■東方大陸史■第十章「裂かれる暗黒。肥える闇」 「村という村、町という町、城という城、国という国すべてで煙が見えた。  ありとあらゆる場所で兵達の死体の山が出来、神の子達が臓物をさらし朽ち果てていた。  それでも余は引き下がる事はできない。引き下がってはならなかった。」 「お母さん、僕は今日戦いに行きます。  神に祈る事の出来ない僕を許してください。  さようなら。」 「神を否定するのか。我等を慈しみ育ててくれた神を。  ならば余は神を守ろう。例えそれが弟を殺す事になろうとも。」 「愛しき妻へ。もう赤ちゃんは生まれたでしょうか。  この手紙が届く頃には、私は次の戦場へ足を踏み入れていることと思います。  次の戦場では、おそらく私は暗闇へ行く事となるでしょう。  私が死んだら伯父さんに頼んで年金をもらって下さい。さようなら。」 −−戦争口語録より−− 暗黒暦2499年。 東方大陸において神自立主義と称された思想は より急進性を増した人類独立主義へと移行。 暗黒神からの影響を全廃し、全てを人の手で営む世界を掴むべきと断じた彼らの思想は 西方の人々に熱狂的に支持された。その中には多くの貴族の姿もあった。 彼ら西方貴族は、人人党という政党組織を結成すると 暗黒帝国議会で、古代に行われたとされる【神との契約】の破棄案を皇帝へ提出した。 一方、東方大陸中部では人類独立主義はまったく支持されておらず 領民から突き上げをくらった中部貴族達を中心に慌しく神信同盟を結成。 破棄案成立を阻止すべく西方貴族達に掴みかかった。 両勢力により裏で様々な政争が行われ、幾人もの要人が変死を遂げた果てに 破棄案は賛成【76056】反対【76055】棄権【1】で可決。 第10代暗黒皇帝レヴィアタン・スペリオルは議会の決定に従い 【神との契約】の破棄を宣言し、暗黒神へ神領の解体を通達。 当初、暗黒神側は通達に対し受け入れの姿勢を見せ 皇帝側は安堵し、神領各地の都市は次々と帝国の直轄地として編入されていったが ある一報が帝都に激震をもたらした。 ミナーニャ王スカーレット挙兵 全中部貴族が皇帝への【忠誠拒否】を宣言し、暗黒帝国に対し次々と宣戦を布告。 帝国へと明け渡された神領都市を奪還すると、ミナーニャ王を皇帝とするグローデア帝国を成立。 レヴィアタンは激怒して暗黒神への【信仰拒否】を告げ 帝国諸侯もこれに倣い、時代は皇帝か神かの二極の争いへと突入。 両軍総兵力1千万機。動員人数4億という世界最大の内乱劇が幕を開けた。 グローデア帝国皇帝スカーレット6世は怒りに燃える中部民衆の絶大な支持のもとに 軍勢を率いランペル川を渡河して、各地の反乱軍と合流しつつ暗黒帝国首都へと進撃した。 圧倒的な数で迎え撃つ暗黒帝国軍(以下スペリオル軍)とグローデア帝国軍(以下グローデア軍)は 各地で激戦を繰り広げ、一進一退の攻防が続いたがトワイライトの戦いでグローデア皇帝スカーレット6世が戦死。 戦局はスペリオル軍へと徐々に傾き始める。 これを見て中立を謳っていた諸侯達も皇帝の傘下に加わっていったが 【暗黒三大公】すなわちアビシラス<暗黒大海公>家、ベヒモラント<暗黒大陸公>家、フレスレイド<暗黒大空公>家は 事ここに至っても中立を貫き、それどころか両帝国の講和に奔走する始末だった。 レヴィアタンは三大公を帝都へと呼び出すと謀殺。 三大公の領地は没収され、一族は皆殺しにされた。 勝利を確定的なものとすべく、行われたこの事件は 暗黒帝国史上最大の危機をもたらす結果へと結びついてしまう。 三大公滅亡の報告が神都へともたらされると 暗黒神は、ある神勅をグローデア皇帝スカーレット7世へと下した。 「神門の番人ラトの子。祖先も祖父も勇猛なりしグローデアよ。  汝の祖先がそうであったように、汝の祖父がそうであったように  神の敵を打ち負かし!忌まわしき異端者に絶望を与えよ!  さすれば全ての暗黒は神門の番人ラトの名の下に従うであろう。」 この神勅により、暗黒神の眷属達はスペリオルへと牙を剥いた。 トワイライト以来、戦勝を重ねていたスペリオル軍は一気に劣勢に立たされ 多くの戦場は、眷属達による巨大な屠殺場と化していく。 この事態を打開すべくレヴィアタンは国民皆兵制度を導入。 国内の工場を全力稼動しSDロボを量産し足りない機数は 当時、すでに台頭を始めていたNI社に対し、帝国を担保としてマナスレイヴを大量購入。 8百万機もの兵を動員して、数で巨大な暗黒神の眷属を圧死させていった。 戦いは5年たっても終わりの気配を見せず、西から中央にかけて東方大陸は荒れ果て 闇の国はグローデア帝国と同盟を組み、フレスレイド<暗黒大空公>家の復興を掲げ暗黒帝国へ宣戦を布告。 大して暗黒帝国も魔導王国、スリギィランドと同盟を組み対抗。 さらに混迷を深め3年の月日が流れると、疲弊しきった両帝国はやっと和平の道へと歩み始める。 暗黒暦2512年。 暗黒帝国とグローデア帝国との間で和睦が成立。 ランペル川を区切りとする国境線が引かれ、ランペル川はグローデア帝国所有となった。 両帝国は荒廃した国土の復興へと数十年の年月をかけて取り込み 闇の国は、この戦争で完全な独立を勝ち取り、軍事大国への道を進み始める。 その後、中央大陸から始まったディオールとアウトバーン帝国との戦争は世界中に飛び火し 【世界大戦】が勃発。世界中で戦火の煙があがったが、東方大陸の暗黒帝国とグローデア帝国は 国土の傷が癒えていなかった為に不参加。 凄惨な戦争を体験した各国は【平和な世界】をスローガンに戦争の廃絶を訴える世界会議を発足させた。 だが、東方大陸では大戦に参加しなかった事もあり、その影響を受けず 東方大陸統一を掲げ即位したレヴィアタンの長子・暗黒皇帝ヴァンガード2世 神政保守を掲げるグローデア皇帝スカーレット9世 力をより高めディオールへの復讐をせんとする闇の国王ラシード の三者による三国戦争。 暗黒皇帝ヴァンガード2世死後に起こった継承戦争。 暗黒帝国・闇の国連合と魔導王国との報復戦争。 など戦争は止まる事を知らなかった。 そして数々の戦争を得た暗黒帝国、グローデア帝国、闇の国の三国は次第に世界から孤立していき それゆえに、手を結ぼうと考えた。 そして、その目の先にはわかりやすい事に共通の敵である魔導王国の姿があった。 次章予定「闇黒連合の発足」 \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\