この世界ではロボットを使いさまざまな事をする者がいる。略奪をする者や軍に所属するもの 略奪者の賞金を狙うもの・・・今回はそんなロボット乗り達のお話 「随分と平和そうな村ね? 事件なんてあるの?」 「…広告には強い人募集って書いてある。それに見て…」 「何? 何も…あった」 二人の女性が中程度、程よく畑や家がある村の入り口にポツリ。口数が多いビキニとホットパンツを来た ツインテールの少女はリナ・アークエル。少なくてゴテゴテした衣装のはルルシャ・ミックスマックス。 二人ともフリーの傭兵兼用の賞金稼ぎだ。二人の会話からして、やる事はお分かりいただけたであろう そしてリナが平和そうと言った村は少しだけ様子がおかしい。人が一人も外に出ていないのである 「傭兵を雇った…説明無用」 「盗賊だって話だしねー」 二人が手にした張り紙、それは討伐の依頼だった。盗賊と言うよりも通り魔的な何かが 森に入った住民を襲い。自警団が討伐に向かったまま帰ってこないと書いてあり。 村人が怯えて隠れ、傭兵を雇いたくなるのも納得の内容であった。 「まぁここで考えててもしょうがないね」 「うん」 村を見て立ち止まっていた二人も依頼主の村長の家へ、足早に向かったがまた二人が足を止めた 村長の家と思われる場所に、飛行タイプのロボが翼を折り曲げて待機し。更にその横では スナイパータイプと一目で分かるロングレンジライフルを装備したロボットが一機。 後者はスナイパーと言うにはあまりにも装甲や武器を削りすぎていると一目で分かるほどだ 「見かけないタイプ。飛行系にしてはスカイーグルのラインじゃないし」 「…どうせオーダーメイド。行こう」 ルルシャが興味なさ気に、冷めた声でさっさとドアをノックすると中からは お手伝いさんであろう女性の声が聞こえ、ドアが開かれると2人は奥の部屋に案内され 中に入ると女性が3人、村長であろう老人が一人。巨大なラウンドテーブルを囲んでいた 「広告を見て来ました。傭兵のリナ・アークエルと同じくルルシャ・ミックスマックスです」 「遠路はるばるようこそ、さぁお座りくださいませ」 同業者が大量、これは雇われる前に振るい落としがあると踏んだリナとルルシャは 座っていた飛行気乗りのような格好のブロンドの髪の女性をマークしていた 飛行タイプは飛べない者には脅威でしかない。スナイパーは二人でなら数で押せる。 「それではリナさんとルルシャさんにも説明を、前金は無いですが依頼料は10万で」 「気前が良いじゃん? 全員雇えるの?」 ここでリナが「振るい落としはあるか?」と隠してるようで、隠さずに言うが村長は頷いた 次にルルシャが10万と言っても、どこの金か聞くとクームラリア紙幣。価値は十分にある 「リナって言ったか? ずいぶんと相手がデッカイらしいよ」 「へー…」 赤い髪の褐色肌の女性が事情を説明すると、二人は納得したのか村長の話を聞くのに集中した 外には機体が2機だけだが、自分達のように召還機があるのだろうと思い。誰かがロボに乗らない と言うわけではないだろうと深く考えていなかった。このご時勢、盗賊でもロボットに乗っている 「敵の正体は詳しくは分かりませぬが、襲われた住民が言うには巨大な何かだと」 「情報が少ない…危険」 「ハッ怖気づいたかい? 降りるなら降りた方が無難だよ」 「…突っ込むだけなら誰でも出来る。よく考えた方がいい」 チッと褐色肌の女性が舌打ちすると、村長が少し焦りを感じたようだ。戦う前からこれで 目的が果たせるかで不安にもなる。だがそれを抑えるように最後の一人が待ったをかけた 「そこまで、こっちの自己紹介まだ何だよね?僕はヴァーニッシュって言うの」 「そういやそうだ。私はサンドラ=リクヴァーク。傭兵さ」 「わたしゃアジーラってんだ」 「はぁっ!? 何何! 有名どころばっかり!」 リナが驚いたが無理も無い。まずヴァーニッシュという少女はある程度、名の知れたスナイパー そのスナイプは高速で動きながらや近距離でなど、普通のスナイパーと違う事でしれている。 次にサンドラは通称「鷹目のドーラ」後ろを取る事が得意で、武器もその為に射程が長い物を使用する 最後の一人「壊し屋」アジーラは特定の機体に乗らず、乗り潰して戦う文字通りのクラッシャー 「何の偶然か知らないけど、有名どころが揃ってるんだ」 「これだけ入れば十分なくらいに」 サンドラが手のひらを上にして、数が多すぎると言う風に笑って見せると。