「♪〜笹の葉さらさらー牧場に揺れるー」 今回のSDロボは暗黒帝国から始めよう。笹を立てている大人の女性の色気に幼さが残る愛らしくも 美しい容姿の色白の乙女。レヴィア=スペリオルが歌詞を多少間違えながらも、七夕の歌を鼻歌交じりに歌う 「えっと、続き忘れちゃいました…」 「あの、レヴィア…?」 その様子を訝しげに見ていた紫のポニーテールの女性ファータ=トワイライト。将軍の彼女もこの頃はやっと暇になり始め ちょくちょく仕事に合間ができていた。それでレヴィアに会いにきたらこれである。 流石に幼馴染が、見たこともない木とも茎とも分からない物に、葉っぱがくっついた植物風の物を持って 聴いたことのない歌を口ずさむのでは、何だか心配にもなろう。まるで怪しい宗教でも入ったのか? と言いたげだった 「あぁこれですか? ふふっ中州国のほうで教えてもらった神話なのよ」 「中州国の? 一体どんなの?」 「結婚してから怠けた恋人たちが、ミルキーウェイで離れ離れにされて1年に1度だけあえるそうです」 「わ、訳分かんない…まぁ神話なんてそんなもんだけどさ」 さりげなく、置いてあった水餅を食べようとしたファータに、咄嗟に持ってるもので食べ物を狙う相手を追い払うように レヴィアは笹でファータに待ったをかけた。これにはファータも驚いて水餅から手を引いた。 「もー、一つ位いいじゃない」 「ダメ! これは今日の夜にミルキーウェイを見ながら食べるんです!」 「そういう行事なの?」 「らしいの。私も詳しく分からないんですけどね」 また笹を立てようとして、四苦八苦するレヴィアが釘を刺すとしょうがない。とファータも諦めた だがファータは納得できない部分があるらしく。笹を見ながら独り言のようにつぶやく 「けどさ、今日はミルキーウェイ見れないと思うよ?」 「へっ?」 「天気予報じゃ高確率で雨だって。80%だったかな?」 「それでタガメ、なんで僕らの所に来た」 場所も時間も一気に変わるが、どこかの荒野にて1台のバイクと台車が停車し、その近くではレヴィアに似た感じの美少年と 人間と同じ大きさのタガメが会話していた。少年のほうはヴェータ=スペリオル。ご存知レヴィア=スペリオルの弟である そしてタガメのほうもご存知タガメである。何故こんな事になったかと言えば… 「レヴィア様がショックで倒れました。」 「なんだと!? タガメ詳しい詳細を明確にしろ!!」 「わっそんなに意味を重ねないでください!」 先ほどの事であった。回想に入ると 「あ、雨が降るとミルキーウェイが氾濫して会えないんです! あわわ・・・ガクリ」 「レヴィア?! きゃーっ衛生兵ー!!」 となる。つまり七夕の催涙雨のことを思い出し、慌てて気絶したことになる。ただでさえシスコンの領域のヴェータだが 旅で丸くなり、恋人がいる現在。その七夕のストーリーに感情挿入もできるようになり。気に入らないらしく すぐに準備をすると、なにやら準備を始めていた。そして荷台の中に入っていくと… 「ちょっと待てヴェータ! 俺にどうしろと!」 「アリシアといちゃついて魔力は溜まっているだろう。 僕と空に来い」 「詳しい事情を話せ! わっちょっと待て!!」 哀れ中にいた青年のようなロボット。ヒースがヴェータの巻き添えをくらい。何故か空へと連れて行かれることになった 訳も分からずに空へと連れて行かれたヒースの悲鳴が木霊し。呆然と眺めるしかないタガメはどうしようと悩んだが とりあえず荷台の中に残っている。ヒースやヴェータの旅の仲間たちに事情を話すことにした。 「うわぁ…これをどう話せばいいんでしょう…」 「よし、ここでいいだろう。」 「ヴェータ、何で俺を連れてきた」 そしてまた飛んで、文字通り飛んで暗黒帝国首都上空。ここで愛機ズメウに乗ったヴェータ=スペリオルは恐るべき行動に出ようとしていた 「雲を焼き尽くす。お前の力が必要なんだ」 「…? まて雲を焼くってできるのか?」 ヒースは自分の記憶が正しければ雲は水で、蒸発の間違いじゃないかと首をかしげたが。とにかく力を貸してくれといわれ しょうがないと、ヴェータのいうとおりにする事にした。ヴェータの指示に従い。ヒースは禁忌を呼び出した 「ヒース! 下になれ!! 落ちる時は魔法で翼でも出せ!」 「いやまて! 今日に限って壊れてないかヴェータ!? レヴィア閣下がそんなに好きか!」 ロボット同士が上下に合体する事。人はこれをスーパーリンクという! 横ならゴッドリンクとなる 「よし、これで計画の第一段階は終わりだ」 「これのどこが第一段階なんだ? ロケット切り離しでもするのか?」 現在の状況は、禁忌がズメウの足を掴んで飛んでいる。何とも無茶苦茶な状態だった。