すのを優先すれば、ズメウがやられてしまう。 ズメウの間にわって入れば逃げられるかも知れないけど、ここは二択しかない・・・もちろん ヴェータのほうが大事よ!ソードマスターを走らせて、黒い機体の間に割りは入ると 「ハズレだ」 周りが真っ暗になって、さっきと同じ状況になった、ハズレ?それじゃあヴェータを見捨てるのが正しいって言うの? 「くっ・・・だったら!」 だったら相手の攻撃より早く相手を切り裂く!ただそれだけよ! 「ウェンディ・・・」 ウェンディが出てこない、どれぐらいしたら出てくるのだろうか、1時間?1日? 「試練が終わるまでに時間がかかりそうだ、まぁゆっくりしてくるがいい」 「今回の件ではこちらも条件を出した、皆さんこちらへ」 「でも・・・」 残ってウェンディの側にいたい、そんな気持ちがあって足取りが進まなかった。 この風の繭の中でウェンディは一人で頑張っているんだ、応援してやりたい 「ヴェータさん、ウェンディならきっと大丈夫・・・今は私達のする事をしましょう」 「アリシア・・・」 「ね?行きましょう」 今回はウェンディの試練、ウェンディだけの戦い・・・祈るしかないか。 「安心しろ皇子、お前の恋人は答えを見つけれるさ」 「・・・信じます。」 ウェンディ、頑張ってくれ・・・ハイス王の案内で、僕らは客間へと連れて行かれて ここからは姉さま達がウィンヴィントに合わせてくれる為の契約があった 「外の事・・・ですか?」 「国外の事を知りたい、ここでは外からの情報なんて入らないのでね」 なるほど、まずは僕らから国外の事を聞いておきたいわけだ。契約にはエベリウスの地上進出の援助もある エベリウスは鎖国状態にならざるを得なかったから、地上進出前に色々と知りたいようだ 「ディオールの事や暗黒帝国の事、そちらの旅人の方々のお話も聞かせていただきたい。」 「それではディオールからお話しましょう、まずは土地柄から・・・」 アリシアの話が終わるのは大分先になりそうだ、暗黒帝国もかなり大きいし歴史がある・・・ それだけじゃなくヤカリなんて、旅をしていて色々な国を知っている ハイス王には御伽のように聞こえるのだろう、次々と地上の話を聞いている。 「なるほど、地上では戦争が終わったのか」 「しかしテロリストの動きが活発になりました。」 「なるほど、それは覚えておかないと危険だな」 アリシアが簡単にディオールで知っておくべきことを話し、次は地上の今の状況を伝えていた まずは戦争が終わったのは言うまでもない、だがラグナロクのようなテロリストの台頭もだ 「物騒な事になっているのだな、覚えておこう」 「それでは僕が闇黒連合の事を」 今度は僕の番だな、少しウェンディの事が気になるが今は僕のすることをしよう。 まずは暗黒連合の成り立ち、三つの国の事と結成までの経緯か。 「少し手短になりますが、闇黒連合は・・・」 「はぁ・・はぁ・・・」 これで57回目、どっちを選べば良いの?何度やっても違う、ヴェータを助けに入っても 仇を倒すのを選んでも、どっちを選んでもダメだった、手塩を変えて何度か試したけど どれもこれも失敗、失敗の連続・・・今は技を使って助けに入ってるんだけど・・・ 「剣主剣術奥義!クラウディオンハリケーン!」 これなら!ヴェータに黒い機体の刃が届く前にやれる! 「ハズレだ」 「そんなっ!?」 クラウディオンハリケーンでもダメなの!この状況だと策略も戦略もあったものじゃない この状況はどうすればヴェータを助けれるか、それか黒い機体を倒せるかの二択なのに! 「なら今度は・・・」 次はディザスタードハリケーンソード、あれを使えばあるいは・・・突風が相手を包んで そのまま突き進むあの技、あれなら風に包まれて動けなくなるはずよ! 「剣主剣術奥義!ディザスタードハリケーンソード!!」 「ハズレ」 ま、またなの!?それじゃあどうすれば良いの!?