それに続くように ヴァーニッシュが周りを見て豪華な顔ぶれを眺めていると、ノックオンがまた… 「掲示板見て…定員オーバーですか?」 また一人、今度は肩が大きめのビキニアーマーを着たクールそうな青いポニーテールの少女 どこか高価な雰囲気の鎧と剣を見て、その場にいた全員がどこかしら違和感を感じていた 「いえいえ、遠路はるばるとどうも」 「よかった安心しました」 クールそうだが、丁寧な言葉遣いを見ても傭兵…では珍しく感じれたようだ アージラが目を細め、正体を探ろうと赤い髪を揺らし剣士の少女を見た 「剣士さん、名前はなんだい?」 「あぁ、遅れましてジェイン・クロイツと言います」 少女の名はジェインと言うらしく、アージラが反応して少し遅れてサンドラが目を見開いた。 「クロイツ家の剣士だね。」 「一流の剣士だって話でまた有名どころかね?」 「知っていましたか…皆さんの名前は?」 ジェイン・クロイツ、没落貴族で家がなくなった後は剣の道を知っていたため、その方向で生きている どうやらこれで全員らしい。ジェインも話を聞いてメンバーの確認は大体終わったようだ 「視察したいんだけど、村長さん良い?」 「はい、どうかお願いします…私はこれで、何かあれば手伝いに言ってください」 村長が部屋を出ると、残された6人は作戦会議へと移ったようでラウンドテーブルを囲み これからの動きを相談していた。これからの仕事を一緒にするのだ。単独行動は厳禁だ 「まずは村の周りを知りたいし、私が偵察に行って来るかね」 「そうだね、ドーラのゲキツイオーなら空も余裕だし」 「…私とリナは聞き込み。」 「まった、聞き込みはジェインとヴァーニッシュで」 無口なルルシャでは不利だと、相棒らしい考えでリナが待ったをかけ、社交性の高そうなジェイン そしてヴァーニッシュに任せたほうが良いと二人に頼み。自分達はアージラの機体を取りに行く こうしてそれぞれが役割を決めると、一度ここで解散と言う事になった。 「あの、近くの盗賊のお話を…」 「聞いた話では大きいしか知らないよ、ごめんよ」 村では人が少しだけ外に出ていた。傭兵が来て安心した人もいるようで、情報収集は少しだけ進んだが 「大きい」「早い」の他には情報らしい情報も無く、少しだけジェインは困っていた。 出来れば敵のもっと明確な情報が欲しい。だがこのままでは殆ど収穫が無い様な物だ 「ジェインー良い情報が見つかったよ。そっちは?」 「それがぜんぜん…」 残念と言いたげなジェインだが、ヴァーニッシュは中々の情報を手に入れたらしく嬉しそうだった 買ってきたジュースをジェインに投げ渡すと、危なく落ちそうになりながらもジェインはキャッチして 近くにあった噴水の縁に腰掛けて、蓋を開けてジュースを飲みながらお互いに情報交換を始めた 「えっとね、襲われた人によれば襲ったのは大きい触手だったんだって」 「触手ですか?」 ヴァーニッシュが被害者から聞いた話では、襲われたときのかすかな記憶では相手は確かに大きかったが 触手のように細長い。詳しく言うと巨大な触手のような形をしていたと言う。 「量産型じゃ見かけないね、盗賊だとしても」 「オーダーメイド、またはジャンクの未確認の機体ですね」 敵の情報が少ないジェイン達には非常にありがたい情報であった。形が分かるだけでも対策は大分取れる やったねと言う感じにヴァーニッシュが瓶の中を空にして、となりに置くとジェインが何処か羨ましそう 「私この仕事向いてないのかなぁ…」 「どうしたの?」 「ヴァーニッシュさんより行動が遅くて、もうちょっと手際よく出来たら良いのに…」 はぁっとため息をつくジェインに、そんな事かとヴァーニッシュは笑って見せた。 またジュースを飲もうとしたが、瓶が空なのを思い出して手を伸ばすのをやめた 「苦手な物なんて案外、どうにかしようと思えばどうにかできるよ」 「そうなんですか…?」 「ジェインも剣の練習してる時に苦手な物なかった?」 ジェインが頷くと、それと同じだとヴァーニッシュが言いジェインも大体、どういう事か分かったらしい 中に入っていたジュースを一気に…と言いたいところだったが、中身はサイダーだったのが災いして 元とは言え貴族のジェインには少しきつかったらしい。炭酸が暴れケホケホと咳をしていた。 