そして次の指示に従うとヒースは 自分のエネルギーをズメウに送り込んだ。ヒースは無限ともいえるエネルギーを持ち。そのエネルギーを他に物に分ける事ができる そしてズメウがそのエネルギーを炎に変えると。その胸の龍が口を開き雲を焼き尽くし始めた。 「まてヴェータ! なんで雲が燃えてるんだ!? 黒くなって雨雲みたいだ!」 「ズメウの魔炎に焼けないものは無い! さぁどんどん焼くぞ!」 「まてヴェータ何だか暑い! わっアツッ」 その日の暗黒帝国は急激に雲が減り、気温の上昇も激しかった。この突然の出来事の真相を人々は知らない 極端に言うと知っているのはヒース一行とタガメだけである…そして本筋へと話は戻っていく 「あつっ! ヴェータもうやめるんだ! 熱暴走する!」 「頑張れヒース! 姉さまのためだ!」 「おーいレヴィアー起きろー」 「んー…あら?」 現在は夜の7時と40分を少し過ぎたぐらい。レヴィア=スペリオルは小さく欠伸をすると、周りを見回した 突然景色が変わり、目をぱちくりさせここはどこと言いかけそうだったが。少しするとそこが自分の部屋で ベッドの上だと気がついた。だがひとつだけ違うのは。自分の姿だった 「もう時間でしょ?」 「…あっ浴衣! 着せてくれたんですか?」 「えぇ、私がやっておきました」 今のレヴィアはバクフ国の和服に似た、浴衣と言う衣装を身にまとっている。中州国の神話の類の七夕だが バクフ国にも似たような神話があり、せっかくだからとレヴィアが人数分、買っておいたのだ 「リル…それにファータ、今日は雨じゃ…」 「不思議な事にさ、晴れたんだよ」 「まるで雲が燃えたように消えて、降水確率0ですよ」 きっと神様が恋人たちを会わせるためにやったんだと、ファータが冗談交じりに笑っていると、レヴィアが ベッドから起き上がり、二人に礼を言うが時間が無いらしく。すぐに寝室を出ていく事になった 少し走りにくい浴衣と、下着を着けてないことに違和感を感じつつ 「ねぇリル。本当に下着って着けないの?」 「私も分かりませんけど…そう聞きました」 下着は皺ができるからバクフ国の衣装にはつけない。と誤解されているが。バクフ国にはちゃんと下着がある まだ鎖国から開放されて間もないバクフ国への、誤解が生んだ悲しい事態であった。 レヴィアが魔方陣から、自分の秘密の茶会室へ向かうと。そこには数人の女性が長いすに座って待っていた 「失礼している。今日は招いてくれてありがとう」 「こんばんわ、レヴィアちゃん似合ってわ」 「他のみんなはまだ…あらっ」 「邪魔をするぞ。もう着替えておるようじゃの」 最初に口を開いた金髪の美少女はスリギィランドが女王。アゼイリア=グロリアーナ=スリギィランド 優しい声のおっとりとした女性はエヴァック=テレサ=ディオール。ディオールの女王である 次にやってきたのはエルフィーナの女王。エリー・アリエッタだった。女王がこれだけ集まるのもすごいが 「私が一番最後だったかな? 今日は招いてもらって光栄に思う」 「ストゥリガさんこんばんわ。よかったサイズはピッタリみたいで」 「他に呼ばんかったのかえ?」 「呼んだのですけど、用事があるらしくて…けど雪ちゃんは」 そして魔法大国ウィズラドの女王。ストゥリガが入ってきた。皆レヴィアが配ったのか浴衣を着ていた。 これだけ女王が揃うと壮観であるが、だがこれで全員ではなかった…最後によろよろと誰かが入ってくる 「あ、暑い…こんばんわ…」 「雪ちゃん!? だ、大丈夫ですか!?」 最後に入ってきたのは雪の姫、雪原の国であるザイクリンデからやってきたのだが、暑いのが苦手な彼女には ヴェータが雲を焼き尽くした事により、かなり暑くなった暗黒帝国は毒であり入ってきてすぐに汗を流していた。 「マナを抑えるのは私がやろう。風を出し…ても暑いか」 「お、お願いしますストゥリガ女王…」 本来なら、マナの放出により彼女の周りには雪が降るのだが、マナを抑える事によりそれを防ぐ事は可能である だがしかし、それが可能なのは雪の姫のマナに耐えれるほどの存在でなければならない。女王の大半はその器で 現在その心配は無いが。それよりも雪の姫が暑そうなのが心配だと。色々と行動するほうが先だった とりあえずレヴィアがたらいに氷水を入れて持ってくると、雪の姫にその中へと足を入れるように差し出した 「あぁ…涼しい…ありがとうございます。大分楽になりました」 「いえいえ、他に必要な人は?」 「いや、必要ないな…スースーするしな…」 「風が吹くと少し頼りないくらいですもの、バクフ国の方は本当に下着をつけないのでしょうか?」 「私のほうで調べるつもりが、都合よく誰もいなくてな…着けないできてしまったが…」 どうやらここにいる女王は皆、和服用の下着のことを知らなかったらしい。