サイオニクスガーデンの生徒が戦うのは何も『NEXT』だけではない。 『NEXT』は超能力犯罪者の組織として最も大規模であるため必然的に対峙する機会が多いだけであ りそれ以外の超能力犯罪者と対峙する機会も少なからずある。 例を挙げるなら『フェイスイーター』と呼ばれる桐島叉姫などがそうである。 桐島叉鬼はその仇名の通り襲った相手の顔面の肉を喰らう凶行で知られPGと対峙した回数は比較的 多い超能力犯罪者である。 未だ捕縛も殲滅も出来ていないのはガーデンとしては歯痒いところだが言い訳をするなら組織に属 さない犯罪者は比較的実力者が多く対峙する事さえ困難なのだ。 そして今回の捕縛対象も桐島叉鬼同様無所属の犯罪者である。 「という訳だが──やれるか?影宮。単独任務だけど希望するならサポートもつけるけど」 説明を終えガーデン教師、臨彼方は向かいに座る生徒──影宮千春を窺った。 「無論です。サポートも結構です」」 「流石いい返事だ。先生お前のそういうとこ好きだぞ」 「ガーデンに通う生徒として当然の事です」 馴れ馴れしいほどフレンドリーな彼方に対し千春の方はとてもクールだ。 「んー、影宮は相変わらずクールだなぁ。せっかく可愛い顔に生まれたんだからもっと笑った方が モテるぞ」 「・・・説明が終わったのなら失礼します」 「んもー、つれないなぁ」 千春は会議室を出ると後ろ手に戸を閉めた。 (可愛い・・・私が・・・) 一見クールな千春だが中身は年相応の少女である。 表情こそ変わらないものの可愛いと言われればもちろん嬉しい。 静かに廊下を歩く千春の頬はほんのり染まっていた。 同時刻某所。 台風が過ぎ去った後の様に散乱した部屋の中でに2人の男がいた。 1人はいかにもスネに傷のありそうな風貌の強面の男。 もう1人はハンチング帽を被った少女の様な顔立ちに少女の様に華奢な身体つきの男。 一体どの様にしてこんな状況になったのだろうか。 ハンチング帽の男は強面の男を愉しそうに見下ろし強面の男は恐怖でガタガタと震えながらハンチ ング帽の男を見上げている。 ハンチング帽の男と強面の男の立場が逆ならしっくりくる光景だが実際にはその逆である。 強面の男が恐れる理由は散乱した部屋を見ればすぐに分かった。 肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片 肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片 肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片肉片 ぶつ切り以上挽肉未満の肉片が部屋中に散らばっている。 それらの肉片はつい数分前まで生きていた男の部下達と男が雇った用心棒の成れの果てである。 目の前にいるハンチング帽を被ったこの男がほぼ一瞬でこの惨状を生み出したのだ。 何をしたのか、何をされたのかは分からない。 ただ状況から見てこの男が自分を殺しにきたヒットマンであるというのは分かった。 こんな時のために雇っていたはずの用心棒はすでに肉片へと成り果てている。 男は生き残るために意地もプライドも捨て必死で命乞いをした。 「た、頼む!命だけは助けてくれ!お、俺には女房と娘がいるんだ!!」 「へぇ、そうなんだ。ちなみに娘さんは今何歳?」 「せ、先月5つになったばかりだ!」 「そうかそうか。そりゃ可愛くて可愛くて仕方ないだろうな」 「そうなんだ!だから頼む!命だけは助けてくれ!」 「それは出来ないな。それはそれ、これはこれっていうじゃない。俺がお前を殺すのは決定事項。 今こうして話してるのは命乞いする相手を殺すのが俺の趣味だから」 「そ、そんな!頼むお願いだ!お願いです!殺さないでください!どうか!どうか!どうか!」 「だからそんなに頭下げられたってこっちは喜ぶだけだって。あ、そうだ。じゃあこうしよう。俺 は今からお前を殺した後にお前の女房と娘も殺す」 「なっ!?む、娘と女房は関係ないんだ!俺の仕事も知らない!普通の会社の経営者だと思ってる んだ!」 「そんなの知るか。とにかく娘と女房殺されるのが嫌ならお前は俺を殺すしかない。どう?これで 少しは頑張ろうって気になった?よーしパパ頑張って殺しちゃうぞーってな?」 「ふ・・・ふざけるんじゃねぇこのドグサレチンポがぁぁぁぁぁ!!!」 恐怖と怒りでブチギレた強面の男は懐から銃を抜き放ちハンチング帽の男に乱射した。 照準もへったくれもない滅茶苦茶な撃ち方だが下手な鉄砲も数撃てば当たるし何より距離が近い。 発射された弾の内何発かはあらぬ方向に飛んでいったがそれ以外は全てハンチング帽の男に当たり そして弾かれた。 強面の男は驚いて声を出そうとしたがすでに五体は肉片となっていたため声は出なかった。 「うーんいいね、最後の足掻きってのは。さて、それじゃこいつの女房と娘を殺しに行くかな。す ぐに会わせて・・・やれないか。どう考えても地獄行きだもんなこいつ」 男はハンチング帽を被り直すと散らばった肉片を踏まない様に部屋を後にした。 男の名は呪井日影。 『影武者の日影』と呼ばれる異能の傭兵で影宮千春の捕縛対象である。 ...To Be Continued