この世界ではロボットを使いさまざまな事をする者がいる。略奪をする者や軍に所属するもの 略奪者の賞金を狙うもの・・・今回はそんなロボット乗り達のお話 「ちぃっ!唯の賊にしちゃ恐怖がねぇ!」 小さな田舎村にて、発砲音が響き渡る。龍とガンマンを組み合わせたようなロボットが 体の一部が無くなったロボット相手に弾丸を撃ち込んでいく。それを避けるでもなく 爆発しかねないのにロボット達は次々と弾丸を叩き込まれて体の一部を破壊されて行く 「弾切れか、弾代ケチらなけちゃ良かったなぁ・・・」 六連リボルバーをリロードしつつ、肩のグレネードから村の近くのため スモーク弾を発射するが、ロボット達は視界を遮られてもお構いなしだった その途中、ワークローダーが限界を超して大爆発。スモークが吹き飛ばされてしまった 「やれやれ暴れ馬の方がまだ利口だな!頭もダメなら体そのものを吹っ飛ばす!」 だがロボットのパイロットは敵を倒すために、リボルバーで胴体を狙って発射する それは・・・胴体を弾かれた。弾かれて無駄に終わると思われた銃弾だったが その跳ねられた先。ロボットが横に貫かれて3体ほど貫かれていた。 「フーッ・・・聞き分けの無い奴は嫌われるぜ?俺を落とすならうぼぁっ!」 だが油断したのだろう、ゴリラのようなロボット。テトラ社で開発・販売された 工業用ロボ・パワーコングに接近を許してしまった。どうやら龍型のガンマンロボは 接近戦に弱いらしく、片腕を失ったパワーコングを相手に動きを封じられていた 「うわっ放せ!俺はソッチの気はねぇ!」 一瞬だけ隙間ができ、その隙を突いてリボルバーが0距離で炸裂してパワーコングの息の根を止めた 龍型ガンマンロボがそれを見て、安心すると銃をセーフティモードにしてコックピットが開いた 「やれやれだな。コイツら全員・・・」 彼の名はゲーリー・オルバース。フリーの賞金稼ぎである愛機カンナード・ドラグナーは 彼の得意な銃撃戦に特化した機体である。必殺技は跳弾を使用したトリッキーなショット とあるロボ乗りの仕事 ゲーリー・オルバースの場合 「おいおい、話が違うぜ?こりゃケーブルヒドラの仕業だ」 戦いが終わり、村長とゲーリーは何かを話しているようだった。 「すいませんがこちらじゃケーブルヒドラとは何か・・・」 「かぁーっひでぇぜ!こちとら山賊退治って聞いたのに」 話は数時間前に遡る事になる。ゲーリーが酒場にいる時から始まる。 「おいおい、盗賊退治?」 「しょうがないだろう。ゲーリーお前はまだ若い稼ぎ時だ」 酒場にて、ゲーリーがけだるそうな顔で酒場のオーナーから唯の炭酸水を受け取って ちびちびと飲んでいた。どうやら賞金首もいないから別の事で金を稼ぐ必要があるらしい 賞金稼ぎには良くある事だが、若干15歳のゲーリーは少し不満があるようだ 「若いなー、もう15だぜ?ロボ乗りの平均寿命は30だろ?」 「今の時代はかなり高齢化してるんだぜ?15はまだまだ行けるさ」 オーナーが依頼書を他にも見せたが、ゲーリーが動くような仕事は殆ど無かった ロボによる輸送、町の清掃などなど派手な行動が好きなゲーリーにはヤな仕事だろう その為かゲーリーの目に留まったのは、弾などで金がかかり貧乏人がイヤがる討伐系 その一つ。山賊退治を選ぼうとしていた。これも地味だが無いよりはマシなのだろう 「しょーがねぇなぁ・・・オーナー、その仕事で行くぜ」 「OKがんばって稼いで来い」 これが話し始まりであった。ゲーリーもこの時は盗賊を倒すだけと考えたのだった 「ケーブルヒドラ、まぁジャンクヤードに発生する自然災害の類だ」 「自然災害?」 