必殺技は使える分だけ使って もうフラフラで・・・力が出ないよぉ・・・ 「・・・随分と時間がかかるな、もう少しなのだがな・・・」 「もう少し・・・?」 ウィンヴィントの声がして、フラフラの私に話しかけてくるけど、内容がいまいち分からない・・・ 「風のように澄んだ瞳と心・・・ここまでは完璧だが、一つ足りん」 「一つ・・・?」 「風を求める、これが分かれば大丈夫だ」 風のように・・・?どうすれば・・・風のように望む?澄んだ心で望むの?それとも突風のような力強さで? けど二つとも、もう在るって・・・それじゃあ風のように望むってどういう事なの? 「謙虚だな、まだ自分で何とかしようとしてる」 「謙虚・・・?」 風と謙虚さにつながり何て・・・謙虚でダメからつながる、だとすれば強欲・・・なら! 「ヴェータ!動いて!」 「ハズレだ」 やっぱり、他人に頼ってみるって言うのは違う、風で強欲?どんな状況なんだろう・・・ 深く考えれば考えるほど深みにはまって行く、どうしよう分かんない! 「強欲で風で・・・そうだ、最初の言葉を思い出せば・・・」 もう一度、整理してみれば良いかもしれない、まずは「風となり風を求める」これの意味を考えよう 風となり、これはヒントであったけど風のようにすんだ心、ここまではあるなら 「次は望む事?風を望む・・・」 「どうした、いい加減に正解を出さねば終わらせてしまうぞ」 「もう少し!もう少しだけ!」 ヒントは出てる、風のように・・・強欲・・・他に謙虚の反対の言葉、貪欲・・・そうだわ 風を「求める」今の状況は風の力を「求めてる」状況は同じ、それを今は考えていないだけ・・・ 答えが出ればこの試練は終わりのはず、なら答えを出せば! 「はぁあああ!」 欲しい、嵐のように全てを飲み込む力が!ヴェータを助けて敵を倒す力が! どっちも叶えたい。そう願いながら走っていくと、風が身体を包み込んでいく ヴェータと黒い機体の間に割り入るまでの間に、風が吹き荒れてソードマスターを包み込んでいる 段々とそれは激しさを増して、私が今いる風の繭のようになり、それを突き抜けると 「ふっ、風の様に全てを飲み込む力を欲したか」 「変わった!?」 ソードマスターが変わった、全体に風のような装飾が施され、飾り気のなかったソードマスターは 王族の機体の様な煌びやかさを増して、大分大きく見えた。身体全体への装飾の追加されたのに動きが軽い。 私の格好も、レオタードアーマーはドレスアーマーと足して割った様な、風みたいな縁取りが綺麗なドレスになってた 「これが答えなの?だったら!」 頭のヒートホーンで相手に突っ込んで行くと、感づいたのか黒い機体がバックステップで逃げる ヴェータを背にしてこれ以上、ヴェータの近づけないようにしてサイクロンエッジを引き抜いた 「サイクロンエッジが・・・?」 サイクロンエッジも形を変えていた。形的にシンプルだったけど翼の形の鍔が着飾らせてる 刀身に施された綺麗な風の装飾も今は竜巻と翼の装飾へと変わっていた。 「ふぅ・・・てぇい!」 パワーもテクニックタイプのソードマスターなのに、ついでと言わんばかりに機体のパワーは倍以上 サイクロンエッジで切りかかると、相手の機体を斬り飛ばして間合いを保った 「次は・・・」 相手より先に奇襲をかければ、パワー差で有利になりえる。だとしたらスピードとリーチがもっと欲しい サイクロンエッジも両腕の刃もあるし、最悪でも膝で切り倒せる。だけど体を介さず使える武器が・・・ 「ペガサスエッジ!」 刃の翼を出して、滑空しながら接近する。これなら横幅のリーチも増える。一気に突っ込んで行くと 敵はジャンプで逃げていく。なら一気に上昇を仕掛けて・・・そうだ、今は風の力を受けているんだ! 「風よ、我に仇なす者を拒絶せよ!」 