第75話 黒騎士と熱砂 前編 前回のあらすじ 魔王との戦いに勝利しアリシアを奪い返したヒース一行、そんなヒースだったが、戦いの中でアリシアへの思いを打ち明け 少しだけアリシアと距離を取ってしまう。アリシアと両想いだとも知らず、二人はすれ違いついにはヒースはアリシアを 突き放してしまう。だがヴェータ達の応援もあり、アリシアに本当の思いを告げ、ヒースとアリシアは結ばれるのだった。 「あ……」 暑い、アッチー村の非にならない! ここはファラプト…南側に位置する砂漠の国だ。 ここにきた理由は俺の記憶に有益な可能性がある、場所に行く為だ 「ふと思うんだ、女に生まれたかった」 「まぁ…しょうがない、俺と一緒にがんばろう」 荷台の中では女の子による薄着で暑さを凌ぐ会(ペルソルナが会長)が結成。ヴェータは中から出されて 今は荷台の操縦席に当たる部分で、俺と一緒に暑さに苦しんでいた。肌を隠さないと肌がヒリヒリして後が酷く ヴェータも俺も日焼け止めを塗ったが半袖にはなれなかった。 「王都に付く前に干からびそうだ…」 「町はまだ見えないな…ほら、水だ」 砂漠用のキャタピラで進めないと言う事はないが、何時もよりもスピードが遅く感じられた 砂漠で野宿なんてゴメンだ、気温の変化が極端で凍死や衰弱の可能性だったるのに 「すまん、んっんっ…ふぅ。」 「アリシア達は水とかあるのか?」 「さっきタンクを出させたろう? 大丈夫さ」 あぁ…そうだった、ヴェータが出された時についでに出したんだ。こう暑いとダメだな… 荷台のカーテンを開ければ、アリシア達が下着かそれに近い格好で涼んでいるんだろうな 「ヴェータの気持ちがなんとなく分かる」 「日の光を遮るだけで、変わるものだからなぁ」 操縦席の屋根でできた日陰でヴェータがため息をついて、どこからか出したうちわで涼もうとしていた 俺も涼みたいが、バイクを運転してる身だしそうも行かない。暑くてもがんばらないと 「どこか近くの町につけるといいが…」 「王都まで到着するのが最善なんだけどなぁ」 「高望みは禁物だ、ヒースがオーバーヒートしたりすると大変だ」 オーバーヒートは無いと思うが、汗をかきすぎてショートするかもしれないと言うとヴェータが笑ってた まぁ自分の汗でショートするロボットなんて、笑い話にもならないからな 「なぁヒース、思ったんだが」 「む? どうしたヴェータ」 「皆は下着だけだろうか? かもしれない、着替えても暑いし中はカーテンで光を遮っているし、日焼けする心配も無いなら 下着だけでも十分…む? 考えてみればカーテンで今、中の通気性は最悪なんじゃ… 「やばい! 熱中症になってるかも知れない!」 「何だと! 皆大丈夫か!?」 ヴェータがカーテンを開け、中を見るとそこには下着姿で倒れているヤカリと…普通に起きているメディナ ウェンディがポカーンとした表情だったが次第の赤くなり、アリシアの悲鳴が響くと後に続いた 「ヴェータのすけべー!!」 「早く閉じなさいよバカ!」 「うわっちょっ待て! 落ち着け!」 「んっ…何だよ寝てたのに…」 あくびをしながらヤカリが起きると同時に、カーテンがまた閉じられた。一瞬だけ涼しい風が出てきたのだが カーテンが閉じられると同時に、それも消えてしまった。そうか魔法で涼んでたんだな… 「カーテンで涼しいのが逃げないようにすれば大丈夫か」 「そうだったな…暫くウェンディに口を聞いてもらえるかな…」 ヴェータが肩を落として、ため息をついている…しょうがないか。俺にも責任があるし悪い事をしたと 謝っておくと、ヴェータは気にしてないと手を振っていて、またお互いに暑いといい続けると思ったが… 「っヒース何か来るぞ!」 「あぁ、皆に伝えてくれ!」 「もう気づいてる、ロボットか怪獣の類よ!」 もう服を着たウェンディがカーテンから出て、外を見ながら叫ぶと同時に周りの砂が膨れ上がり さらさらと水のように流れ落ちる。砂が流れ落ちきるのには1分もかからず、敵はその姿を目の前に晒した 「そこの馬車…じゃないね、そこのバイク! 金目のもの出しな!」 緑色の蠍だ、見覚えのある機体だがどこで…そうかヴェータ達となじみが深い機体だろうがこれは 「ヘルアーマー! となると緑の蠍か!」 「聞いた事があります! ファラプトの大規模な盗賊ですね!」 「盗賊? なら話が早いわ…ペルソルナ、ヤカリ起こして」 「待ってよ、ヤカリ爆睡すると起こすの大変なんだよ!?」 皆が服を着てるのだが、ヤカリだけは寝てて下着のままだった。寝てたらしょうがないが暑さで眠気が限界だったか? ヤカリが眠りっぱなしなんて珍しい。寝返りを打つヤカリをペルソルナは必死で起こそうとするが潰されてた 「おいお前ら! いつまでもたもたと…」 「盗賊相手に戦うのは慣れてる、禁」 「まてヒース、面白い考えがある。」 皆が少しこけかける。ヴェータに面白い考えがあるらしいが…何だ? ヴェータがズメウも出さずに ヘルアーマーの前に歩いていく。いくらなんでも危なすぎるすぐに禁忌を… 「僕の名はヴェータ、ヴェータ・スペリオルだ」 「はぁっ!? 暑さで頭でもイッてんのか!」 「証拠はある、何ならファラプトの軍に応援でも頼んでいいぞ?」 ヘルアーマーと周りにいた数機のロボが、信じるかと言わんばかりに武器を構えたが ヴェータが何かを取り出すと、そのままロボット達は硬直してしまった 「おい! こいつ本物だ!?」 「何で知ってるんです頭!」 「アタシも学の一つや二つはある! となるとそこの青いのはヒースとか言うロボットか…」 ちっと舌打ちをすると、盗賊たちのロボットはまた砂にもぐり、消えてしまった…助かった 「助かったヴェータ、流石だな」 「何が流石か分からないが、まぁこれで一件落着だな」 「だ…あっちぃ…」 何か言う前にヤカリがさっさと荷台に戻り、また皆が戻ってしまった。ヴェータと俺はまた暑い中 二人で暇つぶしをしながら、王都へと向かう必要があるようだ…がんばろう 「なんだか叫んで疲れた…暑いって不便だな」 「ほら、水だ」 「あぁ、ありがとう。」 ヴェータがコップの水をすぐに飲み干すと、帽子を被り日陰部分でため息をついた。 