サイオニクスガーデン、通称「PG」の名称で呼ばれるそれは超能力を操る少年少女たちがゴールデン ウィークもお盆も年末年始も関係なく悪の組織と戦い続けるために創設された学園である。 表向きはごく普通の私立学園という事になっているがそれは当然建前であり一般人は入学する事はも ちろん敷地内に入る事も来ず、それ以前にその場所も知らず、そもそも存在さえ知らないのがほとん どというほどの秘匿性だ。 黒髪の少女、麻生奏詠が所属するのはそんな組織であり当然彼女も超能力者である事は言うまでもな い。 が、それはいつもの話。 今日はたまの休日でありオフの時の奏詠は超能力者ではない普通の少女であり今こうして訳もなく街 を歩いているのも普通の少女なら当然の事である。 ちなみに上で休みなんかないとか書いてるがそれこそ建前であり年頃の少年少女達には適度に休みが 与えられ息抜きをする事が出来るしお盆とか年末年始とかそういう時期は悪の組織もあまり積極的に 活動せずちゃっかり休んでいるのだ。 まぁそんな訳で奏詠は平日の昼間から無軌道の若者の如くブラブラしているだ。許さん。 なお1人なのは友達がいないからとかそういう寂しい理由ではなくちょっと昔の事を思い出したからで ある。 PGに入って大分経ちと友人も出来たし少し笑顔も増えたがだからこそ1人になりたい時もあるのが乙女 心ってもんだ。 街を歩いていてもオセンチモードの泰詠にとって人ゴミなどただの風景に過ぎず周囲の雑音もつけっ 放しのTVの声に等しい。 なので悪い虫が寄ってきても微動だにせず持ち前の美貌とクールさと知恵と勇気とガッツで無視して いるという自覚すらなく無視していた。悪い虫だけに。 だがそんな状態でも意識というものははっきりしているらしく奏詠は路上をど横切ろうとする子犬に 気付いた。 そしてタイミングを計ったかの様に前方からはトラックが。お約束通り運転手は眠っている。 「───っ」 考えるよりも先に体が動いていた。 奏詠は人ゴミの間を風の様に擦り抜けながら自身の保有する超能力──サイコキネシスでトラックの ブレーキを押さえつけ迷わず車道に飛び出し子犬を抱い上げそのまま反対の車道へと駆け抜けた。 まさに一瞬の出来事である。 周囲の者たちは何が起こったのかさえ理解しておらず気付いた時にはトラックが道の真ん中で止まっ ているとしか思っていない。 今のところ奏詠の活躍に気付いている者はいない。 (騒ぎになるのはまずいわね) 奏詠は混乱に乗じてビルの間の路地裏に逃げ込むと子犬を抱えたまま入り組んだ道を走り別の通りへ と抜け出た。 と、そこでようやく子犬を確認する。 柴系の雑種と思しきその子犬は何が起こったのか気にする事さえなくただ奏詠の腕の中でもぞもぞと 動いている。 「・・・首輪はしてない。野良犬か捨て犬か。どちらにせよ帰る場所はないみたいね」 どうしようと小さく呟くとその声に反応する様に子犬がキャンと鳴いた。 「・・・・・・本当にどうしよう」 助けたはいいが咄嗟の行動だったのでその先は考えてなかった。まさか捨てる訳にもいかない。 奏詠は腕の中の小さな命の扱いに困り果てていた。 あれこれ考えた末に結局ガーデンに連れて帰るしかないのかと結論が出かけた時急に子犬が暴れだし キャンキャンと鳴き出した。 「ちょ、ちょっと待っ!・・・あ」 奏詠は腕から逃げ出した子犬を追いかけようとしたがその足を踏み出す事はなかった。 「親がいたんだ・・・」 子犬の走っていった先には子犬の親犬らしき雑種犬がおり子犬は嬉しそうにその周りとグルグルと回 っている。 親犬は奏詠を一瞥すると子犬を連れて路地裏へと消えていった。 「・・・お前には親がいて良かったね」 野良犬親子を見送った奏詠の顔には優しげな、しかしどこか悲しげな微笑みが浮かんでいた。 と、その時。 「ふふふ、キミは随分と複雑な笑い方をするのだね」 「っ!?」 奏詠は空気を読まない謎の声の方を振り向く。 するとそこにいたのは予想外の人物だった。 「誰!?」 