「大変かも知れませんけど、頑張ってみます」 「情報収集なんて仕事してればイヤでも身につくよ、人また少なくなったね」 「お店に行けば、何か知ってる人がいるかもしれませんよ?」 「なーるほど、それじゃ行くとしますか」 「毎度〜ナナリーのカーゴ運送で〜す」 リナ・ルルシャ・アージラの3人は村の外、少し砂漠に近い場所で恐ろしく不恰好なロボの前にいた その中からは、営業スマイルとも言える自然と作ったような甘い声が聞こえてきた。 「ナナリー頼んでおいたのは?」 「はいはーい、スカイーグル一機ですね〜」 「ナナリーはどこにでも来るね?」 「商人だもの、依頼があれば」 彼女の名はナナリー、名の知れた旅の商人である。そしてこの不恰好な機体はカーゴ=カーゴ。 姿こそ四角に手足がついて「ナナリーのカーゴ運送」と大きく書かれて見るものにインパクトを与える。 そして最大の特徴は背中に背負ってある機体よりも大きなコンテナ、商人と言うだけあり様々な物が必要なのだろう 「はい、御代はカリメア紙幣で8万ですよー」 「用意してある、やっぱNIだね」 ナナリーがカーゴ=カーゴから三つ編みを揺らしながら、はしごを伝い降りてアージラから代金を貰うと コンテナが開き、その中からスカイーグル…だけではない。ロボット パーツ 果てには雑貨品など それらが綺麗に並べられている。品揃えはかなり良いのでこれなら旅の者達が重宝もするだろう。 「NIのは安いしカスタム簡単だしね〜動きが不穏なのがあれなんだけど」 「あたしらには関係ないね。確かに民間仕様だね。」 アージラがさりげなく言う、民間仕様とはNIは軍に売るものと民間に売る物で 性能をダウングレードされている。弱体化しておかないと危険なのは 動きが不穏なNIとて理解している。が軍事用の物をさり気なく売ってたりもする 「アジーラは民間用つかうの?」 「軍事用のが良い…」 「使い捨てるから安かれで良いのさ。軍事用はちょっと高い」 実を言うとリナ・ルルシャの機体はNIの機体のカスタム機なのだ。 軍用の物を改造して少し高いが。性能自体は盗賊程度では手が出せない だがアージラのニーズは「安い」が何より最優先なので民間用で良いのだ 「リナとルルシャは何か買わない?今なら安くするよー」 「んー、それじゃ」 「弾。」 「凄部重工とかテトラのはダメ?」 二人とも最後のは首を横に振る、凄部重工とは火力重視の変態的な機体を売る会社で 一部の者に愛用されるが、維持費がバカにならない為、万人にお勧めは出来ない。 テトラ社は民間用に様々な機体を売り出す人気のある堅実な会社だが 戦力が欲しい傭兵にはNIに軍配が上がる。とは言え戦闘用の機体の性能は高く愛用する物もいる 「テトラのは良いラインなんだけどね、簡単な強化しかできない私ら達にはね〜」 「中口径対ロボット用ミサイル。3ダース」 「テトラはやっぱり民間に売るべきなんだねぇ。はいはーい、全部まとめて3万ですね〜」 ルルシャが買い物を終えて、リナも遅れてられないとパーツを色々と探して小口径のバルカンの弾 小型ミサイルを1ダースを購入。かなりの値段だが傭兵が機体に使うのはざっとこれぐらいかかるのだ 一般人には高いと思うがそれに見合う依頼料を受ける傭兵は、ある程度は普通の値段なのだ。 もっとも危険だし高い金額も、ロボットの維持費などに消えて暮らしは決して裕福といえないのだが。 「はい、それにしてもこっちどーしよう?」 「今雇われてる村は機体が無いみたいだし、テトラのなら売れると思うけど」 「あっ本当?それじゃ仲介して欲しいけど良い?」 「まっ何時も世話になってんだし、少しぐらい良いか。」 「触手ぅ?何だそりゃ?」 「相手はオーダーメイドか何かって事だよ、太い触手搭載の民間機なんて聞いた事ないし」 こうしてサンドラを除いたメンバーが帰ってきて、ジェインとヴァーニッシュから話を聞いていた 敵の正体か武器か知らないが、触手が敵だと言う事が分かっただけでも 戦い方を考えれるので、二人の手柄は中々の物だったようだ。残るは偵察の 「いやーまいった〜」 サンドラも帰ってきた。ブロンドはクシャクシャになって何かがあったのを物語っていた 如何したんだと言う風にその場にいた全員が、開いたドアの先のサンドラを見た。 「何だ?奇襲されたか?」 「いやね、予想より森がずっとデッカイのなんのって」 「森が大きい?