こうして俺達はまた進み始める、少しずつだが確実に王都には近づいてるはずだ 「王様に会う時に汗まみれになっちゃうね…」 「無事なのはペルソルナだけだろうな」 やっと王都に到着したのは昼ごろ、王宮は石造りだがスリギィやウィズラドとは雰囲気がまるで違う 場所が180度も違うと材料が同じでも、文化はまったく別物になるのかもしれない 「ファラプトって初めて…なんだか不思議な感じ」 「今までの国と全然、別世界だわ…スケッチが楽しそうだ」 キョロキョロと言う訳ではないが、面白そうと目を輝かせているウェンディとヤカリに突っ込みを入れるように メディナが釘をさしておいた、今回は俺の記憶の手がかりがありそうな場所に行くんだししょうがないか 「ここの王様は研究熱心で有名ですし、少し気難しいかもしれませんね」 「自らを魔法の実験台にしてるそうだからな、学者肌だとは思う」 「実験台?」 「ここの王様、何かの魔法を自分で実験してるみたいよ」 自分をそんな魔法の実験台にするなんて、変わり者なんだな…自分の考えに共感する学者を求めて 国の学力の上昇を図り、学校を各地に建設するなど学者としても一面が強いようだ、時には仕事を忘れるらしい。 「王は他国の文化がお好きなので、あなた方の国の作法でお願いいたします」 本当に変わり者の王だ、扉が開き中に入ると王座には…まだ20代だったのか? いやさっきの話だと 王は魔法を実験してるそうだし、不老の魔法でもかけたのだろう、きっと歳と外見は随分と違うはずだ。 「始めまして諸君、私がトト=ファラプトだ」 声が姿と全然違う、壮年期の男性のような声をしているが見た目は20代程度。黒と赤のオッドアイ 褐色の肌をしたミステリアスな青年風なのだが、声がイメージと完全に別物だった 「ははは、驚いたかい? 歳は50近いが魔法で姿だけはこのままでね」 皆が一瞬ポカーンとなったが、すぐに取り直して何時もどおりに長い挨拶、は途中でトト王が面倒だと省いた この王様は本当に変わり者だ。面倒だから挨拶はここまで何てはっきり言ったのは彼が始めてだ 「それでだ、今回はテレサたちの頼みでヒース君をアレクサンドリアに入れるとの事だが」 「お願いいただけないでしょうか…?」 「いや、それは良いのだが一人だけだ。情報も漏らすのは禁止だ」 よっぽど重要な場所なのだな、暗黒連合が攻撃した理由も、その図書館にあるといわれるほどだそうだが… 俺一人か…少し不安だが大丈夫か? 案内役をつけると言うと話はこれで終わりだそうだ 「他の客人はファラプトを…といいたいが、少しこっちに付き合ってくれぬか?」 「といいますと? 自分達になにか…」 「いやー、レヴィアに頼もうとしたが時間がなくてな。本場の暗黒魔法が気になって気になって」 呆気に取られたヴェータが口をポカーンとあけていた。トト王の話はこれに終わらず 「それにアリシア王女の光系統の魔法も気になる 銀の戦刃と評されるウェンディ君のサイクロンエッジなんて、エベリウスで力を増したらしいじゃないか あぁヤカリ君と言ったか? 君のロボットの剣にも魔力的な物を感じるよ ヒース君は魔力と違うようだが、後で見せたいものがあるから頼むよ」 皆がポカーンとしていた。ここまで研究に憑かれてる…はっ!? 革命派や保守派にNIの科学者! 奴らと同じ気がする! もう技術の発達が大好きで大好きでしょうがないんだ! 「それじゃあこっちに来てくれ、ちょっと魔術の仕組みを(ry」 あはは…皆は大変そうだが、俺も大変なことになりそうだ…外に出ていいと言われたから 外に出ると、侍女の女性に案内されて俺の案内役の神官似合いに行くことになった 「リコ様は繊細なのでお気をつけて…」 「女性か? まぁヒステリックなのは」 「本人の前で言ってはいけません。あの方はその名前を気にしているので」 ふむ…まぁ行ってみれば分かる。侍女に連れられて…城から出たぞ? らくだに乗れ? 侍女の後ろにすわり、10分ほどすると巨大な神殿に到着したここが目的地か? 「付いてきてくださいませ」 「貴女が案内役のリコなのか?」 「違います、少々お待ちを」 こうして約5分足らず、神殿の中から青年が一人やってくる。神官だろうか随分と動きにくそうな格好だ 「私がリコ=ポリスだ。案内を任せられた」 「お願いします、ここが目的の場所か?」 「いや、また移動する事になる」 遠いんだな…らくだの馬車 いやこれはらくだ車というべきか? まぁこのらくだ車を使い また暫く移動するようだ。皆は今頃はトト王にいろいろと聞かれてる頃だろうか… 「君、ボーッとしてないで行くぞ?」 「あっすまない、今行く」 「まったく、アレクサンドリア図書館に入れる栄誉を何だと思ってるんだ…」 あぁ…なんだか分かった気がする、確かに名前の事は言うべきじゃないな 「ふむふむ。やはり暗黒魔法も基本は同じか…だが素晴らしいな、相性的に全ての属性と組み合わせれるか」 トト王は科学者肌とは聞いていたが、ここまで科学者よりな王は他にいない。 お菓子作りが得意でパティシエになれそうな姉様も珍しいが、こっちはもっと珍しい 「他の呪文と同じで上位互換種の呪文は?」 「あります、マナ形式の物は魔力とマナの属性さえあれば普通の魔法と同じです」 「上位呪文となるとそれなりに訓練が必要です」 メディナのほうがこの話題は詳しいだろう、僕はあくまで炎と闇の混合、しかもこの頃は炎属性に近い 今度はアリシアから光系統の魔法? ファラプトにも光属性だったらあるんじゃないか? 「光属性ですか? ファラプトにも光属性なら」 「いや、魔法と言うのは奥が深い地域によって微妙な違いがあるのさ」 流石に学者肌は細かい。だが使用者の癖なんてそんな関係するものか? さっきからアリシアの癖を聞いては メモを取っている、使用者の癖が魔法に影響するなんて聞いた事もないんだがな? 「ふむ、アリシア王女は運動音痴なのか」 「なんでそんなの聞くんですか!?」 「おふざけさ、その人の癖で何らかの変化があると思ってね」 なるほど、感情によって魔力が変化するのと同じに考えたわけか。