それは全く知らない少女であった。 顔立ちは随分と可愛らしく髪はふんわりとした金髪、身長は推定140cm前後と矮躯で全体の雰囲気か らはなんとなくヒヨコを連想させられる。 だがその態度はヒヨコというほど可愛らしいものでななかった。 「ふふふ、通りすがりの天才だよ」 「・・・・・・ふざけないで」 「ふざけてなどいないさ。僕が天才なのは自他共に認めざるを得ない事実だよ」 奏詠の脳はあっさりと答えを導き出した。 (馬鹿だわ) 正解だった。 だがヒヨコ少女はそんな事思われてるとは露知らず相変わらず偉そうにしている。 「まぁ確かに天才を天才と呼ぶのは粋ではないし自己紹介をさせてもらおう。僕の名は猫神狐狗狸。 KMR(KOTODAMA MISTERY REPORTAGE)の隊長をしている」 奏詠はヒヨコ少女、狐狗狸に対する評価を改めた。 (馬鹿で変人だわ) またしても正解だった。 だがその程度の事は狐狗狸の事を10秒も見てれば分かる事なので残念ながらハワイ旅行へはご招待出来ない。 「では次にキミの名前を教えてもらおうか。黒髪の美少女くん」 「・・・麻生、麻生奏詠よ」 一瞬躊躇ったがややこしくなりそうなので渋々答える事にした。そして名乗った後に偽名を使えばよ かったと後悔した。 だが真に後悔すべきは反応してしまった事だった。 「おやおやボクは黒髪の美少女くんとしか言っていないのにどうしてキミはそれが自分の事だと思っ たのかな?いやいや別に構わないんだよ?キミが黒髪で美少女なのは100人中100人が認める事実なの だからね」 狐狗狸はすごくウザい事を言ってきた。 思わずぶっ飛ばそうかと思ったが日頃鍛えた精神力でカッとならずに頑張って耐えた。 言わずもがな狐狗狸に対する評価はランクアップした。 (馬鹿で変人でもの凄くウザいわ) 三冠王達成である。 だがやはりその程度の事は以下略。 「まぁまぁそんな目で見ないでくれたまえよ麻生くん。場を和ませるための軽いブラックジョークじ ゃないか」 「・・・・・・」 早くも眩暈がしてきたが精神のスイッチを切り替える事で対応した。 『さくせん:クールにいこうぜ』 この手のタイプは本気で相手をしてはいけない。 上辺だけで対応し自分と相手の間に精神のクレバスを作りあくまでクールに対応するのだ。 「・・・猫神さんだったかしら。率直に聞くけどあなたの目的は何?」 Mならこれだけでご飯3杯は軽くイケそうな冷たい眼差しに冷たい態度である。 自慢ではないがこういう対応には自信があるのだ。 だがそれが通じるのは一般人レベルの話。 変人奇人が跋扈する言霊学園でもトップクラスの変人である狐狗狸にとってその程度薄氷に等しい。 狐狗狸は精神のクレバスにマッハ5でレインボーブリッジを建設するとF1マシン並の速さで向こう岸 へと渡っていった。 「うん、話が早いのは良い事だ。では僕も率直に聞くがキミは超能力者だろう」 「なっ!?」 狐狗狸のクロスカウンターは奏詠の心のテンプルにクリティカルした。 「その反応を見るに図星のようだね」 「・・・そんな訳ないでしょう。というかあなたはこの世に超能力なんて非科学的なものがあると思っ ているの?自称超能力者なら世界中にいくらでもいるでしょうけどそんなものは全てトリックよ」 「人というのは嘘をつく時無意識に饒舌になるというのはご存知かな?ええとオバマくん?」 「・・・麻生よ。というかその間違え方は流石に苦しいわよ」 「うん。ジョジョは知らない様だね。知っているなら僕も『グッド!』と言うところだが」 「?訳の分からない事を言わないでちょうだい。大体何を根拠にそんな事を言っているの」 「根拠というよりは推理なのだがね。早い話が僕はキミが子犬を助けた現場の目撃者なのさ。他の人 々はそもそも何が起きたのかすら気付いていない様だったが僕の目は誤魔化せんよ」 「・・・見てたのね」 「余すとこなくね」 そこは素直に驚いた。 先ほどの現場で突発的な出来事に混乱する事もなく自分の顔まで把握しその上入り組んだ路地裏に迷 うことなく自分の元へと辿り着いているのだから。 