ドーカ系に関する考察的な妄想文章 p/始めに 1/歴史 2/基本構造 3/コア・フレーム 4/ジェネレーター・パネル 5/集積AI 6/各部解説 -1/頭部 -2/胴部 -3/腕部 -4/脚部 7/武装等 e/終わりに p/始めに  俗にドーカ系、と呼ばれるロボットの系譜がある事はご存じだろうか。  この本を手に取った読者諸兄の多くはプラト帝国民であろうし、そうであるならば今更解 説する必要もない事ではあろうが、例えば他国でこの本を読む方もいるかもしれないし、或 いは今までそういった事にさして興味を持たずに生きてきた方もいるだろう。そういった方 達のためにも、簡単にではあるが紹介をさせて頂こう。  ドーカ系、と一括りにされるこのロボットは、古くはプラト帝国建国時には既に歴史上に 姿を見せている。詳細な歴史に関しては後述するので、まずはこのドーカと呼ばれる機械の 巨人は常に帝国と共に歩んできた、という事実を記憶して頂きたい。  諸兄もご存じの事と思うが、プラト帝国は工業国である。多くの国家で使用される、魔力 を媒介とした技術、所謂魔法と呼ばれるそれらを使えない(*1)帝国では、独自の技術力を以 て国を発展させる以外の手段が無かったので、それ自体は決して不思議な事ではない(*2)。  工業とは、需要と供給があって初めて成り立つものである。しかしながら建国当初の帝国 の領地は決して広大ではなく、人口も多いと言えるほどではなかった(*3)。つまり、間違い なく小国であったのだ。そして、小さな国では需要も供給も規模が小さく、国力の増強は容 易な事ではない。  ここで登場するのが、ドーカである。帝国民達は暇に飽かせて(*4)古くから使用され続け たこのロボットの改修を続け、結果としてドーカを中心とした経済基盤が確立される事にな る。その関係は帝国が国力を増し、同時に近隣諸国を越えて遠く海を越えた国にも名声を轟 かせる用になっても変わる事はなく、そして現在においても、帝国の工業ラインの5割(*5) はドーカ系のために回っているほどである。帝国領内は資源が豊富(*6)な事もあり、その勢 いは留まるところを知らず未だに拡張を続けている。  つまり、ドーカとプラト帝国は切っても切れぬ、どころか、そのものであると言ってし まっても過言ではない程に密接な関係であるのだ。  筆者は帝国民であるが、贔屓目に見ずとも国とロボットがここまで深い関係を持つ例は無 いだろう。発掘機や古い起源を持つ機体を旗機として飾り立てる国は多いが、帝国の様に数 多く存在する量産機を旗機とする国家を、私は他に知らないし、恐らく存在しないだろう。 それほどまでに、プラト帝国にとって無くてはならない存在なのである。 1/歴史  さて、ドーカの歴史についてである。  ドーカタイプの原型は現帝国首都にある巨山に多数埋没していた太古のロボット郡(*7)で あり、これを独自の技術で修復、改良したものがアーキ・ドーカと呼ばれる最初のドーカで ある(*8)。このアーキ・ドーカは当初は農耕や開拓に利用され、帝国初期の領土拡張に貢献 したようだ。その後、近隣諸国との接触に伴い武装を施された機体も現れ始めたが、この時 点では機種としての区別はされていない。  その後、帝国の発展と共に工業技術がある程度成熟した段階(*9)になると、帝国民はアー キ・ドーカの改良を始めた。先述の通り、これがドーカとプラト帝国にとってのブレイクス ルーとなったようだ。  初期は簡単な装甲の追加や武器の性能の向上が主であったが、技術力の発展に伴い次第に 機体自体の改良や、或いは破損した機体に自分達で設計した新たな部品を組み込む事で補修 する様になる。アーキ・ドーカの基本設計が比較的簡素だった事も幸いし、当時の帝国民は 瞬く間に設計、改良技術を発展させていった。  この時期のドーカの系譜は混沌としており、明確な名前を持たないものも多い。規格化さ れていない手製のパーツを多用した事もあり、一種の工芸品的な扱いを受けていた(*10)、 とも言われる。  もう暫く時計を進めると、帝国はさらに技術力を向上させ、発掘機の改修に寄らず独力で 満足な性能を持ったロボットを量産する事に成功する。これが、今でいうジース・ドーカの 元祖である。  更に、より高性能な武器をも開発した帝国は、ついに近隣国への侵略を始める。圧倒的な 工業力によって支えられた大規模な軍勢は瞬く間に地図を描き変え、皇帝の椅子の主が3回 替わる間に、帝国の領土は倍以上に膨れあがった。その間にドーカの兵器としての改良も進 み、より硬く、より強靱に、そしてより安く、量産出来るようになっていたのである。  かくしてプラト帝国は軍国として歴史に躍り出る事になるのだが、それを支えるドーカも また、帝国の尖兵として恐れられる様になっていった。  この間、ドーカは改良に改良を重ねられ、多数の派生型が誕生した。が、統廃合を繰り返 した結果、その系譜の多くは消滅する事となる。  ある時期に、一つの技術が開発された。各部の駆動用モーターや電磁強化型装甲(*11)に 使用する電力の配分を任意に変更する事で、機体の性質を変化させる、という物である。こ れによって単一機種による部隊の編成が容易となり、運用や訓練、生産を効率化する事に成 功したのである。  こうして開発された機体はジース・ドーカと名付けられた。諸兄も良く知る、所謂ドーカ としては一番普及しているあの機体である。ジース・ドーカの開発により中途半端な改良を 施した派生機の系譜は全て消滅(*12)し、帝国軍に存在するドーカの多くは1年と経たずに 置き換えられる事となった。  時を同じくして、もう一つの系譜が誕生した。量産仕様のドーカとは全く別の、主に皇族 やその側近が使用する事を前提とした高性能機である。現在ではラガーエ・ドーカとして知 られるこの系譜は大きく三つに分別される。  一つは親衛隊や近衛師団、或いは大隊長クラスによって運用されるジャック・タイプ。使 用環境や状況を選ばない汎用性を重視されており、ある意味ではジース・ドーカ以上に何で も出来る機体である。機体性能も大凡全ての面においてジース・ドーカを上回っている。ラ ガーエ・ドーカとしては最も生産数が多く、特に首都警護隊の機体、通称ライオット・ドー カ(*13)は有名であろう。  次に、皇族の中でも軍事に深く関わる人物達が扱うクイーン・タイプ。こちらは主目的を 指揮、管制に絞っており、単機で一軍を完全に統率出来る(*14)と言われる程である。ま た、至極当然ではあるが直接戦闘能力もそれなり以上に高い。元々前線に出る機体ではない が、万が一の自体も想定されているのである(*15)。  最後に、皇帝自身が登場する事を想定したキング・タイプ。過剰なまでの装飾を施され た、象徴としての機体である。とはいえ採算を度外視して組み上げられているため、決して ただの飾りではない。どころか、例外中の例外であるジョーク・ドーカを除き単純なスペッ クという点において本機に勝るドーカは存在しない程である。とはいえ皇帝自身が搭乗する 事は稀で、実際には皇子やその他の近縁の皇族が使用する事が多い。