黒い機体が空中で突風に煽られると、バランスを崩して落下してくる、ちょうど良くペガサスエッジで翼が生えて この刃の翼を向けると、黒い機体の装甲を切り裂いて翼で投げ飛ばした。 「これがパワーアップしたソードマスター・・・!」 全ての能力が上がってる、剣の腕は私しだいだけど、それ以外は殆どの面で力が上がっている これなら行ける!特に風の加護でスピードは倍どころじゃない 「神風・・・ね、今のソードマスターは神風剣主ソードマスターって所だね」 昔どこかの国で聞いた、国の危機に吹き荒れた奇跡の突風の事。まさに今のソードマスターはそれね サイクロンエッジを構えなおして、フラフラの敵に止めを刺す必殺技を放つ準備をした 「剣主剣術!サイクロンクラッシュ!」 無くなったのは使いにくい太ももの刃、それ以外は膝と腕は変わりなく存在してる これだけあれば十分よ。風を吹かせて敵を囲ませ、それは段々と風の折を作り動きを封じる 最後の仕上げはソードマスターが滑空して、敵に突っ込んで行く事にあるの。 「はぁああああ!!」 一撃!まずは一撃をサイクロンエッジで切り裂いて、そのまま通り過ぎてUターン!二撃! すれ違いざまに膝で切り裂き、3度目は腕のブレードを組み合わせた切込みを何度も仕掛ける 「止めっ!!」 そして最後の1撃、それはサイクロンエッジに風の刃を纏わせて、相手を叩ききる その時に全力でやったせいで、その風の刃は無限なまでの大きさになって・・・ 「合格だ、おめでとう」 「こ、ここは!?」 「元の神殿だ、神風の名をつけるとは洒落てるな。神風剣主の肩書きの名に恥じぬ戦いだったぞ」 も、元の神殿・・・私は試練に合格したんだ・・・良かった、私は力を貰えたんだ ソードマスターは元の姿に戻っちゃったけど、また使えるよね 「流石に時間がかかりすぎだったな」 「そ、そんな!合格したじゃない!」 「大丈夫だ、力はちゃんと授けた。」 はぁ、びっくりしたぁ・・・ソードマスターに力を求めれば、その時に神風になれるって これで一安心かな。けどあんな試練ってありなのかな? 「あの試練って神様として良いんですか?力を望むだけだなんて」 「それに気づくかどうか、それが最大の問題だ。」 「気づくか?」 「良いか?風の力を得ると言うのは風の様に澄んだ心、そして望みを叶える為に嵐のような飲み込む力が必要だ」 言いたい事は、風のような澄んだ心で嵐のような力を求めるのが、風の力を得る事ってことだね けど腑に落ちないなぁ最後と言う最後で、貪欲に力を求めるなんて・・・ 「良いか、力を貪欲に求めても、それを悪に使えば悪になり風は力を貸さん。清き心で風を正しく求めば、風の加護を受けれる」 清い心でか・・・力を求めるのに貪欲でも、心一つで変わるって事ね。力の求めすぎは身を破滅させる そう思ってたけど、必要な時は求めなきゃいけないか・・・ 「分かりました。風の様な心と求める事を忘れません」 「それでよい、あの皇子にも求める心を忘れぬ事だな・・・さて、私は帰ろう、よい風の剣士になれ」 さ、最後にとんでもない事を!あたふたしてる私を見て、ウィンヴィントはカラカラと笑いながら 神殿の奥に帰っていった、力は授かったけど良いように遊ばれた気分ね・・・ 「終わったと聞いたが、ちょうど良いタイミングだったようだ」 あっエベリウスの王様の声、振り返ると皆が迎えに来てた。これで一安心かな・・・ 何だか疲れちゃったけど、今何時なんだろ・・・ 「もう夕方だ、随分と遅くて心配したぞ」 「怪我はないですか?」 「どうだった?パワーアップできたか?」 