■東方大陸史■第十二章「世界征服の前哨・前」 「西を侵せ。彼の地は古よりの宿怨が故に。  北を侵せ。彼の地は最も新しく最も強大な敵であるが故に。  南を侵せ。彼の地は大いなる泉を制す為に。  東を侵せ。彼の地は農民の血の一滴に至るまで全て、我らのものだ。」 −−闇黒連合軍のスローガンの一種−− 暗黒暦2554年。 この年、闇黒連合加盟国である三国の元首達によって 行われた元首会議において、魔導王国に対する宣戦布告が正式に決定された。 皇帝レヴィアは連合酋長として闇黒連合軍総司令官へ就任。 今だ統合間もない烏合の衆と言っていい数だけは膨大な軍勢を、二つの軍へと編成した。 魔導王国制圧を目指す<<東方軍>> 司令には闇の国の王太子バルスを。 東方大陸スリギィランド領トロネアの解放を目指す<<西方軍>> 司令には暗黒の国のバルバトス元帥をそれぞれ任命。 同年9月。編成を終えた両軍団は進軍を開始。 東方軍と西方軍はそれぞれ敵国国境に到着すると、国境線に沿って部隊を配置。 これに対して魔導王国とスリギィランドは非常事態宣言を施行。 可能な限りの防衛軍を国境に配置すると共に、同盟国への援軍を要請。 カリメア合衆国を中心とした西方同盟<<プロテスタント>>軍が組織され スリギィランド領ポートルタルに集結後、こちらも二手に軍を分け 一方はそのまま陸路でスリギィランド領東方大陸の中心地であるトロネアへ。 もう一方は海路で魔導王国首都ソラリス・ノヴァへと向っていった。 翌年3月3日。闇黒連合軍と西方同盟軍が国境線沿いでの睨み合いを開始して3ヶ月。 平和な係争地帯と化しつつあったこの日の夜。 闇黒連合・東方軍司令バルスは全軍に越境を下命。 夜の内に、国境線沿いの軍勢を10の軍団に纏め上げていた連合軍は、 国境線に沿って配置されていた同盟軍を次々と破り越境。 越境後は7つの軍団が反転して散り散りとなっていた国境沿いの同盟軍を掃討していき 残り3つの軍団はそのまま進撃を続行。 陣頭に立ち猛然と攻め上がったバルス率いる第一軍団は、翌朝には敵都市トアミンを占領。 ヴォリス・カラミティオル率いる第二軍団も会戦で同盟軍を撃滅し、同盟軍司令マイケル・サンダー大将を 討ち取る大功をあげた。 緒戦で司令官を失った同盟軍は、指揮系統が崩壊しかけたが君主精霊旗を掲げ駆けつけた魔導王が指揮をとる事で なんとか全面敗走という恥辱を免れ、遅滞戦術を取りつつ戦線を下げる事に成功する。 この一連の戦いにおいて同盟軍は初期戦力の3割を失う打撃を受けたが 5月にはカリメア合衆国より第5次派遣軍が到着し、連合軍に対する反撃を開始。 コブレンツ会戦において闇黒連合東方軍第4軍団が壊滅。 続くカスターラ城攻防戦において守備を担当していた闇黒連合東方軍第7軍団がこれも半壊し敗走。 戦力が拮抗した事で、両軍は一進一退の死闘を繰り広げるが 壊滅した闇黒連合東方軍第4軍団の代わりに増派されてきたファーゲルホルム軍、シツルチョフ軍を加え 司令官が戦死した第7軍団に、バルスは子飼いのジュリア=シーザリオンを司令として抜擢。 これが利いたのか、ソーラーレイスの戦いで連合軍は敵戦力の8割を殲滅する大勝を果たし 抗戦能力を失った同盟軍は魔導王国からの撤兵を開始。 連合軍に対し魔導王国が独力で戦える筈もなく。 首都ソラリス・ノヴァを包囲される中、かつて暗黒皇帝暗殺の為に放った刺客によって 魔導王はその命を奪われる。 ソラリス・ノヴァに入城した連合酋長レヴィアは魔導王国の併合を宣言。 東方における戦火はここに鎮まる事となったが、今だ戦争の音は消えず。 その音は西方より鳴り響く。 彼の地はトロネア。 かつて初代暗黒皇帝に即位したアルゲバル・アルデバランが治め 今は海帝と称される王に治められている暗黒帝国の失地。 彼の地を治めし王の名は エドワーズ=ウィンザーノット=スリギィランド 次章予定「世界征服の前哨・中」 \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\