■日本分断YAOYOROZ■ 顔瀬 良亮(かんばせ りょうすけ) http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B4%E9%C0%A5%A1%A1%CE%C9%CE%BC ----------------------------------------------------------------- 「ちょ、まてよ。」 お笑いのポリがキシタクの物真似でよく使う台詞が頭の中をぐるぐるしてる。 あんなイケメンになったら(勿論キシタクの方だ)人生薔薇色だろうなぁ。 ってか今何時よ?時計は… っつか、学校! ガバッと上半身を起こしたら思いっきり腹筋が攣った、同時に体中の間接から ミシメキビキバキとあり得ない音がした。 「あいてあいててたたいたあああああ!」 相手、相手、手、叩いた。とか言いたかったわけじゃなくてホントにこういう声が 出たのよ。超いてぇ、筋肉痛とか比じゃないよ、自分が錆びたロボットのおもちゃになった感じ? 意味わかんないけど。クレ557!プリーズ! 寝てた時と全く同じ体勢のまま倒れこむ、喉の奥から呻き声が漏れる。もう訳解らん! 大体ここどこなんだよ!一、病院 二、悪の組織のアジト ライスマーン! メシメシ(ほんとそんな音がする)首を動かして天井の辺りを見渡しても時計らしきものが見あたらない。 ベッドの隣に置いてある簡素な棚を見ると目覚まし機能すらついてるのかどうか怪しい時計が一つ。 …七時十八分。夜の?朝の? ここには蛍光灯の寒々とした光以外に光源が無いみたいだ、全然時間が解らない。 背後に窓とか無いのだろうか、そう思って身体を捻ろうとした、が…。 マジ痛ぇんだよ。やってられん。 長〜〜〜〜〜〜いため息。ここがどこなのか、今が何時なのか、さあっぱり解りゃあしないっての。 不安すぎて不安にもなれんわ。 「ヴー。」 床の辺りで何かが震える音がした。 「あ。」 眼を覚ます前の事が急激に思い出されて、左目に手をやった。 解る。今左の眼があった場所は空っぽになってるんだ。 「あ〜〜〜…夢だったら良かったのになぁ…」 超欝ですよ。いや、当然だろ?だって片目無いとかマジ、シューショクとかできねーだろ。 お先真っ暗じゃん。 そんな俺の心を知ってか知らずか、銀色の球体(名前はまだつけてない)はベッドに飛び乗って 腹の上でぴょんぴょん跳ねてる。 「地味にいてーからやめろって。」 「ヴー。ヴヴー。」 片目失って代わりにペット兼用心棒を得るってのはなぁ…。 …そういやこいつ他の人に見えんのかな?それとも「ロロの奇妙な冒険」みたいに能力者にしか 見えないとかなのかな?前者ならともかく後者だったら…。 「意外と人生ウハウハじゃね?」 「ヴー!ヴヴヴー!ヴー!」 俺のテンションを感じ取ったのか、野郎今度は部屋中を跳ね回り始めた。 ほんっと頭の悪いペットみたいだなこいつ。 「ほら、うるせーからじっとしてろって!」 奴は小さな腕を生やして器用に眼帯を捲りあげると、まるでそこが我が家だとでもいいたげに 俺の左眼窩に納まった。 …さらっと書いたけど、マジびびったって! びびって体飛び跳ねたからまた体中激痛ですよ。いてー、いてー! どがん、と音を立てて部屋のドアが開いた。 もっとびびったわ。 医者らしきオッサン一人と看護士らしき男女が五、六人雪崩れ込むようにして入ってくる。 え?何?俺そんな重症なの? 俺がうーうー呻いてるのを完全にシカトして彼らはベッドを取り囲む。 必死に首を動かして周りを見渡すと、どうも俺のベッドは部屋の中央に位置しているらしい。 落ち着かねぇ病室だなぁ… さて、俺を取り囲んだ謎の医師団はえらく神妙な顔つきで俺を見ている。 