日本分断YAOYOROZ 彩陶らごうSS 「その魂、太陽より赤く」前編 --日本分断YAOYOROZ 世界は混沌としていた。 突如、世界に降り注いだ青い光と異常な電磁波。 それによって人間の深層意識から生まれ実体化した巨人たち。 古の神々や魑魅魍魎の姿を模した巨大な災厄は世界を混乱の渦におとしめた。 日本で「ヤオヨロズ」と名づけられた災厄にはある法則があった。 その殆どが思春期の少年少女から生まれること。 強い精神力を持つ人間はヤオヨロズをコントロール出来ること。 心を蝕まれたヤオヨロズ使いはヤオヨロズに取り込まれ、破壊の限りを尽くすこと。 人間大のサイズのモノから何百メートルもあるモノまで形は様々だが、人型のモノが多いこと。 怪電波とも呼べる異常な電磁波により国際社会を結ぶ無線通信網はその機能を失い、 地上に降り立ったヤオヨロズ達は暴走し世界を混乱の渦に巻き込んだ。 そんな中、ヤオヨロズを操作する術を生み出した学生達がいた。 高い技術力でヤオヨロズを解析し”統制装置”と呼ばれる ヤオヨロズの暴走を抑制しコントロールする装置を生み出し 完全な兵器を創り上げようとした東京・帝神学園。 ヤオヨロズに手を加える事無く、生徒の精神による完全操作を図った京都・聖護院学園。 帝神学園には日本政府が、天皇陛下と旧家の力を持つ者達が聖護院学園を支持し、 日本全土を巻き込む学生を中心とした代理戦争が始まった。 うら若き学生達がヤオヨロズを使い日本の覇権を争う特異な状況は、 ヤオヨロズという”力”が思春期の不安定な深層意識からしか生まれないと言う 哀しい現実が生み出した悲劇としか言えなかった。 暴走したヤオヨロズを討伐する事も、 故郷の学園の支配地域を広げる事も、 普通の学園生活を営むの事も、 全ては、ヤオヨロズに目覚めた少年少女達の想いにかかっていた。 --東京 帝神学園 特別役員寮 その夜は寝苦しい夜だった。 夏の終わりの帝神学園の特別役員寮。 秋の始まりを思わせるコオロギがパラパラと鳴いていた。 ここには帝神学園を統括する、極一部の学生達が寝泊りしている。 私もその一人だ。 特に気温が高いわけではなかったが、両手にじっとりと汗をかいていた。 視界に入るのは広い自室の天井だ。 私の部屋には帝神の権力を誇示するかのような美しい調度品の数々が置かれ 部屋に置かれた姿見鏡に映る赤い絨毯が、ベッドに横たわる私を休息する炎神に見せる。 私はベッドの隣に置かれた化粧台から髪留めを手に取ると ピンク色に染められた長い髪を結び、身体を起こして赤い絨毯の上に降り立った。 足の裏にも汗をかいているのか、 普段はすべすべとしている絨毯の感覚がじっとりと重い。 私の衣装タンスの隣にあるコートハンガーには、 寝巻きの上から着る白いガウンと、「生涯不敗」と太い筆で書かれた白い特攻服がかけてある。 私の名は 彩陶・羅ごう(さいとう らごう) 日本分断と呼ばれるこの時代、東日本を統べる”軍事力”を保有する 帝神学園、七代目の総長である。 私はベージュ色のシルクのパジャマの上から白いガウンを羽織り、 屋内用のスリッパを履くと屋上へ向かった。 --東京 帝神学園 特別役員寮 屋上 屋上への扉を開けると生温い風が吹き込んできた。 まだ夏は終わっていないようだ。 どんよりと曇った空が息苦しい。 雨はふりそうにないが、今夜は月は見れそうになかった。 いつものように帝神学園の校舎を見ようと屋上の手すりに近付くと、 人影があることに気がついた。 人影は私が帝神学園の校舎が一番よく見える場所に立ち、 手すりに手をかけて校舎を眺めていた。 長く白い髪、落ち着いた赤紫色のカッターシャツに白いズボンをはいている。 背はそれほど高くないが細身だ。 後姿からは女性なのか男性なのかは分からなかった。 白い髪の人物がこちらに気づいたのか後に振り向いた。 