『戦車「配下に一人ぐらい美形が欲しいです。」皇帝「不人気軍団wwwざまぁwww」』 登場人物 魔王イツォル http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/150.html ゼーディアン http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/1584.html 凶嵐 http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/482.html ゲスト出演 ・魂剛鬼賢 煙蘇 ・鬼将魔楼大納言 ・鬼ノ原忠雄 ・天郷 ※帝都まとめが見れないのでurl記載せず ----------------------------------------------------------------- 残エネルギー:危険水準 ※警告:直ちに魔素補給を行ってください※ ※警告:直ちに魔素補給を行ってください※ ※警告:直ちに魔素補給を行ってください※ (右胸部、左大腿部の破損が魔素供給管にまで及んでいる…) (あの忌々しい「子宮」の世話になるのは避けられんな。) (ハイヴァルチャー達が余を追っている。自力で立て直す必要は無い様だな。) (魔素消費を抑える為、休眠状態に移行する…。) 破天帝国の心臓部、その更に中心に「子宮」は在る。 その名の通り、皇帝イツォルの偉業はその「子宮」と呼ばれるポッドから始まった。 人の、獣の、或いはあらゆる霊魂の倣いと異なっている事、それは… 彼はそこから足を踏み出した瞬間、彼が成さねばならぬ事を全て識っていた事。 彼は生まれながらにして、完全であった。 忌々しいのは何故か? 夢を見たのだ。 信じられぬ事だが、彼は「子宮」にもどり機能を停止させるたびに、夢を見た。 それは、夢と呼ぶにはあまりにも鮮明で。 「戦争ごっこに興じているうちに、我々の世界は…」「アンドロイドでも、人間でもない、新たな種だと?」 「次元の壁を越える!?」「我々は退屈な神々さ。御伽噺みたいに万能でも、聡明でも無いがね。」 「種を蒔くのよ。」「眠れ、今は安らかに。我々の子供達よ。」「これが最後のトライアル。」 「NO.011、最後だから言っちゃうけど、実は君は僕の憧れのヒーローそっくりに作ってあるんだよ。  昔見たマンガでね、全身金属でカッコイイ奴がいてさ…」 「上手く行ったかどうかも確認できないトライアルって、なんだか可笑しいわね。」 「じゃあな、達者で暮らせよー!」 その夢で「子宮」の中の己に語りかけてくるのは、紛れも無い人間達。 恐ろしい。恐ろしい。 この身体が、誰かに与えられたもの、しかもあの薄汚いイキモノ達に? 何度管理コンピュータに尋ねたところで「回答不能」の一点張り。 揺らぐ。揺らぐ。 白銀の血が、煮え滾るのだ。 ハイヴァルチャー002(個体名:ゼーディアン)は自由落下を続ける陛下の御姿を捕捉した。 「クケキャー!ミツケタァ!ヘイカダ!」 より一層速度を増して陛下に追いすがる…が。 困った事に「陛下に接触しても良い」という許可は得ていない。許可を得ずに陛下に触れた者は セーフガードが発動し須らく自壊する事になる。 (ホットイタラヘイカハ、ジメンニゲキトツシチマウ!) (デモサワッタラシヌ!イッキュウサン!イッキュウサン!) 「矛盾した問いを解決してくれるおまじない」を高速で走らせる。 「ア、オレイガイノヤツニ、ヤラセリャイインダ。ハニービー7602,2875,1101,1076,2099,8864!  ヘイカヲトメロ!ソシテシネ!」 己の機能停止が皇帝陛下の御身を守る事に繋がると判断したハニービー達。 文句を言う機能がついていないので知る由も無いが、恐らく文句一つ言わず 皇帝陛下の身体を受け止め、五秒後に自壊、を六回繰り返しイツォルの身体を 安全に着地させた。 「ウッヒョウ!オレサマエイユウ!ニカイキュウトクシン!クケーッ!」 しかし、彼はそこからどうやって陛下を運び出すのかを考えていなかった。 イッキュウサン、イッキュウサン…。   *   *   *   *   * 夢を見た。 陛下にこの身体を戴いてから今までの闘いの全てが走馬灯のように… おかしな事に夢の中の凶嵐は陛下から貰った白銀の甲冑ではなく、漆黒の甲冑を身につけ そして醜く歪んだ顔(憤怒の表情、というのだろうか)で敵を打ち砕いている。 傷を受けて噴出すのは真っ赤な血液。 (何故だ!?) (あるはずの無い事が、何故「おれの記憶」にある!?) 眼を覚まして眺める己の身体は夢に見た如く、力の漲った肉に包まれている。 眠る前に引き裂いた皮膚の上を凝固した血液が守っている。 見上げる空は鮮血の如く赤黒く。 珠弥山を覆っていた黒緑の木々は消え去り灰色の岩盤がむき出しになっている。 「おれの知っていた何もかもが、無くなってしまった…。  …いや、無くなったのではない、変じてしまったのだ。」 (恐らくこのおれも…) この荒涼とした箱庭の中、鮮血の空の下… 凶嵐の拠り所は、心臓の奥の奥に刻み付けられた皇帝陛下への忠義一つであった。 それは風前の灯の如くか弱い光であったが、打ちのめされた凶嵐の思考を立ち直らせるには 尚充分であった。 (状況を把握しなければ…) 一際高い、尖塔のような岩を駆け上り周囲を見渡す。元の眼よりも良く見えるのが忌々しい。 どうやら天尊は黒雲と化した己の身体を結界として一地域を丸々飲み込んだようだ。 風景としては様変わりしているが、大まかな地形は変わっていない。 珠弥山はその西端に位置するらしい。境界の先は壁の如く蠢く黒雲で見渡せない。 この箱庭のどこかに仇敵の天尊がいるかと思うと、凶嵐は己の身体が熱を持ち始めたのを感じた。 決死で向かってくる下等生物たちの戦闘能力が増すのはこの理由からか、などと一人感心する。 (しかし、おれの兵は一体どうなったのだろう?何故おれの行方を見つけようとせんのだ?  …おれの様にその身を変じてしまったなら、無用の混乱が起こっているのやも知れぬ。  歴戦の古強者達ゆえ杞憂かも知れぬが…) 凶嵐の生まれて始めての闘いは極東を放逐された邪悪な鬼達「凶一族」の平定であった。 戦いの末、彼は一族を束ね上げる戦士として鬼達から祀り上げられ、結果彼らを取り込む事に成功した。 そして彼は鬼の姿を与えられ「鬼装将軍」となったのだ。 彼を慕う「凶一族」達が行方知れずになった長を探さずにいるのは奇妙であった。 珠弥山の岩肌を滑り降り、瘴気を発する奇木の群れとなった麓の森を、川沿いに下ってゆく。 見慣れたはず景色が変わり果ててしまった事に彼は何の感傷も抱かなかったが 警戒を解ける場所が減ってしまったことは純粋に残念だった。 奇木の内には樹人も混じっているようだし、濁った川の底では不気味な眼がいくつも光っている。 (鬼の子等を護る必要があるな…) 空に弧を描く様に飛ぶ鳥の群れが見える。恐らくあの中心になにか食い物があるのだ。 鼻をつく腐臭。一人分ではない、大量の生き物が放つ死臭。 (…まさか!) 川縁に黒い塊。死体喰らいの怪鳥達を追い払うと、正体が明らかになる。 それは凶一族の死体であった。肩から腰にかけて鋭い刃物で切り裂かれたような後がある。 点々と続く打ち捨てられた死体、その先には死体の小山がいくつも並んでいた。 仲間割れか、それとも何者かの襲撃を受けたのか… 引き摺られた血の跡は森の中、つまり凶一族の里の方へと向かっている。 その川縁の死体の数は凶一族全体の数から見ればかなり少ない。(あれが全てだとは思わないが) 戦死者を弔うような暇も無いのか、それとも本当に仲間割れなのか…? 森を駆ける凶嵐の足取りが少し速くなる。   *   *   *   *   * 里の入り口を護る「外天鬼将楼」は変わらずにその堂々たる姿を保っていた。 両脇に塔の如く積まれた死体の山を番人として。 (この数…恐らく一族の内半ばは命を絶たれているな…) この門の内は一体どうなっているのか?里そのものが死んでしまったかのように 静寂が辺りを包んでいる。 「開門せよ!おれだ!帰ったぞ!」 答えは無く、門は微動だにしない。 押し通ろうと凶嵐が棍を構えた瞬間、風切音がこちらに向かってくるのを彼は聞き逃さなかった。 弾き返された鉄扇は門の天辺に座す影の手元へと過たず帰る。 「おう?おうおう〜?俺っちの鉄扇を弾くたぁ〜、中々骨のありそうな〜曲者だぁ。  他の連中も呼ぶがぁ〜恨むなよぅ〜。ぴぃいいいっとな。」 静寂を破る口笛。 「おれを忘れたのか!?」 影は胡坐を掻いたまま覗き込むようにして身を乗り出す。 「う〜む〜。おめぇさんのようなのぁ〜俺っちの里じゃあ見かけたことが〜ねぇなぁ〜。  そんだけ〜強けりゃあ〜、誰ぞ覚えてて〜もよさそうな〜もんだが〜?」 はたと気付く。おれの姿は全く変容してしまっているのだ。 そしてもう一つ…姿は違えどあの扇と口振りは… 「その話しぶり…凶扇?凶扇ではないのか!?」 「ん〜?お〜?何で俺っちの〜名を知っとるんだぁ〜?お〜?」 「たわけ!おれだ!凶…」 突如虚空から這い出てきた腕が、背後から凶嵐の首を絞める。 と、同時に鬼将楼の門扉が、内側から弾ける様に吹き飛び、新たな影が真っ直ぐにこちらに駆けてくる。 肘鉄を食らわすも全く手応えが無い、煙のように腕は消えてしまった。 「ぬぅおおおおおりゃあああああ!」 駆けてきた影の拳を棍で受ける。影の背を踏み台にして跳んだ新たな敵。 吹き飛ばされた凶嵐の脳天を目掛けて大鉈を振り下ろす。 その土手っ腹に凶嵐の棍棒が打ち込まれると同時に 「凶扇!凶煙!凶拳!凶魁!解らぬか!おれだ!凶嵐だ!」 「なに…?」 猛攻がピタリと止む。 筋骨隆々の赤毛の鬼が問う。 「まさか…いや、しかしそのお姿は…?」 「おぬし達と同じよ、この世界に取り込まれておれも姿を変えられてしまったのだ!」 「…しかし、その言葉が真実と示す術はありますまい?」 「その棍も凶嵐様を殺して奪ったものやも知れぬしな。」 「…よかろう。そこまで疑うと言うのなら、この棍棒でお前達の身体に教えてやろうではないか。  誰がお前達の長だったかをな?」 溢れ立つ禍々しき闘気は正に長のものであったが、彼らは何も言わなかった。 (ううむ、どう考えてもこれは本物だな…) (煙蘇!貴様どう責任を取るつもりだ!) (だって一応疑わん訳にはいかんじゃろうが!声まで変わっとるんじゃぞ!) (俺っちはイタイのやだからねぇ〜、が〜んばって頂戴な。) 「臆したか!ならば此方から行かせて貰うぞ!」 …数分後にはボコボコにされた四人の姿が。 〜続く?〜