「ありがと、怪我もないし力はちゃんと貰ったよ」 「問いの答えが出せたようだな、風の神らしい試練だったろう」 「ちょっと意外でした、あんなに沢山、考えさせられるなんて」 もう考えすぎでフラフラ、ソードマスターを神風にするには「清い心で正しく風の力を求める」 これを知るのに時間がかかりすぎたのもあるし、もう・・・ きゅ〜 「うぅ・・・・」 「お腹の虫の音ね、まぁ夕飯の時間だし、しょうがないわね」 「よし、少しばかりエベリウスの食べ物を舌鼓してくれ、地上に出せるか評価して欲しい」 あっやった、今日はエベリウスの王様の計らいで王宮で夕飯♪お泊りまで薦められたけど 流石に時間がないから断って、レヴィアさん達の時に回すって・・・ 「急ぎの用・・・友が悪人に捕まってると聞くし、それでか・・・エベリウスの料理でせめて精をつけてくれたまえ」 こうしてご馳走になったけど、エベリウスの料理は暖かいものが多い、この気候じゃ冷たいものよりありがたいよね ステーキはどこでもあるんだと、ビックリしたけど妙に柔らかくて甘いお肉だったなぁ 美味しいって行ったらエベリウスの王様が子供っぽく笑ってたけど何でだろう? 「エベリウス王、地上とのよき交流を願います。」 「ありがとうアリシア王女、皆の旅にも幸あれ」 こうして、私達は夜にだけどキルコプターのオートパイロットで、地上へと戻り始めてた 今日は本当に疲れちゃったし、ぐっすり寝よう・・・ 「ウェンディ、今日は何があったんです?」 「えっとね、風の神様の試練の内容が「風の様に澄んだ心をもって嵐の様に全てを飲み込む力を望め」って内容でね」 「哲学的ですね、澄んだ心で力を求めるか・・・」 「うん、私はもっと貪欲になれって言われた。」 「ウェンディが?まぁ謙虚ではあるか」 ヴェータがやってきて、少し笑ってるとウィンヴィントの言葉が・・・ っ!なんで真っ赤になるのよ私!もうっあの風の神様って本当に無茶苦茶だよ! 「・・・・何か面白い話はないの?」 「と言われてもな・・・」 エキドナが風呂で今はいない、そのためか綺羅が俺の警備をしている。空気が悪いな・・・ どうした物だろうと思っていると綺羅が俺に吐き捨てるようにつぶやいた 「あんたさ、ナナミ達が本当に外でやっていると思ってる?戦闘用に作り変えられたのに」 「実際にそうなんだからしょうがないだろう」 本当に頑固だな、少し暇になってくるぐらいだ・・・どうした物だろうなと 拘束具ベッドに背中を思いっきり預けてると綺羅がこっちを向いた 「僕達が外で生きてくなんて出来るの?」 「まぁ、その歳じゃ一人では無理だろうがな、まぁ・・・生き方なんて自分の好きなように行けば良い」 「だから戦闘用なんだよ・・・」 「戦闘用もない、自分の生き方は自分で決めれるんだ、それをリーゼロッテ達はやってる」 考え込むようにして、綺羅が俯いているとまたこっちを向いた、何だか興味深げな目をして 「外の話、僕にも聞かせて」 「むっ?」 「天才の私があいつらに分かる事を、分からないはず無いの、だから教えて」 なるほど、そういう事か・・・ならディオールでの話から行くか・・・皆が助けに来てくれるのが先か 俺が逃げるのが先か分からないが・・・少しだけ強化人間の少女達を助けたい気持ちがある リーゼロッテやナナミを見てるからだろうし、ドラグノフの事を考えてもだろうな・・・ 「何で外で生きれるんだろう・・・」 「・・・聞いていれば分かるさ」 「う、うるさい!そんなの当たり前じゃない!」 強気で傲慢な態度には苦笑いをするが、まぁ話し相手がいるほうが楽しいし良いか、話そうとしたとき ちょうど良くエキドナも帰ってきたし一緒に聞かせてやろう。 「・・・外のお話?」 「そうだな、エキドナも聞くだろ?」 「うん」 二人が近くに座ると、俺は静かにディオールでの出来事を話し始める。またディオールに行けると良いな・・・ いや行けるか、皆が助けに来るか俺が逃げるかすれば・・・今はまだその時を待つしかないが 「あれは俺が闇黒連合に味方してるときだった・・・」 その時が来るまでは、この少女たちに旅の事を語り聞かせていよう、こういうのも悪くない そんな事を思いつつ、目を輝かせるエキドナと早くしろという風な綺羅に、俺はディオールでの事を話し始めた 続く