ヤオヨロズクリスマスSS 『べりめりくりはぴにゅー!』 サイボーグ堀内さん http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%A5%B5%A5%A4%A5%DC%A1%BC%A5%B0%CB%D9%C6%E2%A4%B5%A4%F3 怪異・谷村 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B2%F8%B0%DB%A1%A6%C3%AB%C2%BC 久禍 天象 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B5%D7%B2%D2%A1%A1%C5%B7%BE%DD スペシャルサンクス to 「日本分断YAOYOROZ」を愛する全てのとしあき! ---------------------------------------------------------------- ■今までのあらすじ■ とある事件でくびちょんぱされた(オグリッシュ若しくはグモッチュイーン的な意味で)堀内さん。 しかし、彼女は(中略) (ここらへんについては元設定閲覧、及びオススメSS『カミ=ナビ』を読んでください。) (urlはコチラhttp://221.39.226.140/up/cgi-bin/src/up0527.txt) (ちなみに未完らしいです。続きマダー?) …ってサイボーグとして蘇ったのだ!余談ですが脊椎フレームを触られると感じちゃうらしいd。 そしてその友達以上恋人未満だった男子、谷村。彼もくびちょんぱされましたがしかぁし! 紆余曲折あって、暴走YAOYOROZ、通称:怪異谷村になってしまったのでした! がしゃどくろチックな彼は堀内さんの愛の鉄拳でゴリゴリされて、手乗り谷村になりました。 今は堀内さんの使い魔以上恋人未満となって付き従っています。 うーむ、悲劇! そうして人間の体を捨てざるをえなくなった二人は、己の体を奪った 悪のヤオヨロズ使い「久禍天象」を毎日憎み続けながら悪夢にうなされるのであった… と思ったら大間違いで、実の所結構便利な体なのでそれをフル活用しつつ… 学校行ったり勉強したりスポーツしたり友達とお茶したりゲーセン行ったり 漫画を読んだりゲームをしたり「恋空」買って涙してみたり映画館に行ったり 購買デスマッチに参加したり期末試験の勉強に追われたり文化祭ではしゃいでみたり 体のメンテナンスしたり帝神の奴らにメンチ切ったりドリルで敵を粉砕したり 異次元からサイボーグが現れて諭されたりホームレス少女を拾ったり ホームレス少女にご飯をあげたり髪を切ってあげたりお風呂に一緒に入ったり そうしている内にホームレス少女が人間の心を取り戻したり 砕かれたり折られたり斬られたり装着されてみたり御祓いされて消えそうになったり 喜んだり 怒ったり 悲しんだり 思いっきり笑ったり しているのだった! どどん! ---------------------------------------------------------------- 「ピピッ!キショウノジカンデス。ジュウデンヲテイシシマス。」 目の前にあるうなじから伸びたコードを辿ると、家庭用コンセントに繋がっている。あの豚の鼻みたいな奴ね。 谷村は無い目を擦って、のそのそとベッドから手を伸ばすとコンセントを引っこ抜いた。 いっつも朝一で体の分解と再構築をしなくてはならんので、余計に起きたくなくなるのだが 今日はいつもとなんか違う。足を縮めなくても腕がすっと伸びたのだ。 「(ン?ナンカ、キョウハチョウシガイイゾ。)」 考える脳みそはもうないのだけれど、その骨の体を構築する霊的ななんちゃら全体で 思考することはできるのだ、谷村は。 