「まーウィルスでジャンクが寄せ集められて出来た化け物だ」 ケーブルヒドラ、その始まりは新しく戦争の中盤から出現したメカニックモンスターである ジャンクヤードに捨てられたロボット等が、ケーブルで無茶苦茶に合体させられて まるで多頭の蛇のような姿をしているが為にその名を与えられた。最初の種のウィルスが 別のジャンクヤードへ感染。それがドンドン発生して近年の問題になっているほどである 「村長、この村に機会の類は?」 「ワークローダーが数機、農機使用ですが」 「原因はそれか。ジャンクヤードは?」 「近くにありますが・・・1年ほど前に業者が別の場所を見つけてしまいまして今はもう」 これでゲーリーは敵の正体を完璧に感づいたようである。ジャンクヤードに出現するケーブルヒドラ それは自らを巨大化させたいが為、次々とジャンクを飲み込んでいく性質を持っている 近くにジャンクが無い場合は、ジャンクを動かして新たな素材となるジャンクを作る物が存在する 「こりゃ料金を3倍にしてもらわないとこっちが赤字だ」 「3倍!無茶をいわんでくれイヤなら降りても」 「ケーブルヒドラはそのうちこっちに来るぜ?あのタイプは早く何とかしないと軍の一個小隊レベルだ」 これには村長も動揺、しばらく悩んだがばつが悪そうに了承して契約が完了された ゲーリーはジャンクヤードが1年も前から動いてない話を聞いて好機にも考えていた 「ケーブルヒドラっても古すぎるジャンクじゃ形成はできねーさ・・・」 その為に外部へと魔手を伸ばしたのだろう。ゲーリーは15だが一昔前のロボット乗りなら ロボからの負担などを考えるとこの程度の年齢は普通だった。そして限界が30歳程度 このマカロニウェスタンな格好とて見た目倒しではない。ある程度の実力者の感があった 「村長!村人の外出を禁止しておいてくれ!」 「何?何故だ?」 「危ないからさ、ジャンクヤードの場所は地図貸してくれ、頼むぜ?」 先手を打つ、ゲーリーはテンガロンハットのつばを上に上げて、フっと銃口から 煙が出ているわけでもないのに格好を付けて銃の煙を吹くような動作を見せたが 村長から見れば酷く変な行動に見えて、言い訳をするようにこほんと咳をした。 「ったく・・・かっこわりーぜ・・・」 「ジャンクヤード近くか・・・こういう場合、ワクチンがありゃ良いんだがな。贅沢は敵か」 ケーブルヒドラへの対策。それはワクチン弾で抵抗を抑える事である 完全な停止とまで行かないが、これをする事で5%のパワーダウン そうすれば戦いもある程度、楽になるがそんな物がある分けない。 「相棒、頼むぜ?」 カンナード・ドラグナーが肩のグレネードを上に向けてジャンクヤードの方へ 爆撃を開始した。一機でケーブルヒドラに挑むのは本来ならよっぽど強いか それかバカの無謀でしかない。だがゲーリーにはどうやら運が味方していた 「規模からして5発、後は本体を叩けば十分だな」 まずは敵が資源不足で動きが鈍い事。村へと攻撃を仕掛けるほど その次にここが田舎である事。ジャンクヤード近くには人気が無い 更に施設も無いのだ。これが先のグレネード連射を可能とした。 「グレネード残り2発。しっかり元を取るぜ!」 ジャンクヤード近くは過疎した森とも言えぬ、草原なのも幸いしていた。奇襲をかけるのに 十分な隠れ蓑になるのだ。カンナード・ドラグナーがそのままジャンクヤードへと突っ込むと そこはジャンクヤード・・・いや、ジャンク以下になった鉄屑だった物が散らばっていた 「雑魚はいないな、ケーブルヒドラちゃんはっと・・・でけぇ・・・」 だがゲーリーは一つだけミスをした。ケーブルヒドラの規模を過小に考えていたのだ ケーブルヒドラは確かに小さい。だがそれはケーブルヒドラとしてはである 「キェエエエッ!キェエエッ!」 