■日本分断YAOYOROZ■ 絵化してくれて本当に有難う記念SS 「逢魔時に夜露死苦!」 ------------------------------------------------------------------------ 「俺たち『ブラックスネーク』から兵力は提供できない。いくら『連合』の盟友とはいえそんな無謀な  作戦にはイエスとは言えねぇよ。」 オールバックの男が答えると、くわえ煙草の男も応ずる。 「虎の子のヤオヨロズ使いをパクられちゃあ県境に縄張りを構える俺らは一気に飲み込まれちまう。  『邪魅羅』の連中は新たに『はぐれ』を確保したようだし、年々マッポの追い込みも厳しくなってる。  今でもうギリギリなんだよ。」 「極道連中も尻込みして俺たちを助けちゃあくれねぇ…。これ以上抗ったところで  得するヤツぁ誰もいねぇんだ。」 沈黙。ジュンは思う、俺がガキの頃は最凶と呼ばれていた『ブラックスネーク』も『悪士』も今やこの程度か。 それも仕方ないのか。彼らは、彼らはただ純粋に老いたのだ。 「なっさけないにゃー!150人からの荒くれジジイのヘッドにゃのに!」 積み上げられた建築資材の上からゴローが叫ぶ。 「ゴロー!」 「ふみゃ!?」 「黙れ。」 「ごろにゃあ…。」 連合に属する者達は皆対等であり、独断専行は許されない。 「つまり、ミナミ署への特攻みは許容できない…そういうことですか。」 「いや。」 オールバックの男。ヤオヨロズを失い、闘気までも失ってしまった男は立ち上がって答える。 「やるならやれ。共闘はできねぇ、だが手助けはしてやる。ケツ持ちは『ブラックスネーク』に任せろ。」 「逃げ道の確保と先導は『悪士』の仕事だ。いざとなったら県境跨いで逃がしてやるよ。」 「コウさん…タクさん…」 「あなた達本気なの?手助けっていうけど、それでどれだけの被害が出るか解ってる?  二十歳越えも多いんだから、完全にムショ行きになるのよ?」 そう、ブラックスネークと悪士のほとんどはもう「いい大人」なのである。 レンが突っ込むのも当然。ううむ、世知辛い。 「へっ、マッポ上等パクられ上等!連合の面汚しにゃあなりたかねぇからな!」 「ジュン、お前達は俺らのDNAを受け継いでんだ!でっけぇ狼煙を上げてやれ!気合入れろ!」 「押忍!」 「オラ声が小せぇ!」 「押ー忍っ!」 普段優男なジュンがやると物凄い違和感だが、これが彼らの間での正式な挨拶 みたいなもんなのだ。 「…バカみたい。」 自分の単車に向かうレンにゴローがちょっかいを出す。 「今流行のツンデレ?ツンデレン?ツンデレン?」 「うるさい。ホモ野郎。」 「にゃにをーーーーーっ!ちょっと可愛くて女だからって調子に乗りやがってーー!  ヤキ入れたるにゃーーー!覚悟するにゃー!」 「上等だよホモ野郎、腕相撲でアタシに負けるヤツがヤキ入れなんかできるの?」 「しゃぎゃー!…ふぎゃ!」 飛び掛ったゴローを受け止めた逞しい腕は、もう一人の副ヘッド、カルロスのものだった。 「…む。」 グラサン越しにじっ…とゴローとレンを睨む。 「にゃは、いや、本気じゃないのにゃ。全然仲良しなのにゃ。」 「ふん…!」 カルロスは悩む。ジュンのヘッドとしての力量は揺るぎ無い、しかし魅力があるのも考えものだ おかげでこいつらはいつまでも喧嘩ばかり。色恋ってのはいつでも面倒なものだ…。 巡田のケータイがけたたましい音を上げる。 発信元は「眼」の一人、吉田だ。特に索敵に優れるヤオヨロズを編成して組まれた「眼」は 大規模な集会がある際には町のあちこちに潜伏して警察の動きを察知する。 「どうした。」 「やべーっす、ミナミ署から大通りに向けてものすげぇ数のパーカーが!」 「数は?」 レン、カルロス、ゴローの顔が曇る。 「パーカーが…えーと十、十二、十五…二十五台。護送車が五台…あ、えっと、あれ?なんだありゃ?」 「なんだ?」 「いや、ビニールシート被せた大型トラック見たいのが三台通ったんすけど…関係ねーのかな?