■東方大陸史■第三章「二つの大陸、二つの宗教、二つの国家、それ故の、一つの大戦(後)」 「黄昏よりも暗く血の流れより紅き  時の流れに埋もれし偉大なる皇帝陛下  今宵、我等の前に立ち塞がりし全ての愚かなるものに  等しく滅びが与えられるでしょう。全てを暗闇へ。全てを神へ。」 −−カナンの決戦に際してミナーニャ王が皇帝へ送った書簡より−− 暗黒歴1392年 暗黒皇帝に即位したアイス・ルヒト・サイレンは【脅威殲滅の為の結束】のもとに 暗黒諸侯の軍勢を、その指揮下に組み入れると、神聖ユーロ帝国軍に包囲されているノルデンベルク城を救うべく北上を開始。 暗黒軍迫るの報に神聖ユーロ帝国軍は、最低限の包囲軍を残して南下を開始。 両軍はノルデンベルク城南方にあるカナン平原で激突した。 神聖ユーロ帝国軍構成 【中央軍】 神聖皇帝ミカエル・グローリア・ゴッドロード<<光全世界継承者>> 兵力31万 【左軍】 オフランス王ルルイ・イルド・フランス(U世)<<矛を振るう事なき地の統治者>> 兵力11万 スリギィランド王ジョン・グオー・スリギィランド<<大憲章王>> 兵力2万 エルフィーナ女王ユグドラ・アリエッタ<<世界樹の守護者>> 兵力4万 【右軍】 デンオール王カルメル・テレサ・デンオール<<全オール人の保護者>> 兵力8万 クーヘント公アルブレヒト・ハプスアルト<<菓子屋の頭領>> 兵力1万 総兵力57万機 暗黒帝国軍構成 【中央軍】 暗黒皇帝アイス・ルヒト・サイレン<<大いなる暗闇に代わる者>> 19万 ミナーニャ王ジャンク・グローデア・ミナーニャ<<水温かな地の狂王>> 兵力3万 バイエイズ王サイド・ウェイズ・バイエイズ<<バイエイズの英主>> 兵力4万 トト王メーメル・ネーデル<<黒陽館の愚者>> 兵力4万 【左軍】 ハンス王レオン・コート<<預言の地の蛮王>> 兵力9万 【右軍】 ハルト王ビスタ・セルビケ・パックツ<<夏夜の地の麗王>> 兵力8万 総兵力47万機 両軍合わせて100万を超えるSDロボが投入された この中世史上最大の戦いは、緒戦から戦術も何もない正面衝突で幕を開け 3日目で父の仇と前線で奮戦していたユーロ軍のオフランス王が 暗黒軍ハンス王との一騎打ちで敗れ、落命すると戦局は一気に暗黒軍側へと流れた。 ハンス王率いる暗黒軍左翼は敗走するオフランス勢を追撃し、エルフィーナ軍が ハンス王を止めるべく前進しようとするが、撤退しようとするオフランス勢とぶつかり 現場は大混乱に陥った。ハンス王はこの状況を見て対エルフィーナ軍部隊を投入。 「炎王騎士団前へェェェェ!!  とおおおおつうううううげぇきいいいいいいいい!!!」 「「「オオオオオオオオオォオオオォォォォオオオオオオオオオオオオオオオォォォォオォォォ!!!!!」」」 ハンス王麾下炎王騎士団はその名のとおり、火系のSDロボだけを集めて編成された部隊であり それに対してエルフィーナ軍は木系のSDロボが主体であった。 エルフィーナ女王ユグドラは敵の機体の編成が自軍に不利であると即断し 軍を後退させようとしたが、オフランス軍が足手まといとなり、被害は甚大なものとなってしまう。 エルフィーナ女王ユグドラは僅かな近衛と共に戦場を離脱。 そしてスリギィランド軍は既に戦わずして国元へと逃げ帰っていた。 ユーロ軍左翼壊滅。勢いづいた暗黒軍は右翼でもデンオール王、クーヘント公を撃ち破り 中央のユーロ皇帝に襲いかかった。 