瀬方・海(せがた・かい) 聖白百合女学園高等部3年の少女。17歳 青髪ショートカットで1本のアホ毛が生えており、薄い褐色肌 180cmを超える長身と、それに反比例してまな板同然な貧乳が特徴 クールな性格で口数は少なく、少々天然ボケで鈍感な所がある 運動神経抜群で、陸上部所属だが他の部活にお呼ばれされる事も少なくない 長身の割に貧乳なのが悩みの種で、家ではいつも豊胸に励んでいるが殆ど効果なし 一方後輩達からは「カッコいい!」と好評で、その事になると少々複雑な気分になる 甘党で好物はチョコ。ロリィタ系の服に興味があるが、なかなか着る勇気がない 宮影 ゆきな 3年生。手芸部部長を務める面倒見の良いお姉さん。 黒髪をポニーテールにし、明るい笑顔で接する彼女を「生涯のお姉様」と慕う者も少なくはない。 何かと細かい所に気がつくまめな性格だが、自分のことは割とおざなり。 身長が180センチもあるため、服のサイズが合わずに時々体操着などが大変なことになる。 長身に加えてボリューム満点の胸を持ち、ひなたぼっこしながらしてもらう先輩の胸枕は後輩たちの憧れである。 クラスメイトのあだ名はなぜか「東京タワー」 ■年上事情■   「妹できたんだって?」  宮影 ゆきながルームメイトの瀬方 海にそう言われたのは、読子に『告白』された日の夜のことである。 「あら、耳が早いわね。……というより、まだ誰にも話していないのに何故知ってるの?」 「なんか見てた奴がいるらしいよ? 後輩が話してた」  無論、ゆきなにとってあれは完全なる不意打ちであり、側に人が居たかを確認したわけではない。  しかし、これからは人目をはばからなくては駄目ね、と思う。  学園に噂が流れるのは光よりも速い。 「それにしても意外だね。宮影は妹なんて作らないかと思ってた」 「成り行き────というわけじゃないんだけれど、真っ直ぐさに当てられちゃったというか。  知らない子でもなかったし」 「ふうん。ちょっと羨ましいな、そんな風に想われるって言うのは」 「海の方こそ、私よりもたくさん来そうなものだけれど?」 「特訓して欲しい、っていう変わったのは時々来るけど、妹になりたいって言うのは来たこと無いんだ……」 「そう……」  鈍感は時として罪だな、とゆきなは思った。  海の運動能力で特訓されたら、それはそれは大変なことだろう、と純な後輩達に同情する。 「あたしは宮影と違って女らしくないから。姉妹になるなんて考えられないよ」 「そんな事無いと思うわ。海だって衣装変えれば十分いけると思うわ。よければ私の服、貸してあげようか?」 「…………いい。胸がスカスカなの知ってるだろ」 「直してあげられるわよ?」 「要らないって!」  つい大きな声を出してしまい、海は気まずくなる。 「あ……ごめん……」 「いいのよ。別に無理に勧めてるわけじゃないから。私こそ押しつけがましくてごめんね」  海が豊胸に努めているというコンプレックスを突いてしまったことに気づき、ゆきなも頭を下げる。  学園の夜は静かで、お互いが口を開かなければ沈黙が漂う。  ゆきなは編み棒を動かしてニットを編み、海は海で闇の広がる窓を見つめていた。  ふと、海がぽつりと漏らす。 「時々…………時々、宮影と一緒にいるのが嫌になるときがあるよ」 「そうなの?」 「身長同じ位なのに、宮影は女の子らしくて、胸もあって、可愛い服も着られて……  あたしには無いものたくさん持ってるから」  それは無き者が故の憧憬。  望んでも手に入らない現実は残酷だ。いつだって、人は願いから欺かれる。  己の持つ以上のものを求める。  憧れは人を前に進ませる力であるが、同時に限界を知る哀しさを内包する。  気がつかなかったわけではない。  