■日本分断YAOYOROZ■ 顔瀬 良亮(かんばせ りょうすけ) http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B4%E9%C0%A5%A1%A1%CE%C9%CE%BC 綾川 景(あやかわ けい) http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B0%BD%C0%EE%20%B7%CA 東雲 天司郎(しののめ てんじろう) http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%C5%EC%B1%C0%20%C5%B7%BB%CA%CF%BA ----------------------------------------------------------------- ストレッチャーで運ばれるのは急病人か死体だけかと思ってたんだけど、そうじゃないらしい。 運ばれた本人が言うんだから間違いない。 「話がある」っつってまず連れて行かれたのは壁から天井から、見える限りの所総てに びっしりと模様(お経?呪文?)が書き込まれた部屋だった。 ど真ん中にポツンとベッドが置いてあった俺の病室も相当に奇妙な感じはしたけど ここはそれをはるかに越えている。 もう、なんていうか、グロいわ。 「あの…。」 「ん、どうした?」 ストレッチャーを押している若い看護士の、恐らく精一杯優しい声。 エライ気を使われているのが解ってちょっと気恥ずかしい。 「なんなんすか、この、グロイ部屋。」 もう一人の看護婦の女性(おばちゃんだ。金パで短髪。…バーのママ?)が、ぷぷっと噴出した。 「ははっ、グロイって面白いな少年!」 「いや、だって、なんすかこの落書きみたいの。」 「あら、落書きですって。柳先生の結界壁もそう言われちゃ形無しねぇ。」 所々専門用語を使うのは本当にやめて欲しいんだけれども、まぁなんとなく理解はできる。 要はあの落書きはバリヤーみたいなもん、と。 「あと、すんません、なんで『語っていいとも』が無音で流れてるんスか。」 床に描かれた円の丁度中心に俺はいるわけだけれど、その真上には何故かモニターが 据え付けられている。流れてるのは昼の定番番組だ。 想像して欲しい、のたくった線の中心で口パクするグラサンの姿を。 「良くない?あれ。」 「いや、なんつーか…シュールっス。つか、余計不気味っス。」 「…マジかー。やっぱダメかー。」 「完全アウトっスね。」 「緊張解れたりしない?俺としては施術前にくつろいでもらおうと精一杯知恵を絞ったんだけど…」 「出オチ感満載ッスよ。」 「はいはい、往生際悪いぞ早太君、柳先生に撤去してもらうよう言っとくからね。」 「あーあ…。」 出オチ感満載の天井テレビではあるが、なんとなくこの一連のやり取りで和んだ気がする。 …意外と良いんじゃないだろうか、これ。 とぼとぼと「ハヤタ君」が出て行き、残されたのはおばちゃんと俺。 おばちゃんは部屋の四隅に黒い砂みたいな物を盛り、ライターで火をともしている。 もくもくと煙が立ち上り部屋の空気はもう真っ白だ。喫煙室みてぇ。 それにしても何から何まで胡散臭すぎるぞここ! 「はいはーい、それではこれから行う儀式の説明をしまーす。」 何をくわえてるのかと思ったら煙草だよオイ。つか、儀式? 「まずは自己紹介から…えー、私『楠木美穂』と申します。歳は秘密!体重も秘密!  ミポリンって呼んでもいいゾ★」 …… 「…あ、すんません続けてください。」 「ゴホン、えー、従七位下、典薬寮で針博士やってまーす。ヨロシク!」 「針…鍼灸師って事ですか?」 「そゆこと!」 ガバッと白衣の前を開くミポリン(うげぇ)。懐には髪の毛くらいの細さの針がずらり。 仕事人かよ。あと、意外と胸がでかい。 