■スペース三国志■ 宇宙海賊“ロッソ・ファミリー”の母艦「マーズ・インディペンデンサー」がGHOSTワークスの実験艦「ハルフォード」の砲撃により損傷。 この後マーズ・インディペンデンサーは通商連合の力を借りてエウメニデス・ロッソへと生まれ変わる。 その少し前の妄想。 -------------------------------------------------------------------------------- “家族”の死 -------------------------------------------------------------------------------- 火星軌道上、機動戦艦マーズ・インディペンデンサーのブリッジにて。 オペ男「姐御、船影を確認しましたぜ。教国の貨物船一隻だけでさぁ」 セリア「護衛もつけないってのは妙だねぇ。索敵範囲を広げな」 オペ男「合点で!」 オペ男「十一時方向に船影。型番はGワークスのですが合うデータがねぇです」 セリア「新型ねぇ……。距離は?」 オペ男「一万キロ以上離れてまさぁ」 セリア「気になるねぇ。目を離すんじゃないよ!」 オペ男「了解しやした」 オペ男「ん? あっ……姐御! 熱源が! 熱源が急速接近してきますぜっ!!」 セリア「慌てんじゃないよ! 回避急げ」 操舵手「ダメだ姐さん! 向こうが早すぎてこのオンボロじゃかわし切れねぇよ!!」 セリア「沈みたくなきゃ、やれるだけのことはやんな!」 閃光が船体をかすめ、衝撃が全てを呑み込んでいく。 ブリッジに鳴り響く警告音も聞こえない。 外装が損傷しささくれ立ったり剥がれたりしている。 セリア「何がどうなってるんだい!?」 唖然とするセリアとクルー一同。 直後、再び衝撃が走り艦の平衡感覚が著しく崩れた。 宙に浮いて散乱する様々な物品。 セリア「被害報告しな! エアが漏れてる場所は閉鎖! 手すきの奴はケガ人の手当てだ! グズグズするんじゃない!!」 艦長席の内線ブザーが鳴る。 機関士(内線)『姐さん! あたり一面火の海だ! 右舷のメインブースターをパージしねぇと誘爆しちまわぁ!!』 セリア「喚くんじゃないよ! パージはこっちでやるからあんたらはとっとと避難しな!」 機関士『それがダメなんだよ姐さん。隔壁が歪んでドアも通気ダクトも通れそうにねぇ』 セリア「泣き言いうんじゃない! あんたそれでも海賊かい!? 救援を向かわせるからそれまで耐えるんだよ!」 機関士『姐さん、構うこたぁねぇ……今すぐパージしてくれ!』 セリア「なっ、何言ってんだい! 酸欠でおつむやられたのかい!?」 平静を装おうとしたが声が上ずっている。 機関士『救援待ってる間に誘爆しちまうよ。そうなったらみんなオダブツだ。頼む! やってくれ!』 セリア「早まるんじゃないよ! どうにかするから!」 機関士『どうにもなんねぇから頼んでるだよ姐さん。早く! でないとホントに宇宙の藻屑だぜ!』 セリア「そんな……ダメよ。それだけは」 涙が溢れて宙に水玉を作る。 機関士『どうしたよ姐さん? 海賊は泣き言いわねぇんじゃなかったのかい?』 セリア「あたしに……あたしに家族を殺せって言うの!?」 機関士『家族かぁ、嬉しいねぇ。姐さんにそう言ってもらえると』 しばしの沈黙――。 機関士『だけどな、今回ばかりそれしか方法がねぇんだ。オサラバだぜ。姐さん』 セリア「うぅ……うあああぁぁぁあああっ!!!!」 泣き叫びながらパージのボタンを叩く。 手許で赤いランプが点灯し、ズンっとくぐもった衝撃が走り大破した右舷メインブースターが切り離された。 鉄くずと一緒に宇宙空間の放り出されたクルーたちをセリアは直視できなかった。 セリア「パージ、完了……」 力なく呟く。 オペ男「姐御、大丈夫ですかい?」 セリア「大丈夫。大丈夫だから……」 俯くセリア。肩が震えている。 クルー一同「「「………」」」」 しばしの沈黙。 セリア「なぁにしみったれた顔してるんだい!」 突如ブリッジに響くセリアの声。 セリア「生きてるブースターだけでこの宙域からずらかるんだよ! あいつらの思いを無駄にする気かい!?」 操舵手「へい!」 セリア「Gワークスだか何だか知らないけどさ。この落とし前はキッチリつけさせてもらうよ……戦争でも何でもやってやろうじゃないか!!」 -------------------------------------------------------------------------------- 本スレに投下された設定次第で続くかもね?