背中まで伸びた白い髪が屋上に吹く風でふわりとなびく。 その顔を見て私はまだ、この人物が女なのか男なのかを決めかねた。 中世的で美しい顔立ち、しかし意志の強そうな黒い瞳をしている。 私は白い髪の人物に声をかけた。 「見ない顔だな。何年生だ」 白い髪の人物はゆっくりと口をひらいた。 「ボクはこの学園の人間ではないよ」 その声を聞いて、私はやっとこの人物が少年であるという事を認識した。 まだ声変わりはしていないようだが、確かに少年の声だった。 しかしその幼い声とは逆に喋り方は穏やかで熟年の紳士を思わせた。 「この寮は帝神学園の関係者以外は立ち入り禁止だぞ」 私の言葉を聴いて白い髪の少年は少し黙った。 しかし、私の言葉など気にすることもなく、言葉を続けた。 「キミに試練が近付いていることを伝えに来たんだ」 本来ならば所属を聞くべきなのだろうが、 白い髪の少年の黒い瞳が私にそれをさせなかった。 「試練?」 「キミの前に異国の太陽が立ちはだかるだろう。  その太陽は巨大だけれど、その大きさに驚くことはない。  キミに授けられた力は目に映る姿に左右されることはない」 白い髪の少年がそう言うと天から突風が吹き込んだ。 「くッ!」 あまりに強い風に目をしかめ右腕で顔を覆う。 次に目を開けると、あれだけ曇っていた空が澄み渡り、美しい満月が姿を現した。 そして白い髪の少年の背後、屋上の手すりの向こう側には 二本の角に骸のような顔、血の様に赤い鎧を着た巨大な人型ロボット・・・ヤオヨロズの姿があった。 私は白い髪の少年を睨みつけ、言い放った。 「貴様の名は!?」 白い髪の少年はふわりと屋上の手すりに立った。 「ボクの名は蘇芳(すおう)。キミが力を持つ限り、また会う日がくるだろう」 そう言うと、白い髪の少年は背後の赤いヤオヨロズに身体を預けるように屋上から落ちた。 ヤオヨロズも白い髪の少年の後を追い地面へと向かう。 「なッ!?」 私は白い髪の少年の居た手すりまで走り、屋上から地面を覗き込んだ。 ここは八階だ。 落下したらただでは済まない。 しかし、そこには少年の姿もヤオヨロズの姿も無かった。 「消えた・・・のか」 白い髪の少年が姿を消すと、私は強い脱力感に苛まれ、 足を引き摺るように自室に戻った。 私は白いガウンを赤い絨毯の上に放り出すと、ベッドに倒れこんだ。 --帝神学園 特別役員寮 彩陶の部屋 「総長!彩陶総長!起きて下さい!」 私の部屋に女の声が響いた。 「ん・・・む・・・なんだ・・・」 寝ぼけ眼をこすり身体を起こす。 ベッドの横に立っていたのはショートカットの青い髪にメガネをかけた同級生。 いや、総長補佐と言ったほうがしっくりくるだろう。 水神の名を冠したヤオヨロズ「タカオカミ」を持つ 神室 ケイト(かむろ けいと)だった。 向こう見ずな私を適度に抑え、思い切り暴れればいい時には発破をかける。 私がその背に”生涯不敗”という文字を背負い、 それを現実に成しえているのは、ひとえに彼女のお陰だと思っている。 信頼の証と言えるのかは分からないが寝起きの悪い私を起こしてもらうために、 ケイトにだけは部屋の合鍵を渡している。 「総長!大変です!すぐに作戦指令室へ!」 「何が大変なのか言ってくれ。でないと目が覚めん」 ケイトは必死の形相で私に伝えた。 「7分前にインド洋沖の海上より長距離弾道ミサイルが発射、こちらに向かっています!」 私は目を見開いた。 「それを早く言え!戦闘力の高い者と飛行能力を持つ者、防御能力の高い学生を集められるだけ集めろ!  私は制御スーツに着替えてから行く!」 私はベッドから飛び起きるとパジャマを破り捨てるように脱ぎ、制御スーツを着込んだ。 制御スーツとは帝神学園が開発したヤオヨロズ制御システムの一部だ。 