「このミポリン特製針で少年の鈍ったカラダを治してあげようってワ・ケ★  あなた一週間も寝てたのよ?」 通りで節々が痛む筈だよ… ミポリン(ぎゃあ)は煙草をポイ捨てすると、おもむろに俺の患者服を脱がせ始めた…ってオイ! 「ちょおっ!何を!」 「ほら暴れない暴れない。脱がせないと刺す場所解んないでしょー?」 「だからっていきなり…!」 「なぁにを恥ずかしがってんのさ!アンタが寝ぼけてる間誰が下の世話してあげたと思ってんの?」 …うわあああああああああああっ! 「グスングスン…もうお婿にいけない…。」 パン一で体中を丁寧に拭かれる。 「お、大人しくなったな少年。よぉし、イタイの嫌なら動くんじゃあないよ!」 体中を指でつつかれたような感触、遅れてじんわりと身体が暖かくなってきた。 うっすらと眼を開けると 「うわ、すげぇ。」 ハリネズミになった気分。 「どうよ、少年。ちょっと体が楽になってきたでしょ?」 「なんか、温泉につかってるみたいな…しかも全然痛くないッス。楠木さんすげぇ!」 「オホホホ、ミポリン様とお呼び!」 「それはちょっと…。」 「冷めてるなー少年。よし、第二段階いくよー。」 部屋中に充満していた煙が針を伝わって、俺の身体に流れ込んでくる! 「おおお!…って煙草の煙混じってません!?ねぇ!」 「だーいじょーぶ!ちょっとしたスパイスだよ!」 本当にスパイスだったのかどうかは解らずじまいだったけれど、俺の身体は汗を噴出すほどに熱くなり… 煙が消え去った頃には、完全に元の通りになった。 幾ら動かしても関節は軋まないし、歩くは当然として走るのも多分大丈夫。 鍼のちからってすげー!元気ハツラツ状態だ! …元気である必要の無いところも含めて。 「…どーすんスか、コレ。」 「若い証拠じゃないのよ!健康健康!」 「この服ヒラヒラしてっから隠しようがないんスけど。ずっと前屈みでいろと?」 「トイレ行ってきな。それが一番手っ取り早いっしょ?」 「はーぁ…」 「出て右曲がった突き当たりにあるからねー。励むんだぞ、少年★」 幾分体が重くなったような気がする… 「手伝おっかー?」 「いらねーっすよ!」 叩きつけるようにしてドアを閉めて歩き出した瞬間、人と出くわした。 聞いてないよ、というか今まであんまり人見なかったから油断してたよ。 固まってる、固まってるよ、見られたよ、見られてしまったよ うわ、しかも女の子じゃん、あ、やべぇ超好みってか、髪白っ!眼赤っ!兎っぽい ちょっと怯えた表情が、いやいやいや、ダメだろ!変質者だろ!俺! 必死で膝の辺りを掻くフリをして誤魔化しつつ。 「あ、初めまして…。あの、ここの患者さんですか?」 うわー、超微妙。笑える。 「…ハジ…シテ…」 うつむき加減で顔を真っ赤にしながら呟く女の子。ぜんっぜん聞き取れない。 「え?」 聞き返しただけでビクッとされた。はい、もう駄目ですね。 そりゃあね、テント作った男に急に話しかけられればね。 「アノ……ロズ…ツカイ…ヒト?」 ツカイ……使い?使いの人?ナントカ使いの人?ってこと? 「えっと、あの、超能力的なヤツを使えるか…ってこと?…うん、まぁ。」 「オトモダチネ…」 顔を上げた女の子は、本当に消え去ってしまいそうなくらい頼りない佇まいで… ニコッと笑った顔に俺は打ちのめされた。マジでマジで。 「アノ…アタシ…アヤカワッテ、イイマス…」 「あ…あの…俺はかんb」 「うわっ、なに勃起してんスか。」 若い男の声。 「ちょっとー、ウチのアイドル襲っちゃだめっスよお兄さーん。」 飛んできた。文字通り飛んできた同い年ぐらいの男が俺とアヤカワさんの間でタルそうに喋る。 アヤカワさんは本気で怯えた表情をして、最早俺とは眼も合わせず去ってしまった。 「…お…ま…え…。」 「あ、俺?東雲(しののめ)っス。お兄さん、新しく来た人?」 「ヴー!ヴヴー!」 左眼窩が揺れる。 〜続くかも〜