そんなに広かったんですか?」 「だね、何か収穫あったの?」 リナが椅子にだらしなく背を預けてると、サンドラが森の大きさを大体説明したが。 最深部には半日かかりそうな程で、通り魔だったら隠れるのに最適だが 通り魔にしては森が深すぎるのだ。問題はこの先にある。 「森の奥深くじゃなくて、森の真ん中らへん何だけどさ。スクラップの山になってた」 「え? スクラップの山ってもしかして」 「村人の証言は触手と…」 「この場合はもっともありえるのはさ、あれだと思うの」 「だろーな、規模どれぐらいよ?」 どうやら全員がある程度の予想がついたらしい。サンドラが続きを話すとスクラップの山はかなりの規模。 遠くて中々分からなかったが。主なスクラップはロボット。機械が殆どだと言う。 サンドラはやれやれと言う風にため息を、ジェインは不安そうに考えリナとルルシャが仕事の事で相談していた。 「割に合う?」 「…メンバー的にもクームラリア紙幣10万じゃ惜しい」 「何度か戦いましたが、規模が大きいとなると…」 「弾代と修理費で4と5の間かなぁ」 「しゃーねぇか。面倒ったらありゃしねーや」 「早合点しすぎじゃない?スクラップの山があっても」 「襲われた人に触手がって言ってる人がいたの。」 考えが全員一致したらしい。この特徴をすべて重ね持つ怪物が存在する。その名は「ケーブルヒドラ」 戦争の中盤に出現した怪物である。コンピュータウィルスが壊れた機械のジャンクヤードで誕生。 ケーブルやパイプ。さらにジャンクを取り込み誕生した双頭の蛇のようなメカニックモンスターである。 「規模的にエキドナ種でしょうか?」 「唯のケーブルヒドラだと思う…」 「待ち、メドゥーサかも知れねーよ?」 この話に出てくる、蛇の怪物の名前だがケーブルヒドラは、最初の種が誕生した後に いくつかのジャンクヤードにウィルスが飛び火、それが様々な進化を遂げた物である 話に出てきたエキドナは生産能力がある種、メドゥーサは目からビームを発射する種である 「…13に引き上げしてもらいたい」 「おっ!ルルシャいい事を言うじゃねーか!」 「なるほどね、確かに相手がどんなのか分からないし、13万でも悪くないよね?」 「確かに…最悪の場合は赤字ですもの」 「村長が要求に応じるかな?それが最大の問題だよ」 「いいじゃない、最悪11とかでも良いって言えば」 ケーブルヒドラ対策の前に、依頼料の追加が出てきたあたりは傭兵と言うべきなのだろうか さらに運悪く、村長が夕食の時間だと言いに来てしまった。言うまでも無く値上げの要求を受け 村長もとても困る事となった。話し合いが醜いので飛ばすが。結果は12万で収まった。 「っぐはぁ!こんな上等な酒は久々だ!」 「あはは!アジーラ凄い飲みっぷり!」 「明日大丈夫なの?まぁ大丈夫なんだよね」 夕食…と言うよりも祝いの席のような豪華さだった。アジーラは酒をジョッキで飲みリナは笑っていた ヴァーニッシュは仕事にかかわるんじゃないかと心配そうだったが、何とかなると流した。 「あの、流しちゃ駄目なような…」 「仮にもアジーラは壊し屋の異名があるんだし、酒に溺れて仕事を潰すなんて無いでしょ」 「…食いだめしないと勿体無い」 まぁ流す前に心配するジェインもいたが、経験の豊富なサンドラはそんなバカをしないと 少し脂っこい肉のベーコン包みを食べ、ちょっと脂っこいと野菜で口を直していた。 その横ではルルシャがパンをスープに付けて、次々と胃の中へと納めている 「ルルシャさんは大食いなんですね…」 「食べれる時に食べるのが鉄則」 「ルルシャは見掛けによらず食い意地が汚いよ」 「教えたのはリナ」 このやり取りに当のリナとルルシャ以外は、大笑いして近くに人がいたら何事かと驚いただろう。 金の問題でこの場を離れた村長や、他の場所にいるお手伝いさんがいないのが不幸中の幸いか 「そーだっけ?」 「リナは基本バカ。」 「だははは!ひでーなルルシャは!」 「傭兵はバカじゃやれないし、やる時はやるのよ」 「あの、そんなに笑ってはかわいそう…」 「こういう場合は笑っても良いの、クールっぽいのにジェインは優しいね」 ぶーっと不機嫌そうにリナがパンを千切り、肉を乗せたりスープに漂わせて、機嫌を直すように食べて 本当に機嫌を直していた。確かにルルシャの言うように単純であった。