■スペース三国志外伝■ ジリアン・ノースウィンド 大戦神話の英雄の一人 実年齢140歳、肉体年齢は「神」建国当時の50歳 「神」に対して懐疑的であり、その存在が長く続かないだろうと踏んで自身をコールドスリープした 「神」の力が弱り切った時に目覚めるよう指示し、混乱に乗じて各地の乗っ取りを計画 老いと、与えられた待遇に満足しつつある自分に焦りを感じたのも、コールドスリープをした理由の一つである 右目の義眼はスリープ時に取り外し、以降は頻繁に行われていたメンテナンスを嫌い、二度と着けることは無い ■SVBF-01A/J-SQ ジリアン・ノースウィンド専用シュトゥルム ‐Sinister Queen‐■ ジリアンがコールドスリープ中に作らせたシュトゥルムの改造機 基本的なフォルムは元の形を保っているが各種性能の大幅向上、内部武装の埋め込み等で変形機構は失われている だが人型での長時間飛行が可能であり、トップスピード、機動力は大戦時代のそれとは比べ物にならない領域に達している また最新鋭の技術と極秘裏に回収していた帝国機のサンプルを応用した、いわば半機械生命体のような機体でもある 背部にある翼状のスラスターや長くしなやかな尾を始め、その挙動は本物の生物のように滑らか 更に自己修復機能に加えて、胸部に内臓されたイオン加速装置による核融合反応で無尽蔵のエネルギーを生み出すことも可能 携えているのはそのエネルギーを放出するブラスター砲であり、収束・拡散範囲、連射速度、射程等を自由に変えられる 銃剣型の大型レーザーブレードも出力次第では斬艦刀にも使用可能 その他にも各種武装、機能を備えている謎の多い機体であり、全てを知るのは開発に関わった一部の研究者とジリアン、そしてこの機体自身のみである ■コールドスリープに至るまでの話的なもの■※「神」の解釈が間違ってるかも ある満月の夜、ジリアン・ノースウィンドはなかなか寝付けないでいた 大戦が終わり、教官織の地位とアメリカにあるこの土地と屋敷を手に入れてからはこんな経験は無かったのだが 「フンッ…、何が“神”だい…馬鹿馬鹿しい」彼女はイラつきを交えながら呟いた 現在西暦2450年、あの現実離れした大戦からもう5年の月日が流れていた。そしてこの年、人類は統一国家“神”を建国した “神”とは先進国、発展途上国の計100ヶ国以上が合わさり出来たもので、平和と共生の象徴である 共生というのは地球生まれの人間と、コロニー生まれの人間双方が共に歩んでいくという意味であるが、彼女はそれが気に食わなかった 今は大戦の熱気で感覚が鈍っているが、双方の軋轢はその程度の事では修復不可能である、と考えているのだ それは幼いころから虐げられてきた自分が一番分かっていることであり、コロニー生まれには未だに悪印象が拭えないでいる 「あんなものは長く続かんだろうねぇ。…まぁ、私の命が尽きるよりは続くんだろうがね…」 彼女はそう言いながら、窓に向かって手を伸ばした。月明かりに照らされた手は、彼女の目にとても醜く映った 50歳…もう自分も若くは無い。既に閉経し、容姿もこれからもっと老いていくのだろう 思えば心落ち着く時は、人生の中でこの5年の間だけであった。それまでは人を欺き、蔑み、糧にして生きてきた このまま安定した職を続け、平穏に過ごして静かに幕を閉じる。というのもいいかもしれない それに大戦以前や教官職に就いた後も、何度か肉体関係を持ったり、求婚を迫られ妻に、母親になる機会はたしかにあった だが自分には向いていないと決め付け、結局結婚経験も出産経験も無いまま今に至る 「今更“普通の女”にはなれないし、どうせこのまま死ぬよりは…もう一花咲かせようかねぇ」 束の間の平和に浸りながら朽ちるよりも、やはり戦って死ぬのが自分の性に合ってるのだ、と彼女は思い至った しかし今はまだ“その時”ではない。ここでクーデターやらを起こしてもあまり意味はないのだ そして彼女はある決意と計画を胸に秘め、長い眠りについた………