■東方大陸史■第七章「第一次テネブリア独立運動」 「王も貴族も本来の機能を果たしていない。  このままでは我らは苦しみに喘ぐであろう永遠に。  ではどうすればいいか?簡単だ。  我らがその機能を果たせばいい。」 −−ルクス・マー博士著『勉強』より−− 暗黒皇帝ヴィル=ヘルムズの死より約200年。 中央大陸において、長き歴史は様々な技術の向上をもたらし、国家を豊かなものにしていったが それによって、王や貴族は肥え太り 慢心した彼等は自らが尊い理由を忘れ、ただただ閉鎖的で豪華絢爛な世界で惰眠を貪った。 そして、そうではない人々は痩せ衰えていた。 中には貴族である事を忘れていない者達もおり、それらの貴族達は啓蒙運動を起こし 貧しき人々に知識を授ける為に、多くの学校を建設し人々の教育に力を入れた。 ちなみに啓蒙とは人々に正しい知識を与え、合理的な考え方をするように教え導くことを言う。 啓蒙運動に参加した貴族達は、啓蒙主義者と呼ばれ、やがて人々から推戴され次代の指導者となった。 だが、彼等は気づいていなかった。 人々に知識を与える事が何を意味するのかを・・・ 暗黒歴2275年。 ディオール王国ユーロ公爵領にて大規模な民衆反乱が発生。 反乱軍は公爵の首を刎ね捨てると民衆軍を名乗り、腐敗した貴族政治打倒とユーロ諸州の独立を宣言(ユーロ宣言) この宣言に共感したユーロ諸州の人々は、次々とディオールに対する反乱を起こし民衆軍と合流。 ディオール王国は大軍を動員し、反乱の武力鎮圧を試みたがホワイトガーデンの戦いで敗北。 ディオール正規軍敗北の報に次々と諸国は民衆軍の支持を表明。 これ以上、事態が長引けば全属領下で反乱が置きかねない・・・ 反乱発生から4年後の暗黒歴2279年。ユーロ諸州はディオールからの独立を勝ち取り 『ユーロ五十同盟』を結成。同盟では民衆が政治を運営するという民主政治が統治方法として採用される。 「王侯貴族に最早統治者の資格はない。立てよ民衆!圧制者を打ち倒せ!」 ユーロ五十同盟は民主政治賛美と王制打倒を高らかに唱え(世界独立宣言) これに影響を受けた人々によって全世界規模で次々と支配する者と支配される者との戦いが幕を開けた。 この動きに各国の支配者達は狼狽したが、オフランス王が断固とした民主政治の否定を宣言した事から 各国は民衆反乱に対する協力体制をとり、各国の軍隊を前に次々と民衆反乱は鎮圧され 独立運動の多くは失敗に終わる。 クームラリア革命(大公に諭され民衆は武装解除。オーケストラを聴き菓子を食べ終えると解散した) チェル反乱戦争(ディオール領チェル地方での大規模反乱。ベルーカ・ディオール連合軍によって鎮圧) 第一次イタリャーナ独立戦争(暗黒帝国の支援を受けた市民が挙兵。オフランス・ディオール連合軍によって鎮圧) ベル・アウトバーン革命(アウトバーン首都を制圧した民衆がヴァイマー共和国を宣言するもアウトバーン軍に鎮圧される) ルテティア・フランス革命(聖都で教皇を人質に反乱軍が勢力を拡大するもオフランス・スリギィ・フラン連合軍が鎮圧) 数々の民衆主導の運動で独立に成功したのはカリメアとグロッツだけであった。 ※カリメア=スリギィランド植民地カリメア海岸での革命運動。カリメアの民衆をプラト帝国が支援しており       陸軍戦力の乏しいスリギィランドは植民地議会の要求を承認し、カリメア合衆国の独立を認めた。 ※グロッツ=ディオール属領グロッツ地方での革命運動。言論による穏健的な独立を目指し       途中から完全民主政治から立憲民主政治へ統治体制の路線を変更。       ディオール王家から君主に迎えグロッツ連邦王国の独立を達成した。ちなみに後のグロッチェン皇国である。 「自由な民の中に生まれたかった。  自由な風の中に生きたかった。  自由な旅の果てに死にたかった。  それも今は叶わない。  偉大なるヴァジェトよ。我が子はまだ幼い。どうかこの父無くとも一人立てる強き子に・・・」 −−アルゴル・ケムトサラーム−− 暗黒歴2283年。 中央大陸での革命騒ぎは、ついにディオール王国テネブリア領へと飛び火した。 黒白黒の三色旗を打ち振るい大陸中に猛威を振るう革命勢力を前に 動揺しきっていたディオール上層部。 テネブリアの独立主義者たちは勢いづいた。 「今こそテネブール統一の時!万国の同胞よ、集えオールフルトへ!!」 テネブリア各地の独立主義者の堂々たる有力者が続々とオールフルトへ集結。 暗黒帝国のフェルディナント・フレスレイド<暗黒大公>を臨時議長に迎え独立議会を設立。 ディオールは、フレスレイド暗黒大公の臨時議長就任はディオール領テネブリアへの介入行為であると、 暗黒帝国へ強く抗議したが、暗黒帝国は 「大公爵は南テネブリア領主であり、一個人として独立議会に参加している。」 とディオールへ回答し、帝国としては介入していないと弁明。 