未絵化設定勝手にFSS第二弾 『しあわせになれますように』 登場未絵化設定 ■フンダ・リー(兄)&ケッタ・リー(妹) 幸せに暮らせる場所を探して 世界中を旅している双子の兄妹。 2人で仲良くほのぼのと旅しています。 だがいつも非道い目に遭う。 ■可哀想なナナリー12歳 超絶不幸体質少女。実は吸収した不幸を相手に押し付ける能力の使い手なのだが 決して解放しようとしないため、彼女の不幸パワーは溜まる一方である。 立ち寄った場所の不幸を吸収して平和にしてゆくため「あの子が幸福の女神だった」 と数多くの人々に感謝されているが、流浪を続ける彼女にその思いが届く事はない。 今の不幸パワーは「野盗に慰み物にされた挙句、戯れに絞め殺される。」くらい。 「皆も私も幸せになれますように」と祈る星が魔王の星だとは気づかず 今日も彼女はボロ布を纏って野宿です。 ■ミーナ・コウロシー 道行く通行人から金を脅し取りながら旅をしている少女。 金目のものが無かったりしたら即ぼっこぼこにする。 有っても奪ったあとにぼっこぼこにする。 さぁ、今日も楽しいカツアゲ旅行だ。 ゲスト出演 ・「賊爵」ジェロニモ=アラン=バルザ http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/2003.html ・魔王ヴァニティスタ http://www23.atwiki.jp/rpgworld/pages/179.html ------------------------------------------------------------------------------ リーきょうだいは世界中を旅している仲良しの双子です。 かわいそうな事に、ふるさとは戦争で燃えてしまって、彼らには帰る家がありません。 二人で楽しく暮らせる場所を求めて、彼らはずーっとずーっと旅をしているのでした。 「ふぅ、ふぅ。ねぇお兄ちゃん、あたしもうクタクタよ。次の町はまだなのかしら。」 妹のケッタは道ばたの切りかぶに座り込んでしまいました。 「あと一時間もすれば見えてくるはずだよ。まだ空も明るいし、一休みしようか。」 兄のフンダが草の上に腰を下ろすと、ケッタは切り株から離れてお兄ちゃんの隣に座りました。 一緒にいる時、二人は世界で一番幸せでした。 だから、長い旅の間どんなに辛く苦しいことがあっても二人はずっと幸せでした。 ケッタはお兄ちゃんに甘えるのがとても好きでしたし、フンダは妹のわがままを聞いてやるのが好きでした。 「ねぇお兄ちゃん。横になってもいい?」 「いいよ。」 ケッタはごろんと横になって、お兄ちゃんの膝を枕にしました。じっとお兄ちゃんの顔を見つめていると お兄ちゃんはふふっと微笑みました。 「どうしたのお兄ちゃん?」 「ケッタがあんまり気持ちよさそうだから。もうしばらく休もうね。」 「うん。見て、雲がお魚さんみたいだわ。」 二人は空を見上げて、お魚さんが遠くの空まで泳いでいくのを眺めていました。 いつの間にかお魚さんが泳ぐ水がオレンジ色に変わっていたので、フンダはケッタの頭を撫でて言いました。 「さあ、暗くなる前に行こう。」 「うん。もう、一日中だって歩けるわ!」 すっかり元気になったケッタはスキップしながらお兄ちゃんの先を行きました。 「こらこら、転んじゃうよ!」 「大丈夫よ!ほぉら、置いていくわよお兄ちゃん!」 フンダを手招きしながら後ろ向きにスキップしていくケッタ。 「あ、危ない!ぶつかる!」 ケッタの後ろに旅人姿の少女が見えました。 少女はケッタの後頭部に、全身全霊を込めたアックスボンバーを食らわせました。 一瞬意識を失って倒れこむケッタの前に周り込んで、みぞおちに膝蹴りをかまします。 少女の膝は容赦なくケッタの胃の腑にめり込み、内容物をぐちゃぐちゃにかき回しました。 「う…げほっ…うええええ…」 突き上げるような吐き気に耐え切れず、ケッタはお兄ちゃんと一緒に食べたお昼ご飯を戻してしまいました。 