サイオニクスガーデン 桐島叉姫SS     - mana - 2034/8/7   私は、売春婦の母の子として、生まれた。当然、父はいない。   それが原因で学校でいじめられはしたけれど、母は優しくて立派な人で、私を愛し、大切に育ててくれた。   私は売春婦の母を汚らわしいと思った事は一度もない。むしろ、私の誇りだった。   だから、私はいじめられても、一人で泣き、一人で苦しんだけど、それほど辛くもなかった。   私には、母さんがいるから。   ただそれだけの事実が、私を支えた。 2034/10/25   母さんが、体調を崩した。   私は心配で、夜も眠れない。 2034/10/27   私は学校を休み、体調が悪いのに仕事にでかけようとする母さんを無理矢理病院へ連れて行った。   病院に着くまでは面倒くさそうにしていた母さんは、病院につくと、一人の美しい女性へと表情を変えた。   それはいわば、仕事用の顔だから、私にはあまり見せてくれない。   でも、その美しい顔の母さんが、大好きだった。   母さんは診察室にいって、長い間戻ってこなかった。   少し疲れた顔で戻ってきた母さんから話を聞くと、検査が長引いたとの事。   結果は三日後に出るそうだ。   何もなければいいんだけれど... 2034/10/28   母さんの調子が悪い。   家にいる間、いつも苦しそうな顔をしている。   私に心配させまいと、元気には振舞ってはいるけど...   心配で、仕方がない。 2034/10/30   母さんは、癌だった。 2034/11/2   母さんは、自らの病を受け入れるのに、数日間、精神的にも苦しんでいた。   私は母さんを強く抱きしめて眠った。   涙をこらえるのに必死で、あまりよく眠れなかった。 2034/11/5   検査の結果が出てから数日間が嘘のように、明るくなった。   自分の身体をどうするか、決めたみたいだ。   私は学校を休み、母さんが病院に行くのについて行った。   母さんは、手術も抗がん剤も要らない、ただ鎮痛薬をくれ、と医師に伝えた。   医師は手術をした方がどうとか薬でどうとか言って母さんを説得しようとしたが、頑として受け入れなかった。   私としては、なんとしても生き延びて欲しい。   そう思ったけれど、母さんが考えてだした決断に、口を出したくなかった。   それに、母さん本人も言っていたけど、抗がん剤の副作用で醜くなっていって苦しみながら死んでいく母さんを見たくない。   医師曰く、母さんの余命は二ヶ月だそうだ。   唐突過ぎる、死の宣告。   私は母に隠れて、何度も泣いた。 2034/11/13   学校へ行って、毎日泣き続けた。   家に涙を持って帰らないように、涙を枯らせて帰らなければならない。 2034/11/18   学校から帰ると、毎日遅くまで仕事に行っていた母さんが、早めに帰ってきていた。   ふざけあったりしながら晩御飯を一緒につくり、一緒に、食べた。   幸せだった。   その夜、母さんと一緒に寝た。   何があっても愛し続けるから、いつでも側にいるから心配しないで。   私がいなくなっても私を感じ続けて。   母さんは、私の頭をなでながら、そう言った。   私は久しぶりにぐっすりと、眠った。 2034/11/20   私は、泣かなくなった。   いつでも、母さんが側にいる。   今はこうして離れていても、母さんは側にいるのだ。   何も泣く事なんかない。   私は幸せだった。 2034/12/13   母さんが、また体調を崩し始めた。   鎮痛剤があまり効きかなくなってきたらしい。   苦しむ母さんの背中を、何度も何度も撫でた。 2034/12/19   母さんが、日に日に衰弱していくのがわかる。   私は学校を休んで、母さんの看病をする。 2034/12/28   母さんが、死んだ。 2035/1/2   母さんが、お葬式はお金がもったいないからしない、と言っていた。   だから、生前に葬式屋さんに個人葬を頼んでいた。   私と母さんだけのお葬式。   焼却炉みたいな場所で母さんは焼かれて、その遺灰を私は受け取った。   