日本を分断する、くっだらない大喧嘩も三が日が終わるまでは休戦だから 「(イマナラ、アノ、テイシンノ『ホネオンナ』ダッテ、トリコメルゼ…ケケッ!)」 などと無駄に粋がってみたりして。 それよりも目の前で惰眠を貪る鋼鉄のガールフレンドを叩き起こさなければいけない。 機械の体なのだから時間通りにぱっと起きられないはずはないのだが、どうにもこの娘 寝起きが悪い。首からケーブル引っこ抜いて二、三発ひっぱたかないと起動しやしないのである。 ドラ○もんかお前は!フリーダムだな! というわけで谷村君朝の恒例行事『話しかけまくる』後『堀内の上で飛び跳ねる』スタート。 「ほりうち〜ぃ…ほぉ〜りぃ〜う〜ちぃ〜…」 人魂が呼び寄せられそうな、思いっきりおどろおどろしい声で囁いたつもりが… 「んん?なんか、随分…」 まともな声だ。 「あ、あー。あいうえおあいうえおかきくけこかきくけこ…妙に、カツゼツ良いな?あ、あ。んーんー。」 おかしいな、ひゅるひゅると骨の隙間を風が通り抜けるような、そんな声しか出せないはずなのに。 しかし、違和感を感じようがなんだろうが起床時間は迫っているのである。 多数の研究員を総動員するメンテに遅れるわけには行かない。 うなじのケーブルを引っこ抜いて堀内に乗っかる。おかしい、視点が、高い。 「ぎゅう。」 堀内が潰された様な声を出した。 「おかしいな、俺、裸だ。いや、骨だからよ、ある意味裸は裸なんだけど、今日は、違うな。  正確にはパン一だ。白くなくて、俺、肌色?」 「後五分〜…重い〜」 顔を腕で覆って溶け切ったアイスみたいな声を出す堀内。 夢か!?いや、頬がつねれる!痛い! 「いてぇ!うわ、うわわああ!痛いぞ!痛みを感じる!」 「むぎゅう、もう重いってば!起きるからどいて!削るよ!」 払い落とそうとして堀内が掴んだのは健康な男子の肉体。血の通った、本物の肉体だ。 脇腹辺りだ。不意の感触に視覚センサーがバッチリ起動する、はずが、ちょっとぼやけた。 「お…はよう…ございます。」 「あ…おは…よう。」 目と目が通じ合う。通じ合う、というかお互いに串刺しだ。 「あの…重い。」 「悪ぃ。」 横たわった堀内の横に腰を下ろす谷村。ベッドが軽く軋む。 堀内の目は谷村から離れない。青年が窓を見ると、風が窓を振るわせた。 間 「これ、完全、事後だよなぁ。どうみても。」 「たにー…なの?」 「多分。」 「骨は?」 「この下じゃないかな。」 頬を引っ張ってみると、やっぱり痛い。夢じゃない、のか。 「いくらなんでもちょっと、恥かしいなこの格好。」 毛布に体を隠す、と、堀内はパジャマを引き裂いて腹部ユニットを取り外し、自らの脊椎を握り締めた。 「バカ何やってんだお前!」 ちょっと涙目になりながら堀内が答える。 「痛い!痛いよたにー!夢じゃないんだ!夢じゃない!たにーが帰ってきた!たにー!たにーーー!」 がらんどうのお腹を放っといて、我を忘れて堀内は谷村を抱きしめる。全力で。 感動の再会…キラキラと輝きだす空気…堀内の生身の目からあふれ出る涙… そしてギリギリと軋む谷村の体。 「がっは…ほり…う…し…ぬ…ごぼっ。ごぼぼ。」 「たにぃ…たにぃ…。もう離さないよたにー!」 めきめきと谷村の骨が壊れていく音がするが、堀内の高性能イヤーはこんな時に限って上手くはたらかない。 「もう…だ…め…」 バキッと何かが崩壊する音がした。 堀内の部屋のドアが吹き飛んでいたのだ。血の泡を吹き白目を剥く谷村に気づかず、侵入者に身構える堀内。 すわ、帝神の刺客か!と思いきや 「おとどけものでーっす!」 「くーちゃん?」 「お邪魔だったー?」 にやにやしながら二人を見つめるのは元「久禍天象」今は堀内家の居候「くーちゃん」だ。 手にはビデオを持っている。