少女は、口とおなかを抑えて体を丸める彼女のサラサラで綺麗な髪を引っつかんで 吐瀉物で口の周りを濡らしたケッタに冷ややかな視線を向けます。 それはまるで屠殺される家畜を見る、解体職人のようでした。 「ケ…ケッタ!」 駆け寄ろうとするフンダ。少女はケッタの髪を離すと、瞬きの間にフンダの目の前まで跳び 強烈な足払いを食らわせました。 足元をすくわれたフンダは顔面を強かに打ちつけてしまいました。 ぽたぽたと鼻血が落ちてきます、歯で唇を切ってしまって口の周りも血だらけでした。 「う…うう…」 それでも、フンダは自分の事よりもケッタのことが心配でした。 「ケッ…タ…」 「おにいぢゃあん…げほっ。いたいよぉ…いたいよぉ…。おにいちゃあん…。」 うずくまったまま、激痛で身動きが取れないケッタの元によろめきながらも歩こうとするフンダ。 あと一歩のところ、少女はケッタの頭部をボールのように蹴りました。 糸が切れた人形のように横たわるケッタ。 「ああ!」 叫んだフンダの喉に、突き刺さるように足刀が決まります。 苦痛にのた打ち回るフンダの体を踏みつけて抑えると、少女は邪悪な笑みを浮かべました。 その笑みは邪悪に歪んでいました。 「ねぇお兄さん。アタシあんたの妹さんのせいで、大怪我するところだったんだけど?  どうしてくれんの、ねぇ?ねぇ!?」 何か答えようにも喉が潰れて声が出ません。畳み掛けるように少女は問い詰めます。 「あとさぁ!靴!あのガキのゲロで汚れちゃったんだけど!?」 フンダの眼に涙が溢れてきます。横たわったケッタはぴくりとも動きません。 はやくお医者さんに連れて行かないと、取り返しの付かないことになってしまうかも、と思うと フンダはなんでもする気になりました。 「お…がね…はだいまずがら…たすげで…」 潰れた喉で血を吐きながら、フンダは声を振り絞りました。 ぱっと踏み付けが緩められます。少女はさっきよりももっと楽しそうな顔をしていました。 「うんうん、素直で良い子ねー♪心配しないで、殺す程に強く蹴ってはいないからさ!」 フンダは、旅の間必死で稼いだお金を、全部少女に渡しました。 と、次の瞬間。 ケッタの倒れている方に体を向けたフンダの脇腹に回し蹴りが入ります。 「!?」 呼吸が出来なくて、フンダはくず折れたままぴくりとも動けませんでした。 「なにこれ?」 少女の顔が屠殺者の顔に変わっていました。 「この は し た 金 はなんだって!聞いてんだよ、クズがぁああ!」 腕を捻り上げられて、フンダは自分の骨が軋む音を聞きました。 「そうかい、そうかい…成る程ねぇ?あんたの誠意は所詮その程度ってわけだ?  じゃあ足りない分はあんたの妹さんに払ってもらうことにするよ…  良く見れば結構かわいらしい顔してるじゃあないか。ド変態のジジイたちに高く売れるだろうねぇ?  あんたも両腕と両足を折って、奴隷商人に売りさばいてあげるよ。  だーいじょうぶ、世の中広いからね。あんたみたいな男の子でも買い手は付くんだ…  アレを切り落とされて、歯を抜かれて…ふふ。オンナノコの代わりになるんだよ。  そっちの方が良いっていうお金持ちも居るんだよねぇ。あーあ、可哀想。誠意が足りないばっかりにねぇ…」 蛇のように少女の腕が首に絡みつきます。一瞬にしてフンダは呼吸が出来なくなってしまいました。 「しばらく、お休み。次に目覚めた時は、地獄の一丁目だよ…ふふ。」 薄らぐ意識の中、フンダは妹が無事であることだけを祈り続けました… 〜了〜   *   *   *   *   * 「たーーーーすーーーーけーーーてーーーー!」 フンダとケッタを担ぎ上げたミーナは遠くで悲鳴があがるのを聞きました。 この辺りにはミーナと敵対する荒くれ盗賊団がいます。きっと奴らにやられる直前の哀れな旅人だろう。 厄介ごとに巻き込まれる前に逃げなければ… と思う間もなく、すさまじい砂埃を上げて、一人の少女とそれを追う盗賊が見えました。 「盗賊が見えました」。 というよりは 「盗賊団が見えました」。 「げげっ!」 少女一人に対して物凄い数のあらくれたちが集まっています。 正しい数は知りませんが、恐らく盗賊団全員です。