これから、どうしよう。   お金の事は、心配なかった。   あと何年か生活できるくらい、残してくれた。   お母さんが私の為に貯めてくれたお金。   できれば、使いたくなかった。 2035/1/6   心構えをしていたつもりだった。   でも、いざ、母さんがいなくなってしまうと、耐えられない。 2035/1/12   死にたい 2035/1/15   ここ数日、ご飯をたべていない。   毎日、母さんの遺灰を抱えて泣いている。 2035/1/16   私の父親だ、という人が訪ねてきた。   いい人そうだった。   私と一緒に暮らしたい。   そう言っていた。   私は、とりあえず帰ってもらった。 2035/1/17   また、父親だと言う人がきた。   私がやせ細っているのを見て、とりあえず一緒にご飯を食べに行こう、と言った。   わたしがいやだ、と言うと、一旦でかけて、次はケーキを買ってもどってきた。   良かったらたべて、と言い残して、帰っていった。 2035/1/18   あの人は、悪い人じゃない。   私は、自分の父親だった人が、私と母さんを捨てたんじゃない事をしってる。   ただ、偶然私ができて、母さんは私を育てただけ。   だから別に怨んだりはしていない。   でも、私の家族は母さんだけ。   それだけ。 2035/1/19   あの人が、また来た。 2035/1/20   わたしは、気付いたら病室にいて、点滴を受けていた。   昨日、あの人にあってから、気を失った。   ただ、お腹が減っていただけ。   母さんを胸に抱いていない事にきがついた。   私は一瞬取り乱し、ベッドの横の机に置いてあるのに気がついた。   あの人が置いておいてくれたんだろう。   私は母さんを胸に抱いて、眠った。 2035/1/21   あの人がきて、お母さんとの話をきかせてくれた。   あの人...私の父親だという人は、名前を桐島俊樹(きりしまとしき)と言って、大きな会社の経営者らしい。   俊樹さんには奥さんがいたけど、少し魔が指して、とある、信用のおける(大きい会社の社長だから、変な噂がたったら困るので)娼婦を紹介してくれる人に、   母さんを紹介してもらったらしい。   俊樹さんは母さんを人目見て、すきになってしまったらしい。   俊樹さんは何度も母さんと会った。   そして寝た。   そんな時、偶然にも私が母さんのお腹に宿った。   俊樹さんは「妻と別れるから結婚してくれ」と母さんにせがんだ。   だけど、母さんは「これは私の子だから私が育てます」それだけ言い、二度と俊樹さんと会わなかった。 2035/1/22   私は、決めた。   俊樹さんと、暮らそう。   たとえ違う所に行っても、私は母さんの子だ。   そして、母さんは私の母さん。   それは変わらない。   一人は、辛い。   それに、私には妹がいるらしい。   会ってみたかった。 2035/1/25   私は、苗字が桐島になった。   俊樹さんの家...私の家は、大きな家だった。   ここで新しい生活が始まる。   本当は母さんと暮らしたアパートを解約したくなかったけど、母さんならこういうに違いなかった。   「無駄だから解約しなさい」と。   新しいお母さんは綺麗で、優しそうな人だった。   妹は、麻菜という名前だ。   病弱らしくて、部屋から出る事があまりないらしかった。   私は挨拶するために、麻菜の部屋にお邪魔した。   麻菜は、とても美しい少女だった。   私が部屋に入ると、私以上に、麻菜は私と会うのが楽しみだったらしく、   病弱なのが嘘にみえるくらい、おおはしゃぎだった。   病気の事について聞くと、はぐらかして答えなかった。   言いたくないのに無理やり聞く必要はないので、それ以上は聞かなかった。   麻菜は必要以上に私を自分の部屋に呼んだ。   でも私は嬉しくて、ずっと話をしていた。   どうも、本が好きらしく、本だらけの部屋で、色んな本の話を聞いた。   麻菜は、私の事を「ねーさん」と呼ぶ。   私には兄弟がいなかったから、なんだか照れくさくて、そして嬉しかった。   私は、ここでまた幸せに生きていけると確信していた。 