お届けものとはこれのことだろうか? 「鍵がかかってたからさー、ねぇ?てっきりえっちなことしてるのかと。」 「こらくーちゃん!どこでそんな悪い事覚えてくるの!?」 そりゃあ勿論聖護院の諸先輩方に決まっている。子供のような無垢な心を持った女の子を 汚すのはいつだって、まぁ、その耳年増な、或いは本当に色々経験してる女子だ! そうに決まっていると筆者は思います! 「自分の部屋でも戸締りしろってお父さんにも言われてるんだから、鍵がかかってるのは  当然でしょ?今度乱暴したらもうお勉強教えないからね!」 「東雲先輩に教えてもらうからいーもーん!ねぇそれよりたにー血吹いてるけど大丈夫?」 「あー!たにぃ!ダメー!死なないでー!」   *   *   *   *   * 『こ〜んば〜んわ〜…』 『今年もやってまいりました、寝起きドッキリならぬ『寝込みドッキリ』のお時間で〜す…』 ビデオに写るサンタ二人。覆面と付け髭で誤魔化してはいるものの、どうみたってそりゃあ ほりうちちと谷村父である。 二人がぼそぼそ喋りながら立っているのは堀内の部屋の前である。 『はぁい、これを見ていると言う事はね、もう気づいているとは思いますけれども…』 『これから二人の部屋に侵入しようとおもいまーす…!』 『はい、ではここで特別ゲストの登場でーす…!』 『どうもー…!』 三脚に固定されたビデオカメラの横からサンタガールのコスプレをしたくーちゃんが登場した。 「あ、見てあたしあたし!ほりうちお父さんが買ってくれたんだよ!」 画面を指差して笑うくーちゃんを見る二人は心底げんなり顔である。 『えー、娘の電源はかっちり落としてあるのですが、谷村君はそうもいきません。』 『ねぇ、怪異化して気配やらなんやら敏感になってますからねぇ。』 『そこでくーちゃんの出番というわけです…!』 『はぁい…!』 谷村父が暗視スコープを装着する。くーちゃんはYAOYOROZの発動準備。 ほりうちちは合鍵をすでに鍵穴に差し込んで、突入準備は万端だ。 『では突入開始といきます。…3…2…1…GOGOGOGO!』 特殊部隊経験のある谷村父が開錠されたドアを蹴り開け、対怪異用の銃弾を谷村の体に叩き込む。 ほりうちちは滑り込むようにしてコンセントを引き抜き くーちゃんはYAOYOROZ「アマテラス」を発動させ、谷村を完全に封印した。 突入開始から約二秒後に堀内の部屋は、二人のサンタと一人のサンタガールに制圧されたのである。 「ひ…ひでぇ…」 「…」 堀内は絶句している。けらけらと笑うくーちゃん。 ビデオの中では気絶、というか崩れかかった谷村を三人が袋詰めにしている。 一旦ここでビデオは途切れ、次のシーンは謎の研究室。 どうも見たことがあると思ったらほりうちちの研究室だ。このシーンではもうくーちゃんはいない。 『あ、もう、オッケー?こほん…。はい、我々がこんな凶行に及んだのは、ひとえにサプライズのためです。』 『ええ、良い暇つぶ…いえいえサプライズプレゼントですよ、そう。』 撮影係は谷村父らしい。えらい近くで声が聞こえる。 『えー、ここからはかなりショッキングなシーンになりますので、とりあえずネオ谷村君の素体だけお見せしましょう。  ジローちゃん、頼む。』 『はーい…ダラララララララ…ジャーン!』 谷村父の口ドラムロールの後ドアップになったのは緑色の液体に浮かぶ、生前そのままの谷村である。 「うわあ、気持ち悪ぃなオイ!」 「あ、凄い。プリンまでしっかり再現してる。」 「あー、死んだ時染め直してなかったんだよなー。」 根っこが黒くなった髪の毛を見て二人が呟く。 「あ、たにーの髪の毛ってあーなってたんだ…ヘルメットの印象しかなかったからなー。」 「んのやろう、人の脳みそ掻き回しやがった癖にあっさりと…」 『ね、多分驚いていると思うけども、これは凄いでしょ?