あれ?  えーっと、なんだこりゃ、最後尾にバンが一台…窓にシート張ってあって中は見えないっス。  あ、ケツになんかマーク貼ってあります。マッポのマークじゃないっすね、あれ。」 吉田が無関係かも、と言った大型トラック。それに何が積まれているのか、ジュンは知っている。 そして最後尾のバンに誰が、何者が、乗っているのかも。 奴らは、狗共は、マッポに尾を振りやがったのだ。 「…御苦労。他の奴等にも言ってしばらく周辺の監視を続けてくれ。」 パタン、と携帯を閉じる音が夜の資材置き場に響く。 「越境襲撃か?」 「いえ、マッポの手入れです。ただし、相等にマジみたいですよ。お二方は逃げてください。」 「ジュン、俺たちをナメてんのか?マッポぶちのめす位どってこたぁねぇ。」 「流石の俺たちもそこまでヘタレちゃあいねぇぞ。」 「『狗』が来ます。」 オールバックとくわえ煙草の顔色が変わった。 『狗』 帝神学園で軍事訓練を積んだヤオヨロズ使い達。権力に逆らう者を容赦無く叩き潰す 無慈悲な戦闘集団。 「お前ぇ…闘るつもりか?」 「ええ、ここで引き下がっちゃあ『逢魔時』の看板に泥塗るようなもんですから。」 「兄貴の二の舞になるぞ。」 「上等。」 緋色と黒のまだら髪を後ろで束ね上げ、ジュンが戦いの面持ちに変わる。 「ヤツらぶちのめして、くたばれるならそれでいい。」 荒事を今か今かと待ち侘びるメンバー達の前に仁王立ちし、叫ぶ! 「オラお前ぇ達!狗共のご登場だ!気合入れろオラ!」 『押ー忍っ!』 「一人残らず潰すつもりで行けや!気合入れろオラァ!」 『押ー忍っ!』 「にゃはーっ!シビレルにゃーっ!キュンキュンするにゃーっ!燃え燃えだにゃあああ!」 「オラ、レン、カルロス、ゴロー!」 幹部達もメンバーの前に現れ、喝を入れる番だ。 「あたしはいいよ…」 退こうとするレンの腕を掴むジュン。 「これで最後かもしれねぇんだ。お前も気合入れろや!」 ジュンの眼を見て、レンはそれ以上反抗できなかった。そうだ、学園に立ち向かおうって気持ちを 与えてくれたのがこの人だったんだ! 「ゴロー!」 「『逢魔時』特攻隊長猫田五郎マッポ共火の海にブチ込んだるぞぁ!夜露死苦!  ビビッてケツまくんじゃねーぞオラァ!気合入れろぁ!」 『押ー忍っ!』 さすがと言えばさすが。普段はなよなよした男だが、戦いの直前には人が変わる。 「レン!」 「…えっと…おめーら!…きあいいれろおぉおおおお!」 『押ーーーー忍っ!』 むせそうになるレンの背中をどんと張るゴロー。 「まだまだだにゃ!」 「ふん!」 「カルロス!」 さて問題はこの人だ、自分で喋るよりむしろ「オボログルマ」に喋らせていたこの男が口上など上げられるのか? というかそもそも喋れるのか?固唾を呑んで見守る一同。 スーッと思いっきり空気を吸う音が聞こえる。カルロスだ。 「いぐぞっっるっらあぁああああああああああ!」 額に血管を浮き上がらせての咆哮、正に咆哮! 『押ーーーー忍っ!』 「いいか、こっから直進してマッポ共と正面からぶつかる!止まるんじゃねぇ!奴ら  ぶっ潰してミナミ署に特攻め!」 『押忍っ!』 「ちっと予定が早まったが関係ねぇ!死んでも奴らに飛び掛るつもりで行け!解ったかオラ!」 『押忍っ!』 「気合入れてけや!」 『押ー忍っ!』 ぶおん、と「カシャ」のエンジンを吹かす。先陣を切って死にに行くのは特攻隊の誉れだ。 俺達の照らす明かりが、仲間達のを導くのだ。 「『オニビ』『キツネビ』『シラヌヒ』今日はもう止めないにゃ、町中火の海にしてやるにゃーーー!」 『押ー忍っ!』 「行くぞぉ!」 『押ーーーー忍っ!』 ------------------------------------------------------------------------ 光の差さない車内。狗達は沈黙し。 栗色の髪の少女が呟く。 