ここでジェインがそろそろと 明日の討伐の作戦を提案した。相手はケーブルヒドラという化け物だ無策は良いとは言えない 「ワクチン弾。」 「それは基本だろ?エキドナなら数が多いだろうし持久戦になるだろーな」 「オーソドックスなタイプはワクチン弾の後にそのまま戦えばいいね」 「まってメドゥーサなら遠距離での戦闘は不利だな。」 それぞれのタイプの弱点を考えているが、地形の問題もあり様々な状況を考えなくてはいけない 距離的にも場所的にも、相手の領域で戦うとなると圧倒的に不利である。 だが幸いか。それぞれの機体の特徴を話し合い。ある程度対抗する事が出来る事がわかった 「ルルシャは索敵ができるのかい?」 「本格的じゃないけど」 まずはルルシャのハウンドドッグ、改造されて両肩にロケットランチャーの搭載され 頭部にレドームを備えた改造機。高速移動砲台として活用されているが今回は そのレドームを使用して、見えない場所からの攻撃を予測する役目を与えられた 「私とアジーラが空中から目視で索敵すれば、ある程度の攻撃は先読みできるかね」 「だな、んで肝心の戦闘はお前ら3人の出番か」 そしてサンドラの愛機「ゲキツイオー」古代遺跡から発掘された骨董品…ではなく現代技術で改装されている。 7割程度しか元の性能は出ないが。両肩には魔道エンジンを搭載され性能は現行機にも劣らない さらにアジーラの買ったスカイーグルも空中での戦いを得意としているのだ。 「私のオーバーノクトは知っているでしょうが接近戦特化の機体です」 「クリミナルは言うまでもないよね?」 「私のが改造機でね、コングラムをちょっと」 そして残りの3人の機体は、ジェイン駆るオーバーノクトは接近戦を得意とする二刀流の騎士 肩にも腰にもブースターを搭載してスピードも中々。ヴァーニッシュのクリミナルは スナイパータイプだが、武器も少なく装甲も薄いがスピードを重視して、パイロットに合わせてある 最後にリナの駆るビッグパンチャーは、NIの商品のゴリラ型ロボコングラムを改造した機体 拳にバルカン。バックに小型ミサイル。肩にブースターを装備し腕にバリアシールドを装備している。 「何だか役割が簡単に分かるね」 「その方が簡単でいいじゃん。ルルシャ明日は頼むよ?」 「分かった。」 ケーブルヒドラの巣と予想される瓦礫の山までは、ルルシャの索敵とゲキツイオーとスカイーグルが目となり 巣にたどり着けば攻撃を開始すれば良い、このような動きでケーブルヒドラ退治の作戦は決定された。 これが終わると止まっていた手も動いて六人ともまた、冷めないうちに食事を再開し始めた 「うん、このサラダ美味しいですね」 「ここで取れたのだろうね、ジェインは昔は毎日こんなご馳走食べてたの?」 「そうでもないですよ? 産まれた時から没落の兆しがあったらしくて」 ここからは世間話になり始めた。ヴァーニッシュがレタスやピーマンの入った野菜サラダを ドレッシングなしで食べているとジェインが謙遜気味に少し自虐的に笑ってみせた ジェインの産まれたクロイツ家は、ジェインの産まれた頃から没落気味だったらしい 「へぇ〜…その割りに発育が良いよね、栄養ある物を食べてたからじゃないの?」 「そ、そんな事ないですよ!こういうのは個人差です!」 「私も良い飯を食ってたわけじゃないけどデッカイか」 「私もだねー、遺伝だよ遺伝」 周りを見れば、傭兵として生きてきたアジーラや生まれが普通のリナも、巨乳である 目に見えてと言うわけでないが、サンドラも巨乳といえば十分に巨乳になるだろう 「遺伝かーなるほどね」 「えへへ遺伝ってすばらしいよね〜」 「…リナは栄養が胸に行くだけ」 ルルシャはこの会話に入り難いようだ、無や貧ではないがルルシャは普である。 世の中にはツルツルの王女や女王がいるのだし、幸せと言えば幸せなのだろう ここでルルシャが話題を変えるべく、話の起動を適当にずらし始めた 「私?父さんが空軍でさ。」 「あたしも傭兵だった親父を超えたくてさ」 「奇遇だねー僕もお父さんが傭兵で、クリミナルは形見なんだ」 3人には共通した理由があるらしい。どちらも父親の後をついで傭兵になったようだ ジェインは言っていた通り家が没落して生きて行く為。リナとルルシャは以外な事に 資金を稼ぐついでにやっていたらしいが今は本業になってしまったようだ。 