しかもどういう訳か自分が超能力者である事まで見抜いているときている。 観察力とかそういうレベルを超えているので本人の言う通り推理なのだろうがそれにしたって驚きで ある。 「しかしあの後現場は大変だったのだよ。状況を把握した人々が一斉に騒ぎ出すはトラックの運転手 は引きずり出されて袋叩きにされるは子犬を助けた当人はいないはでまさにカオスだったよ」 「そうやって騒がれるのが嫌だからさっさと逃げたのよ」 「だろうね。だがそこがまた格好良いじゃないか。テリーマン然り浦飯幽助然り上杉和也然り牧村香 然り危険を顧みず他者を助ける者というのはいつだって素晴らしい。素晴らしいのだが1つだけ気に なる点があってね。居眠り運転をしていた運転手はどうやってブレーキをかけたのかという事だ」 どうやら狐狗狸が本当に余すとこなく見ていたようだ。 走ってくるトラックを見てその時の運転手の状態を見る事が出来る者など奏詠やPGの生徒の様に日頃 から精神を研磨している者くらいだろうに。 そこで奏詠はある可能性を思い浮かべた。 (まさか彼女も超能力者?PGのデータファイルにも載ってないと思うけど未発見の能力者か───そ れか『NEXT』の構成員か・・・いや、それはないわね) 目の前の少女は馬鹿で変人でウザくて洞察力は鋭いが一般人だろう。 無所属の能力者ならば大抵の場合同属に出会えた喜びで自分から得意気にその能力をベラベラ喋るし 『NEXT』ならば奏詠が気付いていなかった最初の時点で殺されている。 それに下手に聞くとそれが自分の首を絞めそうな気がしないでもない。 ここは一先ず言葉を飲み込んで狐狗狸の話を聞いておいた方が無難だろう。 「まず可能性の1つとして運転手が自らかけたというのがあるがこれはないだろう。何せ彼は車から 引きずり出されるまでずっと眠っていたのだからね。では2つ目の可能性だがいわゆる奇跡というや つだ。危険を顧みず子犬を助けようとした美少女の姿に感激した神様がブレーキにちょちょいと魔法 をかけたのかもしれないね。だがこれもない。車が止まったのは子犬がいた地点より先でありもし神 様が魔法をかけてくれたなら車は即座に停止していると思うのが普通だろう。よってこれもない。 そして3つ目、2つ目と似ているが神様ではない誰かがブレーキを作動させたという可能性だ。そして あの状況でブレーキをかけられるのは超能力者、それもおそらくサイコキネシス系の超能力者だと思 われる」 奏詠はべらべらと一気にまくし立てる狐狗狸に若干引き気味だったがその内容は的を得ている。 神様だ何だという件はおそらく3つ目に繋げるためにわざと挟んだ思いつきだろう。 絶対にありえない事をを先に言っておく事でそれより幾分かマシな事の可能性を高く見せようという 目論見もあると思われる。 −100−10はどちらも結局−だがそれでも−10の方がマシに見えるという事である。 奏詠は心の中で狐狗狸の機転に関心していたが実際は狐狗狸はけっこうマジだったりする。 むしろ運転手がブレーキをかけた可能性より神様がブレーキをかけた可能性の方が高いとさえ思って いるのだが事実を知ると奏詠さんが可愛そうなので黙っておこう。 「そして何度も言うが僕はあの後の現場を調べている。結果超能力者はおろか状況把握さえ出来てる 者もいなかった。となると消去法で超能力者はキミという事になる。キミが超能力者ならば飛び出し た時の迷いの無さやその後すぐ姿を晦ませた事にも納得がいくしね」 「いや、そんな訳ないでしょう」 「即答か。ならば認めさせてみせよう」 そう言うと狐狗狸は懐から自動拳銃を取り出すとそれを自分のコメカミに当てた。 「この銃はインターネットの闇サイトで購入した紛れも無い本物だ。まぁ弾は非致死性の硬質ゴム弾 だがそれでも人間の骨にヒビを入れるくらいは出来る」 「・・・・・・」 「見知らぬ子犬のために命を懸けられるキミだ。