2035/2/12   「私の名前はマナ。マナっていうのはね、ファンタジーのお話ではよく魔法の力の意味で使われる。    でもね、元の言葉は、マンナって言ってパンの事なの。    人が生きる為に必要な食べ物、マンナ。    そして、人に不思議な力を与えるマナ。    私、ねーさんのマナで、マンナになりたい」    2035/3/15   なんだろう?   最近、お父さんがつかれきった顔をしている。   会社で何かあったのかな...   心配だ。 2035/4/20   お父さんが、自殺した。   会社が倒産したらしい。   どうして、死んじゃったの?   私達みんなで力をあわせれば、生きていけたのに。   また家族を、一人失った。   麻菜と一緒に、泣き続けた。 2035/5/13   お父さんが死んでから、お母さんの態度が変わった。   私に、すごく、辛く当たる。   階段から降りるときに物音を立てただけでも、叩かれた。   どうして?   最初は優しかったのに... 2035/5/15   お母さんはやっぱり、母さんの子である私が憎いらしい。   全てを受け入れて、私を子としてくれた、とても優しい人なんだと思っていた。   だから、とてもショックだった。   でも、麻菜の前では優しい母親を演じている。   私も、麻菜にはこんな事言えなかった。   お父さんが死んだばかりだったし、こんな事聞いたら哀しむ。 2035/6/12   学校から帰ってくると、私の部屋の中が滅茶苦茶になっていた。   教科書類は、何もなくなっていた。   私は、衝撃のあまり、その場から動く事ができなかった。 2035/6/13   朝、起きて学校に行こうとすると、お母さんに止められた。   「あなたは売女から産まれた卑しい子。    学校に行く必要ないわ。    家で働きなさい」   そう言って、メイド服を渡された。   「あなたは服は着なくていい。    召使の制服を着ていればいい。    卑しい身分なんだから」   私は、それを着る事しか許されなかった。   そして、お母さんは、私が麻菜に会う事を禁止した。   麻菜に、会いたい。   もう、私の家族は麻菜だけなのに... 2035/6/15   夜、部屋で寝ていると、麻菜が私に会いにきた。   身体をひきずって。   私が会いにこないのを不審に思って、様子を見に来たらしい。   私の部屋は散らかって、壁は傷だらけ。   勿論、お母さんがやった。   そして、こんな(メイド服)の私を見て、異変を悟った。   もう、隠し通す事はできない。   仕方なく、全てを話した。   麻菜は薄々気がついていたらしく、あまり驚きはしなかった。   ただ、頷いていた。   話ている最中、泣き出してしまった私を抱いて、眠らせてくれた。 2035/6/16   麻菜が、お母さんに私の事で責めた。   お母さんは麻菜に弱い。   これで、少しはマシになるだろうか...   マシになるどころか、より陰湿になった。 2035/6/17   ご飯の中に、画鋲が入っていた。   昨日は、ボタンだった。   でも私は、知らぬ振りをして、麻菜に見られないように口から出し、ポケットに仕舞う。   それが、ここにいる条件だった。   私が麻菜を愛しているのを知った上で、ここから出て行くか、麻菜には何も話さないか、選択を迫られた。   私は、一人じゃ生きていけない。   麻菜なしでは。 2035/8/16   私の家は、お金がないらしい。   私は詳しい事はわからないけど、会社の関係の事で借金とかができているらしい。   でも、お母さんはこの(維持費のかかりそうな)家から離れるつもりはないという。   でも、お金は、減っていく。 2035/8/21   お母さんは、家事だけじゃなくて、お金も稼いでこいという。   とりあえず、バイトを探してみる。   全て、麻菜のため。 2035/8/25   バイトが決まった事を報告すると、おかあさんは、そんなものでは足りないという。   夜、働けばいいでしょう?   娼婦の子は娼婦をすればいい。   