ヤオヨロズに装着された統制装置と共に運用することでヤオヨロズの暴走を抑制し、 尚且つヤオヨロズの力を限界まで引き出すことが出来る。 赤とグレイ、そして金色に縁取られた制御スーツは全身にぴったりと密着し、 私の身体のラインを露にする。 私は”生涯不敗”と背中に書かれた特攻服を奪うように取ると作戦司令室へ走った。 --帝神学園 作戦司令室 私が部屋の外に出るとすでにケイトが外に待機していた。 青い髪は冷や汗で額にくっつき、余裕の無いメガネの向こうの瞳が 一刻の猶予も無い事を物語っていた。 ケイトはすでに制御スーツを着込んでいた。 すぐに戦えるということか。 「作戦司令室に臨戦態勢の学生の待機、完了しています!」 「ご苦労!走りながら状況を聞く!」 私たちは全速力で走りながら作戦司令室に急いだ。 「ミサイル防衛システムによりICBMの射撃が確認されてから二分後に  日本政府はイージスによるミサイル防衛を決定。  佐世保より出航中の海上自衛隊所属イージス艦”こんごう”に搭載された  スタンダードミサイルSM-3によりミッドコース・フェイズ迎撃を行いましたが  ICBMへ着弾する直前で迎撃されています。  ICBMはあと12分でターミナルフェイズへ移行!」 「SM-3が迎撃されただと!?ヤオヨロズか?」 「はい!  広域索敵型ヤオヨロズ”テンシュカク”の遠隔透視により  ICBM弾頭の先端に巨大な人型の影が確認されています!」 「周辺住民の避難命令は!?」 「すでに発令しています!  中心区域の住民はシェルターへ避難を促していますが収容率は約2割、  周辺住民全体で見ると避難が完了しているのは30%弱です」 その数字を聞いて私は顔をしかめた。 インド洋沖からのICBMならば30分強で日本に着弾する。 着弾まであと20分も残されていない。 「間に合いそうに無いな」 ケイトは私の言葉を聴くと小さく頷いた。 --帝神学園 作戦司令室 私とケイトが作戦司令室に到着すると、 入り口で 九戸 闇那(くのへ あんな)が待機していた。 赤い髪に扇情的な黒いレースの制御スーツを着ている。 切羽詰ったケイトとは違い、彼女の表情はいつも通り冷ややかだった。 「各員、待機完了しています。  状況説明も終了済みですわよ」 「ご苦労」 早足で作戦指令室に入る。 中には30名程度のヤオヨロズ使い達が集まっていた。 召集がかけられて10分も経っていないのだ。 ここに集まった学生達は飛び切り優秀な者達だろう。 私は即座に全員の顔を確認した。 これから始まる”戦争”の為に。 部屋の中で待っていた生徒会役員が声を張り上げた。 「総長、到着! 起立!」 机に座っていた学生達が一糸乱れず、すっくと立ち上がる。 いつもの作戦会議だとこの後に”敬礼”が続くのだが、今は緊急事態だ。 時は一刻を争う。 「ありがとう。緊急事態だ、礼は終わってから聞く。  皆も立ったまま聞いてくれ」 皆の視線が私に集中する。 「敵ICBMは現在ミッドコース・フェイズに移行している。  あと数分で大気圏外へ出るだろう。  ターミナル・フェイズへ移行し大気圏へ再突入すれば重力の影響で速度は急速に上昇する。  秒速7kmで突っ込む核弾頭など誰も落とせはしない」 そう言うと作戦司令室がざわめいた。 秒速7kmといえばマッハ20を越えている。 さらに敵性ヤオヨロズがこれを守っているとなれば任務はさらに困難になる。 「我々はICBMがターミナルフェイズに移行する前、大気圏外で破壊する。  それには残り少ない時間で大気圏外まで飛行できるヤオヨロズが必要になる」 さらに作戦司令室がざわめく。 それはそうだ。 そんな速度で飛行できるヤオヨロズを持つ学生はこの部屋に居ないのだから。 しかし、別の方法でそれを可能とするヤオヨロズなら存在する。 私はその手段を持つ学生の顔を見た。 