「エキドナでもオロチでもない、不幸中の幸いか」 エキドナとはケーブルヒドラの種で生産性能がある物。派生には上半身までもが首のタイプのラミア 目からビームを発射するメドゥーサがいる。後者は首の数は8本だけなのだが一つ一つは強く 最強種の一種と言われている。だが今回のはオーソドックスなケーブルヒドラであった 「っとあぶねぇ!」 早速ケーブルヒドラの攻撃があった。口からレーザーが発射されるがそれを上手くかわし 今度はグレネードによる反撃・・・はできない、それは簡単な事である 逃げながら撃つと体制は崩れやすい。幾ら体系が安定性の高いSDロボでもだ 「外れたら赤字だ!」 逃げながらリボルバーで抵抗・・・も出来ない。予算をオーバーする分けには行かない だがケーブルヒドラはそんなに優しい相手ではない、ゲーリーは若い為にそれを忘れていた 「っうわぁっ!?」 ジャンクだった物の腕がかすかにまだ動き、逃げ回っていたカンナード・ドラグナーを掴んだのだ これで動きが止まったのが運の尽きか、ケーブルヒドラのレーザーがいっせいに襲い掛かった 「やべっ畜生!」 爆発。爆風が吹き荒れて最早カンナード・ドラグナーは・・・と思われたその時 まだかすかに希望は残っていた。爆風で汚れたカンナード・ドラグナーが立っていた 先のレーザーをグレネードで防いだのだ。だがこれでグレネードは1発となってしまった 「キェェエッ!」 「てめぇもうゆるさねぇ!お前のせいで赤字だ!」 最早、赤字を出さないように戦う事を捨ててゲーリーはグレネードを発射。ケーブルヒドラに 直撃させたが・・・微妙に掠れてしまった。ケーブルヒドラの本体である首の先達は生きていた 「やべっグレネードもうない!これが最後の頼みか」 6連リボルバーを構えると、頭部へと6発・・・直撃はしたのだが如何せんケーブルヒドラは硬い リロードして同じ箇所をショットするも首をくねらせて見事に回避されてしまう 「キェエエッキェー!」 「くそっすばやい・・・ジャンクが残ってるか・・・」 ケーブルヒドラを倒す手段、それを見つけたのかケーブルヒドラの視点を自分へとあえて向かせるように カンナード・ドラグナーは次々と動き回る。負けじとケーブルヒドラも首を動かして追いかけるが 首を絡ませるなんてバカな自滅はしない。だとするとゲーリーは果たして何を考えるだろうか? 「・・・そこか」 そしてリボルバーの銃声。音が勝ってしまったが銃弾が向かう先はジャンク・・・ 弾はジャンクへと当ったが微妙にずれた。ずれた弾はケーブルヒドラの顔の死角へ そのまま当るが、手品とも思える動きで跳ねて弾丸がケーブルヒドラの額を襲った 「キェエエエエッ!?」 「痛いか?これで止めだ!」 錯乱したケーブルヒドラに止めを刺すように、跳躍した弾丸がまた何度も軌道をかえて ケーブルヒドラの額を貫く。まるで弾丸がワープしたようだがこれがゲーリーの技なのだ 彼の跳弾は真似できる者が5人いれば奇跡、1人で納得が行くレベルと言えるほどなのだ 「赤字分だ。釣りはいらねーよ」 ふらりとケーブルヒドラの頭部が倒れると、胴体が大爆発を起こして首が飛んで その首の空中で吹き飛ぶ有様だった。ケーブルヒドラはついに倒れたのだった 「・・・野宿だよなぁ・・・」 だがゲーリーの顔は浮かばない。何故なら赤字なのだから。借金の事もあるし 仕事を探す憂鬱もあれば、ケーブルヒドラじゃなくせめてワーグルだったら 毛皮を取れるのにとため息をついていた。賞金稼ぎも楽ではないのだ・・・ これはこの星に住まうロボット乗りの物語。それは無限でありいつかまた別の話で会えるかもしれない・・・ 「オーナー、何か仕事ねーの?」 「そろそろ輸送の仕事やるんだな。」 「ちぇーっ・・・・」 終わり