「むぅ、やはり…」 「妖系統のヤオヨロズを制御できる者など百人に一人。」 「この子も適応できなかったのか…」 「ヤナギ様、如何致しましょう。」 看護士の一人が医者風の男に判断を仰ぐ。おいおい、「様」って。 「止むをえん、拘鬼束魂の儀を執り行う。」 「御意。」 そしてヤナギが懐から何を取り出したかと言えば… お札だ。 ほら、子供の頃「キョンシー」とかで見たことあるっしょ? Q、大体ここどこなんだよ! A、アブナイ宗教の秘密基地 の線が濃厚になってきましたぞ。 と、人生に絶望する俺を完全放置で、オッサンはベッドの周りに素早く札を貼り付けた。 跪き、手を合わせ、一心不乱に何かを唱えている看護士達。 あ、あれか、俺生贄にされる系? …ぜぇぇっっっったい嫌なんですけど!しかし、もがこうにも身体は碌に動かない! あー、もういいわ。変なバケモンを操られるようになったかと思ったら、今度は生贄? じょーだんじゃねーよ畜生!まだ俺童貞なのに! 「ヴヴヴヴヴヴヴ…」 携帯のバイブ音(っぽい振動)が頭の中に鳴り響く。 …そうだよ、俺にはコイツがいるじゃあないか! 「ぬぬ!妖の気が膨れ上がっておる!ヤツめ、最後に一暴れする気ですぞ!」 「そうはさせるかぁ!」 「(行け!奴らをぶっ倒せ!)」 ものもらいの時にするような眼帯が粉々に弾け飛んで、俺の目玉がある筈の場所から 銀色の球体が飛び出してくる。俺の腹の上辺りで、徐々に徐々に回転数を上げていく… 「臨!」 ヤナギのおっさんが手刀を右にふるうと、青白い光の線が宙に刻まれる。 「兵!」 今度は縦線。球体の奴にヒビが入る。 「闘!者!皆!陣!列!」 よく理解は出来ない。多分このおっさんは超能力者…陰陽師、とかそんな感じ?なんだろう。 「在!」 でも一つ理解できる、このおっさん達は球体を傷つけようとしてるんだ。 おっさんが一声発する毎に、球体の回転は弱弱しくなり、ひび割れたビー玉みたいな傷が どんどん増えてくる。 「ヴ…ヴヴー…」 別に弱いものいじめが嫌いだからとかじゃなくて…こいつは俺の目玉から生まれた奴だ。 俺の分身みたいな奴だし、俺を守ってくれたし、まだ付き合いは一時間にも満たないけど なんかカワイイ奴だ。 俺以外の誰がこいつを守ってやるっていうんだ!うわ!クセー!キモイな俺! 「ぜ…うごふ!」 脚をメシビキ(ほんとそん(略)いわせながらヤナギのオッサンの金玉に蹴りを食らわせてやる。 「ぬああああああ!」 俺とおっさんの声が病室に響き渡る。足やら何やら超痛い。 ベッドから転げ落ちたヤナギのオッサンも強かに腰を打ちつけたようだからこれでおあいこだ。 全身全霊で叫ぶぜ。 「うう…こいつが一体…ぬあー何したってんだよいってええ!」 全然決まらねーよちくしょう。 「ほら…戻れよ。」 俺の声に答えて球体は小さな腕を使って俺の顔まで登ってこようとする。 滑り落ちそうだから手を貸してやった。 脂汗をたらたら垂らしながらヤナギのオッサンが立ち上がった。 おそらくかなりダンディな顔つきなんだろうが、苦悶の表情で台無しだ。 「な…なんと!それぞれの意思を持ちながら協力関係にあるとは!」 「操縦型とも寄生型とも違う…これは新しいですな。」 「うむ…いたた…名付けるとすれば共生指向性自律型ヤオヨロズ、か…興味深い。」 …?俺と球体の話をしてるのか?ぽかんとする俺に、生気を取り戻したヤナギが深々と礼をする。 「手荒な真似をして済まない、どうやら我々の早合点だったようだ。私は聖和会病院院長、柳宗一郎  …呪禁師の末裔でもある。」 「じゅごんし?」 「うーむ…まぁ呪いやら物の怪の問題を解決する者だよ。さて、君には色々話さなければならないことがある。」 なんかさー… 俺、漫画の中にでも迷い込んだわけ? 〜続くかも〜