伸ばした髪を後ろで纏めポニーテールにしている男子学生。 着込まれた制御スーツは筋肉質な彼の身体をさらに引き締めてみせている。 「法月 星志郎(のりづき せいしろう)、お前の重力を借りる」 それを聞いて法月は驚いた。 「お前の重力操作でヤオヨロズ周囲の重力だけを軽くしろ。  地面からICBMまでの到達区間の重力だけを軽くすれば、  気圧変化の影響で周囲の空域ごと一気に成層圏を突破できる。  0.2Gくらいに出来れば二分で大気圏外へ到達できるだろう」 法月は私の言葉を聴いて口を開いた。 「重力を変化させた空域一帯が上昇し、その下部に周囲の空気がなだれ込む。  そうなれば強烈な上昇気流で一気に宇宙まで行けるでしょうが・・・  無謀すぎる。  何より急上昇中のGと空気摩擦に僕のヤオヨロズが持つかどうか」 「私がICBMを撃ち落とす」 私の言葉を聞いて法月が私を睨んだ。 「・・・総長が、空へ昇ると仰りますか」 話を聞いていた生徒が、バンッ!と机を叩いた。 長身に黒髪、鼻柱にキズのある男子学生がイスから立ち上がる。 ヤオヨロズ「ビシャモンテン」を使役する 門天山 もん吉(もんてんざん もんきち)だ。 「それは許可でけへんな。  アンタは帝神の総長や。  アンタが死んだら俺らの戦争は終わってまうんや!」 門天山はそのまままくし立てる。 「空へは俺が行く。  俺のビシャモンテンならICBMに胡坐かいてる野郎も難なくぶっ潰せるやろ」 大きな声を上げた門天山に対して、先刻から眉間にしわを寄せていたケイトが声を荒げた。 「門天山、今は問答をしている時間はない。  総長の言葉を待て」 私は一呼吸置いてから門天山を見た。 「なら聞くが、核弾頭が爆発した時、お前は爆発の火点を操作できるのか」 それを聞いて門天山の顔が渋くなる。 「ぐっ・・・」 「火を操る力を持つカグツチならば核の炎だろうが爆発の方向性を空へと向けられる。  都心部が火の海になる最悪の事態は防げるだろう。  その力をビシャモンテンが持つのか。  その口から言え、門天山。」 「・・・持ってへん。  けどな、兵隊の俺らと違ってアンタの代わりはおらんねん。  俺が言いたいのはそれだけや」 門天山はやや俯くとドスン、とイスに腰を降ろした。 それに続いてオレンジ色の髪で小柄な女子、春日 日乃(かすが ひの)が口を開いた。 「あっあの、彩陶総長が”国譲りの戦”でお兄さんを亡くされて、総長の座を譲り受けたのは知ってます。  その後の総長の座をめぐって行われた校内闘争もすごかったって・・・  でも、彩陶総長とカグツチの力は凄かったって!  その時、彩陶総長は中学三年生で、今の私より二つも年下だったのに高等部の人たちとマトモにぶつかって  それでも全部倒したって!」 話を途中まで聞いたケイトが春日の話を止めようと口を開く。 私はそれを片手を上げて制止した。 私は瞳を閉じて春日の言葉を待った。 「あ・・・ごめんなさい。時間がないんですよね。  私が言いたかったのは・・・」 春日は瞳に涙を溜めて言った。 「皆、彩陶総長のこと信じてます!  ”国譲りの戦”でぐちゃぐちゃになった帝神を三年間でここまでまとめ上げた、  彩陶総長を信じてます!  きっと帰ってくるって!  私たちの総長は最強だもの!」 私は目を見開いた。 周囲を見渡すと、作戦司令室に座っている全ての生徒が私を見ていた。 その視線は春日の言葉が自分たちの言葉だと言わんかのようだった。 私は自分の胸が熱くなるのを感じていた。 「彩陶総長にィィィ、敬礼!」 学生帽を被り、恰幅の良い体躯にガクランを羽織った巨漢、 獅真凄 豪(しませ たける)が野太い声を張り上げた。 それに続き、すべての学生が右手を天にかざし、一糸乱れず敬礼する。 自分の演説の最後に全員が敬礼したものだから びっくりしていた春日もまわりをキョロキョロ見てから敬礼した。 