堀内さんに感謝するんだぞ幸一!』 ドアップ、トゥ、ほりうちち 『いやいやいや、ジローちゃんが学園の金やら資料やら横流ししてくれたからだって!』 『いやいやいやいや、そこはほら、堀内さんの…』 そこから褒め殺しあいが続く感じだったので早送りになった。 『…だって!おっと、そろそろ飽きていると思うので、それでは手術に入りまーす。』 『どんな手術かというとー?』 『谷村君!復活!大改造!手術!プロジェクト!どどん!』 『堀内さん長いよそれー。』 『すまん。このプロジェクトはまぁ色々学術的な意味もあるにはあるけども!  恋する二人に対しての…せーのっ!』 『 『 ク リ ス マ ス プ レ ゼ ン ト で あ る ! 』 』 『 『 ど ど ん ! 』 』 「きゃー!恋する二人だって!ひゅーひゅー!」 囃し立てるくーちゃんをガン無視して二人はぽかん顔である。 「え、それで今に繋がるわけ?」 「…」 堀内、無言。思考回路はショート寸前チックな感じで。 冗談で。確かに冗談で「谷村とデートしたい!」などと口走ったことがあったが!あったが! 俯いたまま真っ赤っかの堀内を見て、なんだか谷村まで恥かしくなってきてしまった。 崩れかけた谷村がミキサーにかけられて粉にされる映像の後、 ビデオは全面モザイクになってしまって何がなんだか解らなかった。 『うわー、これはグロいわー。』などと撮影係の谷村父が呟いていたので、多分手術映像だったのだろう。 くちゅ、にちゅ、と肉の音が響く映像をミュートにしてくーちゃんは立ち上がった。 「じゃああたし部活いってくるね!」 「え、ちょっと。いつの間に?何の部活に?」 「うふふ、ひーみつっ!じゃーねっ!」   *   *   *   *   * 嫌気がさすほどハイテンションな二人のサンタの「ヨーホーホー!メーリークリスマース!」 という高笑いで、テレビは青画面に戻った。 「…。」 沈黙。 毛布を被ったままの谷村と、俯いたままの堀内。意を決して顔を上げる。 「「あのっ!」」 「「…。」」 沈黙。 そりゃあお互い充分に異性として意識はしていたけれど、それはこの体になる前のハナシ。 お互い生きた肉体を失って、お互いを失ってからは、やっぱり「好きだった」のが解ったけれど この体になってからは、異性というよりは「頼れる相棒」だったのだ。 それが突然のクリスマスプレゼントで一気にぶっ壊れた。 お互い、抱きしめようと思えば抱きしめられる。 キスしようと思えばキスだってできちゃうんですよ奥さん! 距離感が掴めない。異性云々どうでもよくなったサイボーグと怪異の関係から 「堀内さん」と「谷村くん」に…! 「…でかけよう、ぜ。」 沈黙を破ったのは谷村。 「え?」 「人前で歩いても、喋っても驚かれない。普通に外歩けるんだから、出かけたいな、俺は。」 「…うん。」 「でもなぁ…この格好でどうしろってんだよな。おじさんも親父も詰めが甘いよなー。」 「…ね。…あ!お母さんにお父さんの部屋から取ってきてもらおうか?」 「サイズ…合うのかな…?」 「わかんないけど、無いよりマシでしょ!言って来る!」 ドアを開けた瞬間、しっかりと畳まれた服が廊下に置いてあった。 堀内も見たことがある谷村のモノもいくつか混じっているし、恐らく買い足したのであろうモノもある。 置き書きを見ると… 「お母さんとお父さんは温泉旅行に行ってきます☆  お小遣いも置いておいたから使ってネ。戸締りだけは忘れないで。  谷村君の服は学園のお友達にも手伝ってもらって選んだので  大丈夫だと思います!  メリークリスマス!  母より」 硬直した堀内の後ろから谷村が覗き込む。 「お母さんの方が一枚上手だったみたいだな…」 〜続く?〜