良く見れば先陣を切って少女を追っているのは 賊爵:ジェロニモ=アラン=バルザという偉い人でした。 「いーーーーーやあーーーーーー!」 疾風の如くミーナの横を少女が通り過ぎました。 「まちたまえええええ!っとオイ!ストップ!ストップ!」 アランが制止すると後ろに付き従っていたあらくれ盗賊団も止まりました。もうもうと立ち上る砂埃。 ざっと四、五十人はいるでしょうか? 「やあ麗しのニーナ嬢!ご機嫌いかが!」 「またアンタか…」 ニーナはアランに執拗なラブコールを受けていました。一言で言うとアランの仕事は、悪いことをする奴らをボコボコにして お金を奪うことです、なので、ニーナの腕を貸して欲しいということなのでした。ついでに本当の意味でのラブコールも してくるのでニーナは辟易していました。 「早速だがニーナ!助けてはくれないか!」 「は?」 「いやあ、盗賊に手篭めにされそうになっていた少女を助けようとしたのだが、彼女全力で逃げてしまってね!  なんとなく盗賊と一緒に追いかけてしまったのだ!」 当然です。片目の仮面を身に着けて海賊帽を纏った怪人が正義の味方だとは誰も思わないでしょう。 「で?アタシ忙しいんだけど?」 「僕の後ろに控えている盗賊たちがいるだろう?話を聞いていれば解ると思うが…これ全部敵なんだな!  多分僕一人だと八つ裂きにされて肥やしになってしまう!手を貸してはくれまいか!?」 正直、この男を見殺しにするかまたは盗賊側の手助けをしたほうが得ではありました。 ですが、なんとなく…この男が死んでしまっては後味が悪いとニーナは思いました。 気を失ったままのフンダとケッタを降ろして、ニーナはぐるぐると腕を回しました。 首をコキコキ鳴らしながらニーナが 「報酬は?」 と聞くと、横に並んだアランは間髪いれずに 「僕のありったけの愛!…と少しのお金。」 とほざきました。顔面に裏拳をかますと、アランの仮面が割れました。 片目はありませんでしたが…。 超イケメンでした。 …ニーナの心はめっちゃドキドキしました。   *   *   *   *   * フンダが次に眼を覚ましたのは、地獄の一丁目ではありませんでした。 彼は胸元で大泣きするケッタの頭を優しく撫でてあげました。 孤児院の先生はほっと胸をなでおろし、二人を抱きしめました。 二人はそのまま孤児院に引き取られ、そこで過ごしました。 そして二人は、それぞれに子供が出来て、その子供が子供を生んで そのうちおじいちゃんとおばあちゃんになって、幸せに包まれながら息を引き取るまで その町に住み続けたということです。   *   *   *   *   * ニーナは結局アランと一緒に悪い奴をブッ倒す仕事に就きました。 アランはどんどん偉くなって、いつの間にか本当の貴族になっていました。 だからニーナもいつの間にか貴族の妻になっていました。   *   *   *   *   * あの少女。 追いかけられていた少女はどうなったのでしょう? 彼女は相変わらず、あちらこちらで追い掛け回されていました。 彼女は不幸でしたが、それでもどん底ではありません。 風の噂に、彼女と一瞬でもかかわった人たちが幸せになったのを聞いているからです。 彼女は迷い込んだ山奥の、じめじめした洞窟の中を今日の寝床とすることに決めました。 満天の星空を見上げて、少女はいつもと変わらぬお祈りをしました 「せかいじゅうのみんなが、しあわせになりますように。」 そしてもう一つ 「わたしもいっしょに、みんなとわらえますように。」 そうして、かき集めた落ち葉を布団代わりにして少女…ナナリーは眠りに付きました。 お祈りをされた星が青白く光って、悪い神様の形になりました。 彼…ヴァニティスタという名前の性悪の魔王は、珍しくニヤニヤ笑いをしませんでした。 星空に浮かんだ彼が、さっと腕を振り上げると、ナナリーの洞窟はほんのちょっと暖かくなりました。 彼はとても気まぐれだから、いつ悪戯をするか解りませんが… 願わくば彼が ずうっとナナリーを見守ってあげますように… 〜おわり〜