目の前で重症を負うであろう者を見過ごす事は出来 まい」 「自分を人質にするっていうの?あなたおかしいわよ?」 「天才とは昔からどこかしら狂っているものさ。だから──」 「!?」 狐狗狸は突如奏詠向けて発砲した。 いや、発砲しようとしたが出来なかった。 狐狗狸がトリガーを引く刹那奏詠が能力を発動させトリガーを固定したからだ。 そして次の瞬間にはもう狐狗狸の手から拳銃は奪われ腕をガッチリと極められ完全に捕縛されてい。 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!ちょ!タンマ!分かったから!ギブギブ!メル・ギブソン! !冗談だから!銃もただの玩具だから!!だからちょ、早く離してくれ!!もげるもげる!!」 奏詠はまだほとんど力を入れていないにも関わらず狐狗狸はあっさりと音を上げた。どんだけ弱っち いのだろう。 仕方なく開放してやると狐狗狸は生まれたての小鹿の様にプルプルしながら立ち上がろうとして倒れ た。 奏詠はその間に奪った拳銃を内側から分解して玩具である事を確認したり携帯を操作する。 結局狐狗狸が立ち上がるまで3分以上かかった。 「いやぁ驚いた。キミは随分と強いのだね。やはり何か特殊な訓練でも受けているのかい?」 「一応格闘訓練は受けてるけどたぶんあなたが弱すぎるだけだと思うわよ」 「それもあるね。自慢ではないが僕の戦闘力は先ほどの子犬にも劣るよ」 「本当に自慢になってないわね。というかあんなに弱いくせによくあれだけ偉そうに振舞えるわね。 逆に関心するわ」 「僕の武器は話術と頭脳だからね。それに肉体労働担当は別にいるのだよ。一本槍魁子というのだが これがまた友情に厚い素晴らしい奴でね。その上カンフーの使い手で腕も立つ最高の人材さ」 「肉体労働担当ね・・・」 奏詠は心の中で見知らぬ肉体労働担当者に同情した。 何かスイッチが入ったらしい狐狗狸が過去の武勇伝を語っているが言葉の彼処に出てくる預言書やら 始皇帝やらグレイやら電波全開のワードから察するにとんでもない目に遭っているのは間違いない。 意識を遮断して適当に相槌を打っているとふと、思い出した。 (思い出した・・・言霊学園。変人奇人の坩堝だとか変態の蟲毒だとか言われてる妙な学校が確か言霊 学園っていったはず。彼女はそこの生徒なのね。だとすると噂は本当みたいね・・・) 狐狗狸みたいのがいっぱいいる学園を想像して奏詠は寒気を覚えた。想像するだけで恐ろしい。 「っと、すまない少々脱線してしまったね。では話を戻そうか」 狐狗狸の感覚では5分以上ノンストップで喋り続けて少々らしい。 しかもその内容は全て怪奇現象やらUFOやらオカルトチックな事ばかりである。 「もう一度確認するが麻生くん、やはりキミは超能力者なのだね?」 「ええそうよ。ここまで来たら隠すのも面倒だし素直に言うわ。私は超能力者麻生奏詠。保有する超 能力は猫神さんの推理通りサイコキネシスよ」 「ふ・・・ふふふ、ふふふふふ!そうかそうかそれは実に素晴らしい!まさかスカイフィッシュを探し ていて超能力者に出会えるとはね!」 「それで私が超能力者だとしたらどうなのかしら?TV局にでも売り込むのかしら」 「そんな無粋でつまらない事する訳ないだろう。あんな利権まみれの報道メディアなどにせっかく出 会えた超能力者を渡すものか」 「お金が目的じゃないの?」 「これでも僕の実家は成金なんだ。金には不自由していないよ。僕の興味はただ1つ。キミと友達に なる事だよ!」 「・・・は?」 「友達だよ。TOMODATI」 言いながら狐狗狸は奏詠に人差し指を向ける。有名なあのシーンの真似である。 流石にともだちんこは自粛したらしい。 「・・・友達って、本気で言ってるの?」 「無論さ!」 「私と友達になってどうするの?」 「どうするも何も超能力者が友達だなんて最高に格好良いじゃないか」 そしてまぁ正直と少し照れくさそうにしながら 「僕は知り合いは多いが友達は少ないから普通に友達が欲しいというのもあるんだがね」 と続けた。 