だがそれは感情の激昂がマナを刺激したり ネガティブな感情が精霊の力を弱めるのであって、癖でどうにかなるとは思えない 「まぁ本当かどうか分からないけどね、さっ次はサイクロンエッジと小さな君の剣を見せてくれないかい?」 こっちにはあまり関心を示していないようだ、ペルソルナの剣は魔力的要素が少ないから研究材料に適してないらしい だがサイクロンエッジはちょっと目を輝かせ、それは次第にエスカレートしていった 「すまん、いくらで譲ってくれる?」 「は?」 「素晴らしいな、名剣と聞いたが風神の加護で潜在魔力は半端じゃない」 そのまま宝石を光に当てたり、触ったりして喜ぶトト王だったが、ウェンディがふと我に帰ると流石に売れないと 断ったがトト王も少しだけ粘り、遊んで暮らすまでいかないが場所によっては食べるのに一生困らない程度 金を積んだがダメだと言われしょうがないと諦めていた。まぁ父の形見では譲れるはずがない 「残念だがしょうがない、ペルソルナ君の剣は魔力分は低め…だが魔力すら吸い込むなら解体すれば…」 「だ、ダメ! 直せなくなったら替えが無いからダメ!」 「そうか…残念だ」 魔法関係の話はこれで話は終わり、こっちからも少しだけ質問しておくとしようか 「トト王よ、ヒースはどこへ?」 「アレクサンドリアだ察しはついたろう?」 アレクサンドリア図書館、暗黒連合がファラプトへ侵攻した理由と言われる図書館。 あそこには古代の技術が眠っている…だがそれは魔道関係と言うことヒースに有益な情報はあるのか? 「だいたいだ、君をアレクサンドリア図書館に入れるなんて」 はぁ…このリコ=ポリスという神官だが予想以上に細かい。行き先がどこか知らないと言ったら 行き先の図書館の説明で30分程度、聞いていると図書館にある技術は魔力よりなのが心配だ 「あの、図書館に入っても言いと王から…」 「気に入らないが仕方が無い。」 それにしてもこの図書館… 「スフィンクスか?」 神話に登場する人の顔をした獅子だか、そんな怪物がいたと思うのだがそれに似ている気がする こんなことを口走った為に余計に怒られた。スフィンクスの建物は別にあるとの事だ 「少しはファラプトについて勉強したらどうなのです? 世界をめぐってるのでしょう?」 「一応は…」 「図書館の中には一般の書物も一応あります、ファラプトの文化を知っていきなさい」 お喋りは損をするな…女っぽい名前の事を言うなと言う理由が分かった気がする。 図書館に入る前に門番がいて、ボディチェックの後に目隠しを渡された 「何で目隠しを?」 「複雑な通路も道がわかれば意味は無い、情報を漏らすわけにいかないのだよ」 それはまた面倒な…暫く連れられて歩いていたが、動きが止まった。またボディチェックをされ 大丈夫だったか目隠しを外されると、そこは一面に本だけが広がる…いや本棚だらけだな 「ここが?」 「そう、アレクサンドリア図書館の図書室だ」 入り口はどこだ? いや分からないようになっているのか。まるで遺跡のようだな… さて、さっそくだが探す…あれ? なんで俺の目の前にはどっさりと本が? 「その前にファラプトについて学びなさい」 「これを読めと?」 「あたりまえです。」 ………逆らったら怒るんだろうな、この膨大な量の本をすべて見るわけじゃなくロボット関係のだけ 見る予定だったし、明日の朝までには帰れると思いたいが、どうなることだろう 「はぁ…」 「たった300ページです、がんばりなさい」 これから1時間程度、多少の読み飛ばしなどを使いさっさと読んで。記憶探しへと移動した こういうのは観光しながら覚えるほうが楽しいだろう。リコの監視の中で書物の分類のロボット この中から…と思ったのだが、種類が多すぎる!? 見つかるだろうか…まぁがんばれ俺 「………魔力関係か、別物だな」 俺に魔力貯蔵系の能力があるが、これは別の国にもある。ついでに言えば俺のと違い 魔法攻撃を完全吸収して跳ね返すのもある。魔力関係を外せばかなり早く……早く 「……ビックリしたな、半分が魔力関係の技術か」 いや古代は魔力関係の技術が高いのは当たり前かもしれんが。半分も魔力に関係するものだと 予定より何時間も早いな。目次を見るのに10分もかからない 「純粋に機械的技術なのは…むぅ」 そんなに無いか、確かにこれが出回れば一部のロボ技術が爆発的に変わり、完全機械系のロボットが 駆逐されかねない。いや流石に駆逐はされないが実用レベルになるロボットの数は減るだろう 「なるほど、確かに渡したくないわけだ」 量産出来るかどうかはさておき、一部でも技術を転用されたら危ない。だが俺には完全に関係ない 俺の体は魔力的な部分が少ないのは、俺が魔法の類を限定的にしか使えないから分かっている 「探す手間が省けた…と喜んでいいのだろうか?」 残り半分の半分も同じ、そして残り半分は…技術的に現代の科学とほぼ同じか? だがオーパーツ扱いの 俺の体に有益な情報は殆どなかった。俺の体がゴーレムに近い魔法技術の塊ならヒントもあったろうに… 「残念だ…だが考えてみると、何故ここの技術を使わないんだ?」 「むぅ…それはこの本の技術に追いついてないからです」 なるほど、まぁこれが生産できたら大変なことになるか。ビックリするほど短時間で終わってしまったな まさか2時間で終わるなんて、これからどうするか… 「だが本当に魔術系の技術はないのか?」 「あぁ、あるとは思うが。科学関係がこう少ないとヒントはないだろうな」 残念と…ため息をつくのはやめておこう。何か言われる予感がする…ファラプトにもヒントはないのだろうか… 「あの…すいません…」 「プトレマイア館長ではありませんか、いかがいたしたのです?」 「館長?」 女性の声に振り向くと、また動きにくそうな服を着た女性がそこにいた。館長と言っていたが 「あの、私はプレトマイア=サンドロスと申します。リコさんそちらがヒースさんですよね?」 「そうですが、この男に何か用でも?」 「はい…従姉妹のアレクシナが会いたいと…」 俺に会いたい…と言っても俺はこの地に知り合いはいない。となると噂を聞いた誰かが気になって 会いたいとでも言うのだろうか? 