「皆いろいろ」 「親父からは傭兵一筋な生き方を教えられてな、ある意味じゃ運命か?」 「へぇちょっと気になるかな?話してみなよ」 アジーラが鶏肉を食いちぎり、骨を皿の上に乗せて酒で飲み流すと、少し昔話を始めた 彼女の父親は傭兵なのは先ほど話されたが、彼女は親を尊敬していた。その強さに 彼女は父親の死後「親を超えたい」と傭兵を継ぎ、今に至るのだという 「いつかアタシは親父を越えるのさ…」 「何だかカッコイイじゃないか。」 「まだ道は遠いんだけどね」 クイッと酒を煽ると、何処か遠くを見るようにアジーラがとろんっとした目をしたが 直ぐにいつもの鋭さを持った目に戻り。今度はローストビーフをフォークで刺して被りついた 「海魚は少ないですね…近くが砂漠だししょうがないでしょうけど」 「あれ?もしかしてジェインって魚好きなの?」 「いえ、ただ魚が無いなって…そうだ、皆さんザイクリンデの雪解け水は好きですか?」 ザイクリンデの雪解け水、雪国ザイクリンデの雪は国の女王のマナが溢れ、それが結晶化した物で 多量のマナを宿し、埃などを取り除きろ過を繰り返した物は、高価だが非常に美味な水として取引される 「美味しいけど高いよねー」 「そんなに美味しいの?私は綺麗で飲めるなら何でもいいって方かな」 「高いけど美味しいんですよ、一度お勧めします」 「あたしにゃ遠い世界の話だよ」 「水なんて全部同じじゃないのー?」 「リナには味の違いなんて分からない」 何か言った?とリナがルルシャを見たが、ルルシャはなんでもないと遠くを見た 今度は珍しくルルシャが動いた。それに相棒のリナが珍しいと思ったが食を優先した 「クームラリアのお菓子、皆好き?」 「あっ私は大好きです!」 「美味しいよねあれ!」 「あんまり食べた事ないけど、チョコレート好きだな〜」 ここで肉を食い終えたリナが解説に入った。ルルシャは見掛けによらずクームラリアの菓子が好き クームラリアとは菓子と音楽で有名な国の事である。リナも最初ルルシャがクームラリア好きだと 目の前でケーキを貪った時はビックリしたと言う。だがアジーラは何処か楽しくなさそうだ 「クームラリアねぇ…あたしゃ関係ないね」 「アジーラさんは嫌いなんですか?」 「たべたことねーのさ。傭兵一筋なんでね。そういう女っぽいのは分からんね」 言われてみるとアジーラの服装は無骨で、女らしくなく口調も同じく傭兵らしいが女らしくはなかった。 ここでジェインが何かを考えたらしく手を叩いてにっこりと微笑んだ。 「このお仕事が終わったら皆さんでクームラリアに行きませんか?」 「あっ良いね!」 「行く!」 「行こうかな〜仕事ないし」 「私も行くわ、楽しそうだしね」 「あ、アタシは…」 アジーラが戸惑っているが、楽しそうだからとヴァーニッシュとリナが動いた。 「楽しいから行こうよ!やる気も出ると思うし」 「リナの言うとおりだよ!ね?」 「そう言われてもさ…楽しいもんかい?」 こういうのに興味が無いアジーラには、時間の無駄かもしれないと考えていたが リナとヴァーニッシュの押しもあったが。次に始まりのジェインが押し始めた 「こういう風に、何か新しい物も良いですよ?」 「そーかい?あー…まぁ少しぐらいは良いか」 アジーラもついに落ちた。ここからは話題がクームラリアで何をするかや 買い物の事などに変わり始め、アジーラにお洒落をさせたりしようと 傭兵らしい話題から、どこか女の子らしい雑談を2時間程度、寝るまで続けるのだった 「機影スクラップの山にあり」 「こっちもなーんにもこねぇ」 「敵はこっちに気づいてないみたい」 索敵の三人が森を監視する、ついに傭兵達のケーブルヒドラ打倒が始まったのだ 幸い森の中で先手はまだ打たれていない。二日酔いも無く一行は良い状態だ 「もう少しでスクラップ置き場?何か予想外だね」 「ケーブルヒドラはバカなんだよ、出来が悪いって損だよねー」 「ウィルスにバカってあるんでしょうか…」 攻撃も無く、スクラップ置き場まであと少しの場所に来ていた。レーダーに巨大な機影があり ケーブルヒドラが敵だと言うのはほぼ確定したが、気になるのは攻撃してこない事だった。 「そう言えば、村長さんは森の中にスクラップ置き場なんて無いって」 「不法投棄されたんじゃないかな?」 「ケーブルヒドラが産まれるご時勢なんだし、やめて欲しいよねー」 「おかげで食い扶持が増えたんだし、ワタシらには如何とも言えないよなー」 「もう見える! 