ただ、それが言葉となって口から漏れ出ることの重さを、ゆきな自身も知らぬ訳ではない。 「そっか……私も、運動神経抜群で、眩しくて、  後輩たくさん引きつれて声援受けてる貴女が憎らしいと思ったことがあるわ。……何度も」  それは痛みの共有。  友人であるが故の吐露。 「結局」 「あたしたちって」 「似たもの同士、なのよね」 「ははっ」 「ふふふ」  だからこそ、分かち合えるものもある。 「本当はね、妹作るのは怖かったの。……姉妹には、別れがあるから」  幾分気が楽になったゆきなはそう述懐する。 「ああそうか、宮影も『姉』いたんだったね。あたしも姉が欲しかったな」 「うん。でもね、焦がれるほどに好いても、やっぱり居なくなっちゃうものなのよ。  本気だったのに、ね。  お定まりの別れと、良い後輩だったって、たったそれだけで」ゆきなは押し殺すように呟く。「時は残酷だわ」  ゆきなの表情に陰が差したのを見て、海は慌てて取り繕う。 「えーと、なんか、ゴメン。思い出させちゃったみたいで」 「いいの。あの頃は世界が灰色になるほど泣いたけど、今となってはもう涙も出ないから。  ――本当は、私も本気じゃなかったのかも、ってね」 「ばっか、本気じゃなかったら泣くわけ無いじゃん! 宮影は悪くないよ!」  本気で憤慨する海を見てゆきなは驚く。  「海……貴女って、本当にいい人ね」  他人のために怒れる彼女は、本当に眩しい。  賢しく場を収めようとしてしまう自分には無い率直さ。  読子の台詞ではないが、そんな海を『格好良く』思う。  言うと凄く嫌がるので口には出さないけれども。 「なんだよ、恥ずかしいじゃないか」  海は真っ赤な顔をして咳払いすると、ゆきなに向き直った。 「宮影としては今後はどうするつもりなの?」 「まだ決めてないわ。そう思いたくはないけれど、思春期の一時的な憧れに過ぎない事だってあるんだもの。  ただの憧れなら、遠からず終わりが来るわ。 心は移ろいやすいものだから」  事実を知るがゆえの諦念。  繋いだと思っていた心は、ただの一度の触れ合いさえも無くその手からこぼれていった。  繰り返したくはない。  相手からも、自分からも。 「女子高じゃよくある話……か。姉様姉様騒いでいたくせに、男に告られてあっさり流れていくのも多いからなあ」 「読子ちゃんはそうじゃない、とは思うんだけど、ね。まだ初日だからずるいようだけど様子見ね」 「へえー読子っていうんだ、妹の名前。可愛いじゃない」 「やだもう、茶化さないでよ。なんかいつも難しい本読んでる勉強家なの。  ソロモン王がどうのとか言っていたから歴史に興味があるみたいね」  読子の指していたレメゲトンなる書物は悪魔召還の魔術書なのだが、知識の無いゆきながそんなことを知るはずも無かった。 「ふーん。なんだかんだで、結構気にかけてたんじゃない」 「まあ、悪くはない、とは思っていたけれど」 「で、どうするの? 宮影は手芸部でしょ? 図書委員と姉妹じゃ火種にならない?」  ゆきなの身辺には、手芸部の後輩がくっついていることも少なくはない。  長身で頼りがいのある先輩となればなおさらだ。  だからこそ、手芸部の後輩同士がいざこざを起こさないよう、ある程度距離を置いてもいたのだが。  別の部に妹が出来たと知られれば面倒なことになるかもしれない、という海の危惧も判らなくはない。 「うーん。『あんまりべったりには出来ないから、時々逢いに行く形で』  って言い含めてあるから大丈夫じゃないかしら?」とゆきな。    しかし、ゆきなは年下たちの行動力を甘く見積もっていた。  全然大丈夫ではなかったと判明するのは、さして遠い出来事ではなかったりするのである。    おしまい。