大人しそうな女性だし従姉妹の女性もきっと、こんな感じの 「そちらがヒースか? 意外と細い」 全然正反対だ! 威圧的な感じの短い茶髪の女性で、この土地特有の日焼け肌をしている 身に着けるファラプトの装飾品や衣装も、煌びやかと言うより勇ましい感じに見える。 従姉妹のプレトマイアという女性に比べて、威圧するような黄色の瞳にちょっと焦った 「彼女はアレクシナ=サンドロス。闘将の称号を持つ将軍だ、気性が荒いぞ」 「あの…すいませんでした…」 ボソりと耳元で二人がつぶやく。従姉妹だからといって性格が似るなんて考えはダメだな それで用件は何なのだろう? お互いに初対面だし何が目的なんだろ 「手合わせを願いたい。」 「なっいきなりだな」 そうきたか、何度かあったがこのごろそんな事がなくて忘れていた。手合わせか…まぁ 何度かあったよなこんな事。軍の基地内部にある演習場まで来いとのことだった 「考え無しなのだな、彼女は強いぞ?」 「断ると何かありそうな気がしてな、何度かこんな事もあった」 スリギィやエルフィーナ等、いろいろと手合わせを頼まれた回数は少なくないし、何とかなるだろう 「まぁがんばる事だな…ヒントを教えておこう」 「む?」 「砂に飲まれん事だな」 それだけ言うと、仕事に戻るとリコは帰っていった。気難しい男だったな…神官なら あれぐらいのほうが良いのかも知れないが。 「あの…案内しましょうか?」 「いえ、図書館の仕事は?」 「他の人がいますし…従姉妹が迷惑をかけそうなので…」 プレトマイアのほうは苦労人な感じだな…従姉妹のほうと比べると、なんだかおどおどした感じで 本を読むのがすきという感じが出てる。役職でこんなにも性格の差が出るものなのか? 「あっ…基地の場所が分からないんだった…すいませんがお願いします」 「いえ、それではらくだを出すので待っていてください」 こうしてプレトマイアに案内されるのだが、手合わせを願われるのが分かっていたら 魔術関係の本も読んでおくべきだった…気性が荒いらしいし、激しい戦いになる予感がした 「ここです…従姉妹が話をつけてると思うので入れると思います」 ラクダから降り、目の前のピラミッドにも似た建物が基地なのだろうか? 周りはフェンスで囲まれ 頂上にはレーダーのようなものがあり、確かに基地のように見えた 「ありがとう、助かりました」 「いいえ…あの、本当に気をつけてくださいね?」 「さっきから聞いていると、何かあるのですか?」 ふむ…話によると、ファラプトの将でも好戦的で海外への進出をねらっているらしい。 確かにちょっと怖そうだ。何事も無いように気をつけなければならないな。 「だから気をつけてください」 「わかりました、それでは」 プレトマイアに手を振り、基地入り口まで行くと名前を言うだけで通してくれた。 そんのまま兵士の案内で外に出て少し歩くと、またフェンスで囲まれた演習場が見えてきた 「やっと来たようだな、待ちくたびれたぞ」 「遅れてすまなかった。ここが?」 演習場のフェンスの中にさらに透明な壁がある、流れ弾対策だろう。演習場の近くにある 休憩場のような場所に連れられると、そこにはアレクシナが待ちくたびれたようにしていた。 「ふっ…さっさと行くぞ。決着はギブアップか機体大破だ」 「わかった、お手柔らかに頼む」 「断る、暗黒連合との戦いもなくてムズムズしていたしな」 好戦的だと聞いていたが、ちょっと怖いな…大怪我にならないように気をつけよう。 最悪、ギブアップで逃げることだってできるだろう。たぶん 「さっ行くかね?」 「あ、あぁ…」 俺だって今まで修羅場を乗り越えたんだ、大丈夫なはずだ…演習場の端で俺は待機してアレクシナは 自分の機体を取りに行った。砂漠だというのに足場は固められ、普通に戦えそうだ 「待たせた! そっちはまだか」 「来た…禁忌っ!!」 今日の盗賊騒ぎのとき、出し損ねた禁忌が次元層からゆっくりと顔を出し、俺に鎖を絡めつけて引き込む 異常無し大丈夫だ。アレクシアの機体は白と黒に淡い緑の三色にオレンジのラインをした 幻想的なカラーリングの機体だった。モチーフは馬…ユニコーンと言うと不適切だろう。一角獣いや一角馬か 「よっしゃはじめるぞ!」 「やっぱりお手柔らかに頼む!」 細い、この分ならパワー勝負に出ればいける筈だ。大振りな攻撃じゃ逃げられるだろうし剣で… そんな事を考えているうちに、土煙を上げながらロボットが突撃してくる。なんだあれは? ビームランスか!? 驚いた事に浮遊タイプのビームランスを両脇に装備して突撃してきた。 「油断してるな! この闘将のブケパウロスを甘く見ると死ぬぞ!」 防御か、いやあのパワーじゃお互いに傷つくのは目に見えるが、衝撃で俺が気絶すれば俺の負けだ 逃げるぞ。後ろを取った所でビームランスの動きが自由ならカウンターを受けてしまう 「持久戦に持ち込むか」 禁忌は無限のエネルギーで動き続けれる、相手の突撃は勢いをつけている上に角で地面をえぐるような突撃 そして生まれた隙をランスで補う単純だが下手な射撃武器では止めれないほどに強い。 「いや、隙ならできる!」 そうだここはフィールドが有限だ、あの速さではUターンはできないはず動きが止まれば倒せる! タイミングを見て、切りかかったのだがとんでもない方法で奴はUターンをなし得た 「甘い! そんな考えの奴が何人もいた!」 「Uターンしただと!?」 あの不有識ビームランスを地面に突き刺し、それを掴んで勢いを弱める所か勢いをさらに増した エルフィーナのブラストランサーを思い出すが、あっちは一瞬の加速で突撃するタイプだ だがこっちはUターンなどを利用して、永続的に加速していく間逆のタイプ。どっちにせよ 「かわせるか!?」 「ちぃっ加速がまだ足りないか!」 面倒な事になってきた。ブラスト・ランサーの時は必殺技スターダスト・ランサーの連続して突撃 最後に落ちて来た所を突き上げる。それを逆に利用して勝ったのだがこっちは加速を止めない やはり持久戦か? いや勝負に出て斧や槌で真っ向勝負を仕掛け…だめだランスのリーチが不安だ 「守ってばっかりで勝てるかぁ!」 