準備しておきなさいな!」 そしてついに森を抜けた…そこには、巨大な多頭の大蛇がトラックを貪っていた。 不法投棄をしていた業者だろうか、最後にはその行いで生まれた化け物に食われていた 「大きい…通常の物の倍程度ですね」 「タイプは普通だね、不幸中の幸いかな?」 「来る…散開」 「言われなくても大丈夫だよ!僕が撃つからそれまで逃げて!」 こちらに気づいたらしい、動きが遅いケーブルヒドラはのろのろと首を伸ばすが、そう簡単に捕まるはずもない 短距離や移動しながらのスナイプを得意とする、ヴァーニッシュのクリミナルがチャンスとばかりに 首の根元へと逃げながら弾丸を叩き込む、射撃が苦手なヴァーニッシュだが大きな敵はカモであった。 「うわっコイツのろい!」 「繁殖にすべてを費やしたタイプだ!大きくなる事だけを考えて護衛すらつくってねぇ!」 「これなら楽勝か、よっしゃ攻撃開始だ!」 ケーブルヒドラには回りにウィルスで操る護衛を置く者が多い、がこのケーブルヒドラは自分が大きくなる為 それだけにすべてを費やしているらしい。あまりにも巨大だが同時に無防備でもあった。 「ケーブルが来る!根元から落とさないと!」 「…任せて」 「ルルシャ頼むよ!何時もみたいにババーッと!」 ルルシャの駆るハウンドドッグの肩のロケットランチャーが火を噴くと、襲い掛かったケーブルを貫いて その根元に着弾、爆発を起こしてケーブルを焼き飛ばした。やはりこのケーブルヒドラは遅かった これが通常のケーブルヒドラならば、操るロボの妨害もあり簡単にミサイルが決まりはしないだろう。 「よし、さっさとケリを付けたらぁ!」 「自爆するのはまだ先にしなさいな、1本は無傷で落とす!」 ケーブルヒドラの弱点は首の根元である胴体。だが胴体を壊すにはケーブルの大群と首を相手にする必要がある その為ケーブルヒドラを落とすには、意識をつかさどる頭を潰すのが常勝手段として好まれている。 一部の剣士はドラゴンスレイヤーを真似て、首を切り落とすそうだが実用性が低いので一部でしか使われない 「本当にトロイね、これなら遠くからでも当てれちゃうかな?」 「何か変な感じですね、普通は遠くから当てるのがスナイパーなのに」 「…ケーブルの数。多い」 動きは遅いが襲い掛かるケーブルの数は尋常ではない。上空で頑張ってる二人だけでは限界が来るだろうが 下で頑張ってるメンバーではケーブルヒドラを落とすにも、ケーブルが邪魔をして中々難しいのだ。 ハウンドドッグの弾も何れなくなるので、出来るだけ根元を狙うようにルルシャも頑張るが数が多く 3発で1発が根元にたどり着けば良い方で、クリミナルのスナイパーライフルでは根元を爆発は難しかった。 「コイツら固い!ダメだアタシらだけで何とかなるか微妙だ!」 「頭を潰すのは難しい…そっちはどうだい?」 サンドラのゲキツイオーもアジーラのスカイーグルも、武装面では貧弱でもうスカイーグルはミサイルを使い 火力が不足していた。最初こそ弱いと侮ったがこの肥大化したケーブルヒドラは予想以上に強かった。 そして最後に驚くべき事が起きる。顔を下に向けた一つの首が、下にいるメンバーに向かい… 「ボォオオオオッ!!」 「っレーザー!? 皆逃げて!」 「きゃああっ! む、無茶苦茶な…」 「っ威力が凄い」 「当ったらひとたまりも無い!このケーブルヒドラ本当に強い」 特大のレーザーを発射したのだ、その部分だけ中くらいのクレーターが出現するあたりに 威力を物語っている。これを見たアジーラ達は数が少なすぎたと焦り撤退を考えたが この大きさでは逃げれるかも危うい。アジーラの特攻も恐らく1本だけでは意味が無いだろう 「ヤバイな、予想以上だ…」 「もっと武器に威力があれば何とかなる、何かないかね?」 ただ硬くパワーがあるだけだが、単純な強さを持っているこの巨大ケーブルヒドラの前に 持久戦となれば絶望的だろう。だがこのままでは…その時に希望が見えた。 「あっそうだ!良い事考えた!」 「リナどうしたの? 良い考えって」 「…リナは戦闘の時は凄く頭が良い」 「このままじゃやられます、やってみましょう!」 リナの作戦…それは逃げる事だった。これが如何でるかは分からないがとにかく逃げている。 