「戦局当方に不利!ご英断を!!」 ユーロ皇帝ミカエルは暗黒皇帝アイスとの一騎打ちの途中であったが ユーロ軍右翼左翼の敗退の報告に撤退を決断。 レヴィナス侯爵を殿軍として東方大陸西部へと軍勢を纏めて退却する。 その後、ユーロ軍は東方大陸西部で暗黒軍と歴史的な決戦を幾度と行い 戦い続けたが、トワイライトの戦いの傷の悪化により皇帝ミカエルが崩御すると 続々と中央大陸諸侯は故郷へと引き揚げてしまい、現地を領土とした僅かな諸侯が抵抗を続けるも 暗黒歴1442年には大戦の幕開けとなった東方大陸西部海岸ルタルを失い ついに東方大陸の領土全てを失った。 暗黒皇帝アイスは東方大陸からユーロ軍を叩き出した事で、【脅威殲滅の為の結束】を解き 神聖ユーロ帝国皇帝ルルイ四世に和睦を打診。既に崩壊を始めていたユーロ帝国にこれを断る理由はなく ここに大いなる戦争は、その幕を降ろした。 「皇帝が死んだ。皇帝が死んだ。  さあ北へ行こう。ラカリハのようにトロネアのように。  そこには栄光が待っているはずだ。」 −−ハンス王レオン・コート−− 暗黒歴1443年 神聖ユーロ帝国との和平を結んだ暗黒皇帝アイスは 東方大陸西部のちょうど中心に位置し、ランペル川へと通じるプレリッテ河川に近い ベアトリスに人口都市を建設し、そこで改めて暗黒神より帝冠を授かり ここにサイレン朝【暗黒帝国】は産声を上げる。 かつて初代皇帝となったトロネア王アルゲバル・アルデバランとは違い アイスには血を受け継いだ皇太子イノがおり また、大戦によって断絶し、継承者のいない諸侯の領土を帝国直轄地とした事で サイレン家は広大な領地を獲得し、権威に見合った権力を行使できる力を得ていた。 「もはや暗黒世界が割れる事はないだろう。  これからは神の教えの元に皇帝が統治し、その統治は千年万年と続き  我らの子孫は暗闇と共に永遠に栄え続けるのだ。」 時の学者であるカルヴィン・スオイケは帝国の誕生に高揚し、こう語ったとされる。 改めて皇帝に即位したアイス・ルヒト・サイレンはベアトリスに帝都を築くと 荒廃した暗黒世界を再建すべく様々な政治を行った。 統一通貨の導入。暗黒文字の簡略化。五公五民税の確立。法律の整備など その影響は現在にまで及ぶとされる。 だが二代皇帝アイスの治世は僅か12年で終わりを告げた。 死期を悟ったアイスは、諸侯をルシフェニアの大神殿へと集めると 帝冠を暗黒神へと返上し、暗黒神は皇太子イノへと帝冠を授けた。 新帝誕生から二日後にアイスは亡くなり、暗黒世界の人々の多くがその死を悲しんだが 大喜びしている不謹慎な王がいた。 カナンの決戦で活躍した蛮王ことハンス王レオン・コートである。 ハンス王はルタル攻略後、皇帝へ中央大陸進出を進言したが受け入れられず 以降、何かある度に中央大陸進出を叫び、その度に皇帝に却下されていた。 しかし、その皇帝も既にいない。 ハンス王は喜々として、同志であるハルト王、トト王と共に 新帝イノ・ルヒト・サイレンへと中央大陸進出の勅を迫った。 農民となるべく生まれてきたような新帝にそれを断る気概はなく ある程度の条件を承認させると、あっさりと侵略許可の勅は下ってしまった。 かくして歴史は繰り返す。 ラカリハ王がそうであったように トロネア王がそうであったように 三度目の侵略の為の時代が訪れようとしていた。 そこにかつての栄光が無いことを知らずに・・・ 次章予定「侵攻、新興、信仰、没落」