「なら加速を弱めてくれ!」 くそっどうすれば、あの細いボディなら一撃入れば…そうか、俺にはそれを可能にする遠距離武器がある! チャクラムで後ろから狙った所で、あのランスで防がれるだろう。ならば剣と盾でナイトメアサークルをくれてやる! Uターンの時が狙い目だ、ジャンプするかもしれないがUターン途中ならとっさの事でそれもできまい 「このままじゃジリ貧か…」 「今だ! クレセントナイトメアサークル!」 何度目かの突撃をやり過ごし、その隙に盾に剣を差し込んで準備を終えた。Uターンのタイミング その青白い三日月の刃が炸裂…したが、ブケパウロスは崩れ落ちる事はなかった。 突撃でつけた勢いで何とか相殺していた。倒せなかったがこれで勝機が見えた、突撃を止めれる! 「よし! これで!?」 喜びもつかの間、次の問題が俺を襲い掛かった、足が…禁忌の足がふらついた。 「派手な攻撃の最大の武器はな、そこに考えを引き付けれる所だ」 「これは…足場が砂になっている!?」 「ここはファラプトだぞ? 足場は砂を固めて作ってるんだ戻す事だってできる」 しまった、今までの突撃は俺を倒すためじゃなく足場を削り砂にする為だった 突撃が得意と思い込ませて、派手さを利用して戦場を整えるなんて… 荒々しい性格だが、考え無しなわけではなく作戦に嵌めて来るタイプか! 「くそっ砂に足が取られる…」 「おらっ!!」 四苦八苦する間に、ブケパウロスの突撃が来た。足場が不安定な禁忌に比べ相手の足は特殊なのか 滑るように動いている。ブラスト・ランサーを例に出して考えたが。まったく別のタイプのロボだった 「このっうわっ!!」 くそっ盾で防いで時間を稼ぐしかない。何とか足場を固める方法を考えなければ勝ち目がない いや足場を固めなくても、何とか安定性を保って相手に一撃を加える事ができれば… 「何かいいアイディアが浮かぶのを待つしかないか…」 俺の体力が先か、考えが浮かぶのが先か…自分との勝負だ! そのころ外野では、どっちが勝つか賭けたり見物してる兵士の姿があった。 その中にはさっきのプレトマイアの姿も見えた 「あぁ…やっぱり大変な事に…」 彼女が先ほど心配していたように、アレクシナとヒースの戦いが随分と白熱していて 何かが起こらないかと心配そうにしていた。もう起こってしまっているが 「おや、君も見物かい?」 「あっディプさんこんにちわ」 不安そうなアレクシナの横に、ひょっこり現れたのはファラプトの軍人に珍しい日焼け肌ではない オレンジと茶髪のメッシュの男性。彼はファラプトの将の一人、知将ディプ=スィオだった 「こんにちは館長。面白い事をしていると聞いてきたが…」 「アレクシナさんが旅人に勝負を申し込んで…」 「彼女らしいよ、ヒースと言うと噂のオーパーツ君だね」 演習場内部の轟音はある程度はさえぎられ、ヒースに賭けた兵士達が負けそうなヒースに野次を飛ばす そんな中でディプは体はプレトマイアのほうを向くも、目線はヒースに向けている。 「彼は勝てるだろうか?」 「どうでしょう…」 不安げなプレトマイアに比べ、ディプはその態度から興味がなさそうに見えるが、その目はどこか 好奇心に似たそれが輝いている。知将ゆえの見た事のない何かへの好奇心なのか 「ヒースと言うといろいろ事件に巻き込まれてる、簡単に終わるかな?」 「うわっ!!」 「その程度か!」 「くそっどうするロストエンスピートか! ダメだ足元がこれじゃ結果は同じだ!」 くそっどうする! 砂に足を取られてしまい思うように戦えない。あり地獄に落ちたありの気分だ いくら禁忌が持ちこたえても、俺の精神が持たない気がしてくる 「このっ一か八かだ!」 斧を取り出して、大きく横に振りかぶるもまたもランスを踏み台に、華麗にジャンプを決めてきた そのまま空中で一回転。頭部の角で禁忌を後ろから切り裂き。禁忌を砂の上に押し倒した 「そろそろ終わりかい?」 「くそっどうすれば…」 ここは相手の陣地、空を飛べればなんて夢みたいな事は魔法攻撃を受けてから考えるべきだ チャクラム…も奇襲が通用する段階じゃない。ならば何がある…せめて足元を 「足元を固める・・・そうか」 考えが間違ってなければいける。まず次元層に手を突っ込み中から、水の入ったタンクを取り出す ここからが重要だ、防御に徹するべく片方の手には盾を持ち、突撃に備えた 「亀か! 砂漠じゃ干からびるよ!」 まず一撃。通り過ぎた後にタンクの水をばら撒きまわりの砂に水を含ませた。 「その程度で固まるか!」 タイミングを間違えるな、次の突撃をやり過ごした時が勝負だ。受け流すように構えバランスを崩しかけ 踏みとどまった瞬間。禁忌のコックピットが開く。水をばら撒いた場所は暑さで薄く乾きかけている 「間に合えタイトゥンズオープン!!」 「何だ!? 光を出している?」 ブケパウロスが近づいてくる、もう少し…今だ! コックピットを閉じ、タイトゥンズオープンを当てた砂地は 硬く乾ききっていた。物を強化するタイトゥンズオープンでの足場の設置は成功した 「足場さえ整えば!」 「そんな単純な事かよ!」 足場さえ整えば踏ん張って狙いを定めれる、一撃でダメならもう一撃で勝負だ! あの細さなら斧か槌で一撃を与えれれば致命傷になりえる! 「今だ!」 「さっきと同じか、足場を固めた意味がない!」 片手で大斧を一回転して振り回すが、これは先ほどと同じでランスを使ったジャンプで逃げられる だがこんな動作をしても、足場が固まっていれば転ぶ事もない。ここからが本番だ 「さっきと同じなのはお互い様だな! これで最後だ!」 「何を言って…なっ!?」 もう片方の手に槌を出現させ、回転の勢いを利用して空中で戸惑うブケパウロスへ、その一撃は振り下ろされた 「うわぁあああああっ!?」 「やった…っとわぁ!!」 ブケパウロも吹き飛ぶが、片手に斧を持ち回転しながらにハンマーを振り下ろすなんて無茶をしたせいで 禁忌も体制を崩し砂場に転倒、土煙が勝敗を焦らす様にあたりを包み込んだ。 「くそっサーチアイ!」 