私が戸惑うと、麻菜の治療費はけっこうかかる、とそれとなく言った。   麻菜の為なら... 2035/8/28   私はまだ15歳だ。法律的に、普通に風俗で働く事はできない。   母さんのお客さんとの仲介をしてくれていたおじさんに連絡を取った。   おじさんは母さんの事を気に入ってたし、ちゃんとしたお客さんにしか話を通さなかった。   私は何度かお母さんとおじさんとで食事をしたけど、いい人だし、信頼できる。   事情はいえないけれど、お金がいる、と言うとしぶしぶ承諾してくれた。   お客さんがきまったら連絡してくれるらしい。    2035/9/1   おじさんから連絡。   私は、彼氏がいたこともないし、未経験だ。   初めては痛いと聞く。   優しい人だといいな。   お父さんのような。 2035/9/2   私は、朝方、お客さんに家まで送ってもらった。   いい人だったし、優しくしてくれた。   でも痛かった。   無理しない方がいいとか、今回もお金はちゃんと払うからまた今度しようか、とか、色々言ってくれた。   でも、麻菜のために、私は我慢しなければならない。   それに、今、しなくてもいずれは味わう痛みだ。   行為が終って、私はくたくただった。   ある一定を越えた所から痛みはなくなったけど、何が起こっているのかよくわからなかった。   私はベッドに倒れこんですぐに、眠りについた。 2035/9/5   麻菜に仕事のことを隠し通すのが大変だった。   お母さんになにか言われて何かよくない事をしてるんじゃないか、と疑っている。   私はただ、うちはお金がないし、私がバイトするしかないし、麻菜の為なら何も辛くない。   それに、無理はしないから大丈夫、と言い聞かせた。 2035/10/6   お母さんが、私の仕事をする量が少ないと言う。   仕方ないから、おじさんに仕事を増やしてもらう。 2035/11/13   生理が来ない。 2035/11/21   私は、割ときっちり30日に一度、生理が来る方だ。   なのに、まだ来ない。   予定日から一週間以上も立つのに... 2035/12/11   妊娠した。   コンドームの避妊率は100%じゃないとは聞いていたけど...   どうしたらいいのかわからない。 2035/12/18   母さんは、偶然にもできてしまった私を生んだ。   それは確かだ。   母さんは、私ができてしまった事を不運とは思わず、自らに降りた奇跡として、愛した。   私も、生もう、そう思った。   でも、お母さんは堕ろせ、と言う。 2035/12/28   産婦人科で堕して(文字が途切れている 2035/12/30   町の病院の産婦人科で堕ろしてもらえた。   診察して貰いにいって、言い訳をするように、「ちゃんと避妊はしていたのですが...」と言うと、「わかりました」と先生は答えた。   その数日後には、手術だった。   私は、自分の子を見たかった。   だから、お願いして、お医者さんに、自分の子を見たいので置いておいて下さい、と言った。   手術は、麻酔をされて、眠り、起きた時には終わっていた。   私は痛くなかった。   でも、赤ちゃんは...   私は自分の赤ちゃんを受け取り、帰宅した。   お母さんが仕事に行け、というけれど、ベッドから動く事ができなかった。   赤ちゃんを胸に抱いて、涙を流し続けた。 2035/12/31   部屋から出てこない私を心配した麻菜が、夜に私の部屋へ来た。   私は、扉を開けられなかった。   自分の子供を殺す、最低な姉を見せたくなかった。見せられなかった。   熱心に麻菜は私に扉を開けるように、説得を続けた。   でも扉を開けずにいると、麻菜は泣き出した。   私も泣きながら扉の前に立っていると、麻菜の泣き声は途切れ、扉の向こうで倒れる音がした。   すぐさま扉を開けると、倒れていた麻菜は私の足元にすがりついて、苦しそうにしながら泣いた。   私は、足から離れない麻菜を抱いて、ベッドに寝転ばせた。   しばらくすると寝息が聞こえた。   でも、数分してから起きて、私に事情を聞いた。   言えない、というと「言わないと、許さない」そういって、私を見つめた。   