けれどその表情は嬉しそうだ。 ケイトが微笑んで私の方を見た。 その額からは冷や汗が消え、普段の自信に満ちた表情に戻っていた。 私はケイトの視線に頷いて口を開いた。 「法月星志郎は校庭へ!  広域索敵型ヤオヨロズ”テンシュカク”のサポートを受けた上で  大気圏外でICBMを破壊する。  十津川 倫太郎(とつかわ りんたろう)、銀島 照代(ぎんじま てるよ)の両名は  神室ケイトの指揮下でICBM落下地点に待機せよ。  手の空いた者はヤオヨロズを使って周辺住民の退避を手伝え。  以上、解散!」 私の言葉が終わるとその場に居た全員が慌ただしく作戦司令室を出て行った。 最後までイスから立ち上がらなかった門天山を除いては。 私は門天山に言った。 「門天山、お前の言いたいことは分かる」 門天山はゆっくりと立ち上がり、ばつの悪そうな顔をした。 「ええよ。  総長、アンタの言ってる事に間違いはあらへん」 私は門天山の目を見て言った。 「お前の言葉、嬉しかったぞ」 「ヘッ・・・よう言うわ」 門天山は恥ずかしげに鼻の頭をかいた。 私は口元に笑みを浮かべてから真面目な顔を作った。 その表情に気づいたのか門天山も真剣な表情になる。 「お前にはお前の仕事がある。  この作戦中は都心部を中心とした内陸部に帝神のヤオヨロズが集中するだろう。  聖護院の偵察型ヤオヨロズもこの動きに遅からず気付くはずだ」 「やろうな。聖護院もアホやない」 私はニヤリと挑発的な笑みを浮かべて門天山を見た。 「お前は”いつもの奴ら”を連れて聖護院のエリアに攻め込め」 私の表情から思惑を汲み取ったのか門天山もニヤリと笑った。 「ド派手に暴れればええわけや」 「この所、西と東の国境区域の戦闘は小規模化している。  いま攻勢に出れば聖護院も我らに策があるのかと勘ぐり、  簡単には攻め入りはしないだろう」 「俺にうってつけの任務やな!」 門天山は自分の胸の前で掌と拳を打ちつけ、パン、と音を鳴らした。 「昔の女に会えるかもな」 私が意地悪そうに言うと門天山は渋い顔をして答えた。 「なんでアンタがそんな事知ってんねん・・・」 「情が残っているのなら元の巣に戻っていいんだぞ」 「こんな事態になってんのに俺に冗談の時間を割くんかい。  ・・・ったく、アンタにはかなわへんな・・・」 私はフッと笑ってから頭をポリポリとかく門天山を背にして、作戦司令室の扉を開けた。 すると門天山のクソうるさい声が響いた。 「彩陶総長、そっちは頼みます!」 後に振り向くと門天山は背筋を伸ばして敬礼していた。 さっき敬礼しなかった分を返す、といったところか。 私は門天山に向かって言った。 「敬語は”キモイ”ぞ門天山」 私がそう言うと門天山はガッハッハと笑った。 --つづく --説明不足を補う脳内メモ ■蘇芳(すおう) ヤオヨロズの世界観設定に描かれている白い髪の少年(少女?)の事。 蘇芳とは平安時代に凝固しかけた血の色の表現として用いられた言葉。 帝神にも聖護院にも属さず、ヤオヨロズ使いたちの前に現れる。 ■国譲りの戦(くにゆずりのいくさ) 帝神学園七代目総長・彩陶らごうの兄である六代目総長・彩陶神威が起こした戦い。 彩陶神威の持つ強すぎるヤオヨロズ「タケミカヅチ」を使い、 東西で行われている覇権争いに終止符を打とうとした政府の作戦でもある。 この戦いで帝神の主力部隊は聖護院の本校に肉薄するが、 タケミカヅチの暴走によって敵味方ともに壊滅状態に陥る。 味方殺しの罪は重く、彩陶神威に対して政府から抹殺指令がくだり、 戦場に送り込まれたのは実の妹である彩陶らごう。 彩陶神威は妹の声に正気を取り戻すが時すでに遅く、 カグツチの一撃により彩陶神威は死亡、帝神の国譲りの戦は失敗に終わる。 --出演キャラクター ■日本分断YAOYOROZ■ 彩陶・羅ごう(さいとう らごう) 帝神学園・七代目総長 ピンクに染めた派手な長髪の女子高生 二つつの凶星が描かれたブレザーを着ている 黒のハイソにプリーツスカート、左耳につけた星のイヤリングが特徴 「カグツチ」と呼ばれる半人半龍のヤオヨロズを操る 真紅の肉体に炎をほとばしらせ巨大なハンマーで敵を薙ぎ払う姿は 火の神である迦具土神の名に相応しい カグツチの背中に突き刺さった四本の杭は搭乗者と精神を繋ぐ統制装置で 彼女の意志を忠実に反映する http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%BA%CC%C6%AB%A1%A6%CD%E5%3F 今回の主人公 頑固者だけど茶目っ気もある ■日本分断YAOYOROZ■ 神室 ケイト(かむろ けいと) 帝神学園に所属する高校三年生 ショートカットの青い髪にメガネをかけたクールな女子 総長である彩陶羅ごうと行動を共にする事が多く彼女の右腕と呼ばれている 用いるヤオヨロズは水神の名を冠した「タカオカミ」 女性のようなシルエットを持ち白い仮面を付けたヤオヨロズで水を操る 大気の水分を圧縮して打ち出す長弓が武器 ヤオヨロズの額を打ち抜くように角が打ち込まれていて これが統制装置としての役割を果たす http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%BF%C0%BC%BC%A1%A1%A5%B1%A5%A4%A5%C8 冷静な参謀の立ち位置 らごうと百合な展開になったらいいのに(なりません ■日本分断YAOYOROZ■ 門天山 もん吉(もんてんざん もんきち) 帝神学園の転校生、元は聖護院学園の生徒であったが問題を起こし退学させられた 非常に背が高い、髪の毛は黒く丈は並の長さ 殴り合いの喧嘩が強く、もとの地元ではトップとして、「鬼神」と持ち上げられていた ヤオヨロズ「ビシャモンテン」は体から溢れる程の雷を纏い、槍を持った男性型の身体 人を信用せず、転校先では一人身でいるつもりだったが いじめられていた男子生徒を助けたことで以後、彼と仲良しに ちなみに名付け親は落語家の父であり、少しコンプレックスを持っている http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%CC%E7%C5%B7%BB%B3%A1%A1%A4%E2%A4%F3%B5%C8 稲崎 翔太、草薙 毅、天津 高千穂などと組んで前線で大暴れするのですが それはまた別のお話 ■日本分断YAOYOROZ■ 法月星志郎 伸ばした髪を後ろで纏めポニーテールにしており線が細く頼りなさそうに見えるが体は鍛えられ引き 締まっている。古武術の使い手でポニテは沖田総司を意識している。 温和な性格だが、生き残る事を第一に考えている為和を乱す者に対しては厳しい。 彩陶羅ごうに対して恋心を抱いている。 「アメノカガセオ」 重装甲騎士型のヤオロズで重力を操る。 大剣を使用し、重力を倍化加速させ全てを寸断する。 内部には「アマツミカボシ」という本体があり重力弾やマイクロブラックホールを撃ちだす、外見は 細身の武者型で大剣が二つに分かれ刀と剣に変形。 帝神学園のヤオロズにしては珍しく制御装置を打ち込まれておらず完全に制御されている。 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%CB%A1%B7%EE%C0%B1%BB%D6%CF%BA 一番青春してそうな人 彩陶総長は基本鋭いですが自分の事に対しては鈍感なので気づきません ■日本分断YAOYOROZ■ 九戸 闇那(くのへ あんな) 帝神学園に所属する日独ハーフの17歳。 