ブケパウロスを探すため、サーチアイを発動して辺りを見回すがなかなか見つからない 禁忌が倒れているから視界がさえぎられている、どこにいるんだ? 「っ…ダメだな、駆動系がイカれた」 「…ふぅっ…はぁ」 勝った…ため息が出た、危なく精神が削りきられるかと思ったが、何とか勝つことに成功したんだ… 体力の疲労なら無視できるが、精神ばかりはどうしようもない…勝ててよかった… 「疲れたぁ…」 「久々に暴れたよ、いい腕だこっちで働かないか?」 「安定した職なんだろうが、今の俺には無理だな」 こうして試合も終わり、アレクシナと握手をすると外は随分と騒がしい事になっていた。 もうトト王の所へ…そう思ったのだが、それよりも早くプレトマイアとオレンジのメッシュを入れた男が 「お疲れ様でした」 「お疲れ様アレクシナ、ヒースと言いましたね」 「ディプか、お前の事だしこっちに用があるんだろ?」 知り合いか、ディプという男が俺と話がしたいと言ってきた。もう今日はロボットで戦いたくないが 話すだけなら疲れないよな…俺はその誘いに、二つ返事で返すとディプという男についていった 「へー………アレクシナ倒すなんてな、面白いのがいるぜ」 この時に俺は、遠くで俺を見ていた影に気づくはずもなかった 「ほっへー、エキゾチックってやつだなー」 「あの、ヤカリさん?」 へっへー、いい感じに面白い物ゲットしたけどこりゃイイや、今回は王様が泊まるよりも宿のほうが いいものが見れるって言って、私らにいい宿を手配してくれた。 「どう部屋の調子は…ってヤカリなにしてんのよ!!」 「助けてメディナ〜!」 メディナが入ってくると大目玉だった、そりゃアリシアに踊り子の服なんて着せたら、怒るよなぁ ルナは止めようとするから縛って、ベッドの上に寝かせてた 「ったく…アリシア大丈夫?」 「はい…けど恥ずかしいです…」 「似合ってるぜ?」 ビキニみたいなのにヒラヒラしたすける布、アリシアはスタイル良いしすっげー色っぽくなって 普通の男なら目線が釘付けだな。いい目の保養になったけど、まだやる事があった 「絵のモデルになってくれない?」 「えっだ、ダメです! 絶対ダメ!!」 「少しぐらい良いだろー?」 アリシアの今の格好は滅多に見れないし、窓越しのファラプトの町をバッグにしたら、きっと良い絵になってくれる そう思って着てもらったんだし、諦めれないと食い下がるとアリシアも押されてOK出しそうだったんだけど 「アリシア待って、良い考えがあるの」 「何ですか?」 「ゴニョゴニョ」 「なるほど、君の記憶探しは興味深いな」 「楽しい事もあったが、変な事もたくさんあったな…」 「今回はファラプトで何か見つかったのかい?」 ディプと入った甘い臭いの喫茶店、そこで俺には紅茶を出されディプは水と…何だか分からんが、透明な容器に入った 煙の充満した何か。その中身の煙をホースで吸っている、見た事がないが何なんだろう? 「いや、今回も見つからなかった…」 「そうか、残念だったな」 「あの…その」 「あれだろ? 前の戦争で出た遺跡の事だろ?」 そしてディプのほかにアレクシナとプレトマイアが同行してきた。アレクシナがさっきの戦いで興味が湧いたと プレトマイアはアレクシナに見つかって無理やり連れてこられる形でここにいる。 「トト王が許すか? 中にはマミーラーが大量だぞ?」 「私を倒したって言えば許すんじゃないかね?」 アレクシナがパン…だよな? 袋のようなパンに野菜とコロッケの入ったサンドイッチ? を頬張り プレトマイアはマドレーヌ? いや違うがしっとりした感じのアーモンドが乗った菓子を突いていた 「何だ? 女が飯を食う所をじろじろ見るもんじゃないぞ?」 「あっすまん、見た事がなくてな」 「ヒースさんは旅の人ですよね…えっと、これはバスブーサと言ってファラプトのお菓子です」 プレトマイアの説明によれば、さっき言われたとおりバスブーサと言うお菓子とアレクシナが食べているのは ターメイヤと言うゴマとソラ豆のコロッケを野菜と挟んだサンドイッチだそうだ。 「ヒースさんが飲んでる紅茶はハイビスカスを使った物ですね」 「外国とこっちじゃ食とか違うみたいだし、まぁ不思議でも普通か」 「いや…確かに目新しいが美味しそうだ。不思議と言うのはシモネタリアの為にある」 ファラプトの食べ物も他の国と同じで美味しそうだし、見た目が変というわけじゃないし食べてみたい方だ 本当に恐ろしいのはシモネタリアだ、頭がボーッとするような色気の混じった匂いがする 長くて太くて褐色色の名前の分からない食べ物、しょっぱくて舐め続けると中から白いスープが出てきたんだよな… 「ははは、シモネタリアの話は聞いてたけどひっでーなぁ。思いっきりあれじゃねーか」 「プレトマイアちゃんは聞くべきではないね」 「あ、あの国は苦手です…」 あれ? あれとは何だ…はっ!? いまさらになって気づくか!? 思い出せば出すほどあれはあれに似ていた これはひどい。 「話を変えよう…そっちの器具は何なんだ?」 「これかい? 水タバコって言うんだよ。」 「巻きタバコとは見た目が違うけどする事は同じさ」 タバコ? この仰々しい装置がか? ディプが笑いながら煙を吐き出すがこれは…甘い匂い。蜂蜜か何かの匂いだ 吸って見ろと言われ差し出されたホースに、少し戸惑いつつ口をつけるが…なにもない。 「強くすわないとダメさ、貸してみな」 「あぁ…アレクシナさん禁煙中じゃ…」 「1週間に1回だけに変えたよ」 アレクシナが俺からホースを取り、吸っているのがどう違うか…いや、口の動きで少しだけ考えが変わった そうか少し強く吸わないとダメなのか。アレクシナが俺にホースを返すとさっきよりも強く吸ってみる 「!? 甘い」 蜂蜜の味がした、煙に味がついているような感じで甘くて…タバコなんて初めてだが。こんなに軽いものなのか? なんというかイメージではむせ返るような臭いの筈なんだが。本当に甘い…店が甘い臭いなのがそのせいか 「タバコって甘いんだな、知らなかった」 「それは水タバコが特殊で、普通のタバコはそうじゃないんです…」 「むぅ…普通のタバコはイメージどおりなのか」 驚いたな…しばらく吸っていたが、またある事に気がついた。