上空の二人もケーブルヒドラの首をいくつも相手にして、鬼ごっこのように動き回るが 果たしてリナが狙うものとは…その鬼ごっこに終止符を打たんと、ケーブルヒドラの首の一つが 先ほどの巨大レーザーを放とうと首を下に向ける。ついにこれで終わりかと思われたが… 「今!」 だがそれが反撃の狼煙だった、レーザーが発射される瞬間、6本の首の内 5本がレーザーを発射した顔の前におびき出された。逃げようとしたが大きな首が災いして 遅く。5本の首は焼き落とされてしまったのだ。リナが逃げろと言ったのはこれを狙っていたのだ 「よしっ!作戦成功っ!」 「リナ凄いよ!よく思いついたね!」 「へへっだって大きいと頭悪そうだし」 「…リナと同じ」 「何か言った!」 「最後の攻撃です!一気に首の上に行きますよ!」 言い争う暇も無く、抵抗してくるケーブルヒドラを落とすべく最後の攻撃が始まった。 ケーブルが抵抗するが、リナのビッグパンチャーとジェインのオーバーノクトが先陣を切り ミサイルがケーブルを一掃。後に続いてハウンドドッグとクリミナルが首を駆け上がっていく 「ジェインの機体ってミサイル出せたの!?」 「はい!隠し武器です!」 「驚いたーっともう少しで頂上!」 「来たか!一斉に叩き込んでやれ!」 「さっ始めなさいな!」 「OK!私から行って来る!」 この巨大で愚鈍なケーブルヒドラの最後の時が来た。ビッグパンチャーが腕にバリアを張ると ブースターのパワーを利用して殴りにかかる。コングラムがベースなだけありパンチ力は驚異的で 装甲が悲鳴を上げてへこみ、二回目のパンチでグシャグシャに醜くへこんだ。 「てりゃあああっ!」 「装甲が厚くても傷ついてるなら!」 さらにオーバーノクトが続いて、大剣でへこんだ箇所に深い傷を付けたが、内部メカまでは届かない だがそこへクリミナルのスナイパーライフルが、ほぼ零距離で放たれて傷口を深めて もう一撃、ブースターで離れて狂いこそあるが弾丸を同じ場所に近い位置へと叩き込んだ。 「っ!」 さらにルルシャのハウンドドッグが、マシンガンで至近距離から傷口をさらに抉って ロケット弾で止めを刺すと内部からメカが見えた。飛んでいると言うよりも 浮遊している状態の外の三機が抱えて、段々と地面に下りていくなか最後の一撃が決まる 「止めだ!」 「依頼終了!終わらせてクームラリアに行くとしますか!」 ゲキツイオーとスカイーグルがすれ違いざまに、内部メカを粉々に砕くと ついにケーブルヒドラが倒壊…したはいいが、形成していた膨大なジャンクが 地面に降りようとしている4人に降り注いできたのだ 「「「「え?」」」」 凄まじい音と共に、崩れ去ったジャンクの下敷きとなった4人。アジーラとサンドラが すぐに駆けつけるが…最早ジャンクの山。果たして4人はどうなったのだろうか… 「くそっ最後でこうなるのかよ!?」 「なんてこったい、まさか4人も…」 二人が生存を悲観視するが、ジャンクの山がもぞもぞと動く。もしかして…と見てみると 「死ぬかと思ったー!」 「うわっ酷い臭いっ!?掃除大変だなぁ…」 「た、耐えれませんっ汚すぎです!」 「…泣きたい」 4人とも生きていた。機体はさっきのでかなり汚れているが。 だが4人の悲鳴を聞いて、空で助かった二人は腹を抱えて笑うのだが こうしてケーブルヒドラとの死闘は終わり、仕事も終わりを迎えた。 接点の無い六人の女傭兵の仕事はこうしてちょっと無理をしつつ終わったのだ 「ははは、あの時は酷かった〜」 「まったくですね、あっもう少しでクームラリアですよ」 「良い匂い…」 「この甘ったるい匂い…慣れるか?」 「多分ね、大丈夫さ」 「到着したら早速お菓子だね!」 そして依頼が終わり、彼女達はクームラリアへと向かっていた。 アジーラがなれない匂いに戸惑うも、次第と慣れたのかもう何も言わなかった 「ケーキなぁそんなに美味いのか?」 「美味しい。」 「クームラリアは本当にお菓子が美味しいよ。」 「そうそう、期待して大丈夫だって」 「何だか久しぶりにクームラリアのお菓子だしわくわくしますね〜」 「ちょっと音楽が喧しいけど、慣れると気持ち良いものさ」 こうして女傭兵六人が、何の因果か偶然か仕事で出会い。強敵と共に戦い 甘い匂いに蕩けつつ、クームラリアで休息を得るのだった。 これはこの星に住まうロボット乗りの物語。それは無限でありいつかまた別の話で会えるかもしれない・・・