赤い髪と瞳。私服は黒い服やスカルアクセサリーを好む。 性格は超がつくほどのドSかつ骨フェチ。 基本的に無口だが、戦闘時には不気味な笑みを浮かべつつ、 「あなたの骨は拾ってあげる……」と毎回のようにつぶやく変人。 使用YAOYOROZは大きな骸骨人間といった姿をした「カムボネ」。 斬られた物質が急激に朽ちる効果を持つボロボロの刀や、 鎌のような刃となっている肋骨を伸ばして戦う。 カムボネを分解・浮遊させて自在に操り、多角的な攻撃を繰り出す事も。 骨が剥き出しなのもあってか、他のYAOYOROZより耐久力に劣るのが欠点。 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B6%E5%B8%CD%20%B0%C7%C6%E1 ちょい役でしか出ていませんが 個人的に好き ■日本分断YAOYOROZ■ 獅真凄 豪(しませ たける) 帝神学園に所属する学生帽を被り、恰幅の良い体躯にガクランを羽織った巨漢学生。 豚っ鼻を多少気にしており、指摘されたりすると怒り、 時には暴れる粗暴な面も多々あるがその実、義理人情に厚く剛胆な性格で面倒見も良く、 その容姿とあいまったその様はまさしく番長。 勇丸とは心の友だそうだが、勇丸の方がどう思っているのかは不明。 また、羅喉に従ってない故なのか彼女からは一目置かれている 操るヤオヨロズ「タヂカラオ」はメカニカルでメタリックな巨体の八本腕の力士。 その巨体と腕の多さを活かした体当たりや突っ張りを得意とし、 時折猫騙しを併用し、その拍手で発生した音波は近距離ならば人間の鼓膜を破壊してしまう程。 更に「発勁よい!」の掛け声と共に発勁を放つ事も出来る。 ちなみに、帝神学園学食堂を切り盛りするおばちゃんは彼のオカンである為、 彼は学食にだけは足を運びたがらない http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%BB%E2%BF%BF%C0%A8%A1%A1%B9%EB 動かざる事山のごとし な感じの人 ■日本分断YAOYOROZ■ 春日 日乃(かすが ひの) 帝神学園に通うオレンジ色の髪の女の子(十七歳) 昔、暴走ヤオヨロズの襲撃を受け、瓦礫の下に閉じ込められていた 冷たい暗闇の中で光を強く求め、それはホアカリの出現につながった そんな経験からか、普段は明るいが、曇天や雨天になると不安げになる 今でも、暗闇で寝るときが少し怖いため、小さな明かりをつけて寝ている ヤオヨロズ「ホアカリ」 白地にオレンジの塗装が施された姿をしている。光線を駆使して戦う 太陽光を操作し攻撃することが可能で、何もない上空から熱線を照射できる お天道様の届く場所にいる限り、ホアカリの射程範囲にいるも同じ http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%BD%D5%C6%FC%20%C6%FC%C7%B5 隠しスキル演説をもっている のではなく何事にも一生懸命な子 ■日本分断YAOYOROZ■ 銀島 照代(ぎんじま てるよ) 帝神学園の女子生徒。十五歳、背が高く髪も長い いつも上の空で人の話を碌に聞かない。そのくせ、大事な質問にはしっかり答える 趣味は読書だが、それは見せかけ。読んでるふりしてぼんやりしている ヤオヨロズの名は「ヤタ」。