私は、麻菜に逆らえなかった。   すべてを話すと麻菜は怒り、お母さんを殺す、と泣きながら騒ぎ出し、また咳き込んだ。   怒る事は予想できたけれど、そんな事まで言い出すとは思わなかったので、とても驚いた。   麻菜をなだめて、言い聞かせた。   「私が喋った事を絶対に口にしないで。そうでないと、私はあなたと一緒にいられなくなってしまう。    私の為に、言わないで。今は仕方ないからしてるけど、いつかは...」   そう言うと納得がいかない、といった風ではあったけれど、うなずいた。   麻菜は、表情を穏やかにして、「赤ちゃんの名前、決めよう」と言った。   そうしよう、と答えると、麻菜は沈黙した。   私は幾ら考えても思いつかなかった。   「マナ。カタカナでマナにしよう」   そう、麻菜が言った。   「嬉しい。麻菜の名前が貰えるなんて。きっとこの子も喜んでる」   これは、私の本心だ。   私が赤ちゃんを抱きしめると、麻菜が小さい声で言った。   「赤ちゃんはきっと、ねーさんと一つになりたがってるよ」   何を言っているのか少しわからなくて、聞き返した。   「赤ちゃん...マナはね、ねーさんの体から無理やり外に出されて不安がってる。    だから、ねーさんの体の中に戻りたがってるよ」   そうかもしれない...   私は、赤ちゃんをなでた。   「大丈夫、マナはマンナ。そして、麻菜。    食べてあげればいいだけだよ」   麻菜が言い出した事に、私は驚いた。   赤ちゃんを...食べる...?   「食べるということはね、体の中に取り込むってことなの。そして、一つになるという事。    マナも麻菜もそれを望んでいる」   マナ。二人のマナ。私の子供と私の妹。マナと麻菜。   ふたつのマナがぐるぐると頭の中を回った。   わたしと、ひとつになろう、マナ。   私は、マナを口に含んで、飲み込んだ。   胃の辺りから、力がみなぎってくるような気がした。   麻菜は、ずっと私のおなかを愛しそうに撫でていた。     2036/1/5   麻菜の調子が悪い。   彼女は、しきりに私の名前を呼ぶ。   それが、お母さんは気に食わないようだ。   仕事から帰ってくると、私の部屋は酷く荒らされていた。   いや、壊されていた、というのが相応しいかもしれない。   ベッドや机ですら、形を保っていなかった。 2036/1/13   麻菜の顔色は、悪くなる一方だった。   傍にいてやりたい。抱いていてやりたい。   ...抱きたい。   でも、お母さんは余計に私を遠ざける。 2036/1/14   麻菜に会いたい。   幾らせがんでも、お母さんは会うな、という。   私は心配で、胸が張り裂けそうだ。 2036/1/15   麻菜に会いたい 2036/1/16   麻菜に会いたい 2036/1/17   夕方、お母さんが詰らなさそうな...いや、憎悪の目で私を睨み付け、「麻菜の部屋へ行きなさい」と言った。   私は返事をする間もなく、麻菜の部屋へ走った。   数日ぶりに見る彼女の顔は、さらに痩せている気がした。   麻菜は、私を見ると、添い寝するように言った。   私は添い寝して、麻菜の頭を撫でた。   「ねーさん、わたしを、食べて」   色を失いかけていたはずの麻菜の唇が艶かしく、イチジクのように   とても、艶かしく見えた。   気がつけば、私は麻菜の唇をむさぼっていた。   服を脱がせ、麻菜の体中を舐めた。   麻菜の体は、痩せほそっていたけれど、とても綺麗だった。   私たちは、愛し合った。   意識を失う直前、麻菜の「わたしを食べて」という言葉が頭に響いた。 2036/1/18   私は、ふと夜中に目を覚ました。   部屋は暗くて、何も見えなかった。   でも、異変を感じた。   麻菜を見ると   動かない。   胸からは、棒のようなものが生えていた   それを握り、ゆっくり引き抜く   何かが、噴出し   吹き出た何かを体に浴びながら、思い出す   『わたしを たべて』   私は、麻菜のマナのきれいなきれいな顔をたべて、   たべた ――――END