とりあえず七夕を楽しもうと レヴィアが部屋の隅にあるスイッチを入れると、電灯が消えて次に天井が左右に開き。天井ではなくなっていった 天井だったそれは星空に変わり、少し涼やかな風を運んできた。これには雪の姫が助かったと言いたげにため息をつく 「七夕には紙に願い事を書いて、笹に吊るすんだそうですよ」 「笹ですか…ふふっキャスカはサイゾウ君と一緒に空を見てるかしら」 「何故願い事を書くのじゃ?」 「分かりませんがそういう慣わしだそうです。アゼイリアちゃん何か知りません?」 「こういう時にイズーがいればな。バクフにトリスと出かけてるとなると…」 「微笑ましいわね。とりあえず願い事を描いて吊るしましょう」 紙とペンをそれぞれ受け取り、色々と感慨に浸ったり疑問を浮かべるが、ストゥリガの言うとおりだと紙に願い事をそれぞれ書き記し 笹へと吊るした。様々な国の文字の短冊を吊るす笹はどこか不思議で混沌とも、異文化交流ともいえる姿だった 他人の願い事は気にしていないようだが、ここでは少しだけ短冊の内容を覗いてみよう 「娘たちが元気でありますように。できれば恋に進展もあると嬉しいです」 「もっと丈夫な身体と人気が欲しい」 「国が平和でありますよう。できれば娘や夫と平穏にすごしたい」 「騎士道を突き進みたい      できればもう少しジェラードと進展したい…」 「皆で仲良く楽しくしたい」 「涼しい日が多くありますように。辛い物をお土産で貰いませんように」 それぞれ、様々な願いを込めて短冊を吊るすと、今度は雑談の時間である。この部屋に来る時は大抵の王族はハメをはずしている 夫がなかなか帰らず寂しいと愚痴をこぼすストゥリガを、七夕の神話に出てくる恋人たちに例えるレヴィアや 同じような境遇でやっぱり寂しいと言うテレサ。他の国にいく事が多くなって暑さにバテてしまうと言う雪の姫 虚弱体質なため栄養ドリンクに詳しく栄養ドリンクを勧めるエリー。そして 「それでだ、進展はしたのか?」 「そうじゃAか?Bか?」 「そ、その…し、C…」 「C!? いや珍しくは無いが驚いた。普段は硬いのに…」 「そういうストゥリガもレイニアちゃんを産んだのは、アゼイリアちゃんと変わらない位ですね」 「そ、そうはいうが回りが煩いにお膳立てされて…」 アゼイリアはいつものごとく、恋人との関係で弄られていた。そんな雑談の内容が分からずレヴィアと雪の姫だけは 首をかしげあっていた。がそれにも疲れレヴィアが席を立つと。今日のために作っておいたお菓子をいくつか持ってきた 冷やした水餅や団扇や風鈴の形をした物やゼリーのように透明で、中に星の入った置物と間違えそうな物まであり 見てるだけで涼みそうだが、星の形に切られた果物やアイスで彩られたパフェに雪の姫が目を輝かせていた 「綺麗…レヴィアさんの作るお菓子って絵本みたいです…」 「ありがとうございます。溶けちゃうし食べちゃいましょう」 「このゼリー…なのか? 不思議だ…」 「バクフ国のお菓子で作るのにとっても苦労しましたね。」 苦労したで済ませれるような代物じゃないが、レヴィアの菓子作りの腕を知る者しかここにいないため、職人の領域だ と心の中で頷くだけに終わった。基本料理の下手なアゼイリアは羨望の眼差しで和菓子を口に運び ストゥリガは自らの機体であるスフィラ・ワーレが見たら、四季をイメージしたこれらの菓子に感動するだろうか? と勿体無さげにスプーンを進ませた。テレサはレヴィアとのお喋りに花を添えるこれらの菓子に、なかなか手をつけれず 雪の姫は少女らしく、パクパクと幸せそうに菓子を口に運び。エリーは次の日に響かないかと悩んでいた 「あら…皆、空を見てください。ミルキーウェイが綺麗ですわ」 「んくっふぅ…綺麗…」 「これが七夕…なんでしょうね。四季を楽しむってステキです」 開かれた天井から見える夜空には、今が一番、輝いてると思われるミルキーウェイ…天の川がそこにあった 少しだけ涼やかな風が彼女らを包み、星の輝きをいっそう引き立てていた。今頃はあのミルキーウェイで 恋人たちが再会しているのだろうか。そう思いながらレヴィアはふっと笑顔を零すのだった。 「今日は夜更かしを許されてるので、もう少し涼んでます」 「姫のマナの受け皿をやるからな。私も残ろう」 「今日は皆で夜更かしね。ふふっ何だか楽しそうだわ」 現在は夜の9時半。女王たちの宴はまだ終わらないようだ。結局この宴は夜が少し深くなるまで続き 次の日の朝には、ソファの上でレヴィアが浴衣を肌蹴てぐっすりと眠っていたという 「今度は…リルとサーシャも一緒…むにゅ…」 どうやら来年の七夕…いや、次に何かがあるときは今回よりも騒がしくなりそうである。