喉が渇く口で息をするのが長くて この暑いファラプトでは尚更か。ハイビスカスの紅茶で喉を潤すと水タバコはディプに返した 「ファラプトのタバコは珍しいんだな、ご馳走様」 「どうと言う事はないさ…ヒース君、興味があるなら遺跡めぐりなんてのもオツだよ」 「遺跡めぐり?」 前の戦いで未発掘の遺跡がいくつか見つかったらしく、その中はまだ調査されていないらしい。 なるほど何かありそうだな、だが未発掘の遺跡に行っていい物なのだろうか? 「あれかー気をつけろよ、中には自動防衛システムの大群だ」 「アレクシナを倒した君なら簡単さ、トト王に頼めば許可が下りるかもしれない」 「なるほど調査隊の手伝いか、いい事を聞いたありがとう」 さて、そろそろ帰らないと…席を立つと俺の分の御代は…アレクシナが払ってくれると言ってくれた ありがたくアレクシナに甘える事にすると、俺は3人に別れを告げて店を後にした 「ヒースさん…その、遺跡のロボットは弱点属性はないので普通に戦ったほうが良いです」 「ありがとうプレトマイア、それじゃあまたいつか」 「おー、またなー」 「さらばだ、また気が向いたら遊びに来るといい」 「やっほー、遊びに来た…ってヤカリどうしたのそれ!?」 暑いのがイヤで、魔法使って涼しいと思うアリシアの部屋に来たら…ヤカリとアリシアが踊り子の格好してた 二人とも踊り子とか好きだったかしら? ううんアリシアは恥ずかしがってるし、それは無いよね 「おー、いろいろあってなー」 「ふふっ楽しいもの見れるわよ」 「ねぇメディナこれどうしたのよ?」 メディナとペルソルナが満足そうに、ヤカリを見てるけど…理由は意外と簡単だった。 ヤカリってばアリシアに踊り子の服を着せて、絵のモデルにしたらしいけど見返りに ヤカリも踊り子の格好をしろって言われてOKを出しちゃったみたい 「胸がねーからダメだけど」 「けどヤカリもスポーティな感じで似合ってると思うよ?」 「そーか? ウェンディが着るほうが、よっぽど似合うと思うぜ?」 それは簡便、と笑って返すと私もベッドの上に座って…ヤカリの絵が見えたけど やっぱりヤカリは絵が上手い。本当に画家とか目指してたんじゃないかって思うぐらい 「ねぇヤカリ、何で絵が上手いの?」 「親の遺伝だと思う、おじいちゃんもずーっと絵を描いてたし」 「それにヤカリは絵が好きだから、それでだよきっと」 継続は力ってよく言うけど、ヤカリも描き続けて上手くなったって事かな、私も始めて剣を握った時 ぜんぜんだったなぁ。けどヤカリは我流なんだろうし、それはそれですごいよね 「ヤカリって先生とかいなかったの?」 「1日とか2日だけ一緒だったとかなら、何人かいるな」 「一日二日で教われるの?」 どうだろうと、ヤカリは笑ってた。それにしても…あっつい。汗が流れたと思ったら渇いちゃうぐらい メディナは衣替えしてミニスカートに半そで、アリシアとヤカリは露出度高い服だけどさ… 「暑くない?」 「絵描いてる時はそうでもなかったけど、なんか終わったら暑くなってきた…」 「私はずっと暑かったけど我慢してて…」 それじゃメディナは何で涼しそうな顔なの? 何かありそう…そうか、もしかしたら 「えいっ!」 「きゃっ!? 何するのよウェンディ!」 「涼しい〜メディナ冷却呪文なら私にもかけて〜」 やっぱりメディナは氷系か水系の呪文で、体を涼しくしてた。じたばたするメディナに魔法をせがんでると 便乗してヤカリもメディナに抱きついてきた。あっ私と同じ反応してる 「アリシアも来いよ〜涼しいぜ?」 「あの…メディナちゃん困ってますしダメです」 「はぁ〜メディナ気持ち良い〜」 「こっちは暑苦しいわよ! 放しなさいったら!」 ジタバタするメディナを、無理やり捕まえてぎゅーっとしてるとメディナもOKを出してくれた これで暑いのともおさらばね、これって体じゃなくて服にかけて涼しくするんだ 「それじゃ下着と服にかけるから脱いで」 「むぅ…私はかけられたら機能障害あるかな?」 「大丈夫だよ、ほらこっちおいでよ」 「あの、この服じゃなくいつもの服にかけて欲しいんですが…」 ヤカリはペルソルナが冷たくなったら、抱き枕に出来たりするしいいなぁ…ヴェータに魔法かけてもらって 私も抱き枕しちゃおうかな、なんて冗談を考えながらさっさと服を脱いで下着も… 「寝てた…ウェンディいるか?」 何だか部屋が凍った気がした。けど次の瞬間にはさっきよりも暑くなってみんなが悲鳴をあげてた 「ヴェータのエッチー!!」 「このドスケベ皇子!」 「いやーっ!」 「むっ…うわぁああっ!?」 寝ぼけ眼でヴェータが部屋に入ってくると、もう私とヤカリとアリシアは顔真っ赤になって体を隠して メディナは魔法をヴェータにかけちゃうし…あはは、言う前の冗談が本当になっちゃった… 「おー、冷たくなった」 「感謝しなさいよね、そうだわヤカリ踊ってみなさいよ」 「えー、たこ踊りにしかなんないぜ? アリシアやってみろよ」 「バレエやワルツでいいなら…」 「それ違うよー! 絶対この格好で踊る踊りじゃないよー!」 まぁとにかく、私たちはちょっとは涼しくこの暑い砂漠の国を過ごせそうで一安心かな。 涼しくなって皆なんだか元気だし。少ししたらファラプト見学もいいかな〜 「本日二回めか…涼しい」 ヴェータの事を忘れてアリシアとヤカリの踊りの事で喋ってたけど、裸見られちゃったしちょっとぐらい ひどい目にあっても仕方が無いよね、うん…たぶんきっとそうよ。おそらく、そうであって欲しい 「あの、トト王?」 「なんだね?」 何で俺はさっきから疲労回復系の魔法を、ずーっと受けているのだろうか? まぁ心地いいのだが 「なぜ魔法を?」 「いや、君が魔力を吸い込むというからな。何か魔法を唱えてみてくれ」 「なるほど…そうだ、久しぶりにあれでも」 シュコトーで見つけ、そのまま持ってきてしまった魔本。これを広げた瞬間にトト王の目が変わった 急に身を乗り出して、俺が取り出した魔本を興味心身で見ていた。 