大きな丸い盾を持っていて、そこに光景を写し込む すると盾に防がれた攻撃は、盾に写された場所や物に炸裂するという仕組み 単純な防御力においても優秀、戦車砲にも持ちこたえる http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B6%E4%C5%E7%20%BE%C8%C2%E5 重要な役なんだけど今回は名前だけ登場 ■日本分断YAOYOROZ■ 十津川 倫太郎(とつかわ りんたろう) 十六歳 神社の神職者のような衣装を纏ったヤオヨロズ「グウジ」を操る帝神学園の男子生徒 札型のバリアを使い防御結界や反射結界、封印結界など様々な結界による援護を行う どちらかと言えば聖護院学園の方が向いている神通力系のヤオヨロズなのだが 本人が帝神学園を希望したために、若干浮いた存在だがも戦力として認められている 彼の実家は関西にあることからも、どうして帝神に来たのか不思議がられるが どうやら聖護院学園に犬猿の仲の知り合いがいるのを風の噂に聞いたらしい ちなみに、実家は代々神職の家系で彼のヤオヨロズも多分その影響が強い ただ本人はその役目に反発しており、家族から離れるためにも聖護院学園を選ばなかった http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%BD%BD%C4%C5%C0%EE%20%CE%D1%C2%C0%CF%BA 同じく名前だけ ■日本分断YAOYOROZ■ 叶 神子(かのう みこ) 帝神学園中等部2年生の少女。 黒髪のセミロングで赤い髪どめをしている。 歳のわりに身長が低く小学生のようにちまい娘。 見栄を張って中等部用の制服を着ているが、 袖が長いためにキョンシーのようになっている。 広域探索ヤオヨロズ「テンシュカク」 向かい合う二匹の巨大なシャチホコの間に畳が一畳あるという特異な姿をしている。 テンシュカクは出現させると自力で移動できないので、 通常は建物の屋上などで使用する。 テンシュカクは広域探索の他にヤオヨロズを介したテレパシー能力も併せ持ち 戦場の司令塔となる素質を持っている。 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%B3%F0%A1%A1%BF%C0%BB%D2 SSに使うキャラは基本的に絵化されたキャラにしてるんだけど (イメージ掴みやすいし文章だけでキャラを表現できるほど腕もない) 話の流れ上、偵察型ヤオヨロズが必須なので登場してもらった ■日本分断YAOYOROZ■ 彩陶・神威(さいとう かむい) 帝神学園・六代目総長で彩陶・羅ごうの実の兄 鋭い碧眼に背中まである長い黒髪、前髪に雷のような金色のメッシュを入れた男 居合いの達人で神明夢想流の免許皆伝を持ち刀を肌身から離さない 使用するヤオヨロズは武神・雷神の神格を持つ「タケミカヅチ」 その姿は白をベースに群青の水晶の入った巨大な人型ロボで「トツカ」と呼ばれる巨大な雷剣を持つ 剣による格闘戦もさることながら「ライコウ」と呼ばれる球体ビットを使い 10億ボルトものイカヅチで地を這う敵を薙ぎ払う その圧倒的な力で膠着状態だった帝神と聖護院の戦いを戦乱の渦に巻き込み 多数の部下と共に戦場を駆け抜け聖護院の本校に肉薄するがタケミカヅチの強大な力に統制装置が耐え切れず ヤオヨロズが暴走、敵味方問わず破壊の限りを尽くし帝神の「国譲りの戦」は失敗に終わる 数々の仲間達を殺戮し帝神に多大な被害を与えた神威は 当時中学3年生であった実の妹、らごうの呼びかけに正気を取り戻しカグツチの一撃を受け、死亡する 「兄と呼ばれる様なことを何一つしてやれなかった俺を、兄様と呼んでくれるのか…許せ…」 http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?%BA%CC%C6%AB%A1%A6%BF%C0%B0%D2 名前だけ出てくる彩陶らごうの兄 ■日本分断YAOYOROZ■ 芦原サラ http://nathan.orz.hm:12800/soe/index.php?No.13240509 会話の内容に出てくる門天山の元彼女