「頭が痛くなるわ、今時『暴走族』ですって…しかもヤオヨロズを使って暴れ回る。  なんて愚かなのかしら。二度とそんな気が起こらないように懲らしめてやらなくちゃ…」 右目に大きな傷を持つ青年は俯いたまま反応しなかった。 「生涯不敗」の文字を背負った少女は車内の三人に改めて念を押した。 「任務は『殲滅』じゃない。『鎮圧』だ。必要以上に痛めつけるな。解ったな。」 赤毛の少女はクスクス笑う。 「ええ、ええ、理解しておりますわ総長。ただ殺さずにというのは随分と『骨が折れ』そうねぇ?」 光の無い車内。犬達は淡々と牙を研ぎ… 〜続かない〜 ------------------------------------------------------------------------ 巡田 熾也(じゅんた おきや) 暴走族「逢魔時(おうまがとき)」のヘッド 顔は悪くないが、ボサボサの黒髪を所々赤色に染めていて見るからにガラが悪い この暴走族の珍しいところは、メンバーの多くがヤオヨロズの発現者であること 彼自身もそうであり、バイクと一体化した煙のようなヤオヨロズ「エンラエンラ」を使う 一体化により排気量が増大しており、最高時速はスポーツカー並みのものになっている また、延々と噴き出す膨大な排気ガスを操り敵の視界を奪って攻撃や逃走を行う 学園の生徒たちを大人にいいように使われる狗と見なして侮蔑している 当然不穏分子として狙われているが、メンバーは強気な態度を崩さない 火渡 煉(ひわたり れん) 暴走族「逢魔時(おうまがとき)」の副長。朱色に染めた髪を伸ばした少女 ヤオヨロズ「ミシマノカミ」の発現者。異様に大きな頭をしていて、そこから火球や火炎を放つ 動く火山のような存在で、破壊力でなら総長のエンラエンラにも勝る ただ、走り回る彼らにとって大きすぎる存在は時に厄介なため、いざという時しか使用しない 彼女自身は傍目にはクールだが、それは感情を出すのが苦手なためで 内に積もった感情が時々破壊衝動として溢れ出てしまう 友達を学園に奪われ、その憤りから巡田の思想に同調し、彼につき従っている 轟 迦留呂守(とどろき かるろす) 暴走族「逢魔時(おうまがとき)」の副ヘッド ブラジル人と日本人のハーフ。19歳。 浅黒い肌、長身、炎の刺青、スキンヘッド、グラサン と絵に描いたようなチンピラ。 しかし睫毛が長く目だけが可愛いので絶対グラサンは外さない。 能力の消える日が近づいており、寂しさを感じている。 使用ヤオヨロズはチューンナップされた外車と一体化した「オボログルマ」。 ヘッドライトが目になってバンパーが口になる「喋る車」 必殺技はパトカー三台を吹き飛ばす体当たり、ワイヤーを伸ばしてガソリン吸収など。 猫田 五郎 (ねこた ごろう) 暴走族「逢魔時(おうまがとき)」の特攻隊長。 ぱっちりした目と奇妙に逆立てた髪。別に猫を模しているわけではないらしい。 ちょっとおかしいくらい巡田に懐いており「もしかすると○モなのでは…」と噂される。 自慢の改造車と一体化したヤオヨロズ「カシャ」の持ち主。 先頭を切って火の海を作り、巡田が闘いやすい環境を作る。 彩陶 羅ゴウ http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%BA%CC%C6%AB%A1%A6%CD%E5%3F 猩々 千夏 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%E0%CF%A1%B9%A1%A1%C0%E9%B2%C6 九戸 闇那 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B6%E5%B8%CD%20%B0%C7%C6%E1 草薙 毅  http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%C1%F0%C6%E5%A1%A1%B5%A3