「良い本だな、見るからに無属性な感じがする…」 「無属性なのは、魔法大国ウィズラドで教えられました」 「ストゥリガ女王とは24時間ほど、魔法の事で話し合いたいものだ」 「それでは…フェザードアップ!」 そういえば、この呪文は俺に使った事がない。禁忌には黒いステルス機に似た羽が生えたが…ふむ 俺に生えた羽はマントに近い形だった。違和感が強すぎてすぐにやめたが 「ふむ、魔力が増えたと思ったらすぐに消えた。不思議」 「これでいいでしょうか?」 「まて、その本を少し書き写させてくれ」 これ50ページもあるんだし、書き写すとなるとかなり時間がかかるだろう。手伝おう 俺も紙…? 普通の紙と違うような…ふむ、パピルスというのか 「そうだったトト王、折り入って頼みが…」 「なんだい?」 ウキウキしながら呪文を書き写すトト王だったが、俺が聞いた瞬間に凍った 「あの遺跡か…暗黒連合との戦いで出た忌まわしい遺跡だ」 「忌まわしい?」 「話すと長くなるね、あれは戦争中だった…」 「今日も今日とて戦争か、まったく飽きんな奴らも」 戦争中、私は今よりも忙しかった…中断せねばならない事も沢山あった、その中の一つとして 未開拓の遺跡が眠っているであろう地域の開拓だった。砂に埋もれた浪漫が眠ってる その浪漫を一刻も早く掘り起こしたかった…だが悲劇は起きた。 「トト王! 報告します!」 「むっ? 暗黒連合か? それともどっかのバカ共が便乗し 「現在発掘を中断していた遺跡地帯が攻撃を受けています!」 「この近くの遺跡を完全に壊されたら被害が甚大ですね、ザート隊はまだですか」 「王様も人使いが荒い、私らで防衛なんて!」 奴らの攻撃に対してこっちも戦力を投入した、あの遺跡を壊されれば未発掘の貴重な資料が永遠に砂の中だ 他の将が別の地区にいたから、非番だったディプとアレクシナを呼び防衛に当たらせたが 「古い遺跡なんて人を惑わせるだけだ! ジョセフ君頼むわ!」 「あははー…勘弁してくださいよ将軍、仕事が終わったら次の仕事があるのに」 敵はファラプト侵攻部隊の総大将、ジュリア=シーザリオンとその部下。さらに城壁崩しや城の破壊で有名な 破壊工作員であり「死を呼ぶ青ざめた馬」の騎手、ジョセフィン・クリーガーを呼んできた 「んじゃお仕事お仕事」 「こちらザート隊! 遺跡に近づく影あり! 迎撃にうわぁっ!?」 「メガクタス第2小隊、これよりそちらに向かう!」 「壊しても遺跡じゃあっちに依頼こないよなぁ…あっそろそろ次だな」 私が遺跡に関心を寄せてるのを知っていて、それを利用するために奴らはわざわざ遺跡を破壊する作戦を決行した 古いし現在の城よりも脆い遺跡は、あの砂漠でも青ざめたままの馬に次々と壊されていった… 「ジョセフ君! 完全に壊しちゃダメよ!」 「僕もプロですからね、仕事内容は厳守しますよ!」 いやらしい事に、奴らの狙いは遺跡の完全破壊ではなく遺跡をある程度、つまり直せる程度に破壊 修復しないと自然に倒壊する恐れがある程度に壊す事だった。 「ジュリアてめー何考えてやがる!」 「何を考えていても倒す!」 「その機体は闘将と知将、行動パターンからして今日は非番だと思ったけど違う?」 防衛戦は熾烈を極めた、不思議と死者は少なかったが物的被害は尋常じゃなかった 「てめーらのせいで休みがパーだよ!」 「こっちはお休みがないのに!」 「侵略者に休みなんて似合わないさ、メガクタス隊とザート隊は苦戦気味か…」 まぁまんまと敵の思惑通り、遺跡はほとんどが倒壊寸前になり、そこに人員と資金と物資を 直るまで裂かなければならなかったのは痛かった… 「とまぁ、そんなわけだ。このごろやっと復旧したが中には防衛用ロボがウジャウジャだぞ?」 「かまいません、許可をいただけると嬉しいのですが…」 「かまわんよ、ただ盗賊に先を越されてるかもしれないが」 盗賊か…何もないといいんだが、俺とトト王が呪文を書き写して終わりそうなころに 誰かの足音がした…なんだ、従者にしては何とも親しい感じだ 「トトー、その人だーれ?」 「サザラ、お客さんだよ」 子供? トト王に子供がいたなんて聞いた事がないぞ? 「彼女はサザラ、遺跡から発掘された機体で眠っていた古代人だ」 「古代人?」 「そうだ、記憶がないが重要な人物として保護してる」 「はじめまして、サザラです」 古代人か、珍しいというよりも古代人が生きてるなんて、コールドスリープでもしていたのだろうか? サザラという少女はずーっとこっちを見たまま。瞬き以外の動きをしていなかった 「もしかして知ってるのかもしれないぞ?」 「古代ロボットだとしたら、記憶探しがますます面倒になるから、そうであって欲しくないな…」 「知らないよ、ただ頭がいいんだなーって」 頭が良い? 視線はよく見ると俺ではなく本のほうに向いていて、それを見て書き写してる俺は 彼女からすれば頭が良い、という事になるのだろうか 「彼は特殊なのさ、それにしてもどうしたんだい?」 「もう夕飯の時間だよ?」 彼女の言葉に、外がもう夕暮れ時になっているのを確認した、もう書き写したし俺も帰らないと 「ヒース君、いろいろと楽しかったよありがとう」 「いえお世話になりました。それでは」 「…待つんだ、彼にあったら言ってくれ「金はやるから資料をくれ」と」 「彼?」 そのうち分かる、トト王はそういうとサザラと共に行ってしまった、よく分からないが まぁいいか。従者の案内で王宮から出ると皆の要る宿まで急いだ。 「涼しいな…人も多いし、昼夜が逆転してるんだな」 涼しくなり始めて、少し快適になりそうだと思い歩いていると、人ごみで赤のターバンを巻いた青年と 肩がぶつかった、ここまでは普通だが違和感がある。何かを貼り付けられたようだ 「むっ…?」 パピルスか? これは…誰だアイツは? だが一つだけ思ったのはアリシアたちとファラプト見学 とまではいけない、そんな気がした。 「遺跡探しの手伝い、今夜俺の部屋の窓を開けてろか…何者だいったい…」 パピルスの内容を読むと、俺は宿までまた足を急がせる。アリシアたちに何か危険が迫っていないと良いが あの男が何を目的にしてこんな事をかいたか知らないが、面倒な事になりそうだ 続く