事実、気難しい東部諸侯など帝国にとってはどうでもいい存在であり(兵の動員に応じた事がまったくない) フレスレイド暗黒大公にしても配下の諸侯に推薦され断れず議長役を引き受けてしまったにすぎない。 軍事的に各地で反乱が続発していたディオールにこれ以上帝国を糾弾する力はなく、仕方なく容認。 ディオール上層部はテネブリアに駐留する部隊の数から武力鎮圧は困難と判断し グロッツのような反乱を起こさせずテネブリアを衛星国として独立させる形をとる事に決定する。 だが肝心の独立議会が独立憲法の制定に手間取った。 人権基本法の可決だけに1年を費やしてしまい 議会内外問わず穏健派と急進派の争いの激化から 有能な議員は早々に議会に失望し、やがて去っていった。 暗黒歴2284年秋には、穏健派によって急進派議員3名が殺害され 議会はディオール・暗黒大公軍に議会の守護を要請。 以降、独立議会はディオール軍、暗黒大公軍に守られながら存続することになったが この事件は独立議会の脆弱さを露呈し、ディオール上層部の方針変更を決定付けてしまった。 一方、迷走を続ける議会の外でも熾烈な言論戦が続き テネブリア南部を含む統一を掲げる大テネブル主義者は「同胞新聞」を発刊。 対抗してテネブリア南部を含まない統一を掲げる小テネブル主義者は「ビスケット新聞」を発刊。 お互いの紙面上で激しく罵り合い続ける。 それでも暗黒大公軍が駐留していた為に、ディオールが議会を閉鎖したりはしなかったが 暗黒歴2285年夏になると事態は急変する。 暗黒帝国皇帝ヴォックス・スペリオルが危篤に陥ったとの報が届く。 フェルディナント・フレスレイドは臨時議長を辞し、急いで帰国してしまう。 幸い軍隊は駐留させたままだったのでよかったものの それも秋には撤兵されてしまう。 皇帝ヴォックスが死に、皇弟ヴァイアスが新帝に即位すると 面倒事を嫌った新帝は、フェルディナントに全軍撤兵を命じたのだ。 ここに暗黒帝国は完全にテネブリア革命運動から脱落。 もはや障害はなくなった! 嬉々としてディオール軍は武力でオールフルトを制圧し独立議会を強行閉鎖。 次々とディオール王国テネブリア領の独立運動家達を逮捕し処刑していった。 第二代独立議会臨時議長エドワード・サムソンは何とか状況を挽回すべく フェルディナント・フレスレイド<暗黒大公>へテネブリア国王の王冠を奉呈。 しかし、大公はこれを拒否。 「申し訳ありませんが、皇帝陛下にお喜び頂けなければ私は王冠を受け取る事が出来ません。・・・許して下さい」 こうして言論によるテネブリア独立は失敗に終わる・・・ 議会の閉鎖に憤ったテネブリアの部族民達が シャンセン、西デスレイヤー、サヴェッジで挙兵し反乱を起こしたが ディオール国内の革命騒ぎは既に下火となっており 大幅に駐留部隊を増強していたディオール軍に蹴散らされる。 革命は終わったのか・・・ いや、まだ希望は潰えてはいなかった。 軍を退いた事に罪の意識を感じたフェルディナントが可能な限りの兵力をディオール国境へと張りつけ 独立運動家の亡命を助けており、ディオールの民衆弾圧は全テネブリア部族に憎悪をもたらし 独立への機運を高めていた。 そして21年後、カリスマ的指導者を擁して彼等は再び立ち上がる。 指導者の名前は アサド・ケムトサラーム。 次章予定「第二次テネブリア独立運動」 \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ おまけ ■Q&A■ Q、なんかディオールとか悪く書きすぎじゃね? A、闇黒連合サイドの歴史なので闇黒連合三国に都合よく脚色されまくってるけど気にしないで下さい。 Q、グロッチェン皇国の皇帝家はディオール王家? A、初期はそのとおり。のちにグロッチェンはディオール系王家の断絶にともない隣国エベリウス家から王家を迎える。   これによってエベリウス・グロッチェン同君皇国を樹立。皇国の名は中洲国の皇帝と張り合う為だったが   のちにまた2国は別れ、皇国の名だけが残った。 Q、なんでエベリウス? A、グロッチェン皇族=緑髪。エベリウス王族=緑髪。あと地図上で都合よく隣国だったから。 Q、フェルディナント・フレスレイド<暗黒大公>って何?フレスさん? A、三界妖フレスレイドさんの直系子孫です。他にもベヒモラントさんとかアビシラスさんとかの子孫もいます。   人間形態もとれるしイケルト判断しました。   東方大陸東部の南テネブリア貴族達は、初期はフレスレイド大公家と暗黒皇帝へ二重忠誠を誓っていたが   西部に鎮座する皇帝より、南テネブリアに土着し色々と手を差し伸べてくれた大公家の方に   好意をよせ、この頃には実質的に大公にのみ忠誠を誓っていた。   この関係からテネブリア=闇の国関係になると多々名前があがるけど気にしないでね。 以上