友達が少ないというのは嘘ではないだろう。見れば分かる。 でもだからってまさか友達になってくれと言われるとは予想外である。 奏詠は何とも言いがたい複雑な表情を浮かべつつゆっくり口を開いた。 「・・・猫神さん。悪いけど私はあなたとは友達にはなれないわ」 「何故に!?何故ゆえにだい麻生くん!?やはり僕のキャラがウザいからかい!?」 「自覚はあったのね・・・でもそうじゃ・・・いや、それもなくはないけど私は、私たちは普通の人たちと は相容れない存在なのよ」 「普通?はん何だねそんなもの。キミは僕を見て普通の人と思うのかい?」 「それは・・・まぁその確かにちょっと変わってるとは思うけど・・・私の言う普通っていうのはそういう 意味での普通じゃないの。普通っていうのは表の世界、普通じゃないってのは裏の世界って事よ」 「それはつまり」 「お察しの通りそういう事よ。だから私はあなたとは友達になれない。あなたを戦いに巻き込んでし まうから」 「ふむ、なるほど。まぁそんなとこだろうとは思っていたがそうすると困ったな。僕は今キミからい ろんな情報を聞いてしまった。これはもう巻き込まれたも同然ではないのかね?」 「いいえ、あなたはまだ巻き込まれていないわ」 悲しげにそう言うと奏詠はそっと目を伏せた。 「何?それはどうい、うっ!?」 狐狗狸は問いただそうとしたが何者かに頭部を殴られて気を失ったため最後まで言い切る事は出来な かった。 「これでいいか?」 険のある目つきの少年は倒れた狐狗狸を見下ろしながら奏詠に尋ねた。 「はい、ありがとうございます岸峰先輩」 「まぁ目撃者の記憶を消すのが俺の任務だけど聞いてりゃこいつそう悪い奴とは思えなかったぜ?ま ぁ確かに口は滅茶苦茶軽そうだけどよ」 「そうですね。でもたぶん彼女は今私から聞いた事は誰にも言わなかったと思います。私も最初はと んでもない人と関わってしまったと思いました。PGに連絡して岸峰先輩がすぐ来れると分かった時は すごく安心しましたし。でも」 「話してみたら意外といい奴だったってか」 「はい。まるで他人の事など全く思いやっていない風な言動ですけど私と友達になりたいと言ってく れた時の目は他人を思いやる事の出来る人の目でした」 「そっか。じゃあ尚更巻き込む訳にはいかねーな」 「はい・・・」 「つーか俺の出番これだけかよ。ったく脇役もいいとこだぜ」 「それも女の子を殴って気絶させる役ですしね」 「・・・お前そんな毒吐くキャラだっけ。いや俺お前の事よく知らねーけど俺のイメージだともっとク ールでお高くとまってる感じだったんだけど」 「峰岸先輩、人間は変われるって知ってましたか」 「あー、あっそ、そういう事ね」 「う・・・うぅん」 狐狗狸が目を覚ましたのはそれからまもなくの事である。 「あれ?ここはどこだ?そして僕は誰だ?などとベタな事を言ってみたが本当にここはどこだ?確か 僕はフィレオフィッシュを・・・違う!スカイフィッシュだ!そうだスカイフィッシュを探してたんだ った!いかんいかん!こんな所で油を売ってる訳にはいかんのだ!!」 復活して早々テンションMAXになると狐狗狸は路地を出て何処かへと去って行った。 奏詠と峰岸は狐狗狸の死角になるところからその様子から眺めていた。 「どうやらちゃんと記憶は消えてるようですね」 「当たり前だろ。だから確認なんていらねーからさっさと帰ろうって言ったじゃねーか」 「念のためですよ。万が一断片でも記憶が残ってたらまた彼女を殴ってもらわないといけませんし」 「うわそれすっげぇ嫌な役。重宝してもらえんのはありがてーけど女を殴んのだけはどうにもなぁ」 「その辺は任務と割り切ってください。それにどうしてもモヤモヤするなら戻ってから神谷先輩と遊 べばいいじゃないですか」 「お前本当に変わったわ」 (やれやれ天才の頭を殴るとはとんでもない奴だな全く。それにいくら超能力だろうと一度目覚めた 友情パワーを消す事など出来る訳ないだろうに、なぁ奏詠)